格闘技の多くが体重による階級制を取っている理由。
体重の制限のない大相撲の、上位陣が巨漢だらけの理由。
分かるだろ?
世界の真理は、すごくシンプルなんだ。
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――夜も更けた冬木市、その郊外に広がる森の中。
少し開けた空き地で、2人の巨漢が向き合っていた。
「クククッ……俺ヨリデカイ奴ナンテ、ヒサシブリダ……!」
見上げるのは全身傷だらけの巨漢。
その身長、実に 2m43cm。体重は 201kg。
やや手足が長い印象も受けるが、筋骨隆々たる均整の取れた身体。
この寒空の下、タンクトップに半ズボン、足元はスニーカーという姿。
コキリ、コキリと指を鳴らし、不遜な態度で相手を睨みつける。
「――――ッ」
対するのは、古代の兵士のような鎧をまとい、兜で顔の半分以上を隠した、さらなる巨漢。
身長は……2m90cm。
本当にこれは『ヒト』なのか。そう疑いたくもなるあり得ぬほどの体格。
しかしこちらも、鎧の下の身体は筋骨隆々にして、実にバランスのとれた肉体美。
鎧の巨漢の足元には、巨大な槍が2本、同じく巨大な盾、鞘に入った巨大な剣が投げ捨てられている。
ザッ。
見下ろされる格好の『小さい方の』巨漢が、『大きい方の巨漢』に対して、身構える。
レスリングの選手のような構え。
『大きい方の』巨漢も、ゆっくりとそれに倣う。
短冊状の銅板を無数に繋ぎ合わせた鎧が、しゃらりと鳴る。
「『バーサーカー』……『試サセテ』貰ウゾッ!」
「――――ッ!」
『小さい』巨漢が叫ぶと同時に、突風のようなタックルを敢行する。
『大きい』巨漢が声なき雄たけびで応じる。
近代レスリングの技法そのままに、『小さい』巨漢が『大きい』巨漢の腰と左腿を捉える――が!
鎧の巨漢は、こちらもがっちりと重心を落とし、正しくそれを受け止める!
「フゥ、フゥ……ガァァッ!!」
組み付いた傷だらけの巨漢が、渾身の力を込めて押し倒そうとする。
額に青筋が浮かぶ。全身の筋肉がさらに膨張する。もはやヒトとは思えぬ形相と化す。
それでも鎧の巨漢は動かない。動かないどころか。
「――――ッ!!」
「……ッ!?」
手を伸ばして『小さい』方の巨漢の身体をしっかと掴むと――
咆哮一閃、そのまま力任せに引っこ抜く!
もはやそれは『持ち上げる』なんて生易しいものではない!
そのままの勢いで真上に向かって無造作に放り投げる!
「ナッ……!?」
内臓が浮く感触に、傷跡の巨漢は驚きの声を上げる。
ほぼ真上に投げ出されて、身長の2倍の高さ、3倍の高さ、いやまだまだ上がる!
森の木々を見下ろすくらいの位置まで飛び出して――ようやく思い出したかのように重力が仕事を開始する!
落ちる! 落ちる! 今度は落ちる!
『小さい』巨漢は空中で必死に受け身を取ろうとして……
森の中に、重い落下音とともに、もうもうたる土煙が上がった。
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マスターがサーヴァントに挑む――
それがどれだけ馬鹿げた話であるのかは、刷り込まれた知識が教えてくれていた。
この聖杯戦争に巻き込まれた際に与えられた知識から、もちろん分かってはいた。
しかし、それでも、ジャック・ハンマーは自分の身体で試すことを選んだ。
生身のヒトと英霊の差、ではない部分を、確認し、体験し、納得するために。
「ハ、ハ、ハ……ハハハハハハハッ!!」
「――――ッ!」
森の中。
広場にできたクレーターの真ん中で、大の字に横たわったジャック・ハンマーは笑い出した。
負けた。
また負けた。
鍛錬を重ね、ドーピングを重ね、骨延長術まで繰り返し、現代医学の粋を集めた身体で、また負けた。
それでもジャックは楽しくて仕方がない。
それでもジャックは嬉しくて仕方がない。
なぜなら――
「矢張リ、俺ハ間違ッテ無カッタ! 俺ノ努力ノ方向性ハ、間違ッテ無カッタ!」
「――――ッ!」
ジャックは叫ぶ。鎧のバーサーカーが吠える。
骨延長術による体格改良。それでさらなる強さを手に入れたはずだったのに。
2m13cmまで伸ばした所で、太古より蘇ったピクルという男と戦った。完敗した。
2m43cmとなった所で、武器術の達人である本部以蔵と戦った。完全にもてあそばれ気遣われた挙句に敗北した。
最近のジャックは負けてばかりだ。黒星ばかりが積み重なる。
それでもジャックは確信する。目の前のサーヴァントの姿に確信を深める。
「俺ハマダ、『足リナカッタ』ダケダ! ソウダロウ、『ゴリアテ』!」
「――――ッ!」
ジャックは叫ぶ。バーサーカーが吠える。
そう。身体を大きくすることでさらに強くなる、という方針そのものが否定された訳ではない!
まだ足りなかっただけなのだ! 身長が、体重が、パワーが、強さが!
そしてまさしくジャックが成りたかったモノが、目の前に存在している!
ゴリアテ。
それは最も有名な巨漢であり、神話と歴史の狭間にたたずむ者。
それこそが、ここに顕現するバーサーカーであった。
「俺ハ、デカクナリタインダ! 今ヨリモ、モット、モット!」
「――――ッ!」
恥も外聞もなく涙を流しながら、ジャックが叫ぶ。バーサーカーが吠える。
現代の医学の表も裏も使い尽くした身体改造は、しかし既に限界に達している。
ジャック自身、これ以上の骨延長術の使用は、身体機能の低下を招くと理解してしまっている。
もはやまっとうな手段では、これ以上大きくなることはできない。
けれど――ならば、現代の科学ではない方法を使えば!
聖杯戦争!
その果てに得られるという、どんな願いでも叶うと言われる神秘の力であれば!
「俺ハ、デカクナリタイ! 俺ハ、強クナリタイ!」
「――――ッ!!」
いつしかジャックは起き上がって、滂沱の涙を流しながら絶叫する。
負けじとバーサーカーも吠える。
マスターとサーヴァント、両者を繋ぐ霊的な絆を通して、狂気の向こうに霞むゴリアテの魂の叫びが届く。
そうだ。
俺だってデカくなりたい。俺だって強くなりたい。もっともっと大きく強くなりたい。
羊飼いの小僧相手に不覚は取ったが、もっとデカければあんな思いはしなくて済んだはずなんだ。
あの小さな石ころが届かないくらい、俺がデカければ。もっと大きければ。
そうか。
ゴリアテ、お前も敗北を知る身か。
ゴリアテ、お前も負けてなお強さを求める身か。ならば。
「俺達ハ、デカクナル! 俺達ハ、強クナル! 今ヨリも、モットモット!」
「――――ッ!!」
ジャックは叫ぶ。ゴリアテも吠える。
いつしか両者の咆哮に応えるように、ゴリアテの身体が大きくなる。
比喩でも冗談でもなく、文字通り、その巨体がさらに一回り大きくなる。さらに一回り、さらに二回り。
着ている鎧や兜ごと、巨大化していく。
「俺達ハ、デカクナル! 俺達ハ、強クナル!」
「――――ッ!!!」
異変を察知した、森で眠る鳥たちが、慌てて木々から飛び立つ。羽音と狂ったような鳴き声が響き渡る。
なおもゴリアテは巨大化する。
限度など知らぬかのように大きくなる。
その頭はやがて木々の頂を超え、なおも止まらず、主従は祈りにも似た咆哮を上げ続ける。
「俺達ハ、デカイ! 俺達ハ、強イ! 俺達ハ、今度コソ、勝ツンダ!!」
「――――ッ!!!!」
それは夢か、幻か。
『大きい』は『強い』。
そんな世界の真実を体現する巨人が、そこに居た。
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――優しい朝の光が、いつしか森の中にも差していた。
森の中の広場には、激しい運動でもしたかのような、汗だくのジャック・ハンマーがただひとり。
荒い息をつきながら、座り込んでいた。
「……ナルホド、消耗スルモノダナ……!」
全身を包む疲労感を確認するように、ジャックはつぶやく。
そう。
ゴリアテはおそらく、強い。
とてつもなく強い。
特に巨大化してしまえば、向かうところ敵なしだろう。素直にそう思える。
だが。都合のいい物事にはデメリットがつきもの。
ドーピングに副作用があるように、
骨延長術に苦痛が伴うように。
ゴリアテの欠点――それは燃費の悪さ。
ただでさえ、バーサーカーというクラスは強さの代償に術者の消耗を強いるものなのである。
さらに加えて、巨大化なんてした日には……大変なことになるのが目に見えている。
ジャック自身、元々魔術などからは縁遠い存在だけに、尚更だ。
今だってこうして、ただ実体化させておくことすらできず、霊体化させているくらいなのだ。
強いバーサーカーではあるが、考えなしに暴れさせればすぐにガス欠になる。
マスター自身が戦えるのはこの主従のメリットではあるが、それでも他のサーヴァント相手では分が悪いだろう。
せっかく勝算が見えたというのに、なんとも歯がゆい話ではある。
しかしジャックは諦めない。
消耗しきった顔に、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
こう見えて、ジャック・ハンマーは頭の悪い男ではない。
リスクとコストと、成功率に対する評価を常人と大きく異なる所に置いているため、誤解されやすいのだが。
独学で医学と薬学を学び、ドーピングという偏った一点においては専門家の知識すらも易々と飛び越える。
そんな知性と分析力とを併せ持つ人物でもあるのだ。
問題が明らかになれば、対策だって考えられる。
魔力が足りないというのなら、やるべきことは簡単だ。
どこか別なとこから、持ってくればいい。
「『ドーピング』ハ、得意ナンダ」
ジャック・ハンマーは、その犬歯を剥きだしにして、ひとり不穏に微笑んだ。
【クラス】バーサーカー
【真名】ゴリアテ
【出典】史実/旧約聖書
【マスター】ジャック・ハンマー
【性別】男
【身長・体重】2m90cm・不詳
【属性】秩序・狂
【ステータス】筋力:A 耐久:A 敏捷:C 魔力:E 幸運:D 宝具:A
【クラススキル】
狂化:B
バーサーカーのクラス特性。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
身体能力を強化するが、現界のための魔力消費が大きく上昇する。
ゴリアテは敗北の逸話で知られている通り「英霊」としては決して強い方ではない。
だが狂化によって強化されることで他の有名な英霊と十分に渡り合えるだけの力を手に入れた。
(珍しく)バーサーカーの本来の使い方がされていると言えよう。
【保有スキル】
自己暗示:A
自らを対象にかける暗示。精神に働きかける魔術・スキル・宝具の効果に対して高い防御効果を持つ。
Aランクにまでなると「私は大きくなる」と思い込めば、2m90cmという常識はずれの体格さえも現実化させてしまう。
加虐体質:B
戦闘時、自己の攻撃性にプラス補正がかかる。
これを持つ者は戦闘が長引けば長引くほど加虐性を増し、普段の冷静さを失ってしまう。
攻めれば攻めるほど強くなるが、反面防御力が低下し、無意識のうちに逃走率も下がってしまう。
なおゴリアテの場合、直接的な攻撃のみならず、挑発行為によっても効果が発生・累積する。
史実上のゴリアテの敗北も、このスキルの負の側面が発揮されたことも一因であった。
また狂化スキルに性質が近いため、今回のゴリアテはこのスキルを最大限には発揮できない。
戦闘続行:A-
戦闘を続行するスキル。決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の重傷を負ってなお戦闘可能。
ゴリアテの場合、史実においてはダビデの投石機による額への一撃で気絶し、敗北することとなった。
しかしそれゆえ逆説的に「額への打撃以外では止まらない」「それ以外の攻撃はほぼ無意味」という存在となった。
(なにしろ、ダビデが挑むまでは誰にも倒せない怪物だったのだから!)
完全な無敵や不死身ではないが、非常に高い耐久性を誇る。
額の、それもごく狭い一点に対するピンポイントな攻撃のみが、このスキルを無効化しうる。
(ランクについた「-」は、この場合、このスキルが無効な部位があることを示している)
また気絶等で戦闘態勢が解かれた時には効果を発揮できない。
【宝具】
『我こそ巨人の代名詞なり(ゴライアス)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:-
旧約聖書においては散々挑発した割にあっさりとやられる役として書かれているゴリアテ。
しかしその名は巨大なもの全般に対する代名詞となり、広く認知されるに至った。
その人々のイメージの力を受けて――英霊・ゴリアテは、さらに大きくなる。
スキル『無辜の怪物』に近い効果と由来であるが、ゴリアテは『宝具』としてコントロール下に置いている。
その効果は単純明快、身体(および装備)の巨大化。
本人およびマスターのテンションに呼応して、どこまでも大きくなる。
またそれに応じて筋力、耐久のパラメータが際限なく上昇していく。
ただし、巨大化すればそれだけ現界のための魔力消費量も上昇する。
さらに、感情とリンクしているため、細かい調整が効きにくいのもネック。
【Weapon】
『無銘・槍』『無銘・盾』『無銘・投げ槍』『無銘・剣』
ゴリアテサイズの武具の数々。
特にメイン武器の槍についてはわざわざその重さ(鉄の刃だけで6.8kg)が記録に残っている。
他に鎧(短冊状の銅板を無数に縫い合わせたもの、重さ57kg)、兜、脛当てを装備している。
時代を考えたら当時最高級の武具の数々。
【人物背景】
旧約聖書において、若きダビデの投石器に倒れたペリシテ人の巨漢兵士。
むしろダビデにまつわるエピソードの1つとして有名。誰もが知ってる、ヤられ役の、でっかいの。
そしてそこに追加するような逸話は何もない。
【特徴】
デカァァァァァいッ説明不要!! アンドレアス・リーガンよりもデカァァァァァァァァァいッ!!
【サーヴァントとしての願い】
もっとデカくなる。
【マスター】
ジャック・ハンマー@グラップラー刃牙シリーズ
【能力・技能】
高い格闘能力。
我流ながらも一流の、やや偏った医学・生物学の知識。
出所不明ながらも、生活や食事に一切困らない程度の財産。
【人物背景】
世界最強の生物・範馬勇次郎の落とし子の1人にして、範馬刃牙の腹違いの兄。
強くなるためならドーピングや骨延長などの手段を厭わない。
元の身長は193cmだったが、そこから213cm、さらに243cmと身体改造を重ねて大きくなっている。
作中で負けることは多いが、まあだいたい相手が悪い。本来であれば十分にジャックも強い。
シリーズ最新作『刃牙道』にて、本部以蔵相手に不覚を取った後からの参戦。傷は癒えているものとする。
【マスターとしての願い】
もっとデカくなる。
最終更新:2016年09月06日 12:55