宮田司郎&キャスター

 雪が降っていた。冬なのだから当然だが、彼はほんの少し前まで、夏の羽生蛇村にいた。
あそこは人家よりも木や山の方が断然多いが、ここ冬木はその逆。
東京などの大都市ほどではないにせよ、村に比べればはるかに都会だ。
暗雲垂れ込める空からはしとしとと雪が降り続け、積もったそれは足元を絨毯のように覆っている。

――聖杯。

 どんな願いでも叶えるという、かの聖遺物の名を騙るアーティファクト。
それと同一とは思えないが、ある程度の力を備えているのは、自分がここにいることから見て間違いあるまい。
聖杯を掴めば、村を襲う怪異を収拾する事が出来るかもしれない。

――しかし、その為には聖杯戦争に生き残る必要がある…。

 参加者には過去の英雄や偉人が、使い魔として宛がわれるらしい。
その主たる為の令呪は既にある。
サーヴァントの姿は未だ見えないが…、ここで宮田はある事に気づく。

 幻視は使えるのか否か。村を離れた今、使用できなくなっている可能性は十分ある。
強大とは言えないが、あの力がここまで生存する助けになったのは確かだ。

「……」

 視界を覆い、意識を集中する。
一瞬、視覚ならぬ視界にノイズが走り、鮮明な景色が脳裏に広がる。
そこではコート姿の男が背を向けて立っていた――後ろだ。
視界の主は自分の真後ろに立っている。周囲の景色からそう判断するが、それは見ているだけで、特にアクションを起こさない。
幻視がこの場でも使用できることを確認した宮田は目を開き、懐のスパナに手を掛けながら、素早く身体を反転させる。

「問いましょう。貴方が私のマスターですか?」

 そこにいたのは軍服に身を包んだ、眼鏡の男だった。
身長が宮田より一回りは高い。腕を組んだ姿は全体的にパリッとしており、攻撃的な雰囲気はないが、視線に冷たいものがある。
微笑みながら自分を値踏みする男に、宮田は同業くささを感じていた。目の前の男が三騎士という推測は、一目見た時に消した。

「ええ、クラスはキャスターですか」

「ふふ、正解です。失望しないでくれると、嬉しいのですが」





 しませんよ、と宮田はおざなりに返事をする。
三騎士を招いた所で華のある戦いは出来そうもないし、引いたのが魔術や聖杯戦争への理解が早いであろうキャスターだったのは幸いと言える。
そこまで考えたところで、キャスターが組んだ腕を解き、左手を指し示す。
気持ち程度の石段が上に伸び、その先で寂れた神社が隠れるように建っていた。


 無言のまま二人はしばらく歩き、小さな拝殿に着くと、キャスターは賽銭箱前の石段に腰を下ろした。

「マスター、差支えなければ今後の方針をお聞かせください」

「…私は聖杯が欲しい。本当に願望器だというなら、叶えて欲しい願いがある」

 彼の村は今、怪異の真っ只中にある。状況は分からないが、幻視が使える事から見て、好転はしていないのだろう。
村を現世に帰還させ、集落内を徘徊する不死身の化け物達を消し去る。
一応"村の為"という名目が立つ。これまでやってきた事と何ら変わりはない。

「人死が出るとしても?」

「私だって命は惜しい」

 殺人はこれが初めてでもない。惜しい命とも思わないが、黙って殺されるほど宮田はお人好しではない。
マスターの答えを聞いたキャスターは、胸を弾ませた。


 キャスターには夢がある。
原爆投下を防ぎ、日本の犠牲を最小限度に留めるという夢が。
叶うなら帝国軍に勝利をもたらしたい。結局負けるとしても、もっと穏当な道があったはずだ。
街を二つ焼かれなくとも、戦争を止める事は出来る。

 キャスターは己の願いの正しさを確信している。
ただし、彼は平和主義者ではない。もしそうなら、数千もの中国人、ロシア人、朝鮮人、モンゴル人を資材として使い捨てたりはしない。
キャスターは祖国を救う事と同じくらい、更なる栄光の受領を望んでいる。
彼が願うのは敗戦の回避、そして不朽の名声。

 そのチャンスを掴むためには、躊躇いなく殺し合いに乗れるマスターが必要だった。
今回のマスターは中々の物だ。彼の昆虫めいた雰囲気は自身が創設した部隊「満洲第731部隊」のメンバーたちに似ている。
魔力源としては不満もあるが、上手くやっていけそうだ……勝ち残った後の事はともかく。


「結構!私にも遂げたい理想がある。ともに勝ち抜きましょう!」

「ええ、もちろん」

 死に慣れきった二人の医師は、勝利を誓う握手を交わした。




【クラス】キャスター

【真名】石井四郎

【出典】日本、主に第二次大戦

【性別】男

【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運B 宝具B++

【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
陣地作成:B
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 "工房"に匹敵する研究室の形成が可能。


道具作成:EX
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 下記宝具の作成を可能とするほか、必要な材料を用意できる。
 特に一般人を実験用の「マルタ」に作り変える事に長ける。


【保有スキル】
医学:A+
 A+ランク以下の毒物や病原体を遮断する。
 京都帝国大学医学部を首席で卒業後、細菌学、衛生学、病理学を研究。
 大戦時にはその知識を存分に振るった。


高速思考:C
 物事の筋道を順序立てて追う思考の速度。
 特に計略や研究などにおいて大きな効果を発揮する。


精神異常:B
 精神を病んでいる。
 自分の栄達と国防、研究以外に興味が薄い。
 精神的なスーパーアーマー能力。


【宝具】
『計画壱番・黒死蟲(ペストノミ)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~60 最大捕捉:1000人
 兵器化したペストに汚染されたノミを散布する。
 主に専用の容器に密閉して持ち運び、ノミに血を吸われた時点で対象はペストに感染、発症する。
 宝具化されたことで潜伏期間が短くなっており、感染2日後ほどで寒気や嘔吐、40度近い高熱が発生。
 感染3日後から、感染経路などによって様々な症状が追加。適切な治療をしなければ死に至る。

 対魔力スキルによって防御可能だが、生前に病死したサーヴァントには抵抗判定を仕掛けることが可能。
 抵抗判定に成功すれば、サーヴァント相手でも感染させる。
 ただし、半神や魔物など人外の性質を持つ者には、全く効き目が無い。


『計画弐番・黄泉液(チフス缶)』
ランク:B++ 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大捕捉:培養液1リットルにつき100人
 兵器化した腸チフス菌を散布する。
 培養液で満たされたガソリン缶に封じ込めて運び、任意の場所で解放する。
 食物や水を通して対象を汚染するため、水源や畑に放つと高い効果を期待できる。

 宝具化されたことで潜伏期間が短くなっており、感染2日後ほどで腹痛や関節痛、空咳といった症状が発生。
 感染3日後で40度前後の発熱や血便を発生させ、適切な治療をしなければ死に至る。

 対魔力スキルによって防御可能だが、生前に病死したサーヴァントには抵抗判定を仕掛けることが可能。
 抵抗判定に成功すれば、サーヴァント相手でも感染させる。
 ただし、半神や魔物など人外の性質を持つ者には、全く効き目が無い。


【weapon】
宝具に依存。


【人物背景】
帝国陸軍において、関東軍防疫給水部長、第1軍軍医部長を歴任したエリート。
ジュネーブ会議において話し合われた毒ガスに興味を示した彼は、第二次大戦後に「関東軍防疫給水部本部」を設立する。

これは防疫・給水を表向きの任務としつつ、密かに人体実験を繰り返す生物兵器の研究機関であった。
しかしその優秀な頭脳をもってしても、日本に勝利をもたらす事は出来なかった。


【聖杯にかける願い】
過去に帰還し、原爆投下を回避する。



【マスター名】宮田司郎

【出典】SIREN

【性別】男

【Weapon】
ラチェットスパナ。

【能力・技能】
「幻視」
他者の視界や聴覚を覗き見る能力。
距離が近いほど鮮明になり、遠いほどノイズが強くなる。


【人物背景】
羽生蛇村にある宮田医院の院長。
本名は吉村克昭。幼少期に異界に取り込まれるも現世に帰還、その後両親を亡くした彼は宮田医院に養子としてもらわれた。
宮田家は医者を営む傍ら、村の暗部を知った人物を始末する汚れ役を引き受けている家であり、そんな家を継がせようとする両親のもとで彼は成長していく。

一方、兄「吉村孝昭」は求導師「牧野」の跡取りとして、村の尊敬や期待を引き受けながら暮らしていた。
様々な感情を押し殺しながら、彼は宮田医院を継いだ。そして村で数十年に一度行われる秘儀の夜、再び怪異に取り込まれてしまう。

第2日/0時49分40秒~4時44分44秒の間から参戦。

【聖杯にかける願い】
村への帰還および怪異からの救済。

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最終更新:2016年09月07日 20:54