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相良宗介&アサシン

雪をはらんだ冷たい風が吹く知らない街で、毎日の様に夢を見る。

倒れ伏す自身の相棒。涙を流し連れて行かれる彼女。

俺は、無力だった。
それでも必ず助けると約束した。

だが、現実はこの異邦の空の下で燻っている。
あの時と何ら変わらない、無力な自分が、そこにいた。





金属と金属が触れ合う音が響く。
誰もいない学校の教室で少年は丹念に手の中の鉄の塊を整備していた。
パーツを細かく分解し、スプレーを吹きかけ、脇の布で拭いた後、また組み立てる。
そうして元の形になったモノ。
それは拳銃だった。
モデルガンの類には出せない、重厚な存在感を出しながらその銃口は鈍い輝きを放っている。

グロッグ19。

世界的には比較的ポピュラーな自動拳銃。
しかしここ冬木は、武器の規制が一際厳しい地方国家たる日本の一都市である。
ヤクザの事務所ならともかく、少なくともただの学生が携帯していていい代物ではない。
尤も、彼は”ただの学生”とはとても言え無いが。

「千鳥……」

頬に薄い十字傷を刻んだ少年、相良宗介は手の中の銃を見ながら、自分がゴミ係兼カサ係をやっていたクラスで、委員長だった少女の名を呼ぶ。

ここに来る数日前、アマルガムとの戦いにより『破邪の銀(ミスリル)』は壊滅した。
戦友であるAS『アル』も破壊され、千鳥を連れ去られ、彼は全てを失った。

それでも、傭兵ではなく一人の人間として、相良宗介は戦う道を選択した。
勝算の希薄な絶望的な戦いになるとわかっていても。
そして仇敵の尻尾を掴むため居心地の良かった学園に背を向け、
伝手を頼るためにナムサクへと渡った、その道中の事だった。

気が付けば自分はあてがわれたアパートの一室に日銃火器と共に倒れていたのだ。
ポケットの学生証から通っていると思われる、聞いたことのない学校をわりだし、
今に至るまで何かの強迫観念にとり憑かれた様に安穏と学生生活を送っていた。

ここが何処か、何故ここにいるか、そんなことはどうでもいい。
こんな事をしているべきではないのに。
今も彼女は待っているというのに。

だが、この街を出るという選択肢は何か強力な洗脳にかかった様に浮かんでこず、
かといってここで全てを投げ出し学生として生活するのも、彼には耐え難い。
澱の様に暗鬱な心情でただ停滞していた。


「俺は……」



向ける相手を見失った銃口は無力である。
後は停滞という淀んだ泥の底で錆びついていくだけだ。

道具をカバンの中に手早く片付け、グロッグも懐に仕舞う。
不意に、自嘲がこぼれた。
ここでこうして大っぴらに銃を出していれば彼女がまた一喝しにくるとでも自分は思ったのだろうか?
まったくもって情けない。

窓から外を見れば、分厚い鉛色の雲と、舞い落ちる白い粉雪の切れ間から陽光が覗いている。
白と緋色が混ざり合うその風景は、ある種幻想的ですらあった。
見たところで何の感慨も湧きはしなかったが。

「……帰るか」

覇気のしない瞳を眩い景色から背け、帰路につこうとしたその時だった。

<<―――下らん、牙も無くした狗だったか>>

―――!?


全身を総毛立たせ、グロッグを抜きながら振り返る。
精神状況は芳しくなかったが、体に染みついた最早習性とでもいうべき戦闘技術は、
いつもと変わらず如何なく発揮された。
確かに感じる殺気。
ようやく敵を見定めたその銃口は、三連続の砲火を以って曲者を出迎えた。
だが、殺気の主は宗介の放った牙を苦も無く嘲笑うように躱す。

「なっ…!?」

驚愕。
相対者は宗介が引き金を絞ってから行動を開始した、つまり、銃弾を目視で回避してのけたのだ。
このアンノウンは陣代高校最強の用務員に匹敵するとでも言うのか。
否定(ネガティブ)。目の前の脅威は人間ではなく――。

そのまま弾倉を空にするまで撃ち続ける。
だが、標的は正に疾風迅雷電光石火。机やロッカーの間を跳びかい、彼我の距離を詰め弾幕をすり抜ける。
やがて十秒もしないうちに弾倉の中身は空となり、カチンカチンと間抜けな音が空気を叩いた。



「クソッ―――!」

身を翻し、黒い影から逃れるために机を蹴り上げる暇も無く。
宗介は、腹部に自動車の突進でも受けたかのような強い衝撃を感じ、倒れ伏した。
そこで初めて相対者と目が合う。
相対者は燃えるような赤い目をした、人間でも乗れそうな巨躯を持つ漆黒の狼だった。


<<弱いな…弱すぎる。貴様の様な人間がなぜここに来た?>>
「…犬が口を利くとは初耳だな。ボン太君でもふもしか喋らんが」
<<言うじゃあ無いか、
戯言の礼に自分が何に巻き込まれ、なぜ死ぬのか位は教えてやろう>>

狼がその爪を振り下ろし、
その刀剣や銃の遥か前にこの世に生まれ出でた原初の武は、紙のように宗介の右手甲を裂いた。
瞬間、燃えるような痛みを代償に、数々の情報が少年に流れ込む。
聖杯戦争。
サーヴァント。
願望器。
令呪。
それらの情報をようやく咀嚼しきった頃、相良宗介は真にこの冬の名を冠する街で覚醒した。

同時に、その命運は尽きようとしていたが。

<<……眼を見ただけでわかる。お前は、才能がない。狗ですら無い、狼のフリをした羊、
死肉を貪り、生き血を啜らぬとも生きられる癖に、そうしなかった忌むべき畸形だ。
気に入らん。この地に堕ちた事を悔みながら消え失せるがいい>>

宗介の瞳を見つめながら、黒狼は牙を突き立てんと口腔を開く。

(死ぬ、のか…?俺は、ここで)

死の咢を目前にして、宗介の頭脳は一片の曇りなく澄み渡っていた。
むしろ今までが淀みすぎていたのか。
そうだ、才能がない事など分かっている。
俺はクルツの様な狙撃の腕も、マオやクルーゾーの様なASの操縦技術も、格闘技術すら少佐には劣るだろう。
精々誇れるものは、土壇場のしぶとさ位だ。
でも、それでも。

頭の中でスイッチが、入った音がした。



「そう言う訳にはいかん……!」

彼の次の行動は簡潔であった。
余りにも自然に、邪気なく手を伸ばすと、目の前の狼――アサシンの鼻っ柱を掴んだではないか。
その中途で俄かに掌が牙に触れ、鮮血を学生服に散らしたが気にしない。痛みには慣れている。

そんな彼に、アサシンの表情が俄かに驚嘆に彩られる。
抵抗そのものに、ではない。
鈍重な牛ですら死力を尽くせば狼を一蹴することが可能だ。
眼下の狼気取りだった羊の瞳が、先ほどモノとは明らかに違う。
生も死も肯定しない、ある種の超越を感じさせる色に変貌していた。


<<成程、羊は羊でも狂った羊だったか…何が貴様を変えた?>>
「大切なものを奪われた。必ず取り戻すと誓った。
今の俺はカシムでもウルズ7でもない、それでも一人の男として戦うと決めた」


気狂いの羊はアサシンの鼻頭を掴み、その体を押しのけると眼光鋭く立ち上がる。
アサシンは宗介の手を振り払うと、何ともよくできた喜劇に眉根を寄せた。

<<そういう事か、聖杯め>>

自分を呼ぶような者の大切な物など一つしかないではないか。
成程、自分が何故この男に召喚されたか、今理解した。

<<つがい、か>>
「否定(ネガティブ)であり、肯定(アフマーティブ)だ
俺に協力しろ、アサシン」
<<………>>

―――狼は人間を嘲けり、憎んでいた。
本当彼一頭だけならば、人間など何人銃で武装して来ようが、敵ではなかった。
だが、それはあくまで彼だけだった。群れの仲間は銃で撃たれれば死んでしまう。
彼は王だった。だから群れを、妻を守るために見下していた人間に幾度となく背を向けなければならなかった。
彼が生涯敵として定めた人間はたった一人。
狼王としての彼は、その人間の謀略すらも最後まで回避し続けたが、妻はそうでなかった。
彼女でさえいなければ。
群れの部下であり盟友たちは口々に自分を止めた。

妻は諦めろ。我らは狼王の臣下だ。行けばお前はもう狼王ではない。狼王がいなくれなれば我らもこの世から消え失せる。
頼む行くな!!

朋友達は皆懇願するように止めた。王は普段この草原こそ我らの城と言って憚らぬ彼らがこんなに必死に祈ると姿を見たことがなかった。
暗に語っていた、行けばお前は死ぬ。我らはお前に死んでほしくないと。
それでも、彼はその進言を振り切った。番を救うために。

結果は臣下たちが進言した通り、
群れを棄てた王は最早王ではなかった。


ただの、ようやく半人前の一匹の獣でしかなかった。
そして、ただの獣が人間に勝てる道理はない。


しかし、それでも彼は、救いたかったのだ。


<<―――いいだろう小僧。興が乗った
しばしの間、付き合ってやる>>


アサシンの鼻面に刻まれた横一文字の傷がギラリと獰猛に光る。
目の前のマスターは一歩も引くことなく、自分の前に立っていた。
その手に宿った令呪は、狼の爪痕の様な、三本のラインであった。


「……どういう心変わりか知らないが、契約成立、ということでいいんだな?」
<<然り、貴様が全てに牙を突き立てるというのなら、やって見せるがいい。
だがもし契約に背く事があれば、我が牙と爪は貴様に向くと知れ>>
「了解だ」


もし、この歪な羊が、あの時無残に失敗した自分とは違う未来を見せてくれるのなら。

従ってみるのも、悪くは無い。



【クラス】
アサシン
【真名】
ロボ
【出典】
史実及び、シートン動物記
【性別】

【属性】
中立・中庸
【ステータス】
筋力:B 耐久:D+敏捷:A 魔力:C 幸運:D 宝具:D

【クラススキル】
気配遮断:A
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しい。

【保有スキル】
魔獣:C
どんなハンターや罠も彼自身には勝てず、現地民に悪魔より知性を賜った魔物として畏れられたアサシンの逸話の具現。
その卓越した知性により人間との意思疎通が可能になり、相手サーヴァントが人間の場合、各種行動の達成率の上昇判定が生じる。
また自分にファンブルを引き起こす罠や毒物をキャンセルすることができる。

怪力:B
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
アサシンは自身よりも何倍も大きな牛を紙細工の様に引きずり倒したという。
使用することで筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

単独行動:B +
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

魔獣の咆哮:A
アサシンが上げる咆哮。
発動した場合気配遮断の効果が一切なくなる代わりに精神干渉に耐性のないサーヴァントが相手の場合高確率で威圧させ、先手を取れる判定が上昇する。
また、逆に短い時間であるが自軍に勇猛のスキルと同じ効果が表れる。

仕切り直し:C
戦闘から離脱する能力。
危機的な状況から素早く脱出できる。

【宝具】
『狼王(オールド・ロボ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アサシンを含めて六体の群れを召喚する宝具。全ステータスはアサシン本体のパラメーターよりワンランク下。
この宝具が発動した瞬間、アサシンは群体型のサーヴァントと化すため、六体でサーヴァント一体分の魔力消費で済む。
そしてこの宝具が発動している時はアサシン本体のみ、耐久に補正がかかる。
弱点は彼の群れの中の一頭、アサシンの妻である白い狼『ブランカ』を倒すこと。
『ブランカ』が斃された瞬間、ロボは生前と同じく不敗の伝説は終わり、現界を保てず消滅する。

【Weapon】
『爪、牙』

【解説】
アーネスト・T・シートン動物記に登場する19世紀アメリカに実在した狼王。
ロボは狼とはおおよそ思えぬ巨躯と悪魔が与えたと言われる卓越した頭脳を持った狼達のリーダーで、現地民から「魔物」と畏れられた
数えきれないほどのハンターの罠や毒を持ったエサもやすやすと見抜き、仲間を見事に統率して人間に挑み続ける。
彼はブランカというつがいを助けるために人間に捕まるが、
それでも人間に屈服することなく餓死を選んだ。

【特徴】
人間も乗れそうなサイズの赤眼の黒狼。
顔にシートンが仕掛けたわなから抜けようとしたときにできた横一文字の傷がある。
剥製として残っているロボの毛皮は、彼の生きざまに感銘を受けたシートンが用意した贋作。

【聖杯にかける願い】
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【マスター】
相良宗介@フルメタル・パニック!

【能力・技能】
高度に訓練された軍人。格闘、狙撃、爆破、AS操縦と、あらゆる破壊工作に通じる。

【weapon】
銃器。どの程度保有しているかは不明だが、
携行火器を中心に複数保持していると思われる。

【人物背景】
都立陣代大高校2年4組に在籍する高校生兼、対テロ極秘傭兵組織「ミスリル」作戦部西太平洋戦隊に所属する傭兵。
全世界から優れた人材を登用するミスリルの中でも最精鋭とされる特別対応班(SRT)の一員。コールサインはウルズ7。
人型兵器アーム・スレイブの操縦にかけては世界屈指の実力を誇り、生身での戦闘力も高い。
原作長編8巻「燃えるワン・マン・フォース」プロローグ辺りからの参戦。

【聖杯にかける願い】
アマルガムの壊滅及び千鳥かなめの奪還。

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最終更新:2016年09月07日 21:16