たぶん本当の未来なんて
カラッポの世界
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「未来が見えるって言うのなら、俺の未来何て言わなくて良い」
ある時その男は、彼女に対してそう言い放った。
酷く草臥れている顔の男だった。薄汚れた上着とズボンは土と汗で汚れ、何日も風呂に入れていないのだろう。身体からは嫌な臭いがした。
生きる為の労働と歩んで来た碌でもない人生の疲労から来る垢が、体中にこびり付いたような男である。
見た目は二十代後半の働き盛りであると言うのに、感じられる雰囲気には溌剌としたものを全く感じさせない。
人から裏切られ、叩きのめされ、蹴落とされ。単刀直入に言って、男から感じられる空気は、負け犬のそれだった。そう、彼女と同じ気配を、男は発していた。
「どうして、ですか?」
「言われなくても解るからだ。俺の未来に救いがないって事ぐらいはな」
酷い卑下の言葉だ。誰が耳にしても、卑屈以外の言葉は浮かびようがない。
しかしそんな言葉を口にしているのに、男の瞳には強い意思が輝いていた。そんな言葉を口にしているのに、男の目線は、常に前に向かって放たれていた。
自分と言う人間と、歩んで来た過去。それら全てを合算して、それでもなお、男は自分の人生には救いが最早ないと言っているらしかった。
「……如何して、救いがないと仰れるのですか? 救いが、まだあるかも知れないと言うのに」
「アンタは、未来は解っても『過去の事は解らない』らしいな。なら、俺の未来に救いがあるって言うのは、気休めの嘘だと解る。俺の過去は、俺にしか解らないからな」
男は淡々と言葉を紡ぎ、それを受けて、彼の引き当てたアーチャーであるところの彼女は、黙りこくった。
男の言っている事は正しかった。アーチャーは、未来を予知・予言出来る力を持ったサーヴァントである。しかし、彼女には、現在より過去を遡って視る力はない。
だから、男の過去に何があって、そしてそれがどのようにして彼の未来に立ち塞がっているのか、彼女には知る由もない。
そして、男の未来に救いがない、と言うのもまた事実だった。
アーチャーは未来の事が読めると言っても、聖杯戦争の制約か、はたまた、自身の神秘としての格が他より劣るのか。
この冬木で起る未来については、精々が二時間程度先ぐらいしか先読み出来ない。冬木については、二時間先の未来しか見えない。
しかし、『目の前の男が元の世界に戻った場合に辿る事になる未来』については、彼女は問題なく予知出来る。
つまり、元々生きていた世界で、当該人物がどう言う生き方をする事になるのかについては、完全に彼女は知る事が可能なのだ。
酷い、の一言に尽きる。どんな未来を歩んでも、どんな選択を選び取ろうとも、男が救われる選択は何一つとしてない。
疲労と年波と不摂生に心と身体の蝕まれる、最低水準の生活、そしてその最低水準以下の生活を送る為に、日々働き続ける。
働かないと、その最低水準以下の『生活』すら送れないからだ。男にとって働けなくなる、働かないと言う事は、冗談抜きで死に至る事柄だった。
男は出口のない負の螺旋に囚われていた。彼は蜘蛛の巣に囚われた蝶と同じで、後は生きる為の養分を吸われて、死を待つだけの存在。
男は、人の形をした搾取される為だけに動き続ける羽虫と、何の違いもありはしなかった。
だが、酷いと言うのは、そんな生活がずっと続くからではない。
人の人生と言うのは何が起こるか解らない。それまで社会の頂点に立ち、力の限りを尽くしていた権力者が、何かを契機に地の底にまで転落する事もあれば、
その逆、虐げられる側にいた者が転がり込んで来た幸運や機会を活かし、一気にのし上がると言う事は、何時の時代にだって有り得る事なのだ。
目の前の男は違う。今アーチャーが見ている姿と、何ら変わらない年齢の内に、この男は死ぬ。間違いなく、今から数年、或いは数ヶ月の内に死んでしまうのだ。
人生に逆転の機会が訪れぬまま、若い内に死ぬ。だからこそ、目の前の男は悲惨なのだった。男は薄々、己のそんな境遇を理解しているらしかった。
「……解りません」
アーチャーのサーヴァントが呟いた。
「何がだ」
「貴方の未来は、不幸な事故で死んだりだとか、誰かに殺されたりだとか、ではありません。貴方はその未来で尽く、自分から死を選び、自らその命を……」
一瞬驚いた様な表情を男は見せ、その後、変な苦笑いを浮かべて、口にした。
「正直、疑ってた。未来が読める何て、ありえないと。だが、本当に未来が読めるらしいんだな」
「その言い方ですと……」
目の前の男は……アーチャーのサーヴァントである彼女のマスターたる彼は、己の結末も、予想の範疇であったらしい。
つまりこの男は、自らの手で命を断つ、それが、己の人生の終着点であるとしっかりと認識し、かつ、その為に生きていると言っているようなものだった。
「誰に感謝されるでもない、まともな人間扱いもされない。心も身体もボロボロになるまで働かされる……そんな俺でも、出来る事がある」
「それで死ぬのは、間違ってます……!!」
「俺が死ぬのが解ってるなら、俺がどう言う人間かも解っている筈だ。碌な人間じゃないぞ、お前のマスターは」
それも、解っていた。解っていて、知らないフリをしていた。
男は単刀直入に言って、サーヴァントであるアーチャーの目から見ても、倫理観の無い人物だ。
己の目的の為に人に暴行し、仲間にも制裁と言う名目でキツく当たる未来も確認出来た。見た目からは想像も出来ないが、手前勝手な人物であるらしい。
「俺が社会のゴミだから、自殺する訳じゃない。お前に言われるでもなく、俺がそう言う人物だと言う事は、良く解ってる」
「そんな、事は……」
「過去の解らないお前の為に教えてやる、俺は人を殺してる」
今度はアーチャーの方が目を見開かせた。嘘、と小さく口にする。
自分のマスターが……、と思ったが、言われてから改めてその姿を確認すると、成程、そんな気配は確かにする。
草臥れた気風を発する、冴えない身体。しかし、瞳に確かな意思の強さが宿っているのは、其処に起因するのだろう。
「恐らくだが、例え死を選ばなくても、どの道俺に待ち受けていた境遇は、悲惨なものだっただろう。俺が裁かれるべき存在なのは、よく解ってるよ」
「そう言う存在だから、自分で死を選ぶ、と……?」
「違う」
そう答えた男の――『奥田宏明』の顔は、鉄のように険しい表情になっていた。
サーヴァントになっても、本質的には生前通りのか弱い乙女に過ぎないアーチャーは、その表情に怯えてしまう。
「……いや、変な顔をして悪いな。俺が死を選ぶのは、そう言う理由もあるんだろう。だが、それは絶対に本質じゃない。俺の死は、計画の一つに過ぎないんだ」
「それでは、貴方は何の為に自分で死ぬのですか……?」
「それが、俺以外の人間の為になるんだと、信じてるからだ」
そう答えた奥田の顔は、労働を終えて疲れ切った表情とは全く趣を異にする、真面目なそれであった。
「……アーチャー。未来を予知出来るって言うのなら、アンタに聞きたい。……骨は、届いたのか?」
「骨、ですか……?」
「あぁ、悪い。質問を変えよう。アーチャーは俺以外の人間の未来は視れるのか?」
「……申し訳ございません。あくまでも、目の前にいる方の未来しか視えないのです……」
「そうか……解った。なら、俺も覚悟を決めたよ。俺は尚の事、聖杯を手に入れなきゃならないらしいな」
深呼吸を一度だけ行ってから、奥田は口を開いた。
「その骨って言うのはな、此処にやって来る前に、とある所で出来た俺の友人の物なんだ」
「遺骨」
「そうだ。俺はな、そいつの家族の所に遺骨を届けてやる為に、色々頑張ってる。その為に、アンタが見たような、色々な悪事にも手を染めてる訳だ」
奥田が顔をアーチャーの方に向けて来た。やはり、真率そうな表情だ。
「其処までするのか? って顔だな」
「……」
「解ってるよ、自分でも意味のない事だって位は。恐らくそいつと一緒だった時間は、一ヶ月かそこらだ。親友って言う程の絆を築けた訳でもなければ、そいつに恩がある訳でもないし、そいつが取り立てて凄い奴だった事もない。明るさだけが取り柄の、何処にでもいる普通の奴。そいつが、俺が遺骨を届けてやりたいって言う奴だよ」
次の言葉を模索しているのだろう。奥田は、黙りこくった。
「……悔しかったんだと思う」
「何が……でしょう」
「そいつが死んだ事もそうだが、俺の無力さに、だ」
言葉を、奥田は続ける。
「明るさと優しさが取り柄なだけじゃ、何処の世界でだって生きてけない。そいつはお人好しな上に、底抜けの馬鹿でな。昔自分を捨てた父親に会う為に、内臓を売ってまでこの国の地を踏んだらしい。結局、それが元で死んだよ。金もないしツテもない俺達は、そいつが死ぬ事を防げなかったし、延命だって出来なかった」
奥田の言葉を黙って聞くアーチャー。
「それが無性に許せなくてな。馬鹿で、明るくて、優しくて。報われても良い筈なのに、結局神も悪魔もそいつに報いてやらなかった。だったら、アイツの事を昔知ってた人間が、せめて何かをしてやらないとな、って思ったんだ」
「……」
「お前の視た俺の未来は、志半ばで死んだ友人の遺骨を届ける為の一環だと思って良い。多くの人物に迷惑が掛かる事は俺だって知ってる。こうするしか方法がなかったからだ。つまるところ俺は、自尊心を弱者から奪い続ける強者に虐げられる人物に過ぎない俺には、これしかやり方が解らなかった」
「だけどな」
「その身勝手で、一人の人間の意思が成就するんだ。そいつはもうこの世にいないし、俺達にこうして欲しいと遺言を残した訳でもない。たが俺は、『間違いなく俺のやってる事が死んだ友人のタメになる』って言う確信がある。だから俺は、罪を冒してでもそんな事をやるんだ。俺はもう、元の世界に戻ったとて刑務所にぶち込まれるだけの男だが、そんな男でもせめて、死んだ友人の為に……明るさと優しさだけが取り柄だったアイツの為に、何かしてやりたい。それだけだよ。アーチャー」
奥田の話を聞いて、何故、自分が彼に呼び出されたのか、このアーチャーは理解した。
ああ、彼は自分と同じだったのだ、と。男は過去に失った大切なものの為に、全ての未来を擲ったのだ。
過去に出来た大切な仲間の意思を果たさせる為に、彼は、己の命をも捨てるつもりだった。今となってはその友人が、奥田の成す行動に何を思うのか、それは解らない。
解らないが、それがきっと彼の為になるのだと言う万斛の自信を持っているからこそ、奥田はこうして、聖杯戦争についても意欲的なのだ。
奥田宏明は、未来ではなく、過去の友人を守る為に、利得を捨てた行動に出、これから彼を待ち受けていたかも知れない全ての幸福を投げ捨てたのだ。
その生き方は、正に今の自分だった。
アーチャーは生前のたった一度の迂闊な行いで、自分だけではなく、己の何代にも渡る先祖と、自分達の仲間に、消える事のない汚名を被せてしまった。
曰く、不意に人の前に現れては、不吉な予言を残して去って行き、その予言を受けた人物に必ず不幸を舞いこませる、と言う不穏な瑞獣。
それが、彼女らに対して被せられた拭える事のない汚名。本当は、違う。未来を予知出来る異能を、人の為に使っていた、その異能以外はただの人間。
たったそれだけなのに、アーチャーが行った行為で、それら善意が全て覆された。アーチャーは、己のせいで一族が無辜の怪物になった事を、心の底から悔いていた。
だから、聖杯に彼女は願うのだ。自分の事などどうでも良い、己以外の一族が、幸せになれば良い。――『件』は、私だけで良いのだ、と。
白い小袖と白い袴を身に着けた、髪を涼しげに短く切った、見目麗しい女性だった。
纏う雰囲気は酷く儚げで、少し小突いただけで簡単に骨が折れてしまうのではないかと言う程、目に見えて華奢だと言う事が解る。
その装いは、名のある大神社に仕える巫女然としているが、性根の邪な者は、百二十cm程もあるその胸部に目が行く事だろう。
ゆったりとした巫女服であるが、胸の部分だけが大きく膨らんでいるのがどんなに目が悪い者でも一目で解る程だった。
女性としての魅力を詰め込み、しかし、一週間の後に枯れる事を宿命づけられた彼岸花にも似た儚さと、
頼る者縋る物を全て失ってしまったような悲観的な空気を漂わせるこの女性を――人は、『件(くだん)』と言った。
「マスター。私は……もう解っているとは思いますが……弱いです。とても、とても」
「……だろうな」
「そして私は、口にした凶事が絶対に実現してしまうのに、その反対……人にとって嬉しい事は、口にしても絶対に実現いたしません」
「そうか……」
「ですが――」
其処で奥田の手を握り、件が口にする。
「そんな私ですが、言わせて下さい」
「何を、だ?」
「……如何か、貴方にも……幸せが、訪れますように、と」
木枯しが一陣、吹き荒んだ。
金がない為冬着を買えず、季節的には春物の服しか持っていない奥田には酷く堪える風だったが、件の握ってくれている手だけが、確かに暖かかった。
聖杯戦争が始まる前の、冬木大橋付近の誰もいない公園での一幕とは、誰も知らない。
【元ネタ】日本伝承、都市伝説
【CLASS】アーチャー
【真名】件
【性別】女性
【属性】中立・中庸
【身長・体重】159cm、51kg
【ステータス】筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:A+ 幸運:E- 宝具:EX
【クラス別スキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。ランクCならば、マスターを失ってから一日間現界可能。
【固有スキル】
予知:A+
完全なる予知能力。生前有していた異能と、伝承により広まった件と言う妖怪の有する能力が混ざり合った結果、極め高いランクを保持するに至った。
このランクになると、人が死ぬまでの未来を完璧に予知出来るレベルであるのだが、聖杯戦争においては、当該人物から二時間程度先の未来しか予知出来ない。
但し、その人物が『本来いた世界で辿る事になっていたであろう未来』については別枠で予知出来、その場合は完璧にどうなるかを知る事が出来る。
無辜の怪物:B
人の不幸を予言する妖怪・件。生前の行いから生まれたイメージによって、過去や在り方をねじ曲げられた女性の姿。
能力・姿が変貌してしまう。この装備スキルは外せない。このスキルにより、アーチャーの口にした凶事は、必ず実現する事になる。喜ばしい事は絶対に成就しない。
【宝具】
『人生、是件の夢の如し』
ランク:EX 種別:対運命宝具 レンジ:1~∞ 最大補足:1
アーチャーの持つ件と呼ばれる妖怪の持つ性質及び能力が宝具となったもの。
伝承に曰く、アーチャーは当該人物の凶事や不幸を予言し、アーチャーの予言した事は必ず実現する事になると言う。
この宝具の本質は『言霊』と呼ばれる、言葉が有する神秘であり、その中でもこの宝具は言霊が有する神秘の最高位に相当する。
つまりアーチャーは、言霊を言い『放つ』からアーチャークラスなのである。この宝具を発動させた状態で、アーチャーが口にした凶事は、必ず現実のものとなる。
正確には、予言した人物が辿る運命に、アーチャーが口にした事で生み出された運命を差し込み、割り込ませる事で、それを強制的に実現させる、と言うのがこの宝具。
当該人物が転ぶと言えばその人物は転び、骨が折れると言えば骨が折れ、命がなくなると言えば文字通りになる。
強力な反面制約も多く、言い放った凶事は、『何時何処で成就するかを指定できない』。次に、アーチャーが消滅すれば、
『消滅以前にそれまで口にしていた凶事は全て白紙に戻り、なかった事になる事』。但し、既に成就してしまった凶事は白紙にならずにそのままである。
またアーチャーは無辜の怪物スキルにより、凶事しか招かせる事は出来ず、吉事やめでたい事は絶対に手繰り寄せられず、予言する内容も『人の運命』のみに留まり、突然大地震が起こったり火山が噴火したり、等と言う地球に対する運命改竄は不可能である。
【Weapon】
【解説】
件(くだん)とは日本に伝わっている妖怪の一種で、江戸時代前半から昭和前半まで、日本全国の様々な場所で目撃情報が確認されていた。
それは、牛の身体に人の頭、或いは人の身体に牛の頭を持っていると言う妖怪で、これ自体は問題ではなく、最大の特徴は優れた予言の能力である。
彼らはその出現時に大抵の場合は不吉な予言を残して去って行くとされ、そしてその予言は必ず的中すると言う。言ってしまえば、ある種の瑞獣である。
一説によれば彼らは太平洋戦争における日本の敗北や、もっと遡って関東大震災や宝永大噴火、明暦の大火すら予言していたと言う。
因みに『件』と言う字は『人』と『牛』に分解が可能な為、件の如しの『件』の意味が解らない者が憶測で「くだんと言う生き物がいる」と誤解し、
これがもとで誕生した、都市伝説に近い妖怪なのではないかと言う説がある。また或いは、牛の身体を持つと言う特徴から、そう言った皮膚病の持ち主がモデルであった、と言う説もある。
その正体は妖怪でも何でもなく、歴史の怒涛の波によって完全に姿を消し、存在したと言う痕跡すら最早存在していない、日本古来から伝わる巫女の一族。
つまり彼女達は、嘗て日本に存在していたとされる、特定の神社に属さずに、旅をしながら祈祷・託宣・勧進で生計を立てていた、歩き巫女であった。
彼女達は魔術こそ扱えないが、遺伝性の極めて強い、未来を予知してしまう異能を有していたとされ、この力を以て悩める者達を救っていた。
そんな状態が続いていたが、歩き巫女と言う、当時の時点ですら安定性も何もない者達であった為、時代が下るにつれて彼女達はその数を減らして行く。
最終的には昭和前半になる頃には、残ったのは一人だけ、しかも歴代の一族の中でも特に予言の力が強い十代後半の少女だけだった。
このまま俗世界で生活しようかと彼女は考えたが、ある時に、日本が悲惨な未来を辿り、その中で多くの国民が死ぬと言う未来を見てしまう。
この事を人々に知らせようと動き始め、その事を国民に教えるも、当然そんな事は誰も信じないし誰にも嘲笑される。
それでもそんな事を続けていた為に、最終的には特高(特別高等警察)に連行され、拷問の末に死に至る。享年17歳。余りにも若い死である。
彼女の見た未来とは、太平洋戦争の敗北と、米軍の沖縄上陸による人の悲惨な死、そして長崎と広島に投下された原子爆弾の未来だった。
その予知した未来が嘘であったか否かは、最早語るまでもない。これが、今日まで伝わっている件と言う都市伝説の、全貌であった。
サーヴァントとして召喚されたのは一族の最後、即ち太平洋戦争の敗北を言い当てた結果特殊警察の拷問で殺されたとされる人物。
聖杯戦争に召喚された件は、無辜の怪物スキルの保有者でありながら、かなり人間に近い姿をしている。
実は、件と言う妖怪の特徴である牛の身体や頭と言うのは歴史が下り、情報が伝言ゲームされて行くにつれてあやふやになった結果デタラメになってしまったもので、
真実は『牛のように大きい胸を持った女性』と言うルーツが、人と人とに伝わって行く間にこんな事になったのだと言う。
なお胸の大きいのも遺伝らしく、一族皆そうだったらしい。見ての通り、外から見れば何処にでもいる普通の人間である。
しかし妖怪特有の魔性の属性はしっかりと受け継いでいる為、ただでさえ打たれ弱いのに魔性特攻の攻撃を喰らった即死する。
生前の事もあってかなり悲観的な性格をしているが、自分の力を上手く使えば太平洋戦争の結末は防げたかもしれないと常々思っている。
要するに、かなり抱え込みやすい責任感の強い人物。しかし、未来が読めると言う一族の出である彼女は、既に起った過去は何があっても変えられない、
と言う当たり前の事を強く実感している人物であり、聖杯にかける願いも、太平洋戦争を回避するでは予測出来ないアクシデントが勃発するのではと考えている。
その為、聖杯に掛ける願いは、『自分の一族は件と言う妖怪ではなく、人の為に自分の力を使っていた人間だった』と皆に認知して貰いたいと言う物。
自身の風評被害の象徴でもある己の宝具を奮う事は酷く嫌っているが、それでも先祖の為に件は力を発揮する。
【特徴】
所謂巫女服。小袖は白だが、袴は赤色ではなく白身。髪を涼しげに短く切った、見目麗しい、いわば可愛らしい顔つき。
目に見えて華奢だと解る程弱弱しい身体つきで、見る物に与える印象は儚げで、触れれば崩れてしまいそうなか弱い花。
但し、件伝承の元になってしまった程の胸の大きさは凄まじく、百二十cm程もあるバストは恐ろしく目立ち、服の上からでもその大きさがハッキリわかんだねのレベル。
生前は如何とも思わなかったらしいが、件伝承の原因ともなり、かつ男が自分の胸を見てどう思うかも知ってしまった為、酷くそれがコンプレックスになっている。
【聖杯にかける願い】
自分の一族におっ被せられた、件伝承と言う風評被害を撤回させる。件と言う妖怪として生きるのは、自分だけで良い。
【マスター】
奥田宏明@予告犯
【マスターとしての願い】
嘗て自分と働いていたフィリピン人労働者である、ヒョロの遺骨を彼の父親の下に届ける。
【weapon】
OTPトークン:
ヒョロが働いていたネットカフェの店長が、夜逃げの際に店に残して行ったもの。ワンタイムパスワードの設定の為に必要。武器ではない。
本来いた世界で辿る事になる未来では、この道具を用いて奥田はその計画を成功させるのであるが、今回の聖杯戦争では全く役に立たない代物になるだろう。
しかしそれでも、奥田にとっては大事な、思い出の品。
【能力・技能】
IT知識:
元々奥田はそう言った会社に派遣社員として勤めていた為、この手の知識には非常に明るい。金を取れるレベルのプログラムの構築だってお手の物。
その手腕は非常に優秀であり、正当な歴史においては、警察のサイバー犯罪課のベテラン刑事をして、悔しい位頭の良い人物と言う評価を下さざるを得なかった程。
この知識に付随して、数学的な知識にも長けている。また、警察がどのようにして犯人を追跡、逮捕するか、と言う方法を知っており、警察面の知識にも長けている。
【人物背景】
元々はIT会社の派遣社員であった青年。不当解雇に遭い、日雇いの肉体労働を始めるようになるが、その時にヒョロと呼ばれるフィリピン人労働者と知り合う。
が、日本に来るために腎臓を売ったヒョロは、山間開発のバイトと思しきタコ部屋で腎不全に陥り、死亡。
その事を監督に知らせ、やって来た監督の『腐るから埋めろ』と言う発言に逆上した、同僚の寺原に手を貸す形で、監督を殺害。
以降は、ヒョロの骨を彼の父親の下へと届ける為に、策を練る事になる。本文中では記載していなかったが、彼のあだ名は『ゲイツ』である。
犯罪予告をネット配信する犯罪グループ、『シンブンシ』として活動する前の時間軸から参戦。
最終更新:2016年09月11日 14:41