戦極凌馬&ライダー

ある島国に、一人の天才科学者である男がいました。
其の世界には滅びの危機が迫っており、男はそれに対処できる道具を発明しました。
しかし男を理解してくれる者はいませんでした、最初の実験が失敗した時に返ってきたのは軽蔑が込められた陰口ばかり。
そんな彼の発明を理解してくれた友人がいました、独善的な男は彼こそが王に相応しいと考えていましたが、友はそれを望みはしませんでした。

男はそんな友を見限り、「人を切り捨てる道」を進みながら己の研究のためだけに行動していきました。
友も、組織も、故郷である街さえも見捨てた男は、遂に求めていた「神の力」に遭遇しました。
しかし立ちはだかったのは男の事を軽蔑していた一人の槍騎士でした。
男からすれば彼など赤子を捩じ伏せるよりも楽に潰せるような存在でした、そう思っていました。
しかし騎士はその強靭な意志のみを武器に、男の発明を超越しました。

所詮、男の考えていたことなど机上の理論。
誇りを捩じ伏せられ激昂した男は、超越した槍騎士の手で赤子の如く捩じ伏せられました。

一枚の紙に書かれた式だけを信じ続けた探求者という名の狂人。
男は、名を「戦極凌馬」と言った。



◆  ◆  ◆


巨大企業「ユグドラシル・コーポレーション」。
幾つもの国に支部を置き、東洋のちっぽけな地方都市にすら巨大な塔を建てられる世界有数のバイオテクノロジー企業。
その日本支部において新製品の開発を進めていた、一人の男がいた。

名は戦極凌馬と言い、日本支部を率いる呉島天樹の勧めで特殊入社した技術者である。
その技術力は非凡なるもので、彼のおかげで日本支部の利益はかなり上がった。
しかし戦極凌馬という男は極めて謎が多く、またそのエキセントリックな態度故に軽蔑する者も多かったとか。
そしてその戦極凌馬は、今専用の研究室にて、大量の工具が山のように積もったデスクで1つの朱いジューサーの様なアイテムを手に取り眺めていた。

「2日かけてやっと完成……か、しかし随分と苦労したものだよ。」

凌馬はジューサーを眺めながらボソリと呟いた。
このジューサーの名は「ゲネシスドライバー」。
嘗て凌馬が異界の植物「ヘルヘイム」の問題を解決するために作り上げ、彼自身もまた愛用していた装備である。
そしてこの装備の最大の特徴とは、装着者を「アーマードライダー」と呼ばれる鎧戦士に変身させることである。
しかし何故凌馬が態々こんな物を作り上げたかといえば、それは凌馬を取り囲むこの状況にあった。

彼が巻き込まれた出来事というのは「聖杯戦争」。
キリストの話やアーサー王伝説等の書物において其の名を馳せた「聖杯」と呼ばれる願望機をかけて殺し合うゲームである。
この聖杯戦争には、「サーヴァント」と呼ばれる英雄を「マスター」が従えて戦うという変わった特徴があった。
凌馬のサーヴァントも決して弱くはない、寧ろサーヴァントの強さに起因する知名度に関してはピカイチな英雄だ。
だがサーヴァントが幾ら強かろうとも、マスターが弱ければ直ぐに倒れてしまう。
持ち駒がどんなに強力であろうと王が仕留められればそれでチェックメイトだ。
だからこそ、凌馬自身にもまた強い武器が必要とされる事となったのだ。

しかし、凌馬専用のゲネシスドライバーは駆紋戒斗との戦いにおいてロックシードごと紛失してしまった。
幸い予備のレモンエナジーロックシードはまだ残っていたが、しかしゲネシスドライバーが無ければ元も子もない。
だからこそ一から作る必要があった。
設計図自体はバックアップ用の記録媒体を隠し持っていた事で何とかなったが、問題は材料だ。
ゲネシスドライバーの製造には多種多様なレアメタルを必要とする。
山のように資金を持っていたユグドラシルの支援があって何とか量産は出来たが、レアメタルを独自で輸入するのも中々に苦労した。
おかげで財布の中身は3割程減ったが、しかし辛うじて完成させることは出来た。

ドライバーの出来に満足し「うん」と頷いた凌馬は、回転椅子を180度回転させて立ち上がると、背中を向け床に跪き何かしらの書物を読んでいる男に近づく。
男は眼鏡を掛けており、金髪のロングヘアーという髪型の持ち主であった。
そして読んでいる書物には数式とそれに関する解説が乗っていた。
それらは凌馬が大学時代に使用していた物だったのだが、この男はその本を勝手に持ち出し読み始めたのだった。
忍び足でその男に近づいた凌馬は、男の背中に軽くヒザ蹴りをかましてやる。

「うっ!何をする貴様ァ!」

男は蹴られた瞬間に後ろにいる凌馬目掛けて横に拳を振り上げる。
しかし凌馬は横に45度傾くことでそれを避けた後、「ハハッ」と笑いながら手を叩く。
そして今目の前で顔を真赤にして憤怒の形相を露わにしている男に声をかける。

「ハッハッハッハッ、済まなかったね、ライダー。」
「……また君かいマスター……もういい加減そのおふざけは辞めて下さい!」

凌馬が「ライダー」と呼んだ男はそう言葉を吐き出すと、ゼェゼェと息を付きながら怒りを和らげる。
それを見た凌馬は「参りました」と言わんばかりに両手を上げた後、机に置かれていたゲネシスドライバーを取り上げる。


◆  ◆  ◆


研究室で数学書を読み漁っていたこの男こそが、戦極凌馬が喚び出したサーヴァントであった。
しかし彼は王族でも騎士でも無く、見るからに只の学者らしき風貌の持ち主であった。
クラスはライダーではあるが、馬を駆ったり船を操ったりした逸話は持ち合わせていない。

「それで、その装置が、マスターの発明品なのですか!?」

先程の怒りは何処へ吹っ飛んでいったのやら、ライダーは子供のように興味津々な表情で、マスターが手に取っているドライバーを眼鏡越しに見つめる。
その表情にクスッと笑った凌馬は、得意気にこの装置について語る。

「その通り、これこそがゲネシスドライバー、私が神の力へと至るために作り上げた装置さ。」
「神の力……確か、貴方が私に話した……」

凌馬の話によれば、この「ゲネシスドライバー」という物は神話の起因となる「ある力」を制御する為に作り上げた装置だそうだ。
ギリシャ神話の黄金のリンゴ、旧約聖書の知恵の実、それらが本当に存在すると仮定したこの戦極凌馬が開発した、「神の力を人の物にする装置」。
どんな素人でも吐けるであろう大言壮語にすら聞こえる馬鹿げた言葉だが、しかし彼の眼はこの装置が神に近づいていると言う事を肯定せざるを得なかった。
コストをケチった冠を見破ったライダーの眼は、その仕組みを見通していたが、しかしどれもこれもライダーが生きていた時代には存在しない仕組みばかりであった。
何かしらのエネルギーを吸収、格納し、制御する装置であることは取り敢えず分かったが、その構造は古代ギリシャのどの装置よりも複雑な物だった。
悔しながらも、時代というものを感じさせる。



「それで、その装置は如何にして運用するのでしょうか!?」
「ハッハッハッハッ、それなら聞くよりも見る方が早いさ。」

そう言った凌馬はドライバーを腰に当てる。
すると腰から銀色のベルトが出現し、あっという間に彼の腰に固定された。
それを確認した凌馬はポケットからレモンを象った南京錠……レモンエナジーロックシードを取り出す。

「変身」
『レモンエナジー!』

アンロックリリーサーを押し、錠前が開かれた瞬間、光と音声が南京錠から発せられ、研究室の天井に丸いジッパーが出現した。
そして其処から出てきたのは、巨大なレモン。

凌馬はロックシードをドライバーのゲネシスコアに装填し、錠前を固定させる。

『ロック・オン!』

ドライバーから音声が鳴り響いたことを確認した凌馬は、シーボルコンプレッサーを引き絞る。

『ソーダ!』

コネクタの下に置かれていた小型エネルギータンクに何かしらの流体エネルギーが流れ込んだと同時に、頭上のレモンが形を変える。
形を変えたレモンは凌馬の頭上に覆い被さり、首から下は蒼色の鎧へと変わっていく。

『レモンエナジーアームズ!ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイ!』

派手な名乗り音が鳴り響くと同時にレモンが変形、綺羅びやかな鎧へと形を変える。
露わになった頭部には、既に西洋風の兜に包まれていた。
これこそ「アーマードライダー・デューク」。
設計者自らが特別に強化した、最強クラスのアーマードライダーである。
一瞬で鎧を纏った凌馬の姿を、ライダーは目をキラキラ光らせながら見ていた。

「おぉ……素晴らしい……。」
「ハッハッハッハッ……まぁこれでもまだ試作段階だ、未だ神の道には至っていない。」

凌馬は仮面越しに軽く笑いながら、ドライバーにロックされているエナジーロックシードを人差し指でトントンと叩く。

「このエナジーロックシードは、神話に伝わる知恵の実に限りなく近い能力を持っている。
だがそれは人の身には余りある物だからね、これくらいに出力を抑えて初めて人の物となる。」
「ふぅむ……しかし知恵の実に近い力が本当にあったとは……。」

ほぉっとした態度でライダーは驚きを見せていた。
知恵の実は、既にアダムとイブに食され、もう二度と存在しなくなった……ライダーはそう思っていた。
英霊の座からの知識でそれが嘗て現実の存在であったことは知らされているが、しかしいざそれを目にするとなればそれはそれは驚きを隠せない。
そしてその言葉に、凌馬が付け足す。

「『今私達が乗っている』のも同じ様な物じゃないか。」


戦極凌馬、そしてライダーが語り合う研究室を乗せた船は、今上空を飛んでいる。
それはそれは巨大なスケールの船で、内部には様々な設備が搭載されていた。
この研究室は、先程ライダーがユグドラシルの研究室を再現した物である。

その他原初オリンピックのスポーツに適した運動場、草や木が敷き詰められた庭園、そしてギリシャの神々を祀る神殿が建てられていた。
まるで船に1つの自然公園が乗っているようであった。
この船を動かすのは、自動的にグルグルと回り続ける螺旋水車であった。
そしてこれは、かのネブカドネツァル王が創り上げたバビロンの空中庭園を浮かばせていた物と全く同一の作りなのである。




◆  ◆  ◆



数学という学問には、未だ未開拓の余地が沢山ある。
例えば平地よりも穴の方がずっと多いと言うほどに、数学という学問には未知の難問が多く存在していた。
3.14....から続いていく円周率の様に、小数点以下の数字が限りなく存在する「無理数」の行先。
割り切ることの出来ない「素数」共通の性質、そして最大の素数。
この他にも、数字という存在に対する疑問点は、数え切れない程存在しているのだ。
ライダーという男は、数学とは神のパズルに近い存在で、もし疑問という名の穴を全て埋め尽くした暁には、「根源」に近い何かに至れるのでは、と考えていた。
砂場の砂の数など、計算式1つで表現できると。
キリの良い大きさの比を保ちながら、球をすっぽりと缶に入れられると。
数学の可能性は無限大だと言う思想を、男は持ち続けていた。
己を喚んだマスター同様、机上の理論だけで神に至ろうとした男。
冠が純金製で無いことを暴き、螺旋水車に自動投石器を生み出し、更には太陽光線の逸話をも残した数学者。
男は名を、「アルキメデス」と呼んだ。


◆  ◆  ◆


神の遺した禁断の果実を、人の物に作り変えようとした男。
数字の可能性を、限りなく証明しようとした男。


彼等の探求は終わらない。
そして彼等の願いは、やがて万能の願望機の仕組みをもさらけ出すこととなるであろう。




















【元ネタ】史実
【クラス名】ライダー
【性別】男
【真名】アルキメデス
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具A



【クラス別スキル】


騎乗:D
乗り物を乗りこなす才能。
大抵の乗り物は人並みに乗りこなせるが、彼は騎乗に関する逸話を持ち合わせていない。


対魔力:E
魔力に対する耐性。
クラス補正で無理矢理付けられたスキル。
単なるお守り程度の効果しかない。



【固有スキル】


道具作成:B
道具を作り出すスキル。
魔力を帯びた道具を作成出来る他、自身の宝具の改造も可能。


天賦の叡智:A
偉大なる智力。
あらゆる力を知り、己の物とする。


暴かれた偽冠:A
最も有名な「金の冠」の逸話から来たもので、生前は持ち合わせていない。
物質の内部構造を一目で解析する。
ただし、神造兵装等は解析は出来ても再現は決して出来ない。


【宝具】

「螺旋の水上庭園(シュラコシア)」

ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:100人

アルキメデスが発明した「アルキメディアン・スクリュー」が使用されたとされる巨大な船。
観光、運輸、海戦に使われる船で、船内には綺羅びやかな庭園や神殿、更には運動場が存在する。
生前の逸話により、魔力でアルキメディアン・スクリューを回転させることにより上空に浮上させることが出来る他、更には内部にある幾つもの小さな穴から矢を放つことが出来る。
そしてこの宝具には、後述の宝具を全て乗せることが可能とされている。



「太陽の憤怒(ソーラ・レイ)」

ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:30 最大捕捉:1〜50

鏡面から対象を燃やす特殊な光線を放つ、空中を移動する十枚以上の鏡。
アルキメデスが生前発明したとされる、「アルキメデスの熱光線」が宝具として昇華された武器。
複数の鏡から同時に光線を放つオールレンジ攻撃(ガンダムのファンネルのようなイメージ)、
鏡に光線を当てて敵に正確に攻撃を与えたりする(「宇宙戦艦ヤマト」の反射衛星砲みたいなイメージ)ことなどが可能である。



「放たれた自律する鉄槌腕(トレピュシェット)」

ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:40 最大捕捉:10〜100

アルキメデスが発明したとされる、蒸気機関で動く投石機。
地面から出現し、岩のごとき魔弾を高速で発射する。
投石機は最大で10台まで出現できる他、車輪による自動走行が可能で、位置座標を自由に変更できる。



「箱を転覆させる鉤爪(シップ・シェイカー)」

ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:30 最大捕捉:1

アルキメデスが発明したとされる鉤爪。
毒蛇の様に伸びて敵を掴みとる。


【人物背景】

言わずと知れた、様々な理論を生み出し、また冠の金の含有量を測った逸話で有名なギリシャ数学史最大の数学者。
数々の兵器を発明し、数々の数式を提唱した天才の最期は、未完成の図面を汚された挙句に斬り落とされる、と言った儚き物であった。


「数」がこの世全てを定義しているとでも言いたげな人物で、数学で根源に至らんとするその思想は、奇しくも魔術師のそれに似ている。
探究心を体現した好奇心旺盛な性格だが、頑固で一度計算にのめり込むと周りが見えなくなる。
裸で風呂場を走ったり兵士に脅されてキレたりしたこともこの性格から。
数字に対する可能性を信じこんでおり、その為計算1つでこの様な事が解けると言ったような数式や論文を書いたのもこの思想から。


【外見】

眼鏡を掛けた銀髪のロングヘアーの青年。


【聖杯にかける願い】


あの計算の続きを書く。







【マスター名】戦極凌馬
【出典】仮面ライダー鎧武
【性別】男


【Weapon】

「ゲネシスドライバー」
異界の植物「ヘルヘイム」の力を制御するためのジューサー型デバイス。
腰に当てることでベルトを出現、腰に固定させる。
更にエナジーロックシードを装填することで「アーマードライダー・デューク」に変身することが出来る。
本来凌馬はドライバーを落としたはずだが、護身用としてこの場で作成した。



「レモンエナジーロックシード」
ヘルヘイムの森の実をドライバーを巻いた状態で変化させた南京錠型デバイス。
異界の扉を開き「アームズ」と呼ばれる装甲を召喚することが出来る。
これもドライバー同様落としているが、予備を持っていたおかげでなんとかなった。


「記録媒体」
戦極ドライバー及びロックシードに関するデータが詰まったUSBメモリ。
無論誰かに見られないよう極めて厳重なプロテクトが掛けられており、並大抵のハッカーでも突破することは困難を極める。



【能力・技能】

天才科学者としての卓越した技能を持ち、その他駆け引きやトラップ作成にも長けている。
だが所詮は研究者、思考こそ速けれど決して万能ではなく、実際オーバーロードを生け捕りにしようとする作戦で沢芽市を廃墟にする結果を招き、己の発明すらある野蛮な男に超えられてしまった。


【人物背景】

ユグドラシルコーポレーションに特別な形で入社した科学者。
ヘルヘイムの研究において「戦極ドライバー」を提唱、プロジェクトアークへの手段を作り上げた。
それからも研究主任の呉島貴虎と協力して、最初はリスクが高すぎる性能であったドライバーを人の物へと変えていった。
だがプロジェクトアークへの興味が失せ、ドライバー量産のコスト削減を「10億台が限度」として打ち切ってしまう。
やがて彼もまたユグドラシルを裏切り、結果として沢芽市を廃墟に変えてしまう。
だが彼はそんなことも気にせず只管ヘルヘイムの研究のためだけに行動していく。
最終的にそのツケが回り、ドライバー無しでヘルヘイムの力を物にしたある男によって倒される。
今回はその直後からの参戦。

飄々としているが根は冷酷な研究者。
「研究に犠牲は付き物」という考えはユグドラシルに入った時点であった模様。


【聖杯にかける願い】

聖杯の全てを研究する。

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最終更新:2016年09月27日 06:08