HEPとは
Head-End Powerの略で、客車のサービス電源のことである。イギリスでは
ETHとも呼ばれる。
導入の歴史
SL時代および初期
ディーゼル機関車では蒸気を用いたスチームヒーターと、車輪の回転により発電されるアクスルジェネレーターによって客室内の電灯等に使用する電源を確保していた。
通勤鉄道などでの停車時間が長く駅間が短い列車ではアクスルジェネレーターだけでは蓄電池の電源を確保できないため、発電用のエンジンを搭載することによってこの問題を解決した。これがHEPの始まりである。
アムトラックでは、1970年代に導入されたP30CHおよびE60CH
電気機関車にHEP用発電機を搭載、また同時にアムフリートI客車を完全HEP対応車両として登場させた。
その後、すでに所属しているヘリテージフリートへもHEP対応改造を実施。また既存のEユニットへも発電機を搭載してHEPに対応させた。GG1などHEPを搭載できる余地のない機関車用にバゲッジカーもしくは客車に発電用ディーゼルエンジンと発電機を搭載した改造車両も存在した。
のちに登場するスーパーライナーなどの客車およびF40PHなどのアムトラック用機関車はすべてHEPを搭載している。またそれ以外の通勤鉄道用車両にも当然のことながらHEPを搭載している。
システム
赤色がHEP用ジャンパ栓
アムトラックおよびその他の通勤鉄道事業者は米国標準のHEPとして480V 60Hzの三相交流を使用している。このHEP電力は前記の通り、暖房、空調、照明、まだ食堂車の厨房などすべての電気負荷に対して供給される。各車両には、400アンペアで1,200kWの電力を流すことができるケーブル、およびジャンパー栓(両端に計4つ)が装備されており、車両が編成のどの位置どの向きにあっても関係なく供給されるようになっている。
アムトラックに所属する車両がこれらに対応しているのは当然のことだが、プライベートカーやそのほか他の貨物鉄道、または団体が所有する車両をアムトラックの編成に連結して運行する場合、車両の両側にHEP用の互換性のある電気プラグとソケットが装備されていなければならない。これは前記の通り電力を引き通さなければならないためで、展望車の展望側にも必要である。
連結される車両は一台あたり85kWまでと制限されているが、列車全体で1200kWと定められているためにアムトラックで運行される列車は最大電圧を考慮して15両までとしている。
機関車から電力を供給される仕組みのため、機関車を付け替えるときは電力が遮断され停電状態となる。そのため、ターミナル駅では地上側にHEP用の電源供給用ケーブルが準備されており、これを接続することで機関車が連結されてない状態でも駅で停車中であればこのケーブルを接続することにより地上電源によって客車の電気機器が使用できる。
ちなみにカナダでは、北米と電圧が異なる(575V 300アンペア)。
模型において
完璧に旅客列車を再現するのであれば、HEPの対応の有無は非常に重要である。現行のアムトラック列車であればP42DCもしくはスーパーライナー等はすべてHEPに対応しているが、初期のアムトラックの時代であれば意識しなければならないだろう。たとえばGG1やSDP40FはHEPを搭載しておらずスチームジェネレーターのみであったために、アムフリートIとの組み合わせであれば電源車のバゲッジカーを編成に組み込む、もしくはSDP40Fの場合はF40PHとの重連としてHEPに対応させる等の一工夫が必要。なおE8やヘリテージフリートに関してはHEP化改造された車両が多数存在したためこれらに関してはあまり意識する必要はない。
関連項目
ETH
イギリスにおけるサービス電源の呼称。ほぼシステムは同じ。
最終更新:2017年02月06日 12:18