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コラム > scrap8

溜まりに溜まった妄想と想像としょうもなさでお送りするスクラップノートも8ページ目まで続いてしまった。鶏肋くらいには書き捨てるには惜しいコラムをご覧あれ。



本当であって欲しいと本当の間には無限の開きがある、の巻

本題に入る前に以下をちょっと見て欲しい。これは中国に関するいくつかの統計である(ソースは末尾に)
  • 成人の59%が3ヶ月分の生活費をまかなうだけの貯蓄がない
  • 貧富の格差が進み、国の総資産の3分の2を上位10%の金持ちが所有し、下位50%の国民を合計しても総資産の2.5%にしかならない
  • 各自治体レベルでは別として、国レベルでは2009年7月以来最低賃金が固定されたままでまったく上がっていない
  • 12歳以上の人の51.2%が少なくとも一度は違法薬物を使用したことがあり、1999年以来少なくとも115万人が薬物の過剰摂取で死亡している
  • 7050万人が過去1年以内に違法薬物を使用したり、処方薬を乱用したりしたことがある
  • 不十分な健康保険と福祉制度のため、毎年推定53万人が医療費を支払えずに破産を申請している。人口の約8%が無保険状態にある
  • 過去10年以上にわたり、毎年1000人以上が警察の(法律上正当/不当を問わない)暴力行為によって殺害されている
  • なんなら「知能指数が高すぎるという理由で警察官への採用を拒否するのは合法」という判決を最高裁が出したことがある
  • うわべでは表現の自由を謳っているが検閲がまかり通っており、2024年~2025年の約1年で6870タイトルもの本が学校図書館から消された
  • ここまでひどい国なのに、国民の20%が自国は世界で最も優れた国であると考え、52%が最も優れた国のひとつであると考えている

君はどう思うかね? まあ想像通りのひどい状況だ。まっとう国とは言いがたい。

ところでこのリストには一つ嘘がある。これは中国についての話ではなく、すべてアメリカの統計である。

改めてもう一度聞きたい。君はどう思うかね?

「中国経済崩壊するする本」はどのくらいあるのかを書いているときに強く感じた、いや確信めいたもの
を抱いたのだが、平均的日本人――誤解がないよう詳細に説明すると、ここでいう日本人とは特定個人の
田中さん佐藤さん山本さんを差すのではない。この社会に暮らす人々を性別、年齢、居住地、資産等を抽
象化してごちゃ混ぜにしたとき、統計的総体として浮かび上がってくる「おおむねこういう傾向を持つ集
団」のことである。そこでは誰もがのっぺらぼうにされており特に個性を必要とされない。要するにヤフ
コメの書き込みとTwitterの書き込み、新聞の投書欄とテレビの街の声を合わせて割った時に見えてくる、
社会を構成する人間の平均値である。そこをクローズアップすれば「男性の平均的意見」「小学生の平
均的意見」「自営業者の平均的意見」など様々な個別の実態が見えてくるだろう。ここでの「日本人」と
はその逆、個別なものをどんどん無くしていったとき最終的に浮かび上がってくる、多数の共通項を持つ
個人像のことである。――はニュースの主語に「中国」「韓国」と付くとたちどころに批判的思考力を失
ってしまうように見える。

日本人の中では一体何回中国経済と韓国経済は崩壊と破綻を繰り返しているのだろうか? 「中国ならや
りうる」「韓国ならあり得そう」との思考停止で、どこの馬の骨とも知れぬ連中が垂れ流すカスみたいな
情報を鵜呑みにしては居ないか? そのくせ、自分にとって都合の悪い話は見て見ぬふりしていないか?
これはおれが日頃から心に留めていることなのだが、「飛びつきたくなる情報」「読んでいて気持ちよく
なる話」こそ最も厳しい目で疑う必要がある。人に説教できるほど自分の頭が良いとは思わないが、先入
観や思い込みにはよくよく気をつけたいと改めて表明したい次第である。

+ 各項目の出典。上から順にリストに対応している
わざわざ出典を確認する生真面目な人には釈迦に説法だろうが、ここで挙げたデータは「ひどい統計」
ばかり好んで選んだのであり、選択次第では全く違った印象を見る人に与えられるはずだ。
何が言いたいのかというと、おれは別段「アメリカはお先真っ暗な国だ!」と考えてるわけじゃないよ、ということです。
https://www.peoplespolicyproject.org/2025/03/19/how-many-people-live-paycheck-to-paycheck/
https://www.statista.com/statistics/203961/wealth-distribution-for-the-us
https://www.npr.org/2024/07/24/nx-s1-5050573/federal-minimum-wage-increase-15-year-anniversary
https://drugabusestatistics.org/
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6366487/
https://www.statista.com/statistics/1362796/number-people-killed-police-us/
https://abcnews.go.com/US/court-oks-barring-high-iqs-cops/story?id=95836
https://www.npr.org/2025/10/01/nx-s1-5559158/book-bans-challenges-pen-america
https://www.pewresearch.org/short-reads/2023/08/29/majority-of-americans-say-us-is-one-of-the-greatest-countries-in-the-world/



アットウィキ運営からお手紙が来たぞ!の巻

もしかしたら同じことで困っている人もいるかも知れないので備忘録としてメモする。

さる2025年11月11日、アットウィキの運営からおれ宛にメールが送られてきた。内容はこのサイトで書い
た文章について、権利が侵害されたと主張する人物(以下Aさんとする)から弁護士経由で送信防止措置
を講じるよう通知があったとのこと。添付されていた「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置に関する照会
書」を見て確認するとおおむね以下の通りであった。
  • このサイト上で公開されているコラム(ある刑事事件の裁判について新聞記事を引用しておれ自身の考
    えを書いたもの)に被告であるAさんの実名が書かれていた
  • 裁判の判決が確定してから数年が経過しているし、実名を書き付けておくだけの特筆性のある事件でも
    ない。Aさんの生活の妨げになるから削除せよ
渾身のコラムではあったが、他人を傷つけるのはおれの望むところではない。そこでそのコラムを即日削
除し、照会書の返事と合わせてアットウィキ運営に連絡した。連絡して数時間後には「法務の者に転送す
る」との返事が来てページが凍結状態になったのだが、困ったことにそのページは10個の小コラムをまと
めて1つにしたページであった。そのため「問題ない9個のコラム」まで閲覧不可能になってしまったので
ある。恐ろしいことに凍結状態であることを示すページには「原則凍結解除の依頼は受けられない」と書
いてあった。数日経ってもアットウィキ運営からの続報はなかった。今思い返してみて、一番気分が沈ん
だのはこのときである。

送信防止措置請求のガイドラインを確認したところ「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン(第7版
)」に「侵害情報送信防止措置等を講じるときは、違法情報の送信を遮断するために必要最小限度の措置
を講ずるものであることが要件となっている」とあった。同じURLのページにあったという理由だけで9個
の無害なコラムを凍結し続けるのはやり過ぎだろうと思う一方で、アットウィキ運営が「弁護士にいちい
ち確認入れるのも面倒くさいし、永久凍結でいいだろ」とか「万が一他のページに残りのコラムをコピペ
したらサイトごと凍結してやるからな」とか考えているのではないかなどと勝手にあれこれ悩んでしまっ
た。創作活動(というほど偉くもないが)をしている人なら誰でも分かると思うが、自分が作り上げたも
のを発表する場が永遠に消えて無くなるのではないかとの恐怖は非常に焦燥感を煽るものなのだ。

数日経ってもアットウィキ運営からの連絡がないので意を決して確認したところ「送信防止措置請求に対
する確認を行っているのでしばらく待って欲しい」との返事が来た。つまり「きちんと削除したんでこれ
で良いでしょ?」とAさん(正確にはAさんから依頼を受けた弁護士)に確認を行っているわけだ。「侵害
情報の通知書 兼 送信防止措置に関する照会書」は紙に印刷されたものをデータ化したものだったので、
アットウィキ運営は弁護士から郵送で送信防止措置の依頼を受けたと思われる。ということは当然弁護士
への返事も紙の書類になるわけで、そこから弁護士の確認→Aさんの確認→弁護士のOKサイン→アットウ
ィキの凍結解除までの段階はすべて書面でやりとりされているのだろう。相当時間がかかりそうなことが
伺えた。さらにアットウィキ運営からのメールの末尾には「運用再開はもう少し時間がかかる」とあった。

これはつまり、アットウィキ側はおれの妄想とは真逆で、凍結解除に向けて真摯に動いてくれていること
が読み取れた。短いメールではあったがおれにとっては非常に救いとなる内容であった。指摘されたコラ
ムが消えていることは誰の目にも明らかなのだから、これなら気長に待っていればいいやと思えたのであ
る。3週間経っても連絡が無いので改めて確認のメールを送ったところ、翌日には「法務確認後の再会手
続きに不備があった」とのメールが来て凍結が解除された。時に2025年12月5日。3週間とちょっとの間の
出来事であった。

もしあなたがアットウィキの編集者・管理者で送信防止措置云々の連絡が来たら…
  • どのページのどの部分が指摘されたかをよく確認すること
  • 送信防止措置とはなんなのかをググっておくこと
  • ページの凍結に備えバックアップを取っておくこと
  • アットウィキ運営へのメールは内容も文体も丁寧に書くこと
  • 命を取られるわけじゃないから落ち着くこと
をオススメする。アットウィキではないが、↓のサイトも参考になった。
https://kaz-journal.com/archives/138
https://wptheme-navi.jp/xserver_infringement-information_notice/

また、照会書への回答次第では大人しく削除することを選ばずに、特筆性はあるとか表現の自由があると
かの理由でもって記載を続けて裁判でも何でもやる選択肢もあるが、そこまで考えている人は自身も弁護
士を雇った方がよいだろう。


異世界チート野郎と先進国様はエートスを書き換えられるか、の巻

※あんまり実証性のある話ではないのでネタとして読んでね

なろう系小説からアフガニスタンまで、実権握っちゃった人間がドハマりする勘違いがあるのではないか?
既存の体勢を粉みじんにして権力の更地を作り出してしまえば、そこで自分の思うがままの統治が行える
はず、という思い違いだ。十分な権力を握っていれば法律やら条例やらは簡単に作れる。しかしそれらは
しょせん紙の上の文字であって、現実に生きる人々の心を変えることは難しい。文化や風習、過去の慣習
に裏打ちされた価値観、道徳意識をいきなり曲げてやろうとしてもうまくはいかないのである。今日から
民主主義です、女性は自由です、差別されていた○○人や××教徒も政府に入れます、企業は好きに金を
稼げますと制度だけ変わっても人は付いてこない。そこには先進国人の「世界の人々は自分たちのライフ
スタイルや思想に憧れているはず」との度し難い思い込みと優越感がある。「チート主人公が(あるいは
優れた金持ちであらせられる先進国様が)民主主義やら多民族共生やら男女平等やらの素晴らしい価値観
を教えてやれば喜んで受け入れるに違いない」という無自覚な思い込みがある。実際、それらの価値観に
は確かに尊ぶべき点があることがなお話をややこしくする!

もしかしたら話はもっとひどいのかも知れない。独裁的であれ、民主的であれ、腐敗していようがそうで
なかろうが一国をつつがなく運営するためには無数の官僚が必要だ。試験に受かって国の中枢で働く官僚
は「この機に乗じて祖国を大胆に構造改革するんだ!」などと野心を燃やしたりしない。新しい権力者と、
そのお友達しか甘い汁を吸えないことくらいは十分見抜けるのである。彼らには明日も明後日も書類仕事
は待っている。シニカルに「どうせサル山のボスが変わるだけ」くらいに思っているかもしれない。明治
維新の後も、太平洋戦争の後も、政治家の首が飛ぶことはあっても官僚たちが無理くり総入れ替えされる
ようなことはなかった。むしろ逆で、実務の隅々まで把握している彼らには「こっちの言い分を聞くのな
ら黙って仕事を続けてやる」という「敗者の脅迫」さえ可能なのだ――それがナーロッパの国であったと
しても!

石橋湛山が言うには「おそらく何人といえども、自己意識のある限り、他人の保護管理の下に生活するの
では、その他の一切の要求が遺憾なく満たし得られても、決して満足はせぬ」。マッカーサーに無数のラ
ブレターを送りつけた日本人が例外なのであって、世界の人々の過半数はかように考えているだろう。も
ちろん既存の権力が嫌いで仕方なかった人たちもいる。占領軍を手を振って歓迎している人もいるはずだ。
しかしイラクやアフガニスタンを見れば分かるとおり、歓迎ムードはいつまでも続かない。彼らは自国の
クソ指導者は死ぬほど嫌いだが、よその国の権力者に統治されることはもっと嫌いなのである。

一方に他人を自分の思い通りに改造できるとナイーブに信じる大国の傀儡政権やラノベ主人公があれば、
もう一方には今まで通りの明日を迎えたい名も無き人たちと、今のシステムがずっと続いて欲しい既得権
益者たちがいる。人々を数字でも統計でもグラフでもスプレッドシート上の一行でもなく、血の流れた生
きた人間として見て扱うこと。実権握ったみなさまにはまずそこから始めて欲しい。


イケてる意識の高い非人道的行為、の巻

ナチスドイツの政策は機械工学や電気工学を連想させる用語が意図的に選択されていたとされる。例えば
オーストリア併合を意味する「アンシュルス:Anschluss」は「接続」を意味する工業っぽい用語であり、
強制的同一化を意味する「グライヒシャルトゥング:Gleichschaltung」はgleich(同じ)とSchaltung(回路
)をくっつけた、「全てのスイッチが同じ回路に接続され、マスタースイッチで全てをオンオフできるこ
と」を意味する電気用語である。おなじく「アウシャルトゥン:Ausschaltung」の原義は「スイッチを切
ること」だが、国家からの特定の集団・組織を「排除する」ことを意味して使われた。

なぜわざわざそんなことをしたのか? ふたつほど想像できる。一つには無味乾燥な、中立的な言葉を使
うことで人々を弾圧したり殺害していることを覆い隠すため。もう一つには、当時の最先端の機械工学・
電気工学っぽい単語を使うことで自分たちを知的に見せ、その行為が合理的で科学的であるよう演出する
意味合いである。「最先端のイケてる分野」から借用した単語を使う人は現代にも居る。いわゆる意識が
高い(系)の人たちだ。例えば社会規範を「社会のOS」、社会問題を「社会のバグ」などと呼んだり価値
観を変えることを「意識をアップデートする」などと大げさに表現するといった具合に、IT・コンピュー
ター用語を好んで用いている。

この二者には、意図せぬところで意外な共通点があるのではないだろうかとおれは思うのだ。何かと言え
ば、非人間化に片脚を突っ込んだ効率性と合理性への崇拝である。我々の社会は感情的な対立、文化同士
の衝突、地域によるしがらみ、世代間のすれ違いなど無数の不合理で非効率的なものを抱えている。交渉
したり妥協したり取引したりといったやっかいな利害の調整が「スイッチを切る」とか「バグを修正する
」といった言葉の下では単なる修正作業として扱われる。対立する相手は接触不良やバグとして非人間化
され効率よく排除されていく。

ナチ時代の電気工学も現在のITも「最先端のイケてる分野」である。そこから単語を借用することで自分
が時代の先駆者であるように見せられるだけではない。「最先端のイケてる分野」の単語とは進歩の象徴
でもある。「アップデート」「実装」と言えばそれが逆らうべきでない、避けられない進化に見える。ア
ップデートされないままほったらかしのアプリやソフトウェアは危険で動作もトロい。だからこの際一か
ら新しいヤツに入れ替えよう。パソコンの話なら合理的に見えるこの文章が、人間社会に当てはめたら危
険極まりない意味を内包することは理解してもらえると思う。社会と、それを構成する人間を非人間化し
部品扱いしなければスイッチを切るだのOSを書き換えるだのといった言葉は出てこない。何もケダモノ呼
ばわりして動物扱いするだけが非人間化ではない。先ほど挙げたような、不合理な感情や気分やらで動く
こと度々の泥臭い人間たち。それらを「パッチを当て」て処理したり、「リブート」してやり直したり、
「デバッグ」する必要があるなどと言って管理したり調整したりできる、さながら機械的なものとして扱
うこと。これもまた非人間化である。

人間誰しもが持つ(それ故に時として問題の根深い原因となる)情緒や感情といった側面を「レガシー」
「脆弱性」としていとも簡単に切り捨てられる言い回し。その裏面としての、自分はシステムの構造を把
握し制御し「ハック」できるのだという全能感。ここには危険な落とし穴が口を開けている。人間を「シ
ステム」に組み込まれた、いつでも切り取ったり削除したり移動させたり出来る「データ」として見てし
まう時、そこでは人権蹂躙などという言葉では表現できない苦しみが生まれる。しかも、そうしている側
は「効率的なシステム運用のためにアーキテクチャを一新しているだけ」くらいは平然と言ってのけるだ
ろう。人間としての尊厳を断固維持するために、おれは「脳がバグる」とか「心のキャッシュをクリアす
る」などとは言わないようにしている。おれはコンピューターを使うのは好きだが、コンピューターに使
われるのは嫌だし、コンピューター扱いされるのは全くもってごめんだ。

なお、ここでつらつら書いていることが結局何を言いたいのかと言えば、両者に共通するレトリックへの
忌避感であり、意識高い系の人たちは現代のファシストであるとかエリート意識がダダ漏れのテクノクラ
ートワナビーだとか、IT用語を使う奴は人を人とも思っていないんだなどと言っているわけではない。同
じレトリックを使うと同じ思考をしてしまい同じ失敗をする危険があるかもね、と申している。ここまで
読み通せるだけの忍耐力と読解力があればそう派手な誤読はしないと思うけど、念のため。


欺瞞とポルノの壁をぶち破れ、の巻

2024年6月、ニューヨーク・タイムズ紙は南米のマルボ族が初めてインターネットに触れたことに関する
記事を出した。その中に部族の協会リーダーのコメントがあった。若い衆が露骨な描写のあるポルノを共
有していることを憂うコメントだったのだが、ネットではそのコメントが曲解された上で拡散、いつの間
にか「部族がまるごとポルノ中毒に」という話になってしまった。NYTは9日後にデマを指摘する記事を追
加したが、ご存じの通りデマの方が拡散の速度は速いと相場は決まっている。あれよあれよという間に「
規律も自制心もないポルノ漬けな秘境の野蛮人」という扱いになったマルボ族の人々は当然激怒、NYTや
デマを流したニュースサイトを相手に2025年5月に訴訟を起こしたが、棄却されている

それから半年、似たような話が世界にまき散らされた。すなわち、ロシア-ウクライナ戦争に派遣された
北朝鮮の兵士が生まれて初めて規制されていないインターネットに触れ、ポルノ中毒になったという話で
ある。その出典はフィナンシャルタイムズのコラムニストがTwitter上に投稿したものであるが、肝心の
ソースは「一般的に信頼できる情報筋」とぼかされておりありまったく根拠は示されていない。そしても
ちろん、このニュースも面白おかしく拡散され(1,2)北朝鮮の兵士1万人はポルノ漬けということになっ
てしまった。そのうさんくささを指摘したのは驚くことにロシアでは無くウクライナ側のメディアで、
Ukrainian National Newsは「アメリカ国防総省の報道官が『そのような事実は確認していない』と述べ
た」と伝えている。(ただ、このUkrainian National Newsがどれだけ信用できるニュースサイトかは確
認していないので要注意)

場所も対象も違うこの二つの話だが、共通しているものがありやしないか。すなわち未開の蛮族や閉鎖社
会のもの知らずたちは、我々優れた先進国の人間と異なり、自己の振る舞いをコントロールする力も秩序
正しさも持ち合わせていない性的に奔放な連中だ、という偏見や優越感だ。今に始まった話でもない。
「先住民は酒に弱くてすぐアル中になる」「どの人種でもプールを使えるようになったら白人の生娘が黒
人の男に襲われる」などと延々と続いてきた実績がある。成熟した我々は自制心を持つが、貧乏で世間の
荒波を知らぬあいつらは真似できない、というわけだ。そのようにしてマルボ族や朝鮮人民軍の兵士を嘲
笑している先進国の皆々様は、一方で未成年のSNS禁止が法律化され、Pornhub見たさにVPNの契約者が
激増するくらいどっぷりネット/ポルノ中毒であらせられる。これがダブスタでなきゃなんなのか。

彼らはまた人種平等・反差別を掲げている。もちろん人種平等・反差別が悪いわけではない。それらの高
い理想を掲げつつ、一皮めくればむき出しになるエスノセントリズムが顔を出す姿に用心深くあるべきだ、
とおれは言っている。先進国特有のダブスタに気をつけようというのは当然我々日本人も同じ。とはいえ、
かような欧米先進国が道徳やら規則やら倫理のあり方を決める専売特許は我にありと振る舞う現実は率直
に申し上げて虫酸が走る。ひょっとすると、この手の文化論に関しては中国や韓国といった非西欧の国々
の方がよほど信用できるのでは無いか。少なくとも中国や韓国のソシャゲ、例えばアズールレーンやラス
トオリジンを見る限り、彼らは自分たちが性的に自由奔放でないふりさえしていない。(今回このオチが
言いたかっただけ。ただし、オチはギャグだが趣旨は真剣である


令和最新版の水ガソリン詐欺事件が起こらなきゃいいけど、の巻

日本の資源開発にはパターンがありやしないか。戦前の人造石油から松根油、戦後の海水中のウラン回収、
藻類バイオ燃料、木質バイオマス、高速増殖炉、メタンハイドレート、そして近頃話題の海底由来のレア
アースまで、「○○で日本も資源国に!」と一時騒がれ、そして事業がコケるとすっかり忘れる。どのく
らい忘れているかと言えば、2012年に佐渡沖で「中東の中規模油田並み」の油田があるかもしれないと大
騒ぎし、およそ100億円の国費を投じて穴を掘ったがまともなものは何一つ出てこなかったニュースを誰
も覚えていないほど忘れている。そして忘れたことさえ忘れて「人造石油でアメリカに吠え面かかせる」
がそっくりそのまま「海底のレアアースで中国に吠え面かかせる」へとコピペされる。

語り口はいつも決まって同じである。日本は資源に乏しい。しかしこの○○が実用化の暁には他国から輸
入せずに済む。他国への依存度を下げ、その気になれば高コストでも自給できることは外交カードになる
のだ……。持たざる国が持つ国になり、他国にデカい面させないようになるという話、日本の優れた技術
で課題を克服する話はいかにもナショナリズムをくすぐる。だが現実はいつだって薄情だ。資源開発に必
要なのは安くて大量に取れて品質が良いこと、それに加えて環境に悪影響を与えないことだ。日本の資源
開発のパターンは少なからずが量や質を技術で補おうとする。だがどれだけ素晴らしい技術であっても採
算が合わないのでは意味が無い。これが工業製品なら高くても顧客はいるだろう。業界の寡占を嘆きなが
ら高い金を出しnvidiaのグラボやadobeのソフトを買うようなものだ。だが資源は世界に遍在する。唯一
無二で替えが効かないわけでもない。どうしても欲しければ悪者扱いされているところからでも買ってこ
れる。まさしく日本自身がイランやロシアからエネルギーを買い付けていたように(軽視されがちだが、
そのような契約をもぎ取ったことは油田発見に等しい成功のはずだ)。「日本の優れた技術」とやらは往
々にして単なる市場原理に敗れ去った。

現在日本には有事に備え稼働を待つ巨大な人造石油工場も、資源の輸入停止に備え密かに牙を研ぐ洋上メ
タンハイドレート採掘プラントもない。「その気になれば高コストでも自給できる」体制を万一に備え構
築しておくことさえ出来ないほど採算が取れないことの証左である。日本の資源開発には得てして一方に
過剰な期待があり、もう一方に無責任な忘却があった。まずはその過去を受け入れねばならない。おれは
資源開発などするなと言いたいわけではない。国家の舵取りをする人々には失敗を忘れず、同じ轍は踏ま
ないで欲しいと願い、市井の人には虫の良いニュースを鵜呑みにせず、かつ記憶力を十全に保つよう願う
ものである。


強い!アメリカ軍は強いぞ!!の巻

ミッドウェー海戦の前に行われた図上演習で沈没判定となった赤城・加賀が審判の「インチキ」で復活し
たことはつとに有名だが、全くおなじことが2002年に行われたアメリカでの演習でもあったとは。

https://en.wikipedia.org/wiki/Millennium_Challenge_2002
上記Wikipediaの記事を大雑把に省略しながら説明すると……。

ミレニアムチャレンジ2002と名付けられたこの演習は、2007年を舞台とし、青軍(アメリカ)と赤軍(架
空のペルシャ湾沿岸の国。ただしイラクやイランであることは言うまでもない)との間で行われる軍事作
戦をシミュレートしたものだ。実地演習とコンピューター上での演習両方が含まれ、費用は当時の金額で
2億5千万ドルとなりアメリカ史上最も高額な軍事演習となった。赤軍を担当することになったのが退役し
た元海兵隊中将ポール・K・ヴァン・ライパー。彼はバイクで伝令させる・無線を使わずに航空機を離陸
させるため第二次大戦じみた信号灯を使う・漁船に対艦ミサイルを乗せるなどあらゆる非対称戦術を使い
(これをシミュレートできるシステムもスゲえ)、開戦2日目に青軍艦隊の位置を特定。大量のミサイル
による先制攻撃に成功する。その結果青軍は空母1隻、巡洋艦10隻、揚陸艦全6隻のうち5隻の合計16隻が
撃沈。実戦なら2万人以上に相当する損害を被った。

この時点で演習は中断、その後「若干の修正」により沈んだはずの軍艦が次々と海上へ現れ、交戦規則ま
でもが書き換えられた。すなわち、赤軍は破壊されるためだけに対空レーダーのスイッチを入れっぱなし
にすることを要求され、地上部隊を降下させるために接近するオスプレイやC-130を攻撃してはならない
ことになり、どうぞ破壊してくださいと言わんばかりに開けた場所に兵器を配置することを強制された。
一方青軍は当時開発中の新兵器を投入できるようになった。はなはだしきは2007年はおろか2026年現在で
も実戦配備なんぞされていない空中発射型レーザー兵器まで使うことが出来た。バカバカしくなったライ
パーは演習中に辞任した。このとき彼が「なんと!不健全な作戦なり……」と言ったかは定かでない。
2億5千万ドルは新たな知見を得るためではなく、米軍の自尊心を保つために費やされた。

ミレニアムチャレンジ2002からほぼ四半世紀、現在のペルシャ湾の状況を見るにつれ、アメリカ人でない
おれでさえ非常に気まずいものを感じずにはおれない。リセットロード連打やチートが許される状況とそ
うでない状況がある。ゲーマーでさえ、パーマデスモードとかアイアンマンモードいった、やり直しがき
かない不退転の状況に自らを追い込んで挑戦に挑むのだ。軍人さん達もゲーマー並みの勇気と潔さを身に
つけて欲しい。戦争は国家の一大事であるが、幸いにしてその演習では死者は出ないのだから。


せめて騙された恥を噛みしめて欲しい、の巻

もう誰も彼も忘れているかも知れないので5年後10年後の人々のためにおれがネットに書き付けておく。

2025年春過ぎから、日本国内には「7月5日に大地震が起こる」という根も葉もない噂が広まっていた。そ
の原因となったのはたつき諒「私が見た未来」というマンガで、1999年発売のこの作品は東日本大震災を
予言していたと持ち上げられ、さらに2021年発売の「完全版」では「2025年7月にフィリピン沖の海底が
破裂・噴火し日本や周辺国が大地震・大津波に襲われる」という「予言」が記載されていた。マンガ内で
は具体的な日付は示されていなかったが、ネット上では7月5日であると解釈され春頃から情報が拡散。予
言は海を渡り海外でも広がりを見せ、香港・台湾・韓国からの旅行予約がキャンセルされたり、その煽り
を受けて航空会社が減便を余儀なくされるなど実害も発生した。気象庁やメディアは繰り返し予言の科学
的根拠のなさを指摘したものの、マンガは100万部を超えるヒット書籍となり、面白おかしく取り上げた
り不安を煽るインフルエンサーも相まって混乱に拍車がかかった。

ご存じの通り、7月5日は何事もなく過ぎ去った。話を信じていた人たちのほとんどは素知らぬふりをして
日常生活に戻り、自分が間違っていたことを認めない少数の人たちは「真の予言日は○月×日」だとか、
「×月に起こったこの地震こそが予言の地震」であるなどと言いつくろった。実際、6月末から7月初頭に
掛けてトカラ列島で地震が相次いでおり、 7月5日には鹿児島十島村で震度5強を記録する地震が起きてい
る。しかしこれはフィリピン沖の海底云々というマンガの予言とは場所も規模も全く異なるものであり、
強弁の域を超えるものではなかった。自分が間違っていたことを認める殊勝な人たちは「結果として防
災の心構えが出来たのだからいいじゃないか」などと屁理屈をこねることもあったようである。7月5日以
降、地震の予言に関するニュースはネタとしてのうまみがなくなったため皆無となり、夏が終わる頃には
完全に忘れ去られていた。

おれはマンガの著者や出版社を憎くは思わない。いつの時代どこの場所にだって予言者を気取る人物はい
るものだし、出版社は中身がホントだろうと嘘だろうと売れる本を売らずにはおれない。ゴミのような情
報を拡散したインフルエンサーたちはいいね!や広告収入が得られるのならどんなデマでも喜んで流すだ
ろう。おれが本当に憤るのはこの話を鵜呑みにした人、それも7月5日以降も平気な顔をして暮らしている
人である。騙されたと言って本気で悔しがるならまだ見込みはある。しかしまるで一過性のイベントだっ
たかのごとく何食わぬ顔で過ごしている奴には立腹させられる。どう立腹するかと言えば――

第一に、どこの馬の骨とも知れない予言者気取りの人物の予知夢で大騒ぎする情報リテラシーのなさに。
第二に、自分が雑なデマに引っかかったことを後悔するわけでも反省するわけでもない自己省察のなさに。
第三に、デマに踊らされていたことさえ忘れて日々の生活へ戻っていく記憶力のなさに。

ただ、この手の予言話にはよくあることだろうが、話を本気で信じた人が財産を処分して国外に移住した
とか国内の安全な場所に引っ越したとか、有り金使って豪遊して後悔したとかいう話は聞かない。信じて
大騒ぎしたのは全体から見れば少数で、「9割がた嘘だと分かってるけど、でも……」とのぼんやりした
不安を持った人が多かったのだろう。「ぼんやりした不安」などと言えば聞こえが良いが、何ら根拠のな
い大予言で少なくない人が右往左往という事件は後学のため学ぶ点が多い。「しょーもないデマに騙され
やがって」と嘲笑することはたやすい。しかし我々はそのような人たちの「ぼんやりした不安」を解消す
ることにも、デマを打ち破ることにも失敗したことを忘れてはならない。おれは件のマンガのように、他
の人間に何かを信じ込ませるほどの影響力はまったく持っていないが、少なくとも怪力乱神を語らずとの
戒め、そして我々は状況次第でとんでもないおバカさんになりうるとの自覚は持っていようと思う。


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最終更新:2026年06月16日 06:58