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サムライハート  ◆NIKUcB1AGw




さて、どうしたものやら……。

周囲の人間からことごとく「キョン」というニックネームで呼ばれ本名にまったく触れられず、ともすれば自分でもおのれの名前を忘れそうになるごく普通の高校生であるところの俺だが、現在のっぴきならない事態に遭遇している。

青い狸のような謎の存在に拉致され殺し合いを強制されているという段階ですでにそうとうデンジャラスなのだが、その殺し合いの舞台において俺は動揺のあまり重大なミスをやらかしてしまった。
武器として支給されたハサミを深い意味も無く広げているところを通りすがりの女性に見られ、その上誤解を広げるような行動を取ってしまったのである。
そして間違いなく俺を危険人物として認識したであろうその女性は、金髪の外国人男性に助けを求めた。
これが現在、俺が遭遇している状況である。

ここで話は、冒頭で俺が抱いた心のつぶやきに戻る。

改めて考えてみよう、いったい俺はどうすればいいのであろうか。
客観的に見れば、俺は明らかな不審人物である。誰だってそう思う。俺だってそう思う。
今が平時であるのならば最悪でも警察のお世話になって事情聴取程度で済むのかもしれないが、あいにく現在俺は殺し合いのまっただ中である。
危険人物と判断されたら、正当防衛の名の下に天国へ送られてしまってもおかしくないのだ。
つまり俺は、なんとしてでもこの人たちの誤解を解かなければならないと言えるだろう。
だが、俺に説得などできるのか? 古泉ならばこういうのは得意なのかもしれないが、あいにく俺の交渉術など人並みもしくはそれ以下である。
そもそもの問題として、この外人さんは日本語が通じるのだろうか?

「君は……」

俺が苦悩していると、外国人男性が口を開いた。
流ちょうな日本語だ。少なくとも、俺にはそう聞こえる。

「このレディーに、危害を加えようとしたのか?」
「いえ、そんなつもりは毛頭ありません。こんなことになって気が動転して、不審な行動を取ってしまったのは認めます。
 そちらの女性からは、俺が危険人物に見えたでしょう。
 けど俺は、この場で人を殺すつもりはありません。どうか信じてください!」

俺はありったけの語彙を駆使し、自分の潔白を訴える。
これで信じてもらえなければ、俺の人生はジ・エンドである。
俺の言葉を受けた外人さんはしばらく考え込む様子を見せていたが、やがて再び口を開いた。

「なるほど、君が言っていることには、いちおう納得できる。
 このような異常事態に遭遇して、おかしな行動をとってしまうというのは十分に有り得ることだ」
「それじゃあ……」
「だが! 君の主張が虚偽でないという証拠はどこにもない。
 嘘をついて我々を油断させ、その隙を突いて殺そうとしている可能性もまた十分にある」

一瞬芽生えた希望は、次の言葉で粉々に砕け散った。
だが、仕方のないことだろう。
こんな状況下で不審な行動を取っていた人物を信用しろと言われても、そうそうできるものじゃない。

「それなら、どうすれば信用してもらえますか?」
「悪いが、私は君を信用する気は毛頭ない」
「え?」

戸惑う俺の前で、外人さんは自分の荷物からなにやら棒状の物体を取り出した。
最初はそれが何かわからなかった俺であったが、すぐに理解する。
それは、日本刀だった。

「速やかに私たちの前から立ち去りたまえ、少年。
 もたつくようであれば、心にやましいところありと判断し、斬る」

鞘から抜き放たれた刃が、月明かりを浴びてきらめく。
俺は確信した。この人が言っているのは、脅しやはったりじゃない。
この人は必要とあらば、ためらわずに殺人を犯せる人だ。
この状況で俺がすべきことは何か。俺の脳は即座に、一つの結論を導き出した。


逃げるんだよぉぉぉぉぉ!!


1グラムの迷いもなくきびすを返し、俺はその場から全速力で立ち去った。


◇ ◇ ◇


「あ、あの……。助けてくれて、ありがとうございます!」
「かまわんよ。レディーを守るのは、男として当然のことだ」

キョンが去った直後。やらない子に礼を言われたグラハムは、かすかに笑みを浮かべながらそれに応えた。

「けど、いいんですか? あの男を逃がしてしまって……」
「うむ。君としては納得がいかないかもしれないが、この異常事態においては多少不審な行動を取っただけで危険人物と判断するのは早計だ。
 要は、判断材料が足りないわけだな」
「けど、本当に危険な人だったら……」
「そのときは責任を持って……私が彼を斬ろう」

一度鞘に収めた刀を再び抜き、グラハムは言う。

(やだ、ちょっとかっこいいかも……)
「どうかしたかね?」
「い、いえ! そういえば、まだ自己紹介も何もしてませんでしたね! 私、やらない子って言います!」
「私はグラハム・エーカー。軍人だ」

簡素な自己紹介を終えると、グラハムはさらに言葉を続ける。

「さて、ミスやらない子。君はこの状況下で、どう行動したいと思う?」
「え? ど、どうって言われても困りますけど……。
 とりあえず、人を殺すなんてことはしたくないです。
 それと、無事に家に帰りたいです……」
「なるほど、至極真っ当な考え方だな。だが、それを実現させるのは難しいだろう。
 この殺し合いゲームを仕組んだ輩は、数十人の人間をまとめて拉致できる手段を持っている。
 大規模な組織、あるいは何か我々の常識では計り知れない力を所持していると考えていいだろう。
 この爆発物の入った首輪だけでも脅威だが、それ以外にも逃走を防止する手段を用意していておかしくない」
「そ、そんな! じゃあ私たち、殺し合うしかないんですか?」
「まあ待ちたまえ」

顔を真っ青にして叫ぶやらない子に対し、グラハムは冷静に言葉を続ける。

「たしか日本のことわざに、こんなものがあったな。三人寄れば……あー、なんだったか……」
「文殊の知恵、ですか?」
「そう、それだ!」

嬉しそうに手を叩くグラハムを見て、やらない子は思わずあっけにとられてしまう。

「あ、あの、それで……。その言葉が、どうかしたんですか?」
「ああ、そうだったな。要するにだ、殺し合いをよしとしない人々を集めて知恵を出し合えば、脱出する手段が見つかるかもしれないということだ」
「なるほど、たしかにそうですね!」
「よって脱出をめざすためには、仲間を集める必要がある。だが、これには相応のリスクも伴う。
 積極的に他者と接触していくということは、危険人物に出くわす可能性も高くなるということだからな」
「あ、そうか……」
「どうする、ミスやらない子。私は君の意見を尊重しよう。
 もし君が危険を冒したくないというのなら、安全なところに隠れてもらっていてもいい。
 もっとも、この殺し合いゲームの中で安全な場所などあるのかは疑問だがね」
「私は……」

一瞬の沈黙。それを挟んで、やらない子はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「帰りたいです。平和な日常に。だけど、そのために危険なことを他人任せにはしたくありません。
 私を連れて行ってください、グラハムさん。仲間を集めて、ここから脱出する手段を見つけましょう」
「うむ! その心意気やよし! このグラハム・エーカー、これより全力で君を守らせてもらおう!
 必ずや、君を元の生活に戻してみせる! 安心していたまえ!」
「は、はい!」

力強く宣言するグラハムにつられ、やらない子の声も大きくなる。

(かっこいいなあ、グラハムさん……。まるで白馬の王子様ね。
 ちょっとエキセントリックなところもあるけど、そこも慣れれば魅力になりそう……)
「では、さっそく出発と行こうか! 乗りたまえ、ミスやらない子!」
「乗りたまえって……。自動車か何かあるんですか? 見当たらないようですけど……」
「おいおい、しっかりしてくれ。目の前にあるじゃないか」

グラハムが指さした先。そこにあったのは……。

「……自転車?」
「たしかに少々心許ない代物ではあるが、この状況では貴重な移動手段だ。
 さあ、共に行こう!」
(うん、まあいいんだけどさあ……。イケメンの外人さんが思いっきり庶民的な自転車にまたがってる姿って、シュールよね……)

心に一抹の不安を抱くやらない子であった。



【H-3森 初日 深夜】

【やらない子@やる夫派生】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
 1:殺し合いからの脱出
 2:グラハムについていく

【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:健康
[装備]:ノブナガの刀@HUNTER×HUNTER、千鳥@こち亀
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
 1:やらない子と共に、脱出のための仲間を集める
 ※参戦時期は少なくともブシドーとして行動していた時以外のようです 

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康、やや不安
[装備]:庭師の鋏@Rozen Maiden
[道具]:支給品一式、ジャック豆×2@ドラえもん
[思考・状況]
 1:この場から離れる
 2:SOS団のメンバーを探す


※支給品紹介

【ノブナガの刀@HUNTER×HUNTER】
最強最悪の盗賊団・幻影旅団のメンバーであるノブナガ=ハザマの愛刀。
それなりの名刀だと思われるが、特殊能力の類はない。


【千鳥@こち亀】
両さんが愛用する自転車。
本来は警察官としての支給品だが、両さんはお構いなしにプライベートでも使用している。



39:コードギアス~邂逅のルルーシュ~ 時系列順に読む 41:闘争の開幕
39:コードギアス~邂逅のルルーシュ~ 投下順に読む 41:闘争の開幕

08:鋏男は桜並木で悪夢を見るか? キョン 41:闘争の開幕
やらない子
グラハム・エーカー


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最終更新:2013年07月27日 18:25