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鋏男は桜並木で悪夢を見るか?◆7eXksgQP86




 再び俺が目を覚ますと、頭上には満開の桜が広がっていた。
 かつてはハルヒの超能力の実を肌身で確かめる轍となっていたその景色も、今では根本に死体が埋まってるようなミステリ並に不気味に映る。

 ――夢であってくれと願いたかった。
 しかし何度どう目を擦って頬に暴力を加えても、目の前に広がるのは覚えのない桜並木である。
 つまるところ、「目を覚ましたら殺し合いをしろと言われ人が死んだ」という状況も現実と言わざるを得ないようであった。

 ハルヒの願望かといえば、断じて違うと言わざるを得ない。出会ったばかりのアイツですら矛楯番組で圧勝を狙えそうな偽装死体を使い、実はドッキリカメラが仕掛けている程度のはずだ。
 ならば何故……あの青狸は俺をこんな目に合わせたのか? 考えても答えは出ない。統合思念体急進派だの、天蓋領域を始め佐々木の取り巻きと同じ組織の連中だのと推測は出来るが。
 そして今、ここにいるのは俺以外に誰がいるのだろうか。あまりの突然の出来事に、会場での俺の視線は青狸に占領されていたためだれがいたかはほとんど把握出来ていない。かろうじて北高の女子制服がチラついた程度だ。
 ……だとすれば、少なくともハルヒを始めSOS団のメンバーが誰かしらいるのは間違いないのだろうが。

 頭痛を覚えながら、俺はいつの間にやら背負っていた四次元デイバッグとやらを下ろした。
 考えていても仕方ない様に感じたから、といえば聞こえは良いが状況を整理したくて思わず物の整理まで始めてしまっただけである。
 中には青狸が言った通りのアイテムの数々。地図を照らして確認するとどうやら北東の端にいることが分かる。
 そしてどういう仕組みで入っていたのやら、開いたデイバッグの口より明らかに大きい鋏が転がり出た。
 芸術に識の無い俺でも、訳も分からずなりに感嘆する程の装飾がついた大鋏、ナントカ鑑定団に出せば値打ちがつきそうである。
 他には豆が2粒。非常食のつもりなのだろうか。あの質素な食料が非常食ですらないことを考えると涙が出そうだ。

 ……とにかく、これが俺の生命線ということになるのだろう。
 視線の先で、トラウマ間違いなしの映像と共に死を知らしめた中年の男――誰かが父ちゃんと呼んでいたのが聞こえた――そして血肉すら撒かずに粉々になった少女。
 わずかでも思い出しただけで吐き気のしそうな光景がフラッシュバックする。
 そして、俺も一歩間違えばああなってしまう可能性を孕んでいる、という訳だ。

 冗談が過ぎる、というか悪い冗談にも程がある。そうだ、その危険に晒されているのは俺だけではない。
 ……大体、百歩譲ってピストルやナイフならまだいいとして鋏だぞ鋏。積極的に自衛に使えるような代物でも無いだろう。
 それでも――それでも、俺は。

 脳裏にハルヒの顔が浮かんだ。さっきはああ考えたが、俺が巻き込まれているなら高確率であいつも同じ空間にいると見て間違いない。
 他のメンバーも同じだ。長門が頼りになること千万なのは言うまでもなく、古泉でもこの場では俺よりはるかに頼もしいくらいだし朝日奈さんは守らなきゃならん。
 こんな悪夢に自分の、仲間たちの人生を左右されてはたまらない。みんなと合流することさえできれば……

 と、俺は希望に胸を膨らませているかに見えた。
 それでも、凡人なら当然なのだろうが俺は不安を隠しきれていなかったらしい。
 気がつくと手にしていた大鋏が口を開いていた。思わず手が無意識に動いていたのだろう。
 ここだけならまあ、誰かに見られなくて良かったというだけの話だ。

 ――問題は、本当に誰かに見られていたという場合の話だ。


「あっ……あっ……!!」

 俺でない人間の息遣い、知らない女の子の声が来て思わず俺は目を見開いてそちらに顔を向けた。
 その動作が更に異様に見えたのだろう、視界に入ったアップサイドの少女はさらに恐怖に顔を歪めた。
 切羽詰まった表情の男が大鋏を開いてボンヤリしてたら、そりゃ誰だってビビる。お前はクロックタワーから来たのかとばかりの姿だったに違いない。

「いやあああっ!」

 きびすを返して少女が逃げ――その状況に、僅かな不安を抱えていた俺はあろうことが混乱の泥沼に足を突っ込んでしまう。

「ま、待て!」

 思わず足と声が動いて、俺は少女を追いかけていた。誤解を解かねばこの先ろくでもないことになるのは目に見えているから、誤解を解こうと考えた事自体は然程間違いではないはずだ。
 だったら鋏なんか捨てればいいだけなのだが、非常に残念なことにこの時の俺にはそれが思い至らなかった。
 大鋏を持って少女を追いかける男。深夜ということもあって、劇場で流したら悲鳴の合唱でも頂けそうだ。ハルヒ超監督は大喜びするかもしれん。

「た、助けて! 助けて下さい!」

 至極まっとうな言葉を叫んで……少女が何かに飛びついた。
 ……その先に見えるのは金髪の男。外国人だろうか、海外アイドルと言っても信用出来る丹精な顔立ちだ。

「む……?」

 男が怪訝な顔で俺を捉える。……そして事ここに至って、ようやく俺は我に返った。
 そして把握する、してしまう。
 今の状況が――いかに最悪に向けて疾走しているか、ということに。


【H-3森 初日 深夜】
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康、やや不安
[装備]:庭師の鋏@Rozen Maiden
[道具]:支給品一式、ジャック豆×2@ドラえもん
[思考・状況]
 1:目の前の状況に対処
 2:SOS団のメンバーを探す

【やらない子@やる夫派生】
[状態]:健康、恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品
[思考・状況]
 1:金髪の男(グラハム)に助けを求める
 2:危険な男(キョン)から逃げる

【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:健康
[装備]:???
[道具]:支給品一式、ランダム支給品
[思考・状況]
 1:目の前の状況に対処
 ※参戦時期は少なくともブシドーとして行動していた時以外のようです


【庭師の鋏@Rozen Maiden】
蒼星石の得物。人の夢にある「心の樹」を手入れする事ができる。
武器としての切れ味も高い。

【ジャック豆@ドラえもん】
地面に撒いて水をやるとたちまち空へと豆の木が伸びる。
伸びている途中で指示すれば伸びる方向も操れ、「戻れ」と言うと元の豆に戻る。
このロワでは15m程までしか伸びず、3時間で豆に戻る。
指示と時間経過どちらの原因で豆に戻っても、戻ったあとは再び伸ばすことは出来ない。


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最終更新:2013年04月28日 04:20