○○先生、戦争がやりたいです…… ◆a2zhksM50w
『あー、テステス。聞こえるかな? 諸君』
響いてくるのは男の声。
『私の名は。……そうだなあ、少佐と呼んでくれ』
それは、とても軽い調子で少佐と名乗った。
『早速だが。元気に殺し合いをしてるであろう、君達に言いたい事があってね』
聞くものが聞けば、嫌悪感を露にしても可笑しくはない言い様。
しかし、少佐はそんなものは微塵も気にしない。
『――戦争をしようじゃあないか』
何を言っているのか、理解できる者が果たしてこの場に居るのか。
だが、少佐は止まらない。止まる気すらない。
『ここも中々に楽しい場所だが、どうにも物足りん。そこで考えてみた。何故、物足りないのかを。
……簡単だ。我々は、命というたった一つのチップを掛けて殺し合っている。
戦争と同じだ。何ら変わり無い。ここも、戦場も、安全な場所など皆無だ。
いや、違うのだ。そう、思わされているのだ。あの青狸によって。
考えてみたまえ。さっき安全な場所など、皆無だと言った、が。あるじゃないか?
たった一つ、我々の手の届かぬ場所にあるじゃあないか。
この場か、あるいはまた別の場所か分からないが、
あの狸は我々を監視し、あろう事か、この闘争を何のリスクも恐怖も無く、無料で覗き見ているのだよ。
私は、それが実に腹正しくてならん。だって、そうだろう? つまらないじゃないか。
せっかく、こんな心躍る催しに、我々を招待してくれたというのに一人だけズルをしていちゃあ、つまらない。
それはもう、闘争ですらない。ただの見せ物だ。だから、これを見せ物じゃなく、とっておきの楽しい戦争に変えてしまおうじゃないか。
教えてやろう。あの狸に、闘争とは何か、戦争とは何か。安全な場所など、この世の何処にも存在しないという事を。
我々を飼い慣らした気で居る、あの狸に思い知らせてやろう。
真の恐怖の味を、殺し合いの本当の意味を、素晴らしい大戦争を!!
一心不乱の大戦争を!!
楽しいぞ……。きっと楽しい。すっごく楽しい。
あの狸、我々を押さえ付ける為に、どんな技術を用いるのだろうか?
例えば今、私の手には地球破壊と呼ばれる見たことも無い未知の兵器を支給されている。
なんだこれは? なんだこの馬鹿げた兵器は、散々見飽きた化け物よりも、散々見飽きた兵士よりも、とても心躍る! まるでSF小説の世界じゃないか!
楽しいな。これは、絶対に楽しい!!! こんな物と戦争が出来るなんて、素晴らしい!!!
いやあ、歳概も無くワクワクしてきてしまった。
まるで、クリスマスの日にプレゼントを開ける時の子供みたいだ。
こんな先の読めない戦争は初めてだ。でも、絶対に、絶対に、これは楽しいぞ。他の誰でも無い、私が保証しよう。
さあ、共に行こう。私はここだ、戦場はここだ。
楽しい、楽しい、とても楽しい戦争を始めよう!!!!!!』
「え、え?」
できる夫は驚愕のあまり、動くことを忘れてしまった。
本来の予定では、演説が得意という少佐が拡声器を使い。
参加者に殺し合いの放棄を呼びかけ、殺し合いに乗った危険な人物が声に釣られてやって来る前に身を隠すという筈だった。
まったく、二人で決めた打ち合わせと違う。
何故だ? 最初会った時に殺し合いに乗らないと言っていたではないか。
まさか騙されていた?
「いや、私は嘘は微塵も言っとらんよ。
殺し合いには乗らない。ただ、代わりに戦争を始めるんだ」
まったく違いが分からない。
例えるなら、複数居る同じ犬種の犬の鳴き声を全て聞き分けろというぐらい違いが分からない。
「それよりも、ココアは無いかね? 流石に紅茶だけだと飽きる」
当の本人は、呑気に近くの民家から現地調達した安物のテーブルとパイプ椅子に腰掛け、優雅に紅茶を嗜んでいる。
「貴方、隠れなくて良いんですか?
さっきの声を聞きつけた、危険な参加者が来るとも限りませんよ」
「おいおい。戦争を始める為に、さっきの演説をしたのに、人が来るからと言って隠れちゃ意味が無いじゃないか」
駄目だ。着いていけない。
元々、少佐とは出会って数時間も経っていない。僅かな情すらも無い。
ここで、彼とはおさらばするとしよう。
できる夫は自身のデイバッグを背負うと、一度も後ろを、少佐を見ること無く走り去ってしまった。
少佐もできる夫には興味が無いのか、既にその存在を意識から一切抹消していた。
【E-5 初日 深夜】
【できる夫@やる夫派生】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考]
基本:殺し合いをする気は無い。
1:この場から急いで離れる。
【E-5 民家近く 初日 深夜】
【少佐@HELLSING】
[状態]健康
[装備]拡声器@現実
[道具]支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考]
基本:戦争をする。
1:この場で人を待つ。
「クククク…………ハァーハッハッハハハハハハハハ!!!!」
場所は変わる。ここはE-4。
そこで一人の男が笑う。
紅き血染めの様なコートを羽織い。
その鋭き牙をちらつかせ。
ただ、ひたすらに笑っている。
愉快で愉快で仕方ない。
「まったくもって、耐えしがたい程の大馬鹿だ。
死んでも尚、まだ戦争がしたりないのか? なあ? 狂った少佐」
あんな、愉快な演説を聞かせてくれるのは、世界広しといえど一人しか居ない。
「素敵だ。……とても、素敵な演説だったぞ少佐。
楽しいな、ああ楽しみだ。あの狸も、少佐も、まだ見ぬ猛者も、とても楽しみで仕方ない。
フフフ……フハハハハ…………ハッハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
これからなのだ。
とても心躍る戦場が。とても楽しい闘争が。
全てが整い、大戦争が始まるのだ。
これを笑わずにしていられるものか。
「さあ、誰だ? 私を倒すのは、心の臓腑を抉り、見事討ち取ってみせるものは、一体誰だ!?」
【E-4 初日 深夜】
【アーカード@HELLSING】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明支給品(1~3)
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:少佐が居るのか。
【拡声器@現実】
説明不要。
バトロワではお馴染みの死亡フラグである。
最終更新:2013年07月27日 18:26