空は黒く風は嗤う ◆7eXksgQP86
「とゆー訳で私は一刻も早くご主人様の元に戻らなくてはならないのです!」
「おおっ、燃える乙女心! いやー他人の恋模様を眺めるのって楽しいもんだよねぇ」
二人の少女が殺し合いに放り込まれ、そして邂逅を果たしてから暫く。
程なくして持ち前の調子の良さを発揮した狐耳の少女――キャスターはは女子高生、泉こなたと意気投合を果たしていた。
殺し合いの始まりから恐怖に囚われかけていたものの、こなたもまた元々調子の良さはあったためキャスターの明るさに引っ張られ、程なくして普段の様子に戻っている。
「まあその為にはさっさとこの首輪を外さなきゃならないんですが……ったく私に首輪をはめていいのはご主人様だけだというのに」
「うわぁ、なんかすっごくアブノーマルな呟き聞こえたよ? ひょっとして主従でそういう仲に……!?」
「いえそこまではまだまだなんですけどぉ、でもご主人様もご主人様で最近かなーりデレて来てくれたんです♪
……くれたのに……青狸ィ」
つい今しがたまで愛しの人とのノロケ話で緩ませていた顔が今度は一瞬にして憎々しげになる。その様を見てこなたはやれやれと肩をすくめた。
「こりゃーご主人様も大変だ、浮気なんてしようのものなら……」
「滅☆殺、一夫多妻去勢拳ですよ♪」
「おおう、私の予想を遥かに上回っていたっ!」
他愛の無い会話に花が咲く。生殺与奪が問われる決死の場でこそあれど、それでも平和な一時がそこに流れていた。
だが――それも、一風吹けば散ってしまうような脆いものであり。
くるくると表情を変えていたキャスターの顔がふと緊張に固まる。
その様に空気が一変したことを感じ取ったこなたが思わず彼女に声を掛けようとした――その時。
「伏せて下さい!!」
「えっ――」
直後、閃光が走った。
続けて光から守るようにキャスターが飛びつくが、それも能わずこなたは光を受け入れてしまう。
やがてこなたの意識は見える景色に飲まれるが如く、白に飲み込まれていった。
◆
そんな顛末からややあって。
倦怠感と共にこなたは重い瞼をゆっくりと開く。
何があったかをぼんやりと思い出しながら、身動ぎをしようとして――気づく。
身体が動かない――いや、縛られている。これでもかとばかりに、厳重に。
異常事態に完全に覚醒し、そして自分が縄で厳重に拘束され、フェンスにくくりつけられていることに気づく。
慌てて周囲を見渡し、理解する。
ここがどこかの建物の屋上であること。
先程まで一緒にいたはずのキャスターの姿が無く、ただ足元に焼け焦げた着物だけが残っていること。
そして、自らを縛り付ける縄の中心には――冷酷に時を刻む、時限爆弾が取り付けられている事に。
【H-5 ビル屋上 初日 深夜】
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康、倦怠感、拘束
[装備]:大縄@現実、時限爆弾(残20分)@現実、マイク@現実
[道具]:なし
[思考・状況]
1:えっ――?
※足元に焼け焦げたキャスターの着物の切れ端が落ちています
【キャスター(Extra)@Fateシリーズ 死b――】
「な、訳ありませんってーの」
その様子を認め、別な建物の影でほくそ笑む影があった。
「ふー、着物という尊い犠牲こそあったものの……ここまでは概ね想定通りですね」
一仕事したと言わんばかりに一息をつくのは、紛れもなく泉こなたと行動を共にしていたはずのキャスターである。
最早言うまでもなく。こなたに奸計を敷き、死のカウントダウンに陥れたのは彼女であった。
白面金毛九尾の狐。悪名高き妖怪が化けた姿と言われる玉藻の前。
そんな大それた素性を持つ彼女も今ではサーヴァントに窶した身、その力は著しく失われている。
だから元の世界、ムーンセルでの戦いでも多くの苦難を強いられていた。
それでも彼女は、己が一途に愛するマスターをひたすらに求めていたのだ。
切ってもなお永遠に切り離せぬはずの繋がりを持つキャスターのマスターは、ここには存在しない。
全員が集められたあの場でパスが無いことを確認したのだから間違いはないと、断じられてしまった。
ならば――その引き裂かれた絆は取り戻す。
たとえ、他の誰を犠牲にしようとも。それほどまでに、彼女にとってのマスターは絶対的な想い人なのだ。
しかしいくらサーヴァントといえど、あれほどに多勢の参加者を屠るのは並大抵の所業ではない。なおかつ本人が述べる程までに不安定な性能であr.
そして恐らくは自分と同等かそれ以上の参加者もいるだろうと踏んでいた。
そこでキャスターが手始めに行ったのは――他の参加者同士の潰し合いを煽ること。
だから、手持ちの支給品を用いて最初に出会った無力な参加者を利用する事にした。
支給されたスタングレネードで視界を封じ、それから庇うフリをして「ねむれよいこよ」と言うらしい不思議なお香でこなたの意識を奪ったあと、最期の支給品である大縄でこなたを拘束する。
それだけでも良かったのだが、ついでにこなたから奪った荷物の中身がキャスターの策略をさらに固めるものとなった。
時限爆弾。そしてこなたは気づいていないがもうひとつ、胸元に取り付けられたマイク。
これらも気絶したこなたに縄で組み込み、近くの建物にセッティングしたキャスターは他の人影に見られぬうちに近隣の建物へと隠遁した。
こなたが気づけばいつの間にか自分の身に降りかかった状況に絶叫し、助けを求めて叫ぶ事だろう。
その悲鳴はマイクで拡散され一帯に広まる。そして聞きつけた他の参加者をこの場に集める。
気づかぬうちに誘蛾灯そのものとなったこなたを中心に――上手くいけば、やがてこの廃墟は戦場となるだろう。
それでもただ放置し、善意の参加者にこなたが助けられては折角支給品を贅沢に使った策略が勿体無い。
そのため、最初にそんな人物がこなたを助けにこないかだけを監視することに決めたのだった。
万一懸念通りになれるなら、助けられる前に奇襲して爆弾を起爆するなりして対処し、後は戦火の火種がついたここを後にすれば良い。
誰も来ないままこなたが爆死するならば、リターンは小さいがそれはそれで構わなかった。
「あの時私、言いましたよね? 『一刻も早くご主人様の元に戻らなくてはならない』って。
恨み事なら、始めて出会った相手がこの悪い悪ぅいお稲荷様だった運の悪さにお願いしますよ」
誰へともない呟きに答えるが如く、魔性の尻尾がふわりと揺れた。
【H-5 初日 深夜】
【キャスター(Extra)@Fateシリーズ】
[状態]:健康、着物が一部欠けている
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、大縄(1/2)@現実、スタングレネード×2@現実、ランダム支給品(0~1)
[思考・状況]
基本:優勝し、マスターの元へ帰る。
1:こなたを監視し、善意の参加者が助けに来るなら妨害する。
2:こなたが爆死するか、適当に時間が経ったらこの場を後にする。
3:他の参加者同士の戦いを煽る。極力自分では戦わない。
【スタングレネード@現実】
起爆すると激しい光と音で近くに居たものの視界と聴覚を封じる。
3つで1セット。
【大縄@現実】
縄跳びで使われるような縄。全部で10mほど。
【マイク@現実】
市販のマイク。性能はそれなり。
【時限爆弾@現実】
時限式で火薬が炸裂するように設計された爆弾。
設定時間は最大30分。
【ねむれよいこよ@マリオシリーズ】
相手を眠らせるアイテム。眠った何かのような形で、
発動すると羊が現れ敵を眠らせる。
最終更新:2013年02月27日 01:40