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第5話~残酷なる出会い、悲劇のデュエル~

75 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 20:58:53 ID:nCFqbPqM0
ああ、楽しいなぁ。


目の前で僕と同じ歳の女の子が苦しんでいる。


苦しみに耐えられずに。手を伸ばして命乞いをしている。


くすくす。面白いなぁ。


人が苦しんでいるのを見るのは楽しいなぁ。


ほら、もっと喚いてみせてよ。


ほらほら、そんなに痛い? くすくす。面白い。


僕に頭を踏みつけられている女の子が、許してとか細い声で懇願している。


許してあげようか? くすくす。


だったら、一つだけ言うことを聞いてもらおうかな。


そうしたら苦しみからは解放してあげるよ。


何でも聞く? あはは、涙なんか流して必死で頷いてる。


それじゃ、お願いしようかな。



そのお願いって言うのはね・・・・・


76 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 20:59:25 ID:nCFqbPqM0
第5話~残酷なる出会い、悲劇のデュエル~


誰もいない廊下を一人の少女が彷徨っていた。
誰に会うかは分からない。出会う相手が悪ければ戦うことになるのかもしれない。
その危険性はわかっているが、一人で居続けるのは辛かった。
もしかしたら良い相手に出会えて行動を共にできるかもしれない。
ただその希望だけを抱いてひたすら歩き続ける。

少女の名前は結城 梨琥(ゆうき りこ)。
短めの黒髪をヘアバンドで飾った可愛らしい髪形をしている。
背は割と低いほうで一部の男子からひっそりと人気があったりする。

自分から好んでデュエルをすることは少ないが、意外とその腕はなかなかのものらしい。
そのデッキの性質から、彼女に惚れ込んでいる一部の男子は彼女のことを聖女などと呼んでいる。
当然本人は知らないが。


彼女はてくてくと歩き続ける。
敵に出会う恐怖への怯えと、仲間に出会える希望への期待を交互に胸に宿らせながら。

やがて廊下は少し広めの空間へとたどり着いた。
ロビー、というほどではないが、休憩所といった感じで、二組の机と長椅子が並べられていた。
装飾品などは一切ない、簡素な部屋だった。

だが机と椅子があるというだけでもありがたい。
少しばかり歩き疲れた梨琥は、ひとまずベンチで休むことにした。

「はぁー・・・ホントに誰もいないなぁー・・・・。」

机に突っ伏し、ため息をつく。
一体この建物はどれほどの広さなのか。20分ほど歩いてみたが全く人の気配は感じなかった。


この休憩所は3つの廊下に繋がっていた。
机の正面にまっすぐ伸びる廊下が見える。だが人影などは全く見えない。
左側は先程まで歩いてきた道、右側は机からは伺えなかった。

梨琥はぼーっと、目の前に続く廊下を眺める。
無機質な蛍光灯の光、静かに響いている空調の音。

「私、ここから出られるのかなぁ・・・。」

そう呟き、何も考えず変化のない部屋を見つめる梨琥。
本当にこの建物のどこかで今も誰かが戦っているのだろうか。
そうは思えなくなるほど、静かで緩やかで、この部屋の時間は止まっている。

その静けさに耐えられず、梨琥はうつらうつらとし始めた。



ふと、時間の止まっていた部屋に変化が訪れる。

とっ・・・とっ・・・とっ・・・・

ゆっくりと聞こえ出したその足音に梨琥は驚いて飛び起きる。
そして慌てて机の下に潜り込んだ。

(だ、誰だろ・・・。)

机の下から足音のする方向を伺う。
どうやら右側に繋がる廊下からのようだ。
もし敵だったらどうしよう・・・。
息を殺して右側の廊下に集中する。

足音がだんだん近づいてくる。やがて部屋の中に入ったようだ。
部屋の中心で足を止めるその足音の主。
机の下からその足を伺うと、どうやら女子のようだ。

(よ、よく見えないー・・・。)
机の下からではその顔までは見えず、どうにか見えないものかと試行錯誤する梨琥。
顔を出して見つかってしまったら元も子もないので、頭を必死に動かして顔まで見える位置を探す。
だが狭い机の下ではなかなかうまいこと動けず、梨琥は机に頭をぶつけてしまった。

「あいたっ!」
「わっ!?」

ゴツンという音と共に梨琥は声を上げてしまった。
当然その女子も気づいたようだ。驚いて声を出してしまっている。

声は一瞬だったが、梨琥はその声に覚えがあった。
長いこと一緒にいて聞き慣れているその声。間違いない。
この声の主は、味方のはずだ。

期待に胸を高鳴らせながら、梨琥は恐る恐る、机の下から顔を出した。


77 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:00:55 ID:nCFqbPqM0
「やっぱり!美羽ちゃん!」
「あ!りこちん・・・!?」

そこにいたのは茶色く染めた髪を二つにわけ、きょろっとした目をした少女。
梨琥の小学時代からの親友、野中 美羽(のなか みう)だった。
だが美羽は、机の下から現れた親友に、ぱっと明るい顔をし、すぐに表情を曇らせた。

「美羽ちゃんー、会いたかったよー!」
「う、うん・・。」

美羽は普段はやたら元気でテンションが高い。
普段の美羽なら「りこちーん!」などと言って抱きついてきそうなものなのに、今の美羽は何故か目を逸らしている。
せっかく再会できたというのに、いまいち暗い表情をしている美羽に梨琥は少し戸惑った。

「美羽ちゃん、どうかしたの?」
「え、いや、ううん。大丈夫。」

軽く笑顔を見せる美羽。
それはとても美羽らしくない笑顔だった。
梨琥は怪訝な顔をして美羽の顔を覗き込む。

「どうしたの?具合悪いの?」
「・・・。」

美羽は黙り込んでしまった。
様子の違う美羽に、梨琥は不安を覚える。

「とりあえず、休もう?」

椅子で休めばよくなるかと思い、そう言って肩に手をかける。
だがその手は、美羽に跳ね除けられてしまった。

「み、美羽ちゃん・・・?」
「りこちん、ご、ごめん・・・。」

驚いて戸惑う梨琥に、美羽は辛そうな顔で謝る。
そしてこの場の空気に耐えられないように、走って逃げ出そうとする。

「っ・・・!あああ・・・!」

だが、走り出そうとした美羽の動きは止まってしまった。
いや、美羽は必死で走り出そうとしてるのだが、まるで体が言うことを聞かないように。

「美羽ちゃん・・・一体どうしたの・・?何があったの・・・?」
「・・・も・・う・・めて・・・・・」
「え・・・?」

美羽は頭を抱えてうずくまり、ふるふると震える。
そして、必死で何かをぶつぶつと呟いていた。

「ぁ・・・ああぁ・・・・いや・・・やめて・・・・・。
やだ・・・やだ・・・やりたくない・・・よお・・・・。」

がくがくと震えながら、必死で何かに抵抗する美羽。
目の前で起こっている光景に、梨琥はどうしていいかわからず戸惑っている。

しばらく美羽の異常が続く。
梨琥は肩を揺すったり顔を覗き込んだりしてみるが、一向に変化はなかった。


78 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:01:26 ID:nCFqbPqM0
やがて、突然美羽は何かを振り切ったかのように、すっくと立ち上がった。
そして梨琥の方に向き直る。

「美羽ちゃん・・・一体どうしたの・・・?」
「りこちん・・・。」
「ごめん・・・。あたし・・・、りこちんと戦わなきゃ・・・・。」
「え・・・」

美羽はいきなりそう口走るとデュエルディスクを起動する。
その目にはまるで生気がない。
梨琥はつい昨日まで親友だった彼女に戦いを要求され、ただただ戸惑う。

「な、何言ってるの美羽ちゃん。だって、ここでのデュエルって・・・。」
「アハ、何も変なことなんか言ってないでしょー?
ここじゃ人に会ったらデュエルしなきゃいけないんだから、ほらほら、りこちんもデュエルしようよー!」

美羽は急にテンションを上げ、きゃっきゃとし始める。
そう、これがいつも通りの彼女なのだ。
いつもと違うところといえば、その生気のない目と、親友に殺し合いを迫っている事。

梨琥はそのデュエルに応じられるはずがなかった。

「や、やだよ、美羽ちゃんどうしたのよ・・」
「デュエルできないの?じゃあ仕方ないなぁ。
ここで、死ぬ?」

突如梨琥の目の前にドラゴンが現れた。
紅い体の風の竜・・・見覚えがある。美羽のデッキに入ってるモンスターだ・・・。
美羽がカードを起動していた。

「ひ、ひっ!?」
「デュエルできないって言うんなら、今ここでこの子に梨琥ちゃん食べさせるだけだよ。」

ドラゴンが、まるで品定めするかのように梨琥に顔を近づける。
その恐怖に、梨琥は思わず後ずさった。

「美羽ちゃん、や、やめてよ・・・。」

ふるふると首を振る梨琥。
目の前で今何が起きているのだ。
一体何故こんなことになっているのだ。

「じゃあ、デュエルする?」
美羽がデュエルディスクを突き付けてくる。
美羽に何が起きているのかはわからないが、デュエルは避けられないようだ。
このまま、美羽のドラゴンに食べられるよりは、デュエルをして美羽が元に戻ってくれれば・・・。

事態は理解できない。
だが、デュエルをすれば元に戻ってくれるかもしれない。ただその希望だけを胸に梨琥はデュエルディスクを起動した。

「おっ、やっとやる気になってくれたねー!」
嬉しそうな表情でモンスターを解除する美羽。
その顔はやはりいつもの美羽・・・。
何故美羽と戦わなければならないのか・・・。

目の前の事態に納得できない梨琥と、謎の美羽とのデュエルが始まった。

「デュエルー!」
「デュエル・・・・!」


79 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:02:28 ID:nCFqbPqM0
梨琥 LP:8000
美羽 LP:8000

「よーっし、あったしのターン!モンスターを、裏側守備でセットして、ターン・エーンド!」

先行は美羽。普段通りのやたら高いテンションでモンスターをセットする。
だが、今この場ではとても違和感のある態度。
命の奪い合いで見せる態度ではない。


「私のターン・・・ドロー。
それじゃ・・・フィールド魔法、裁きの間を発動。」

梨琥のターン。フィールドが天上の裁判室となる。
死人を天国か地獄どちらに送るかを裁く神の間。
天使達は罪人を裁くための力を得、攻守が400ポイントアップする。

「豊穣のアルテミスを召喚、その伏せモンスターに攻撃・・・!」

梨琥のフィールドに機械的な姿をした天使モンスターが現れた。
カウンター罠を駆使するデッキの主力モンスター。
そう、梨琥のデッキはカウンター罠により相手の行動を抑制するエンジェルパーミッションデッキだった。

アルテミスがその手から緑色の光線を放つ。
光線に貫かれた美羽の伏せモンスターは、風属性リクルーター、ドラゴンフライだった。

「へへーっ、ドラゴンフライの効果で、ハーピィ・レディ1を召喚!」
美羽のフィールドに現れる疾風のハーピィ・レディのリーダー。
空のモンスターに指示を下し、風属性モンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる。

「美羽ちゃんの、ハーピィデッキ・・・。」

美羽の得意とするデッキはハーピィデッキ。
梨琥のデッキとの勝率は4割といったところだった。
だがこのデュエルは普段のデュエルとは勝手が違う。
果たして梨琥はこのデュエルに生き残れるのだろうか。

「カードを2枚伏せて、ターンエンド・・。」


80 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:02:58 ID:nCFqbPqM0
「それじゃーあたしのタァーン!ドローウ!
早速行くよっ!魔法カード、大嵐!!」
最強の魔法罠破壊カードが発動され、暴風が発生し始める。
梨琥の魔法罠はフィールド含め3枚。大嵐の格好の餌食だった。

だが梨琥のデッキはパーミッションデッキ。そう簡単には通らない。

「カウンター罠、相殺魔術・・!
私のデッキから大嵐を墓地へ送り、その大嵐の効果を無効にするよ!」

魔術の詠唱と共に、梨琥のデッキから大嵐が呼び出される。
荒れ狂う二つの暴風はぶつかり合い、お互いに消滅した。

「さっすがりこちん!」
「・・・アルテミスの効果で1枚ドローするよ。」

カウンターが決まり、いつもならへへーっと笑って見せるのだが、このデュエルにおいてそんな余裕はなかった。
むざむざ負けるわけにはいかない。だが、このデュエルに勝ったら美羽はどうなるのか・・・。

「それなら、魔法カードサイ・・・」
「ダメだよ。裁きの間が存在する時カウンター罠の発動に成功したら、相手はそのターンに1枚しかカードを発動できないから。」
「あ、そだっけ。」

美羽の手札にはサイで始まる魔法カードがあるらしい。おそらくサイクロンか。
裁きの間に裁かれ、美羽は発動しかけたカードをしぶしぶ手札に戻す。

「じゃあ、手札からハーピィ・ナイトを召喚!」

 《ハーピィ・ナイト》
 効果モンスター
 星4/風属性/鳥獣族/攻1800/守1600

美羽のフィールドに舞い降りたのは、銀の鎧を纏ったハーピィの女騎士。
ハーピィの中でも戦闘能力に長けたモンスターだ。

「ハーピィ・ナイトでアルテミスを攻撃ー!剣斬断罪(ソード・スラッシュ)!」

アルテミスは裁きの間の効果で攻守が400ポイントアップしている。
だがその攻撃力は2000。ハーピィ・レディ1の効果で攻撃力の上がったハーピィ・ナイトは攻撃力2100だ。
ハーピィ・ナイトのほうがギリギリ上。梨琥のアルテミスはハーピィの剣によって真っ二つに断罪される・・・はずだった。

ハーピィ・ナイトが剣を振るおうとしたその時、天使の幻影が現れ、ハーピィ・ナイトに取り付く。
光の呪縛を受けたハーピィ・ナイトは力を失い、アルテミスの光線によって撃ち抜かれてしまった。

「うわっ!?」
「手札から仇なす者を斥ける天使の効果を使ったよ。
仇なす者を斥ける天使を墓地へ送って、ハーピィ・ナイトの攻撃力を500ポイントダウンさせたの。
そしてこの効果を使って戦闘で勝った時、墓地から仇なす者を斥ける天使を特殊召喚する!」

 《仇なす者を斥ける天使》
 効果モンスター
 星5/光属性/天使族/攻2000/守1800

ハーピィ・ナイトに取り付いた幻影の正体、仇なす者を斥ける天使が梨琥のフィールドに帰還する。
味方の天使族モンスターを守護する力を持つ聖なる天使だ。
攻め手を失い、美羽は困ったように笑いながらバトルフェイズを終了させた。

「りこちんやっぱ強いなぁー。
カード2枚伏せてターンエンド!」


梨琥 LP:8000
美羽 LP:7600


81 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:03:29 ID:nCFqbPqM0
「私のターン、ドロー・・・。
ねぇ、もうやめようよ・・・!美羽ちゃん・・・!」

フィールドは梨琥が大分有利となっている。
だがそれは梨琥にとって嬉しいことではない。
このデュエルに勝つこと、想像は出来ないが、それは恐らく親友との別れだ。
昨日までの親友と殺しあうなんて、とても納得できることではなかった。

「え?なんで?」
「なんでって・・・こんなのおかしいよ!」
「おかしくなんかないよー、これはゲームだよ?
ちゃんとルール通りやらなきゃダメだよっ!りこちん!」
「だからって、私と美羽ちゃんが殺しあうなんて、おかしいでしょ!?」
「何言ってるのーりこちん。
戦うのがあたしとりこちんだからって、なんも変わらないよぉ。
いつも二人でゲームとかしてるじゃーん?」

いつもと変わらない表情で、戦いを続ける美羽。
やはり説得は、できないのか・・・。
梨琥は目を伏せ、仕方なく、デュエルを進める。
この先に、希望があることを信じて。

「光を繕いし者を召喚・・!」

 《光を繕いし者》
 効果モンスター
 星4/光属性/天使族/攻1800/守1500

梨琥のフィールドに光の糸を繕う天使が降臨する。
その光の糸はカウンター罠の発動に必要なライフポイントをなくすことが出来る、優秀なモンスターだ。

「仇なす者を斥ける天使でハーピィ・レディ1を攻撃!」
「へへーっ、そうはいかないよー!聖なるバリア‐ミラーフォース‐!」
「無駄だよ!カウンター罠、煌きの裁き!!」

煌きの裁きはライフを半分払い、魔法・罠・モンスターの召喚・特殊召喚に全て対応し無効化する最強クラスのカウンターカード。
その代わり、墓地に光属性モンスターが存在する時には使えない。神の宣告の下位互換だ。
そのコストは大きいが、光を繕いし者のお陰でノーコストで発動できる。
眩き閃光が、美羽の発動した鏡のバリアをかき消そうとした。

だが、、

「かかったねー!こっちもカウンター罠、ハーピィ・ウィンド発動ー!」
「っ・・・!!」

ハーピィ・レディ1がくるくると回転し、竜巻を巻き起こしながら煌きの裁きの閃光に突撃する。
光は風にかき消され、ハーピィ・レディもろとも消滅した。
そして、邪魔するもののなくなったミラーフォースの効果が発動する。

仇なす者を斥ける天使の手から放たれた光の波動は鏡のバリアにより反射され、梨琥の攻撃モンスター全てを吹き飛ばした。

「あぁっ・・・、あたしのモンスターが・・・。」
「残念だったねっ!まだまだ甘いよーりこちん。」

美羽が勝ち誇った笑みを見せる。
対して3体のモンスターを全滅された梨琥はさすがに焦りを見せた。
フィールドをがら空きにする訳にもいかないのでカードを1枚セットしてターンエンドした。


「あったしのターン!ドローッ!」
ミラーフォースによって梨琥のモンスターを壊滅させたとはいえ、美羽のフィールドのがらあきだった。
しかし、美羽の猛攻はまだまだこれから始まる。

「手札から神鳥の若鳥を召喚っ!」

 《神鳥の若鳥》
 効果モンスター
 星4/風属性/鳥獣族/攻1800/守 200

美羽のフィールドに召喚されたのは、翠色の羽根を持つ若き神鳥。
墓地にいるモンスターが風属性のみの時、強力な効果を発揮するモンスターだ。
その効果とは、

「若鳥の効果発動ー!手札のモンスターを捨てて、りこちんの魔法罠カードを1枚破壊するぜっ!もちろん伏せカードでっ!」
「あぁっ・・・や、やば・・・。」

翠色の若鳥が羽ばたき、竜巻を起こす。
梨琥の伏せカード、攻撃の無力化は竜巻に吹き飛ばされてしまった。
これで梨琥のフィールドは裁きの間1枚のみとなる。

「よーし、若鳥でりこちんにダイレクトアターック!」

再度若鳥が羽ばたき、竜巻を起こす。
竜巻はまっすぐ梨琥へと向かい、カマイタチのダメージを刻み込んだ。

「きゃあああああっ!」

梨琥に1800ダメージ分の痛みが伝わる。
それは梨琥にとって初めてのデュエルでの痛みだ。
その痛みに驚き、戸惑いながら、歯を食いしばり痛みに耐える。

「い、痛・・・・。」
「へへー、どんなもんさーっ!
あたしはターンエンド!」


梨琥 LP:6200
美羽 LP:7600


82 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:04:00 ID:nCFqbPqM0
「ド、ドロー・・・。」

痛い・・・。胸がずきずきする・・・。
けど、耐えられない痛みじゃない・・・。

梨琥は弱音を吐きそうになるのをぐっと堪え、美羽を見据える。
美羽は変わらず、いつもどおりの明るい表情。

梨琥は、少し戸惑った。
目の前にいるのは、本当に美羽なのだろうか・・・。

「モンスターをセットしてターンエンド・・・。」

梨琥の手札に攻めに出られるカードはない。
守りを固めてターンエンドした。


「ふっふっふ。どうにもできないかなー?
あったしのターン!」

カードをドローする美羽。
その顔が、何かいい物を見つけた子供のように、にぃっと笑みを見せた。

「りこちん!あたしの切り札見せてあげるよっ!」

フィールドに、激しい烈風が巻き起こる。
激しく、だが暖かいその風は、最強のモンスターが降臨する前触れ。

若鳥には、墓地に存在するモンスターが風属性のときのみに発揮される、もう一つの効果がある。
若鳥一体で、2体の生け贄が必要なあるモンスターを召喚できるのだ。
若鳥は烈風に包まれ、風と共に進化する。

「あたしの最強モンスター、神鳥シムルグ召喚っ!!」

激しい風が開けるとき、そこにいたのは翠の羽根を持つ伝説の巨大な神鳥、シムルグ。
風を支配し、お互いのプレイヤーを刻む竜巻を巻き起こし続ける力を持つ、強力なモンスター。

「こんなモンスター、見たことない・・・!?」
「えへー、今日のために入れたんだよ!」

普段と違う美羽のデッキに、梨琥が驚きの声を上げる。
美羽のデッキは昨日まではハーピィデッキだったはずだ。
だが今日はハーピィではない、新しい鳥獣デッキになっている。
梨琥は美羽の未知のデッキに若干の焦りを覚えた。

「そしてー、これがシムルグの力だー!
デッキから魔法カード発動!神鳥の烈風殿を墓地に送るよっ!」

墓地に送られる魔法カード。
その瞬間、美羽のフィールドが風の吹き荒れる殿堂と化し、神鳥が哮りの声を上げる。
神鳥の烈風殿が墓地にあるとき、シムルグの真の力は解放される。
その力は、まさに最強の神鳥と呼ぶに相応しかった。

「そして手札からサイクロン!そのフィールド魔法を破壊!」
「っ・・・!」
小さな竜巻によって梨琥の裁判室が破壊される。
これで梨琥の魔法罠はなくなってしまった。

「よーっし!シムルグでその伏せモンスター攻撃!ゴッド・テンペスト!!」

シムルグが羽ばたき、嵐が巻き起こる。
その暴風の中では梨琥の伏せモンスターなどひとたまりもない。
その風に吹き飛ばされ砕け散ったのは、光属性天使族のリクルーター、コーリング・ノヴァだった。

「コーリング・ノヴァの効果発動・・・!デッキからコーリング・ノヴァ特殊召喚!」

倒しても次々に守備表示で特殊召喚されるリクルーター。
守りを固めるにはうってつけのモンスターだ。

「リクルーターかぁー・・・。まぁーいいや!ターンエンドっ!
ここでシムルグの効果発動!お互いに1000ポイントのダメージ!」

シムルグが再び大きく羽ばたく。
魔法罠カードをコントロールすることでこのダメージは軽減できるのだが、お互いとも魔法罠はがら空き。
シムルグの起こす神の竜巻が二人に襲い掛かった。

「きゃああああっ!」
「・・・♪」

竜巻の刃を受け、梨琥は悲鳴を上げる。
だが美羽は顔色一つ変えていない。
一体美羽はどうなっているのか・・・。


梨琥 LP:5200
美羽 LP:6600


83 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:04:35 ID:nCFqbPqM0
(何かいいカード引かなきゃ・・・)
「私のターン、ドロー!」
美羽の手札は0。フィールドにはシムルグ一体。
覆そうと思えばいくらでも覆せる状況だ。

「カードを1枚セットしてターンエンド・・!」
しかし結局攻めには出られず、カードを伏せてターンエンド。
とりあえず伏せカードは、シムルグの竜巻を防ぐ盾になる。

シムルグが竜巻を起こし、美羽に1000ポイント。梨琥に500ポイント分の竜巻が襲い掛かった。


梨琥 LP:4700
美羽 LP:5600


「あったしのターン!神鳥の烈風殿の効果で、シムルグはもう1つ効果を使える!
手札を1枚捨てて、相手の魔法罠カードを2枚まで破壊できるんだっ!
その伏せカードを破壊ー!」

美羽が手札を捨てると、シムルグの両翼からサイクロンが放たれる。
しかし、その効果に反応し、梨琥がカウンターを発動させる。

「カウンター罠!二次災害!
 自分フィールド上の魔法罠カードを破壊するカードが発動されたとき、相手フィールドのカードを2枚まで破壊できる!
 シムルグを、破壊!」

シムルグの竜巻に反応し、梨琥のカードが爆発を起こす。
だがその爆風はシムルグを守る激しい風にかき消されてしまった。

「えっ!?」
「残念!墓地に神鳥の烈風殿があるとき、シムルグは魔法・罠・効果の対象にならないのだよ!」
「あ、あう・・・!」

起死回生のカウンター罠も、完全に無駄撃ちとなってしまった。


「シムルグ!コーリング・ノヴァに攻撃!」

神鳥の羽ばたきによって、あっさりと吹き飛ばされるコーリング・ノヴァ。
そして再びデッキから降臨する。

「いつまでもつかなぁー。
さってー、シムルグのダメージがそろそろ痛いし、カード伏せてターンエンド!」

ダメージに顔色は変えなくとも避けたいことに変わりはないのか、盾をセットしてターンエンドする美羽。
ターンエンドと共に羽ばたき、シムルグが竜巻を起こす。

梨琥のフィールド上に魔法罠カードはない。
竜巻がもろに梨琥に襲い掛かった。

「ああああぁぁっ!」
幾度も刻み込まれる風のダメージ。
それは着々と、梨琥の体力を奪っていった。


梨琥 LP:3700
美羽 LP:5100


「わ、私のターン・・・。」

梨琥の手札は1枚。このままでは負けてしまう・・・。
梨琥がこの状況を打開する希望を籠めてカードをドローする。
だが、そううまくはいかない。引けたカードはこの状況を切り開く力にはならなかった。

「モンスターをセットして、ターン、エンド・・・。」

盾を伏せることも出来ず、モンスターだけ固めてターンエンドを宣言する梨琥。
痛みへの恐怖でぐっと目を瞑る。
そして例外なく、その痛みは訪れた。

「きゃあああああっっ・・・!」

激しい痛みにふらつく梨琥。
目もかすんできた。

このまま、私は、美羽ちゃんに殺されるのかな・・・。


梨琥 LP:2700
美羽 LP:4600


84 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:06:16 ID:nCFqbPqM0
「あたしのターン♪
辛そうだねーりこちんー。」
「痛いよ美羽ちゃん・・・。」
「アハハ、だけど容赦はしないよーっ!
シムルグ、コーリング・ノヴァに攻撃!!」

容赦ないシムルグの烈風に3体目のコーリング・ノヴァが吹き飛ばされる。
「私は、効果でマシュマロン、特殊召喚・・・。」
途切れ途切れの声で、デッキからマシュマロンを呼ぶ梨琥。
フィールドに現れたのは戦闘破壊されない、最強の壁モンスターだ。

「むー、マシュマロンかー・・・。
まぁーいいや、どーせシムルグの効果で・・・っ!?」
余裕の笑みを見せようとしながら、突然がくっとふらつく美羽。
すぐに体制を立て直し、頭を押さえながら平然を装う。

「み、美羽ちゃん・・?」
「っ・・・、ぐっ・・・、何でもないよ・・・。
カード1枚伏せて、ターンエンド・・・。」

ターンエンドと共に、またも巻き起こされる竜巻。
伏せカードが2枚あるので、美羽へのダメージはない。

竜巻のダメージを受け悲鳴を上げる梨琥を見て、さっきまで笑みを見せていた美羽の表情が少しだけ曇っていた。


梨琥 LP:1700
美羽 LP:4600


このまま、負けたくない。
美羽ちゃんに殺されたくなんかない。
けど、美羽ちゃんを殺したくもない・・・。

「ドロー・・・!」

生と友情の葛藤の中で梨琥がカードをドローする。
とりあえず、この状況だけは打開したい。
その一心で引いたカードを見る。

デッキは、答えてくれたようだ。
まだ希望はある・・・。

「カード1枚伏せてターンエンド・・・。」

盾をセットしてターンエンドする。
わずか500ポイントだが、ダメージは軽減できる。
500ダメージのシムルグの竜巻が梨琥に襲い掛かった。
先程まで1000ポイントのダメージを受けていた梨琥にとって、500ポイントのダメージは精神的に大分楽な物だった。


梨琥 LP:1200
美羽 LP:4600


85 :akatsuki ◆7SWrUgoQ6Y:2007/07/14(土) 21:06:55 ID:nCFqbPqM0
「ド、ドロー・・・!」
美羽のターン、カードをドローする。
何故か心なしか辛そうな表情をしていた。

「シムルグの効果発動、手札を1枚捨てて、その伏せカードを破壊!

美羽が手札を捨て、シムルグの両翼から再びサイクロンが放たれる。
その竜巻は、梨琥の伏せカードを吹き飛ばすべく、梨琥のフィールドへ直進していく。
だが、竜巻が到達する前に梨琥がその伏せカードを発動させた。

「罠カード、発動・・!光霊術-「煌」!!」

霊術とは、特定の属性のモンスターを生け贄に捧げ、強力な効果を発揮できる属性統一デッキの切り札的カード。
煌は光属性モンスターを生け贄に捧げ、カードを2枚ドローできる効果を持つ。
梨琥は伏せていたジェルエンデュオを生け贄に捧げカードを2枚ドローした。

「ちぇー、無駄撃ちかー・・・。
マシュマロン倒せないし、ターンエン・・・うあっ!?」

ターンエンドを宣言しようとして、頭を抑えふらつく美羽。
先程よりも辛そうな表情をしている。

「美羽ちゃん!」
「大丈夫だって・・・うあぁっ・・・。」

ふらふらとよろめき、ぜぇぜぇと息を切らす。
その姿はとても大丈夫な様には見えなかった。

「美羽ちゃん・・・もうやめようよ・・・!」
梨琥が美羽の傍に駆け寄ろうとする。
だが、美羽はそれを制止した。

「へへっ・・・大丈夫。大丈夫だよ、りこちん。
それに、デュエル始めたら最後までやらなきゃ、もっと辛い目に会うから・・・。」

美羽が疲れたような笑みを梨琥に見せる。
それは先程までの美羽とは何かが違う。
さぁ続けようと笑いかける美羽の目は、先程より少しだけ輝きが増していた。

「ターンエンド、ごめんね・・・りこちん・・・。」
美羽が謝る。なぜ謝っているのか梨琥が考えていると、シムルグの竜巻が襲い掛かってきた。
煌は使用してしまったので、防ぐ手立てのない1000ポイントのダメージが梨琥を襲う。

梨琥が痛みに歯を食いしばりながら思う。

この痛みに対して謝った・・・?

私が苦しんでいるのを見て、美羽ちゃんが謝ってくれた・・・?


梨琥 LP: 200
美羽 LP:4600



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最終更新:2007年09月04日 16:05
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