1ヶ月ほど前からだろうか、最近唯先輩が構ってくれなくなってきた気がする。
今までは毎晩のようにメールや電話をしていたし、休日にはよくデートしてくれていたのに、ここ最近は用事があるといって連絡をくれることもあまりなくなり、休日もいつも忙しくしているみたいで私と一緒に過ごすことは無かった。
もしかしたら、私の受験が近くなってきたということで気を使ってくれているつもりなのかもしれないけど、唯先輩分が足りなくって勉強なんて手につかないよ…。
梓「それとも私、飽きられちゃったのかな…」
学校から帰宅すると、誰もいない家でそう独りごちる。唯先輩に限ってそんなことはないと、今まであえて考えないようにしていたけれども、ふとそんな言葉が口をついて出てきしまった。
一度言葉にしてしまうと、いままで漠然と頭に浮かんでいた嫌なイメージが確固としたものに変わり、次から次へと嫌な考えが湧いてきて止まらない。
梓「唯先輩…会いたいよぉ…」
明日は私の誕生日。平沢家で先輩方や憂、純が盛大にお祝いをしてくれることになっていた。
確かにそれはとても嬉しいし、ありがたいことだと思うんだけれども、だけど…今の私は唯先輩と二人っきりの時間が欲しい…。
折角みんながお祝いしてくれるのにこんなこと考えちゃう私って嫌な子かな。こんな私唯先輩に愛される資格ないのかな…。
そんな風にうじうじと過ごしていると突然携帯のメール着信音がなった。慌てて携帯を開くとそれは唯先輩からだった。
From 唯先輩
「
あずにゃん、久しぶり!!最近会ってあげられなくてごめんね?
それで明日のことなんだけど、パーティーの前にあずにゃんの家に行っていいかな?少しだけ二人きりの時間が欲しいんだぁ…」
梓「唯先輩…」
もちろんですよ…ダメなはずが無いじゃないですか…。私はすぐにOKの返事を送った。
嬉しい…やっぱり唯先輩も私と同じ気持ちだったんだ。それとも何か用事があるのかな。
まさか別れ話とか…。まさかね…。そんなの有り得ないよ、うん絶対にない。
そんな事ないはずなのに…何でこんなに胸が苦しいんだろう…。
―――――――――
気がつくと私の目の前には唯先輩が立っていた。そして唯先輩は悲しそうな顔で私に告げた。
「あずにゃん、ごめんね。私もうあずにゃんとは一緒にいられないよ」
いや…。なんで…どうしてそんなこと言うの…。
「バイバイ、あずにゃん」
待って!行かないでよぉ!お願い!お願い…だから…。
「あずにゃん、しつこいよ。私あずにゃんのそういう所が嫌いなんだよね。いっつも偉そうなこと言ってる癖に結局誰かに甘えてばっかりじゃん。少しは成長しなよ。」
ごめんなさい…。謝るから…なんでもするから…置いてかないで…。待って!お願い!唯先輩!!やだ!!やだよぉ!!
―――――――――
梓「…………夢……か…」
嫌な夢だ。折角の誕生日だって言うのに最悪の目覚め。
梓「唯先輩……」
早速今の夢の内容が頭の中で鮮明に再生された。どうしてこんな嫌な夢に限ってはっきりと覚えているのだろう。
正直学校に行く気分にはとてもなれずこのまま欠席してしまおうかとも考えたが、憂や純に心配をかけるわけにも行かないと思いなんとか気持ちを奮い立たせ支度を整えると家をあとにした。
私はその日、一日中上の空でその日の学校での出来事は全く覚えていなかった。
憂や純には体調でも悪いのかと聞かれたけど適当に誤魔化した。とにかく今は一刻も早く唯先輩に会いたい、それだけだった。
その日の授業が終わり
放課後になると、私は真っ直ぐ自宅へ向かった。別にそれで唯先輩が早く来てくれるというわけでもないけれども、いつでも唯先輩に会える準備をしておきたかったから。
梓「……唯先輩、まだかな…」
梓「……早く来てください…でないと私…泣いちゃいますよ…」
ピンポーン
梓「来た!!」
ガチャ
梓「唯先ぱ……」
唯「あっっずにゃ~~~~~~~ん!!!!!!!!!!」ダキッ
梓「キャアッ!!」
私が玄関のドアを開けると唯先輩は私が唯先輩を視認する前に抱きついてきた。
唯「あずにゃん!!あずにゃん!!あずにゃん!!すっごく久しぶりだね!!
あぁ、あずにゃんの肌!!あずにゃんの髪!!あずにゃんの匂い!!もうこれが無いと生きていけないよぉー!!」スリスリペタペタモフモフペロペロクンカクンカスーハースーハー
梓「ちょ…////唯先輩、やめてください!!いきなりそういうことするのは…////」
唯「えぇ、いいじゃ~ん、あずにゃんのいけずぅ~」
梓「まったくもう!!大体もし親とかが出てきたらどうするつもりだったんですか!!」
唯「えぇ~?それは大丈夫だよ~。だってあずにゃんが玄関まで大急ぎで走って来るのが扉から透けて見えたもん!!」
梓「なっ…!!そ、そんなことしてないもん!!適当なこと言わないでよ!!」
あぁ~、もうなんでこの期に及んで私はこんなに素直じゃないんだろう…。さっきまで、あんなに唯先輩に嫌われてたらどうしようなんて悩んでたくせに…。
唯「とりあえず、ここじゃなんだし奥に入れてもらってもいいかな?」
梓「あっ、すいません。どうぞ」
梓「それにしても良かったです」
唯「ん~?なにが~?」
唯先輩が買ってきてくれたお茶を飲みながら私たちはリビングで久しぶりの2人だけの時間を満喫していた。
梓「唯先輩が私を嫌いになっていなくてですよ」
唯「え…?どうして?私があずにゃんを嫌いになるなんてありえないよ」
唯先輩は心底不思議そうな顔をして、首をかしげた。
それを見て私はこんな無邪気な唯先輩の気持ちを疑っていたのかと、申し訳なさと自己嫌悪で胸が詰まった。
唯「そうそう、今日はね。あずにゃんに
プレゼントを渡したくて来たんだ。あずにゃんは私の特別な人だからやっぱり二人っきりのときに渡したくて…」
特別な人…か。あらたまってそういわれるとなんだか照れてしまう…。
唯「happy birthday お誕生日おめでとう あずにゃん」
唯先輩は優しくそういうときれいにラッピングされた箱を差し出した。
梓「あ、あの…////ありがとうございます…」
唯「今開けてもいいんだよ?あずにゃん」ワクワク
…………開けて欲しいんですね。
唯先輩の期待するようなまなざしを受けて私はラッピングを丁寧にはがして箱を開けた。
梓「あっ…」
箱の中には指輪。そしてその指輪には綺麗な石がついていた。
梓「これは…宝石…?本物の…」
唯「うん、本物だよ!!正真正銘!!」
更におそるおそる手にとってよく見てみるとリングにはAZUSAと彫ってあった。
梓「これ…相当高かったんじゃ…」
唯「うん、ちょっとね…。だから頑張って稼いだんだよ」
梓「じゃあ、最近会ってくれなかったのは…」
唯「ちょっとバイト入れすぎちゃってね…」
梓「……唯先輩、馬鹿ですね……」
唯「ば、ばか?」
梓「ええ、馬鹿です…大馬鹿です……」
唯「あ、あずにゃん…。ごめんね、それ気に入らなかったかな……?」
梓「そういう……そういうことじゃ…ないんですよぉ…」ポロポロ
唯「あずにゃん!?どうしたの!?どこか痛いの!?」
梓「私はこんなのなくたって…唯先輩さえ居れば…ヒック…よかったのにぃ…」
唯「!!」
梓「ヒック…寂しかったんだからぁ……バカァ……ヒック……」ギュウ
唯「あずにゃん…そうだね、私馬鹿だった。あずにゃんの気持ち分かってなかったよ。寂しい思いさせてごめんね」ギュッ
その後、しばらく私は唯先輩の胸の中で泣き続けた。
唯「もう大丈夫?」
梓「はい、ご迷惑おかけしました」
唯「いやいや、元はといえば私が悪いんだし」
梓「でも、唯先輩は私を喜ばそうとして……」
唯「空回りしちゃった……」
確かにそうかもしれないけど、それは勝手に
勘違いしてた私も悪いわけで…
唯「あ!そろそろパーティー始まっちゃう!!」
梓「本当だ…」
っていうか、すっかり忘れてた……
唯「じゃ、行こっか?」
梓「……うん」
そして数時間後平沢家で盛大に行われたパーティーも終わり、私は唯先輩に家まで送っていってもらっているところだった。
唯「今夜はたのしかったねー」
梓「そうですね。私もこんなにたくさんの人に誕生日を祝ってもらえるなんてすごく嬉しいですけど、なんか皆私をおもちゃにしすぎじゃありませんか?」
唯「あずにゃんは愛されてるんだよ~」
梓「……微妙に嬉しくない」
梓「ところで、唯先輩…」
唯「ん?」
梓「今夜、泊まっていきませんか…」
唯「フフ、そうだねあずにゃんが怖い夢見ないように添い寝してあげるよ」ギュッ
梓「そっ、そんなの見ないもん!!」
唯「アハハ、冗談だよ」ナデナデ
梓「うう……////」
唯「あずにゃん、happy birthday 愛してるよ」チュッ
梓「わ、私も、愛してますよ……////」
おわり
- もしかしたらみんながこっそり見ているかも。 -- あずにゃんラブ (2013-01-12 00:35:59)
最終更新:2013年01月12日 00:35