唯先輩が大学に入って一人暮らしを始めて半年…。

私はほぼ毎日唯先輩のマンションに通っていました。
…いやいや、何を想像しているんですか?
私は受験生ですよ?
唯先輩に勉強を教えて貰うために通っているんですよ?
あまり成果はありませんけど
そんなわけで今日も唯先輩のところへ勉強に行く中野梓です。
今日の晩ご飯は何を作ってあげようかな。
昨日はスパゲッティ作ったから…
確か冷蔵庫に卵があったはず。親子丼とかいいかもね。
明日は休日だから、朝食も作っちゃお。
そのためのお泊りセットだもの。
唯先輩と学業を果たす為に!…ウソジャナイデスヨ?

そんなことを考えている内にマンションに到着。いつの間に…
あぁもう。これじゃまるで私が唯先輩の家に行くのが楽しみにしてるみたいじゃない。
私は憂に頼まれたから行ってるんです。
「梓ちゃんが行ったらお姉ちゃん喜ぶんじゃない?」
なんて言われたら行くしかないじゃないの。
え?行けとは言ってないって?そうですかね?

チャイムを鳴らす。
するとドタドタト慌ただしい音が聞こえてきて
「あずにゃ~ん!」
なんて言って抱きついてきて。
もう、なんで分かっちゃうんですか。私じゃなかったらどうするんですか…
いつか澪先輩から聞いた律先輩みたいだ。超能力者ですか。
うれしくなんか、ないんですから。

「あれ?誰か来てたんですか?」
部屋に入ってテーブルを見るとお菓子の袋やらジュースやらがばら撒かれていた。
「うん、りっちゃんが…さっき帰っちゃったけどね」
律先輩が。確か今は澪先輩と同せ…一緒に暮らしているとか。
でもこの散らかりよう…私が来るまで何をしていたらこんなことに…
あずにゃん、なんでベッド確認してるの?」
「へっ?あ、いやこれは…」
しまった、ついナニをしていたのかとか考えてしまった。
「…あずにゃん、大胆」
「な!なななな、何を考えてるんですか!!」
誤解を招くじゃないですか!
全く!私はまだ健全な高校生なんですよ!
いつも唯先輩に抱かれてるとか思われたら大変じゃないですか!全く!まったく!
「…とりあえず、台所借りますね?」
「ほーーい、今日は何作ってくれるのー?」
「えーっと…あれ、卵無いですね…昨日はあったのに」
「あ、そういえばねー、りっちゃんがお昼に親子丼作ってくれたんだよー」
…先を越された。律先輩め。イライラしてきた。

しかし困った。何を作ろうか。
冷蔵庫の中にあるもので済まそうと思っていたので、材料も買ってない。
買い物は明日行くつもりだったし。
冷蔵庫には…バターとジャムと…何で親鳥のお肉が残ってるんですか。使い道が分からなかったんですね、私。
っていうか冷蔵庫の中が質素すぎます。
どんだけ私に頼ってるんですか唯先輩。
何か食べれるものがないかとその辺をゴソゴソしていると、とんでもないものを見つけました。
タバコです。
…え?
体が硬直しました。それぐらいびっくりしました。
え?唯先輩?え?あの唯先輩が?
そういうのとかは全然縁がなさそうだったのに。
まさか。吸ってるんですか?未成年なのに…
そんな、唯先輩、不良になっちゃたの?
イメージと違います。唯先輩はもっと純粋で、白無垢なイメージだ。
まぁ、ちょっとダークな唯先輩も全然アリですが。超アリですが。
けど、私にはまだ心の準備ができてないですよ。
もしかして、大学に悪い友達がいるんですか?だったら付き合いで吸ってるとか…
それとも、自ら…
…何だか唯先輩の知らない部分が見えちゃったみたいで…
…うぅ、いやだ、怖くなってきちゃった。
すごく怖い。何が?何だろう…
私に内緒にこんなことやってたなんて。
…なんだか腹立ってきました。さっきのイライラも相まって。
「唯先輩!!」
当の本人はリビングの床に寝ころんで、以前私がプレゼントしたぬいぐるみを抱きしめていた。
…ちょっと揺らいじゃったけど、止まるわけにはいかない。
「ほへ?」とか言いながらゆっくり振り向く姿にまたくたっときたけど、我慢した。
「なんですかこれは!」
そう言って私はさっき見つけた害物を突き付けた。
唯先輩はそれをじーっと見て
「………みるどせべん?」
「マイルドセブンです!」
あなたは本当に大学生ですか?流石に心配しますよ。
「……あずにゃんが不良だったとは、知らなかったな…」
「私のじゃないですよ!台所にあったんです!」
「…えぇ?なんで?」
「……唯先輩が吸ってるからでしょう?」
「吸ってないよ~」
困った顔をしながらぶんぶんと首と両手を振っている。
ものすごく可愛くて思わず抱きしめてしまそうでしたが我慢して、
「…信用できません」
「えぇ~本当に知らないよ~なんで私の家に…………あ」
と言って、唯先輩はいきなりそっぽを向いた。
………なんですかその今更な誤魔化し。
「…唯先輩?」
「私は知らないよ?りっちゃんが隠してくれなんて言ってないよ?」
………とりあえず、お説教です。
あと澪先輩にも連絡入れなきゃ。

「つまり、律先輩に持っていて欲しいと頼まれたんですか?」
「うん…澪ちゃんに見つかって、怒られてから、りっちゃん禁煙するって約束したんだってさ」
悪い友達がこんな近くにいたとは。灯台下暗し。
絶対唯先輩の部屋で吸うつもりだったんだろう。
あの人は澪先輩に任せよう。
それじゃあ…
「嘘ついて、ごめんなさい」
私はこっちだ。
「本当に、唯先輩は、吸ってないんですね?」
「うん、本当、そんな気は全然無いよ、あずにゃんが体悪くしたらいけないし」
…唯先輩…!
「…じゃあ、確認しますね」
「へっ?んむっ!…んはあ…あっ」
とりあえず、匂いとか味とかは煙くさいものは無かった。
次は触診ですよ。

「…あずにゃん、結局、私の無実は証明されたの?」
「…後でもう一回検討します…」
「ふふ、付き合いますよーん…」
はぁ。やっぱりこうなっちゃった。私ったらもう…
けど、私がなんであんなに怖かったのか、分かった気がする。
私は、この唯先輩の匂いを、香りを、失いたくなかったんだ。
そして、
「…明日は、買い物行きますよ」
「うん…何作ってくれるの?」
「親子丼です」
「今日食べたよ~」
「律先輩のより美味しいのを作ってやります」
「…ふふ、わかったよ…って、そうだ、晩御飯どうしよっか?」
「あぁ…まだ9時ですし、どっか食べに行きますか?」
「あれ?それって深夜徘徊?」
「まさか、私は健全な高校生ですよ?」
「じゃあ何なの~」

「…………社会勉強です」
何という苦し紛れ。無理矢理に複線を回収しようとして。馬鹿みたい。
でも唯先輩は笑ってくれて。
あぁ本当にうれしい。いつもの唯先輩だ。
大好きです、唯先輩。
明日の親子丼には、親鳥のお肉使ってみようかな。

END


  • さらによくなる親子丼! -- (あずにゃんラブ) 2013-03-07 01:44:04
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最終更新:2010年12月03日 03:20