中野梓、あだ名は
あずにゃん。私の部活の後輩だ。
かわいくて真面目でギターが上手い。
でもちょっと頑固で自分の気持ちを表現するのが下手な所もある。
初めての後輩だと言うこともあってとにかくかわいくてしょうがなかった。
抱きついたりあだ名をつけたりちょっかい出したり。
最初はイヤがってたけどだんだん私に慣れてきたみたいで嬉しかった。
でもそれだけじゃ満足できなくなってきた。
澪ちゃんやりっちゃん、ムギちゃんと同じただの先輩としか見てもらえてない。
当たり前のことなのに、すごく寂しい。
自分に見せない顔を他の人に見せている、それだけで胸が苦しい。
毎日、あずにゃん大好きだよ。なんて笑いながら言ってるけど本当はそうじゃない。
私は本気で言っている。
もちろん真面目に受け取ってもらえるはずもなく毎回流されて終わる。
自分のせいだけどその度に傷つく。
でも、クヨクヨ悩んでるのはもうやめた。
ちゃんと言おう。
きちんと自分の気持ちを伝えよう。
冗談まじりで言うんじゃなく本当に本気で。
「あ、あのさ、あずにゃん」
「何ですか」
「えーっと、さ、寒いよね。最近」
「まあ冬ですからね」
「そ、そっか。うん。そうだよね」
「はい?」
失敗。
リハって事にしてもう一回。
「あ、あずにゃん!わ、私!」
「ど、どうしたんですか、突然大声出して」
「……さ、寒いの苦手なんだよね」
「はぁ? そうですか。でも暑いのも苦手ですよね」
「う、うん」
「春と秋にしか生きられない生き物ですね」
「ひどい事を言われた」
かなり失敗。
でもめげずにもう一回。
「あ、あずにゃん!」
「はい?」
「す、す、スキーは得意?」
「はぁ、得意と言う程ではありませんが多少はやります」
「そ、そっか。私は苦手なんだよね」
「でもすぐ上手くなるんじゃないですか?唯先輩飲み込み早いですから」
「そうかな?」
「その代わり飽きるのも早いですよね」
「うっ」
また失敗
で、でも良い所まで行った。
たぶん。
今日はこの辺にしとこうかな、なんてまた弱気になる。
いやダメダメ。
ちゃんと言うって決めたんだから。
うん。頑張ろう!
「あの、あずにゃん」
「さっきから何ですか?」
「いや、あの、あのね」
「はい?」
「うーん。えーっと」
「はい」
「その、あの、あれだよ」
「何ですか」
「だからその、あのね」
「はぁ?」
こんな事してたら日が暮れる。
手紙とかに書いた方が良いのかもしれない。
でもきちんと顔を見て伝えたい。
うーん、でも言えない。
やっぱりダメかも。
「唯先輩」
「へ?」
「その、さっきから何を言おうとしているのかわかりませんが」
「う、うん」
「ゆっくりで良いですから。私はちゃんと聞きます」
「え」
あずにゃんの顔が赤い。
そっか、あずにゃんはちゃんと聞いてくれる。
うん。次は、そう、今度こそきちんと言える気がする。
「あずにゃん、あのね」
「…はい」
<おしまい!>
- あー、すっげー気になるーーw -- (勇者ホット) 2011-01-30 20:10:23
最終更新:2010年12月10日 20:10