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「はぁ……」
折角のクリスマスなのに、私の気分はブルー気味だ。
「わかってたはずなんだけどな……」
私は、あずにゃんと一緒にクリスマスを過ごそうって思っていた。
でも、いつも家にいない両親が帰ってきているからと、断られてしまった。
確かに、いつもいない両親とたまに過ごす時間は大切だ。
私の両親も家を空けがちだからよくわかる。
でも……。
「ちょっと悔しいな……」
大学に入ってからあんまりあずにゃんに会っていないし、今日ぐらいはと思っていたけど……。
でも、相手はあずにゃんの両親だし、勝てる訳ないじゃん……。
「……あ、メールだ」
携帯を開くと、あずにゃんからだった。
「……窓の外を見てください?」
カーテンを開けて見ると、外にちらちらと舞うものが見える。
「……雪、か」
うす暗く広がる雲から、白い雪が街へ舞い降りて行く。
「……あ、あずにゃん!?」
下を見ると、あずにゃんがこっちを見て手を振っていた。
そして、携帯から着信音が鳴る。
「もしもし」
『唯先輩ですか? こんな夜遅くにすいません』
「どうしたの? 両親と過ごしてたんじゃないの?」
ちょっと棘のある言葉で言ってしまったけど、仕方ない。
電話の向こうであずにゃんが黙る。
「……あずにゃん?」
『……ごめんなさい』
しばらくの沈黙の後に、あずにゃんが言った。
『自分勝手だってわかってますけど、唯先輩が……気になって』
あずにゃんの家からここまでかなりの距離があるのに、歩いてきたようだ。
「両親のこと、放っておいて大丈夫なの?」
『大丈夫です。多分……』
あずにゃんにしては何だか歯切れが悪い答えだ。
でも、それでも嬉しい。私のことを思ってここまで来てくれた。
「駄目だよ。めったに過ごせない時間なんだから、大切にしなくちゃ」
『……それは、唯先輩との時間も同じです』
「……ばかっ。そういうの、反則だよ……」
知らないうちに、涙が流れていた。

「何でもないよ……」
気づかれない様に、何とか平穏を保って喋る。
『急に来てしまって、迷惑でしたね。もう帰ります』
「ま、待って!」
咄嗟に叫んでしまった。
『……』
「その、お茶ぐらい飲んでいきなよ……」
『……いいんですか?』
「その、あずにゃんがよかったらだけど……」
『じゃあ、少しだけ……』

それから少しして、チャイムが鳴った。
「あの、お邪魔します」
「……いらっしゃい」
戸口に立つあずにゃん。でも、一向に入ろうとしない。
「唯先輩……」
「何?」
「……その、すいません」
「謝らなくていいよ」
あずにゃんが家にあがってくると思ったら、何故か私に近づいてくる。
「な、何……?」
少し沈んだ顔をしたあずにゃんが、私の頬を撫でる。
「……泣いていたんですね」
「……!」
あずにゃんが私の頬に残ってた涙をすくった。
「こ、これは……」
慌てて涙を拭うけど、あずにゃんの声は沈んだままだ。
「私が、あんなこと言わなかったら……」
「これは、その……」
「……」
「あずにゃんがそんなに気負う必要は無いよ。私が勝手に……」
そこまで言いかけて、私はあずにゃんに抱きしめられた。
「あ、あずにゃん……」
「私が勝手に断ったのに、唯先輩が泣くことなんてないんです……」
あずにゃんの冷たい体が、強く私を抱きしめる。
「それなのに、勝手に来て、こうやって家にあげてもらって……」
「違うよ。両親と過ごす時間は大切だよ。あずにゃんは間違ってない」
優しく抱きしめ返して、あずにゃんを諭すように言葉を続ける。

「私だって、あずにゃんの両親が仕事で家にいることが少ないの知ってるもん」
「でも、私、唯先輩のこと、泣かせちゃった……」
「これは、嬉しかったからだよ。あずにゃんが来てくれてさ」
「唯先輩……」
あずにゃんをそっと離すと、満面の笑みで笑いかける。
「だから、あずにゃんがそんなに気負うことないんだよ?」
それでもあずにゃんは、今にも泣きそうな顔で私を見つめる。
「それに、私だって謝らなきゃいけないし」
「……?」
「私、あずにゃんの両親に嫉妬してたんだ」
「あずにゃんの大切な人だってわかっていたけど、それでもあずにゃんを取られたって思ってさ……」
照れ隠しに笑ってみるけど、あずにゃんは笑わない。
「……ごめんなさい」
「だから、もういいんだよ」
それから、ただ抱きしめ合った。お互いが思いあっていることを確かめる様に……。
「あずにゃん」
「何ですか?」
「もう遅いし、泊まっていかない?」
「……」
「お願い……」
「……じゃあ、お世話になります」

……何でこんなことになってるんだろう。
あずにゃんがクリスマスは家族と過ごすって言って、私は1人で過ごそうと思っていた。
でも、あずにゃんが来てくれて、家にあげて……。
2人っきりでベッドに横たわっている。
「その、唯先輩、狭いでしょう? 私、床で寝ますから」
「駄目だよ。私が無理言って泊まってもらっているんだから」
1人用のベッドだから、思いのほか狭い。
でも、悪い気はしない。
むしろ、この状況がとてもうれしい。
ずっと、寂しかったんだよ……?
あずにゃんが私以外の人のことを優先しているのが気に入らなかったんだ。
だから、ちょっとのわがまま。
「あずにゃん、今日はありがとう」
「そんな、私は……」
「本当に来てくれて、嬉しかった……」
そう言うと、あずにゃんが少し戸惑った顔をした。
「泣かないで下さいよ……」
「えっ……? 泣いてる?」
頬に手をやると、私の涙が指を濡らす。
「こ、これは違うよ! 悲しくないよ!」
慌てて弁明すると、あずにゃんがくすっと笑った。
「……よかった」
そして、そのままあずにゃんが手を握った。
「今日は、ずっとそばにいてあげますから……」
「今日だけ……?」
「……ずっとそばにいていいんですか?」
「ずっと、そばにいて欲しいよ……」
「……じゃあ、ずっとそばにいます」
「あずにゃん……」
もう、どこにも行かない様にあずにゃんを抱きしめる。
「ずっと、そばにいて……」
「はい……」
すごく、あったかい……。
寂しさなんて、とっくにどこかへ行ってしまった。
そのまま私は幸せの中で、眠りに落ちた……。

END


  • 梓ご両親は梓に唯先輩との事を許したのかな? -- (あずにゃんラブ) 2013-01-10 18:24:08
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最終更新:2010年12月28日 13:04