166 :唯と梓の初デート :2009/11/19(木) 03:34:59 ID:F+PyUbE8
梓「ゆ、唯先輩!!」

唯「なあにー?」

梓「こ、今度の日曜日なんですけど…なにか予定ありますか?」

唯「うーん、特にないかなぁ…なんで?」

梓「その…い、一緒に、その…えっと…」

唯「なあにー?一緒になにするの?」

梓「え…映画見に行きませんかっ!!」

唯「行く!」

梓「返事はやっ!」


…というわけで、私とあずにゃんは映画を見に行くことになりました。

日頃クールなあずにゃんが顔を真っ赤にして話しかけてきたから何事かと思ったら、まさかデートのお誘いだなんて…♪

唯「日曜日、とっても楽しみだね、あずにゃん♪」

梓「はい♪」

梓「それでどうして遅刻するんですかあなたって人は!!」

唯「ご、ごめんなさーい…」

日曜日、待ち合わせの時間から30分遅れた私は、公衆の面前であずにゃんに叱られていた。
周りの人はほほえましそうに笑っているけど、一応先輩なんです私。結構へこみます…

梓「まったく…あれだけ遅れないように早く寝てくださいって言っといたのに」

唯「だって…あずにゃんとデートするのが楽しみで寝られなかったんだもん」

梓「…え?」

唯「ほら、こんな風に二人だけでお出かけするなんて今までなかったでしょ?なんかわくわくしちゃって」

梓「へ、へぇ~…」

唯「それもあずにゃんから誘ってくれたんだし…大好きな人からデートに誘われるなんて幸せだなぁって思ってたら、つい…」

梓「ま…まぁ、今回は許してあげます。別に映画が見られなくなったわけでもないですし」

唯「ホント!?ありがとあずにゃーん♪」

梓「だ、抱きつかないでくださいよ!恥ずかしいですよもうー♪」

抱きつく私の顔を押し返すあずにゃんは、怒っているような笑っているような、おかしな表情だった。
どうしてこんなことになってるのかわからないけど…なにはともあれ、映画館に出発!

梓「それでなんでホラー映画なんですか!!」

唯「え?だっておもしろそうでしょ?」

梓「そういう問題じゃなくですね!もっとこう、ムードというかなんというか…せっかくのデートなのに…ゴニョゴニョ」

唯「まぁまぁ!二人一緒ならなに見たって楽しいよ!それともあずにゃん、こういうの怖いのー?」
梓「ま、まさか!余裕ですよ澪先輩じゃあるまいし!」

そう豪語していたあずにゃんは10分後、ガタガタ震えながら私にしがみついていた。

梓「あ、あはは、こ、こんな低レベルな演出笑っちゃいますねぇ!」

唯「あずにゃん、どうして私にくっついてるの?」

梓「ちょ、ちょっと寒いんですよここ!暖房効いてないみたいですね!」

唯「え、そうかな?普通にあったかいと思うけど」

梓「寒いったら寒いんです!だいたい…きゃあっ!!」

ちょっとグロテスクなシーンになったとたんに、あずにゃんは私に飛び付いてきた。
これはこれでかわいいけど、ちょっとかわいそうかも…

唯「あずにゃん大丈夫?そんなに怖いなら見るのやめようか?」

梓「だ、大丈夫ですし怖くもありません!だいたい、せっかくお金払ったのにもったいないです!」

唯「でも…」

梓「大丈夫です!」

あずにゃんは私から離れると、スクリーンに視線を戻した。その目には、うっすらと涙が浮かんでいるようだった。

どうやら意地になっちゃったみたいだ。怖いなら無理しなくていいのに…そうだ!

唯「ねぇあずにゃん♪」

梓「はい…?きゃっ…」

私はあずにゃんに体を密着させて、その小さな手を握った。
あずにゃんの手は心なしか、というよりかなり震えていた。

梓「な…なにするんですか」

唯「こうすれば怖くないでしょ!」

梓「べ、別に私は…」

唯「いいからいいから!ね?」

梓「……はい」

私たちはそのままで映画を見た。
こうしていると常にあずにゃんのぬくもりが感じられて、なんとなく怖さは半減するような気がした。

あずにゃんは相変わらず下を向いてうつむいていたから、怖いままかもしれないけど…あぁ、顔が赤くなるほど怖いのかなぁ…

唯「いやぁ~、おもしろかったねー♪」

梓「…あんまり覚えてないです」

唯「えー?私が手握っててあげても怖かった?」

梓「そうじゃなくて…ゆ、唯先輩のことが気になって…ゴニョゴニョ」
唯「ん?なあにー?」

梓「な、なんでもありません!それより、これからどうするつもりですか?」

唯「映画も見たし、帰ろっか♪」

梓「なんでそうなるんですか…まだ色々行けるじゃないですか!」

唯「色々って?」

梓「買い物行ったり何か食べたり…とにかく、このまま帰るなんて嫌です」

唯「あずにゃん…そこまで私のことをー♪」

梓「ちっちが…いや、違ってはないですけど…えっと…そうだ、これは唯先輩の義務なんです!」

唯「義務?」

梓「そうです!私にあんな映画を見せたんですからおわびしなきゃいけないんです!」

唯「んも~素直じゃないな~♪もっと遊びたいって言ってくれればいいのに~♪」

梓「な…」

私の言葉に、あずにゃんは顔を真っ赤にして硬直していた。
もしかして、図星だったのかな…もちろんこういうあずにゃんもかわいいんだけど。

梓「……」

あずにゃんは意を決したかのように顔を上げると、スッと私の手を掴んだ。


梓「…行きますよ。まずはお昼にハンバーガーでも食べましょう」

唯「わ、ちょっと待ってよあずにゃ~ん!」

私の手を引いて走り出すあずにゃんの横顔は、なんだかとっても楽しそうだった。
どうやら、今日のデートは、まだまだこれからが本番みたいだ。

梓「唯先輩、今日はたくさんおごってもらいますからねーっ♪」

唯「えぇ~!」

fin



172 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2009/11/19(木) 06:06:06 ID:KY1StqFS
ハンバーガーショップで食事してる所をたまたま通りかかった澪と律に目撃されて
後日冷やかされる所まで想像した


月曜日:部室

律「んっふっふ~♪梓ぁ、昨日はお楽しみだったなー?」

梓「!!!な・・・何のことですか」

律「しらばっくれても無駄だぞー!昨日偶然あの店を通りかかったらあらビックリ!
  唯と梓が仲良くお食事中ではありませんか!」

梓「み、見てたなら声かけてくれればよかったのに(っていや、そんな事になったら折角の・・)」

律「で~と♪だったんだろ?いいねぇ若いもんは」

澪「お前もな」

紬「あら、唯ちゃんと梓ちゃん、昨日はデートだったの?」

唯「うん!昨日はあずにゃんとね~・・」

梓「そんなわけ無いじゃないですか!!な・・・何で私が唯先輩とデ、デ、デートなんか・・・」

唯「え・・・あずにゃん・・・・・・?」

梓「あ!!!い、今のはそういうことじゃなくてなんというか言葉の綾というか身から出た何かで(ry」

ダダダダダッガチャバタン!!

梓「唯先輩!待ってください!先輩!」タタタタガチャッ


唯「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァ・・」

梓「ゼェ・・ゼェ・・・唯、先輩・・・違うんです。今のは」

唯「・・・違わないよ」

梓「え?」

唯「私たちは昨日、何も無かったんだよね・・・?」

梓「先輩・・・全部、全部私が・・」

唯「だからさ、あずにゃん。」

梓「・・・?」

唯「今度の日曜日、デート・・・しよ?私達の・・・初めてのデート」

梓「・・・・先輩・・・・」

唯「・・・・・・・・・」

梓「分かりました。でも・・・」スタスタ

唯「・・・ん?」

梓「初めてじゃなくて、二回目です」ギュゥゥッ

唯「あずにゃん・・・」ギュッ

梓「次は唯先輩が行きたい所に、私を連れて行ってください」

唯「うん!次の日曜日が楽しみだね!」

梓「はい、楽しみにしてます・・・♪」



181 :唯と梓のデート2回目[1/7] :2009/11/19(木) 19:22:06 ID:5kwZcUCm
梓「♪~」
紬「こんにちは、梓ちゃん」
梓「あ、ムギ先輩。こんにちは」

 木曜日の昼下がり。より具体的に言うならば5限と6限の間の休み時間。私はトイレから教室に戻ろうとした所で、ムギ先輩と遭遇した。
 一年生と二年生ではフロアが違うので、(澪先輩は例外として)先輩達に会うことは滅多に無いのだが。

梓「どうしたんですか、こんなところで?」
紬「ちょっとね。職員室に用事があったの」
梓「そうでしたか」
紬「それより、随分ご機嫌みたいだけど?」
梓「あ、え!? そ、そう見えましたか……?」
紬「それはもう。まるで日曜日のデートが待ちきれない恋する乙女のような――」
梓「っ!」

 ムギ先輩のその発言に、廊下に屯していたクラスメイト数人が視線を向ける。
 私は咄嗟にムギ先輩の口を塞いで、廊下の端っこに連れ込んだ。

梓「(ムギ先輩、一体どこでそのような与太話を?)」
紬「何を言っているの梓ちゃん。ただの比喩よ? それとも本当にデート――」
梓「わぁああああ!!」

 その叫びに、またしてもクラスメイト達の視線が私に集まる。
 ていうか、なんでこの人普通のトーンで話してるんだよ。わざわざ小声にした私はどこの道化だこのやろう。
 どうしたの、梓? という外野からの声に、私は必死になんでもないとアピールする。
 そんな私の様子を見て、ムギ先輩は嬉しそうに口元を歪めていた。

梓「もう、有らぬ誤解を招いたらどうするんですか……」
紬「ふふ、ごめんね梓ちゃん。それじゃ、私はそろそろ行くから」
梓「あ、はい。ではまた放課後に」
紬「ええ」

 朗らかに挨拶を交わし、ムギ先輩は踵を返した。
 そして――、

紬「二週連続なんて、素晴らしいわね」

 言い残されたその言葉に、私はがっくりと膝をついた。

梓「……」

 なんでバレてんの?

 ――日曜日。デート当日。
 待ち合わせの場所で、私はまたしても待ち惚けを食っていた。

梓「(全く……、今度こそ遅れないでくださいねって、あれほど念を押したのに)」

 憤りはしてみたものの、きっとまたあの笑顔で許してしまうであろう自分に嘆息する。

梓「まだかな、唯先輩……」

 先輩が来るまでの間、少しだけ思考を巡らせてみることにする。
 何について? 決まってる。どうしてムギ先輩にバレているかについて、だ。
 一番手っ取り早く導ける解は、律先輩がバラしたってことだろうけど。
 しかし澪先輩も一緒なのだから、不用意に言い触らすような状況にはなり得ないとも思う。
 となると、律先輩達同様に、先週私と唯先輩が一緒にいるところを目撃していた、か。

梓「……有り得る」
唯「何が有り得るの?」
梓「わぁ!?」

 目の前には、小首を傾げて私の顔を覗き込む唯先輩。
 両の手でハンドバッグを持ち、後ろ手に組むという愛らしいポージング。

 イェス、ストライク。

梓「な、なんでもないです、なんでも」
唯「ふーん……。顔赤いけど、大丈夫?」
梓「こ、これは、その……、暑いから! あー、今日は暑いなー! ……なんて」
唯「えぇ、今日すっごい寒いのに。あずにゃん元気だね」
梓「……」

 真に受けられてしまった。

梓「そ、それより遅刻ですよ遅刻! 今度は遅れないからって言ってたじゃないですか!」
唯「えへへ、また楽しみで寝れなくて。ごめんね、あずにゃん」
梓「……べ、別に、いいですけど」

 申し訳程度に反省の色を浮かべつつ、残りの8割は照れ笑い。
 なんて眩しい微笑みだろうか。再び顔が熱を帯びてきたのを感じて、私は先輩から視線を外した。

 外した先にギターケースが鎮座していた。

梓「……あの、唯先輩」
唯「なぁに?」
梓「なんでギター持ってきたんですか?」
唯「え?」

 心当たりがない、と言わんばかりにきょとんと目を瞬かせる唯先輩。
 視線でギターケースを指し示すと、唯先輩はそれをしばらく見つめて、

唯「あれー? 私ギー太持ってきたんだっけ?」

 そんなことを口走った。

梓「いや、覚えててくださいよそれくらい」
唯「んー、おかしいなぁ。持ってきてないと思うんだけど……」
梓「でもそのケース、唯先輩のですよね」
唯「うん、私のだと思う」

 どういうことだ?
 私は待ち惚けの間ずっとここに立っていたけれど、唯先輩が来るまでこのケースは置いてなかった。
 そして、唯先輩がギターケースを持っているシーンも目撃していない。
 唯先輩も持ってきてない、と言う。しかし、これは間違いなく唯先輩のものであって……。

 ん?

 ケースから、何か黄色い糸のようなものがはみ出している。
 冬へと移ろうこの季節において、尚も燦々と大地を照らす柔らかな秋陽を浴びて、その黄色は煌いた。

 黄色?

 まさか――。

 ケースのファスナーを静かに開く。

 ビデオカメラを構えたムギ先輩が入っていた。

 閉じた。

梓「唯先輩、逃げましょう」
唯「え、なんで?」
梓「なんでもです!」
唯「わ、わっ、待ってよあずにゃん~!?」

 唯先輩の手を引いて、私は走り出した。
 えっと、今日のデートコースは……。ちくしょう、ギターケースの中のムギ先輩のインパクトが強すぎて完全に飛んだ。
 この日の為に念入りに調べてあったのにぃぃぃ!!
 脳内で不満をぶちまけながら駅前の喧騒を抜けて、私達は、入り口でカップルが親しげに話している大きな建物の中へと入っていった。

唯「あ、あずにゃん、ちょっと休もうよ」
梓「そ、そうですね……」

 入り口にカップル=デートコースと安易に判断してしまったが、強ち間違いでもなかったようで、そこがどこなのかは内装を見てすぐに判断できた。

唯「ボウリングか~」
梓「折角だからやっていきましょうか」
唯「折角って、ボウリングが目的で入ったんじゃないの?」
梓「あ、いえ……、まあ、そうでしたね」
唯「?」

 悟られる訳には行かない。 
 唯先輩には純粋に私とのデートを楽しんでもらいたい。
 それに、唯先輩が万が一ムギ先輩の存在に気付いてしまえば、どうせならムギちゃんも一緒に~、とか言い出しかねない。
 ムギ先輩には全くそんな気ないだろうけど、それでも私達のデートを阻害する可能性は全て潰さなくてはならないのだ。

 受付でレーンの番号を渡され、エレベータで目的の階層へと向かう。

唯「結構混んでるねー」
梓「仕方ないですよ、日曜日ですし」

 椅子に荷物を置いて、ボールを取りに行く。
 重さは8か9かで迷ったが、唯先輩が10を選んでいたので9を選択した。
 荷物を置いた反対側の椅子に座ると、私の真似をするようにして唯先輩が隣に座る。

梓「……っ」
唯「……?」

 真横に座られた位でなんで緊張してんだ私。
 自分のヘタレっぷりに思わずこめかみを押さえた。

梓「あ、あの、唯先輩」
唯「うん?」
梓「先輩からですよ」
唯「おお、そうだったね!」

 唯先輩はそう言って、9ポンドのボールを掴んで放った。
 いや、それ私のだよ。10ポンド使え10ポンドー!

 カラカラン、と音を立ててピンが散る。
 倒れたピンの数は――2本。

 2本?

梓「あの、唯先輩」
唯「むううう」
梓「ボウリングの経験とかって」
唯「もちろんあるよ!」
梓「アベレージは」
唯「150くらいかな!」

 絶対嘘だ。

唯「そういうあずにゃんはどうなのさ」
梓「私は、無難に100前後ですかね」
唯「ふ~ん」

 ここで私の脳が、一つの妙案をはじき出した。
 せっかくデートなのだ。ただボウリングを楽しんでいるだけでは芸が無い。

梓「先輩、提案があるんですけど」
唯「なぁに?」
梓「勝負しませんか?」
唯「うん、いいけど」
梓「私が負けたらアイス奢ってあげます」
唯「本当に!? じゃあ、私が負けたらあずにゃんにあいs――」
梓「キスしてください、私に」
唯「え……?」

 唯先輩は僅かの間、口を開けたまま固まって、

唯「ふ、ふふふ……、良いよ! 私に勝てると思わないことだね!」

 上気して顔を真っ赤に染めあげた私に、そう宣言した。

梓「嘘だ」

 終わってみれば惨敗だった。
 7レーンまで、私は自分の勝利を信じて疑わなかった。
 しかしこのお方、恐ろしいことに7レーンから三連続ストライク。所謂ターキーを叩き出してくれやがりまして、私は地に両膝をついて自分の爪を噛むことしかできなかったのでございます。

唯「ふふふ、私の勝ちだね、あずにゃん!」
梓「はいはい認めますとも。あそこまで綺麗な逆転劇魅せられたらいっそ清々しいですもん」
唯「アイス奢ってくれるんだよね」 
梓「ええ、もう唯先輩の為ならいくらでも」
唯「……ん~」

 唯先輩は少しだけ考えるような素振りを見せて、それから私の顔をじっと見据えた。

梓「? どうしたんでs――」

 ――ちゅ。

梓「!」
唯「えへへ、アイスも良いけど、こっちもいいかなって」
梓「あ、あ、う」
唯「……あずにゃん?」
梓「ず、ずるいですよ……、ちゃんと決めたルールには従ってもらわないと」
唯「……そっか、ごめん」
梓「ば、ば……」
唯「ば?」
梓「罰として、もう1回です。もう1回――」

 ――パシャ。

 パシャ?
 なんだその効果音。

梓「っ、まさか!」
唯「わあ!?」

 突然立ち上がった私に驚き、唯先輩が前のめりに体勢を崩す。
 棚ボタと言わんばかりにぎゅっと受け止めて、私は周囲を見渡した。
 ごめんなさい唯先輩。構ってあげたいけどそれどころじゃないんです。

 ――奴が、奴が来たんだ!

唯「奴って誰?」
梓「いいですか、唯先輩。今貴女は狙われているんです」
唯「え、ええ?」
梓「でも安心してください。私が必ず守ってあげます」
唯「話の展開が読めないよあずにゃん」

 気付けば口から出ていたらしく、唯先輩の可愛らしい疑問を優しい嘘を織り交ぜて完璧に諭し、その手を取って再び走る。
 ここは、このボウリング場はもうダメだ。
 どこか、安全な場所に逃げなくては――!

 私と唯先輩の愛の逃避行は続いた。
 木を隠すなら森の中、人が隠れるなら人ごみの中、とショッピングモールを二人で歩きつつウィンドウショッピングを堪能し、またしても感じた奴の気配を逸早く察知、
逃げ込んだカラオケで盛り上がりつつも甘いムードを漂わせ、そして今私達は、ファミレスで夕食を摂っている。
 長くなりそうだから端折った訳は無い。断じて。

梓「あの、唯先輩。この後予定とかって……」
唯「んー、もう少し一緒にいたいけど、あんまり遅いと憂が心配するからね」
梓「あー、想像できます」
唯「うん、だから今日はこれで解散」
梓「そういうことなら仕方ないですね」

 会話を弾ませつつ、食事を口に運ぶ。

唯「そういえば、あずにゃん。結局今日一日、誰から逃げてたの?」
梓「そ、それは、む……むぁ」
唯「むぁ?」
梓「唯先輩は知らなくてもいいことなんです!」
唯「えー、気になるよー……」
梓「……じゃあ」
唯「うん?」
梓「来週も、その……デート、しませんか?」
唯「三週連続? え? 三週連続!?」
梓「なんで2回言ったんですか」
唯「大事なことなので」
梓「嫌なら教えてあげませんよ?」
唯「ち、違うよ、嫌とかじゃなくて、その……嬉しい、から」
梓「珍しいですね、唯先輩が照れるなんて」
唯「もう、からかわないでよー」

 ぶーたれる唯先輩に脳内で悶えつつ、私は来週のデートの約束を取り付けた。
 食事を食べ終えた私達は、会計を済ませて外へ出る。

梓「うわ、寒っ……」

 吹き付ける北風に落ち葉が舞い踊り、アスファルトに擦れて小気味良い音を立てた。
 外はすっかり冷え込んで、冬の装いを呈している。

唯「帰ろっか、あずにゃん」
梓「はい」

 その寒さに負けぬよう、私達は身を寄せた。

唯「楽しかったね」
梓「走りすぎて疲れましたけどね」
唯「でも、それも映画みたいで楽しかったよ。あ! まだ『むぁ』の正体聞いてないよあずにゃん!?」
梓「発音まで正確に再現しないでもらえますかね」
唯「で、誰なの?」
梓「来週教えてあげますよ」
唯「むぅ。絶対だからね?」
梓「むしろ、自分から正体明かしそうですけどね、あの人」
唯「?」
梓「いえ、なんでもありません」

 出来ることならずっと一緒にいたいけれど、それでも別れの時間はやってくる。

梓「ここまで、ですね」
唯「うん。今日はありがとね、あずにゃん」
梓「こちらこそです。来週、楽しみにしてますから」
唯「……うん」
梓「……」

 唯先輩の顔が赤い。
 私も顔が熱い。きっと唯先輩と同様、朱に染まっているのだろう。
 冷たい風がそっと頬を撫でて、その熱を冷ましてくれているかのようだった。

 これは、つまりあれですか。
 ボウリングの時の様なほっぺにちゅーとかじゃなくて、もっとこう恋人同士のそれが必要な時――という認識で宜しいのでしょうか唯先輩。
 心の中でそう問うも、返事は返ってこなかった。

 僅かの間見つめ合う。
 心なしか、その瞳は潤んでいるような気がした。

 一歩、前へ出る。
 唯先輩の顔が、そっと近付く。

梓「……目、閉じてもらえますか?」 
唯「……」

 その言葉に、唯先輩は瞼を閉じる。
 周囲に人影は無く、音という音が一切消失したような感覚に陥る。
 自分の胸の鼓動だけが、ハッキリと聞こえる。
 それは先輩に近付く程早く、触れる度激しく波打つ。

 私は少しだけ背伸びして、唯先輩の背に手をまわして――

 ――パシャリ。

梓「……」
唯「……え?」

梓「台無しだろ眉毛ぇぇぇっーーーー!!」


 とりあえずキレた。




 来週に続く。……かもしれない


  • GJ! -- (名無しさん) 2009-11-20 17:38:08
  • 沢庵空気読めwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww -- (名無しさん) 2010-02-12 15:54:16
  • 眉毛wwwwwwwwwwwwwwwwwwww -- (名無しさん) 2010-08-08 10:05:03
  • 百合神はこうでなくては -- (名無しさん) 2010-08-08 22:30:47
  • ムギ・・・・・空気嫁よ!!!! -- (名無しさん) 2010-08-28 20:32:52
  • すっごくいい!沢庵もいいww -- (名無しさん) 2011-05-02 21:44:49
  • 沢庵…空気読めぇ〜wwwwwwwwwwwwwww -- (名無しさん) 2012-08-29 13:43:50
  • 眉毛おいwwww -- (名無しさん) 2012-10-18 21:34:19
  • おい眉毛www -- (名無しさん) 2013-02-06 03:22:15
  • 唯が照れる瞬間はかわいいのう -- (名無しさん) 2020-02-04 23:51:37
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最終更新:2009年11月20日 02:18