「着いたよ、
あずにゃん!」
「はい!・・・休日だから、やっぱり人が沢山いますね」
私達が遊園地に到着した頃には、既に多くの人たちが楽しんでいた。
手を繋ぎながら、仲睦まじく歩いているカップル。
デジカメを片手に、楽しそうに話をしている女の子達。
風船を片手に、お父さんやお母さんに美味しそうなクレープをねだっている男の子。
それぞれの表情は違うけれど、皆が今を楽しく過ごしているという事が伝わってくる。
私達は、と言うと・・・。
「凄いね、あずにゃん!面白そうな物が沢山あるよ!!」
「そうですね・・・って、とりあえず落ち着いてください、唯先輩!」
何となく・・・はしゃいでいる子どもと、その子を落ち着かせる親という関係みたいになっていた。
どうしてこうなった・・・。予想では、もっと唯先輩が私をリードしてくれるような関係になるかなって思っていたのに・・・。
だけど・・・唯先輩はいつもと変わらない唯先輩だった。
無邪気に笑っている唯先輩を見ると、それだけで私も楽しくなってくるから・・・まぁ良いのかな。
「あの絶叫マシーンにも乗ってみたいなぁ・・・あ、あのメリーゴーランドも可愛いなぁ♪」
「唯先輩・・・遊園地って初めてですか?」
「ううん、家族で来た事は何回かあるよー」
「そ、そうですよね!・・・何だか、唯先輩がはしゃいでる姿を見てたら、もしかして初めて遊園地に来たんじゃないかって思ったので・・・」
「今までは家族としか遊園地に来なかったけど、今日はあずにゃんと2人きりだもん!自然とテンションが上がってきちゃうよー♪」
唯先輩は朝から変わらぬ笑顔を私に振りまいてくれた。その笑顔を見せられる度に、私の心はキュンとなった。
そして収まっていたのに、再び暴れ出す私の鼓動・・・。今もドキドキが止まらなくなっている。
だけどこのドキドキは、朝のように緊張から来るものではなかった。大好きな人が傍に居る、大好きな人に触れていられる。
そんな嬉しい気持ちから来るドキドキなんだ・・・。
唯先輩は私の手を引いたまま、勢いよく走り出した。目的の場所はどこなのか、まだ私にはわからない。
しかし、その地へ向かって走って行く唯先輩の背中は、とても大きく・・・頼もしく見えた。
「あずにゃん、これに乗ろうよ!私、あずにゃんとこれに乗ってみたかったんだ!」
「えっ・・・こ、これですか・・・?」
唯先輩が指差した先には、ジェットコースターがあった。流れるコースターからは様々な叫び声が聞こえてくる。
普通のジェットコースターよりも落差もスピードもあるようだけど・・・。これに乗るって、唯先輩は平気なのかな・・・。
私の頭の中に浮かぶ、とある心配事・・・。しかし唯先輩が言葉を続けてしまい、口にする事ができなかった。
「スリル満点だよ、あずにゃん!このジェットコースターね、急上昇、急降下、急カーブ、そしてまた急上昇している場所があるんだ!」
「そ、そうみたいですね・・・」
「それ故、このジェットコースターが何て呼ばれているか、知ってる?」
「さぁ・・・何ですか?」
「ふっふっふっ・・・それはねぇ・・・」
「死神の鎌!」
死神―――――
その言葉を聞いた瞬間、ドックンと鼓動が私の中で響くのがわかった。
それは今の今まで感じていたドキドキとは全く違う、心地の悪い胸の高鳴りだった。
唯先輩と一緒に居る事が楽しくて、すっかり忘れていた今朝の夢・・・。
「何でそう呼ばれているかって言うと、最初の急上昇、急降下、急カーブの所が鎌のように見えて、次の急上昇で・・・」
脳裏に蘇ってくる、暗闇で起こった唯先輩とのやりとり・・・。
あの夢の中では、唯先輩に化けた死神が、私の魂を奪おうとして・・・それを庇った本物の唯先輩を・・・。
思わず私自身が飛び起きてしまったほどの生々しい夢だった。しかし、あれは悪い夢であって、現実では起き得ない出来事だ。
何も心配する事は無い・・・何も案ずる事は無い・・・。それなのに・・・急に湧き上がってきた、不安と恐怖・・・。
『あずにゃん、今日死んじゃうんだもん』
「まるで天国に連れて行かれるような感覚になるんだって」
唯先輩は、真剣な表情で真っ直ぐに私の事を見つめている。
私が見た夢の中の唯先輩と、私が見ている目の前の唯先輩の表情が重なった。
その瞬間、私はキュッと自分の腕を握り、視線を下に落としてしまった。
「あれぇ~?もしかして、あずにゃん・・・怖くなった?」
「・・・・・」
「あずにゃん?」
「すみません・・・大丈夫、です・・・」
明らかに震えている声・・・。それは、寒さのせいではない事はよくわかっている。
唯先輩に悟られないように、気丈に振舞おうとしたが、声に出てしまった。おそらく表情にも・・・。
いつもとは違う反応を見たせいか、唯先輩が少し慌てふためきだしてしまった。
「あわわ・・・ゴ、ゴメンね、あずにゃん・・・ちょっと怖い事言い過ぎちゃったね・・・」
「・・・・・」
「変な事言っちゃったけど、乗ったみたら面白いって評判なんだよ、このジェットコースター・・・」
「そうなんですね・・・」
「あ・・・そうだ、別の所に行ってみようか・・・他にも楽しい所はあるし、私、あずにゃんと楽しい
思い出作りたいし・・・」
いつの間にか涙声になっている唯先輩・・・。その声を聞いた私は、ハッと我に返った。
唯先輩と楽しい思い出を作りたいと思っているのは私も同じだ。
1か月前から約束をしていた今日のデート・・・とっても楽しみだった。楽しみで、前日眠れずに寝坊してしまうくらいに。
ただでさえ、約束の時間に遅刻をして、唯先輩に迷惑をかけてしまったというのに・・・。
私が見た変な夢を勝手に引きずって、唯先輩を泣かせてしまうなんて・・・私って嫌な子だ。
『あずにゃん、これに乗ろうよ!私、あずにゃんとこれに乗ってみたかったんだ!』
唯先輩から楽しみを奪うなんて事は、私自身が許さない。私はもっと、唯先輩の楽しそうな笑顔を見たいんだ。
いつまでも下なんて見ていられない・・・視線を戻して唯先輩の顔を見ると、唯先輩はうっすらと涙を浮かべていた。
「すみません、唯先輩!さっきの事は忘れてください。私、もう大丈夫です!」
「で、でも・・・」
「私も唯先輩と、このジェットコースターに乗ってみたいです。最初は確かに怖いかもって思ったりもしたんですけど・・・
でも、唯先輩と一緒なら恐くないかなって・・・むしろ、唯先輩と一緒だから楽しそうかなって思ったんです。だから・・・」
「・・・えへへっ、ありがとう、あずにゃん!」
唯先輩の顔に、フワッとした笑顔が戻った。
目尻には輝く物が残っていたけれど、それは笑顔の綺麗なアクセントになっていた。
私達が乗ろうとしていたジェットコースターは、通常は1時間程待たないと乗れない人気アトラクションらしい。
しかし、今はお昼時で人も分散している為、20分で乗る事ができた。
だけど、忘れてたんだよね・・・最初に頭に浮かんだ心配事・・・。
キャー
「だ、大丈夫ですか、唯先輩・・・」
「うぅ、あずにゃん・・・気持ち悪い・・・」
唯先輩が乗り物酔いをしやすいって事・・・。
夏休みに山へ夏フェスに行ったけれど、その時に唯先輩は行きのバスで酔ってしまっていた。
そんな人がジェットコースターに乗ったらどうなるか・・・容易に想像できた。
だから、最初に唯先輩がジェットコースターに乗るって聞いた時は止めようかと思った。
だけど、話の流れで・・・乗る事を止める事はできなかった。むしろ忘れてしまっていた。
唯先輩も自分が乗り物酔いしやすいっていう自覚はあったと思うけど、どうしてジェットコースターを選んだんだろう・・・。
「唯先輩、あそこにベンチがありますから、少し休みましょうか」
「う、うん・・・あずにゃん・・・さっきのジェットコースター、楽しめた・・・?」
「はい、スリル満点で面白かったですけど・・・」
「えへへ・・・それなら良かったぁ」
まだ体調が万全で無い為に弱々しい笑顔だったけど・・・そうなんだよね、唯先輩っていう人は。
自分の意見もあるけれど、それ以上に私の事を気にしてくれている。
どんな時でも、あずにゃん、あずにゃんって・・・いつも私を最優先に考えてくれている。
だから今回も、私が楽しければそれだけで満足・・・そんな気持ちが、唯先輩の笑顔に出ていたんだ・・・。
ホント、唯先輩っていう人は温かい人だな・・・。
『グゥ~』
『ググゥ~』
唯先輩の事を考えていると・・・どちらともなく、ちょっと恥ずかしい音が聞こえてきた。
私達はゆっくりとお互いの顔を見合い、顔を赤らめながら照れ笑いをした。
「あずにゃん・・・///」
「唯先輩・・・///」
時間は既に13時を過ぎている。お腹の虫が鳴いてもおかしくない時間だ。
私に至っては、まともに朝ごはんを食べてきていなかったので、お腹が鳴るのは必然だった。
「そろそろ、お弁当にしましょうか・・・」
「お弁当・・・あずにゃんのお弁当・・・!うん、そうだね!」
お弁当という言葉を聞いた途端、みるみるうちに唯先輩の生気がよみがえってきた。
それは、勿論私のお弁当が楽しみだからだと思う。
何て言っても、初めて唯先輩に食べてもらうお弁当だから、唯先輩に美味しく食べてもらいたい。
その為に昨日の晩から頑張って作ったんだから・・・。
でも、一つだけ不安な事があった。今朝、家から駅まで全力疾走してしまったんだよね・・・。
お弁当の中身がある程度崩れてしまっているのは仕方ないけど、目を覆いたくなるような状況にはなっていませんように・・・。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
アズ「オベントウハ、コインロッカーニアズケテアルノデ、トリニイクタメニイドウチュウデス」
ユイ 「アズニャン、チュー♪」
アズ「ヤメテクダサイ///」パシン
ユイ 「タタカレタ…」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
心地良い青空の下、私達が来たのは芝生が綺麗な広場だった。
ここの遊園地の敷地内には、アトラクションの他にも、走ったり遊んだり、休憩もできる広場もある。
お昼時ともなれば、レジャーシートを敷いてお弁当を食べるカップルや家族も多く見受けられる。
そんな楽しそうな空間の中、私達も少し遅いお弁当の準備を始めた。
「Ah~あずにゃんの手作りのお弁当~♪ 中身は何だろ、楽ーしみ♪」
「唯先輩、ふわふわ時間のサビのメロディで歌わないでください・・・しかも、結構ズレてますよ」
「えへへ、だって楽しみなんだもーん♪今日は、あずにゃんのお弁当もすっごく楽しみにしてたんだから!」
屈託の無い笑顔で、唯先輩はふわふわ時間の鼻歌を歌いながら、敷き終えたレジャーシートの上に荷物を置いている。
唯先輩は本当に、何をするにもいつも楽しそう・・・。ギターの弦を張り替える時だって、いつもあのような笑顔を見せている。
ギー太、ギー太って、いつも名前を呼びながら弦を交換してるんだっけ・・・。
たまに私のアドバイスが耳に入らないくらいに、ギー太、ギー太って・・・唯先輩は自分のギターを溺愛してる。
まったく、いくらなんでも私がアドバイスしている時は、ちゃんと私の話に耳を傾けてほしいな。
『あずにゃん、焼きもち?』
「べ、別に焼きもちなんかじゃありません!!」
「えっ!?・・・な、何、あずにゃん・・・?」
「あ・・・い、いや・・・何でもありません///」
何で、急に部室での言葉を思い出したんだろう。あの時は、律先輩や澪先輩にからかわれたっけ・・・。
唯先輩は確か、あずにゃんはあずにゃんで大事に想ってるからね・・・なんて言ってくれたような。
あの日から何か月も経つけど、それは本当の事なんだよね。
あの日から・・・いや、その前から唯先輩はずっと私の事を大切に想ってくれている・・・。
だから私も唯先輩の事を大切に想っているのに・・・ギー太に嫉妬するなんて・・・私って変な子だ。
- って、やっぱり私、あの時ギー太に嫉妬してたって事なのかな。
あぁ、もう今はそんな事気にしないでおかないと。せっかくのデートなんだから、唯先輩の事だけを考えなきゃ。
「ほら、あずにゃんも早くこっちにおいでよ♪」
シートの中央で私を手招く唯先輩・・・その彼女の前には、バスケットが置かれてる。
ウェットティッシュも用意している所を見ると・・・なるほど、唯先輩の手作りお弁当はサンドイッチみたいだ。
唯先輩のサンドイッチに、私のおにぎりやおかずが沙汰打ちできるかはわからない・・・。
だけど、唯先輩に喜んでもらえるように、頑張って作ったお弁当なのは変わらない。
「早く、あずにゃんのお弁当も見せてよぉ~♪」
「あっ、ダメです・・・まだ中身確認してな・・・」
私の制止を振り切り、唯先輩は私の作ってきたお弁当をお弁当を広げてしまった。
お弁当を広げた瞬間、明るかった唯先輩の表情がさらにパァーッと明るくなった。
「わぁ・・・あずにゃんのお弁当・・・凄く美味しそうだよ!!」
私も恐る恐るお弁当の中身を確認すると・・・少しだけ形は崩れていたけれど、人前に出しても問題ないレベルだった。
見栄えにホッとしたのと同時に、唯先輩から美味しそう、という言葉を聞けた事を嬉しく感じた。
私が作ってきたお弁当は、おにぎりが4つ。中身はシーチキンマヨネーズ、明太子、おかか、昆布と、全て変えてみた。
おかずは鶏のから揚げ、卵焼き、ポテトサラダ、タコさんウィンナー、ほうれん草とベーコンのバター炒め、ミニトマト、うさぎのりんご。
うん、正直作りすぎたと思う。でも、憂が・・・私が作ったものなら、唯先輩は何でも食べてくれると思うって言うから・・・。
唯先輩が美味しそうに食べてくれる姿を妄想・・・コホン、想像しながら作っていたら、量がこんなになってしまった。
一方、唯先輩が持ってきたお弁当は、サンドイッチとフライドポテトと、種類は少なかった。
だけど、サンドイッチの中身が、タマゴサンド、ハムレタスサンド、エビマヨサンド、フルーツサンドと、豊富でどれも美味しそうだ。
見た目は、お店で売っていてもおかしくないレベルだった。唯先輩も本気を出せば凄いんだな・・・。
「あずにゃんの為に、真心をこめて作った自信作です!」
唯先輩はフンスッ!と気合いを入れながらVサインを作っていた。
シートの上に広がる美味しそうなお弁当達・・・。まぁ、女子高生2人で食べる量ではないと思っていたけど・・・。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ユイ 「ハイ、アズニャン…アーン♪」
アズ「ミ、ミンナミテルカラ、ハズカシイデスヨ…」
ユイ 「エー…アズニャンガタベテクレナイナラ、オベントウカタヅケチャオウカナ」チラッ
アズ「ソ、ソレハ…イヤデス」
ユイ 「ジャア…アーン♪」
アズ「…アァモウ、タベテヤルデス!…アーン///」
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
何だかんだで、ある物を除いて、全て2人で食べきってしまったのだった。
「あずにゃんが握ってくれたおにぎり・・・最後の1個は、何かもったいないなくて食べれないよ~」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、食べない方がもったいないんじゃないですか?」
「うーん、そうなんだけど・・・何か、持っていると良い事があるような気がするんだ。ご利益ご利益♪」
「もう、何ですかそれ・・・そんなに縁起が良い物でも無いですよ?」
「あ、じゃあ家に帰ったらゆっくり食べさせてもらうよ!・・・ほら、家に帰るまでがデートだって言うし!」
「・・・それを言うなら遠足です。まぁ、デート・・・も、間違えでは・・・ないかもしれないですが・・・」
そう、残った・・・と言うか、唯先輩があえて残したのは私が作ってきたおにぎりだった。
3個は食べてくれたけれど、何故か1個だけ残した唯先輩・・・。
やっぱり作りすぎてしまったのではないか、もしかしたら美味しくなかったのではないかと心配した。
だけど、唯先輩は首を横に大きく振って否定した。そして、笑顔でこう付け加えてくれた。
「あずにゃんのお弁当、世界一美味しかったよ♪」
唯先輩の口から聞かれた感想は、『美味しそう』という期待感から『美味しかった』という満足感へ到達していた。
その言葉を聞けただけで、充実感で全身が覆われ・・・思わず口元が緩んでしまう。
笑顔の唯先輩は、アルミホイルに包まれた最後のおにぎりを優しく撫でながら、大事そうにバッグにしまっている。
あずにゃんお手製の『にぎりん』ちゃんと、勝手に命名されたけれど・・・唯先輩らしいネーミングセンスで、ははっと苦笑いをしてしまった。
私にとっては、初めて作った『食べてもらう為の』お弁当。
こんなに喜んでもらえるなんて・・・昨晩から一生懸命作った甲斐があったなぁとつくづく思う。
「よしっ、行こうか、あずにゃん!」
「はいっ、行きましょう!」
ニッコリと笑いながら、唯先輩は手を再び差し出してくれた。
まだ半日と経っていないけれど、唯先輩の言葉、態度、表情に触れているだけで、自然と唯先輩との距離も近くなっている気がする。
一緒に居るだけで楽しくなったり笑顔になったりできるのは、唯先輩が初めてだ。
繋いだ手と手と見つめながら、この後どんな楽しい事が待っているんだろうと考える自分が居る。
想像しただけでワクワクして・・・私は胸が高鳴っていくのだった。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ユイ 「ネェ…アズニャンノタメニ、ネコミミヲモッテキタンダケド、ツケナイ?」
アズ「ナンデソンナモノ、モッテキテルンデスカ!」
ユイ 「TDLハ、ミミガタノカチューシャヲスルノガ、テイバンダトキイタノデ!」
アズ「ココハTDLデハアリマセンヨ…ナノデ、キャッカデス!」
ユイ 「エー…」ショボーン
アズ(ショボーンナユイセンパイモカワイイナ…)
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「あずにゃん、次はここに入ろうよ!」
「えっ・・・こ、ここですか・・・?」
ジェットコースターの時と同じ反応みたいになってしまったけど・・・唯先輩が指差した先には、お化け屋敷があった。
お化け屋敷は、恐怖故に相手に遠慮なくくっつく事が出来る為、デートの定番スポットだ。
入り口には、数組のカップルが並んでいる。その隣にある出口からは、息を切らしながら、ホッとした表情で出てくるカップルの姿が見える。
恐怖を乗り越えた時、2人の絆は強くなれる。それならば、私も唯先輩と入って絆を深めていきたいと思っていた。
しかし、お化け屋敷に掲げられている看板を見て、自然と足が止まってしまったのだ。
「どうしたの、あずにゃん・・・?やっぱり怖い?」
「いや・・・そういうわけではないんですけど・・・」
「・・・じゃあ、入ってみようよ~。この・・・」
「死神の館!」
最終更新:2011年07月21日 20:06