唯先輩と結ばれたあの雪の日から数日たったある日、
私は唯先輩の部屋にいました。まあ、付き合う前から、何回かお邪魔していますが、
恋人としては初めてなので、少し緊張していました。
「ふんふ~ん」
そんな私の前で、唯先輩が楽しいそうにしています。恋人の私としては、
幸せなのですが、今は不安でいっぱいです。何故なら、
たくさんのネコミミをいじっているからです。
「どうしてこんなことをしているんですか?」
「もうすぐ、3月3日だよ。3月3日は耳の日、耳といえばネコミミ、ネコミミといえば、
あずにゃん。だから、その日は一日中ネコミミをつけてるあずにゃんを愛でるんだ」
どうしたんでしょうか。私にはまったく理解できません。
「普通にひな祭りを楽しめばいいじゃないですか」
「もちろん、お雛様とかも飾るよ。それと同時にあずにゃんも愛でるんだ」
もう決定事項のようです。
「ねえ~、どれがいい?あずにゃん」
「・・・・・当日決めればいいじゃないですか。」
「当日決めてる時間がもったいないよ~。それにあずにゃんごまかすかもしれないし。」
相変わらず、妙なところで鋭い。私が答えずにいると、「あ、そうだ~」
とのんきな声で携帯電話でどこかに連絡し始めた。
一時間後、
「これより、第一回私、平沢唯が恋人のあずにゃんを愛でるために必要なネコミミ
とは何かを考える会を始めたいと思います」
- まるで意味が分かりません。周りを見ると、澪先輩や律先輩
にムギ先輩。憂に純、それに唯先輩の幼馴染の和先輩までいる。
「実はかくかくしかじかなんだよ~」
「いや、まるで、意味が分からないんだけど。どうしてそこでネコミミが。」
さすがは澪先輩だ。ちなみに私は否定ばかりするので、
この会議では発言権はないらしい。・・・・当事者なのに。(ちなみに、
和先輩は書記らしい。)周りを見ると、うわ、こいつ、空気読めよ、みたいな目を
澪先輩に送っている。
その時、律先輩が
「なら、梓の代わりに澪が・・・・」
「早速話し合いを始めよう」
「じゃあ、まず、憂から」
「え、私、そうだな、トラミミとかは」
「確かにあずにゃんはそれを気に入っていて、初日の出の時もつけていたね」
あれは忘れていただけです。
「ウサミミにバニースーツはどうだ」
ネコミミですらないじゃないですか。百歩譲って
ウサミミだけならまだ許容できますが、何ですかもうひとつは。
耳の日なんですからミミだけでしょ。いいんですか議長。
「バニー姿のあずにゃんか~」
なんか、幸せそうな表情で笑ってます。
「あら、りっちゃん、バニースーツはスタイルのいい澪ちゃんのほうが
いいわ。ここはネコミミ、ネコハンド、ネコシューズ(?)に尻尾をして
完璧なネコにすべきだわ」
スタイルが悪くてすいませんね。
「それもいいね~。そんな姿のあずにゃんが迫ってきたらと思うと、
理性を抑えられる自信がないよ~」
迫りませんから安心してください。
その後、私はサプライズにしたほうが面白いという律先輩の発言で家に帰されました。
。
そして、3月3日、その日は早く学校が終わったので、そのまま、
唯先輩の家によりました。正直、気は重いです。じゃあ、来なきゃいいじゃん
になりますが、そこはほれた弱みといいましょうか。
断じて、コスプレがしたいわけではありません。
「あ~ずにゃ~ん」
と唯先輩が、ネコミミを持って来ました。ん、このネコミミは・・・・
「あずにゃん、覚えてる?これは、私があずにゃんってあだ名をつける
きっかけになったネコミミだよ~。今日はあずにゃんと恋人として過ごす
初めての行事だからね。二人の思い出を忘れないようにね」
そして、唯先輩はそれを私の頭につけて、
「やっぱりあずにゃんは可愛いよ~。大好きだよ~」
と抱きしめてきます。
「
ねえ、あずにゃん。
これから、恋人としての初めての行事とか、たくさん、
新しいことが起こると思うんだ。
二人で、たくさん楽しい思い出を作っていこうね」
「・・・・はい。好きですよ、唯先輩。」
- まったくこの人には敵いません。思えば、いつも私は唯先輩に手を引いて
もらってばかりいます。いずれは私が唯先輩の手を引っ張っていけるよう
に頑張らなくちゃ。
「わたしもだよ~。そうだ、次はこれだよ」
そんな決意をしていると、ウサミミと黒い布地を渡してきます。
「・・・・・あのこれは?」
「あの会議、結構時間かかっちゃたんだけど、全部着れば、いいんじゃない
でしょうかって純ちゃんが言ったから、それもそっかってことになったの。
あ、安心していいよ。憂は遊びに行ってるから。可愛いあずにゃんを見ていいのは
私だけだからね」
本当なら、やめて下さいと文句を言いたいところでしたが、
「えへへ~、あずにゃん、お着替えしようね~」
唯先輩のの笑顔を見ていたら、今日くらいはいいかな、と思いました。
最終更新:2011年03月05日 13:18