梓「お疲れ様です。……って誰もいない」
梓「そうだよね。みんな勉強で忙しいもんね……」
梓「……これなんだろう」
梓「シンデレラ? 誰がこんな本を置いて……」
梓「でもなつかしいなぁ……」
梓「……あれ? このシンデレラ顔が無い」
梓「それに、何だか……、急に……、眠く……」
───
──
─
???「シンデレラ……! シンデレラ……!」
梓「う……ん。はっ! こ、ここは……!」
律「何やってんだよ」
梓「律先輩に、澪先輩? 何ですその格好。またお芝居ですか?」
律「何寝ぼけたこと言っているんだよ、シンデレラ」
澪「そうだ、馴れ馴れしい口きかないでよシンデレラ」
梓「へ? シンデレラ?」
律澪「「うん」」
梓「……」
梓「えええええええぇ!?」
梓「い、いつの間にこんな服を……! ここはどこ? シンデレラって何!?」
律「あんたがシンデレラだ!」
梓「えっ、私が……!?」
律「そう! さっさと働かないとだめじゃないか! サボっているとお母様に言いつけてやるぞ! この汚くてみすぼらしいシンデレラぁ!」
梓「へぇ~、律先輩すごい演技ですね。そんな長いセリフ噛まずに言えるなんて」
律「いやぁ、それほどでも……。ってなに訳わかんないこと言っているんだ! なめんなよこのおとぼけ女!」
澪「お、おい。何もそこまで言わなくてもいいんじゃ……」
律「だって、私たちは意地悪な2人の姉だぞ!? いじめていじめていじめまくらないと!」
澪「だけどさぁ、私たち何でそんなにシンデレラをいじめなくちゃいけない訳?」
律「そ、それはそういう話なわけで……。ってもう行かないと次のシーン始まっちゃう!」
澪「へ? 舞踏会のこと?」
律「急ぐぞ!」
梓「あ、あの! ……行っちゃったよ」
さわ子「ちょ~っとぉ! 私のことを忘れてない!? いじわるな母さんよぉ!」
梓「さ、さわ子先生……?」
さわ子「シンデレラは留守番よ~! 家じゅうの掃除と洗濯終わらせておいてねぇ~! じゃあね!」
梓「……」
梓「シンデレラ、か……」
梓「ってことは王子様と結婚してハッピーエンド……?」
梓「そんなことあるわけないよね。夢だよね……」
梓「……でも、やけにリアルな夢なんだよねぇ」
梓「いくらシンデレラの絵本を読んでいたからって……」
さわ子「さあぁ! 早速出発するわよぉ!」
律澪「「おー!」」
梓「あっ、みんな行っちゃった……。ストーリーは淀みなく進んでいくみたいだ」
梓「じゃあ、やっぱり部屋の掃除とかしていたら……!」
紬「じゃじゃじゃ~ん!」
梓「うわぁ!」
紬「こんばんわぁ」
梓「ま、まさかムギ先輩が魔法使い……?」
紬「一度魔法使いとかやってみたかったのぉ~」
梓「そ、そうですか……」
紬「と、言うわけで、それぇ!」
梓「うっ……」
紬「じゃーん! きれいなドレスと馬車で―す!」
梓「わぁ……。きれい……!」
紬「さぁ、これで舞踏会へ行ってらっしゃ~い」
梓「……まぁ、そういうストーリーだからね。よいしょっと……」
紬「じゃあ、お城までれっつごー!」
梓「でも、王子様かぁ……。どんな人なんだろう」
梓「結婚、しちゃうんだよね……」
─
──
───
唯「……おぉ、あずにゃんが居眠りなんて珍しいね」
唯「あっ、何か読んでいたんだ」
唯「……シンデレラか~。なつかしいなぁ」
唯「……何であずにゃんそっくりなシンデレラが描かれているんだろう?」
唯「それに、王子様の顔が無いね」
唯「あれっ……、何だろう……。私……、何だか……」
ばたん……。
───
──
─
唯「……」
唯「……はっ!」
唯「あ、あれ? ここは……」
唯「なんだか高級そうな部屋だなぁ……」
唯「……あ、あれ? 私なんて格好しているんだ!?」
唯「まるで王子様みたいな恰好しているよぉ……」
唯「……そういればこの格好、絵本に描いてあったのといっしょだ」
唯「そっかぁ、これは夢なんだね。あの絵本を読んで眠くなっちゃったから……」
和「王子様、そろそろ舞踏会が始まる時間であります」
唯「あ、和ちゃん。すごい似合っているよその格好」
和「そう? ありがとう。……じゃなくて、早く行かないと」
唯「行くってどこへ?」
和「今日は王子様のお妃選びの舞踏会の日よ? 忘れたの?」
唯「えええぇ!? わ、私の!?」
和「さ、行くわよ」
唯「……そういえばシンデレラってそういうお話だったなぁ」
和「そう。だからいくら嫌だって言っても無駄だからね」
唯「はぁ……。わかったよ」
ざわ… ざわ…
梓「遂に来ちゃったよ舞踏会」
梓「王子様って……、どんな人なんだろう」
ぱっぱぱー! ぱぱぱぱっぱぱー!
和「王子様のご登場です!」
梓「……」
梓「えっ……。唯先輩!?」
「きゃあああぁ! 王子様ー!」
ドドドドドド!
和「だ、だめよ。これ以上近寄ってはならぬ! 衛兵、食い止めなさい!」
衛兵「はっ!」
姫子「王子様! 私と踊ってー!」
春菜「ぜひ私と踊ってー!」
アカネ「いいや、私とー!」
唯「ひ、姫子ちゃんたちまでいるの……」
唯「……あ、あの遠くの方にいるのは」
和「あの子がお気に召したのかしら?」
唯「へっ? い、いやそういう訳じゃ……」
和「皆の者、道を開けよ!」
ざっ!
和「そこの娘、王子の前へ参れ!」
梓「えっ、私!?」
梓「あ……、うぅ……」
かつっ……、かつっ……
和「さ、王子様」とんっ
唯「うわっ!? ととと……」
唯「……仕方ないなぁ」
梓「……」
唯「……」
梓「何で、唯先輩が……」
唯「あずにゃんこそ、何で私の夢に……」
梓「何言っているんですか。私の夢じゃないんですか?」
唯「ってことはもしかして、あずにゃんはシンデレラ?」
梓「そ、そうですよ……」
唯「へぇ、きれいだよ///」
梓「……///」
和「それでは、ミュージックスタート!」
唯「……どうする? 踊る?」
梓「で、でも……」
唯「……」
梓「……」
唯「シンデレラ、一曲お相手を」
梓「で、でも、私ダンスなんて……」
唯「大丈夫。踊ろうと思えば踊れるよ」
梓「ひゃっ……!」
唯「だって、夢なんだから」
梓「そ、そういうものですかね……」
唯「さ、もっとこっち寄って?」ぎゅっ
梓「は、はい……」
~♪ ~♪
姫子「なんか……」
春菜「あの2人……」
アカネ「悔しいけどお似合いよねぇ……」
梓(唯先輩が王子様なんておかしいと思ったけど……)
梓(……なんか、いいかも)
唯「だけど、変だよねぇ」
梓「えっ?」
唯「私の見ている夢にあずにゃんが出てきたのか。それとも、あずにゃんの見ている夢に私が出てきたのか……」
梓「そ、そうですね……」
唯「……いったぁい!」
梓「ご、ごめんなさい……。足踏んじゃって」
唯「だ、大丈夫……、って、痛いってことは、夢じゃない!?」
唯「まさか……、それっ!」げしっ!
梓「いったぁい! な、何するんですか!」
唯「あ、あずにゃんも痛い? どうなっているんだろう……」
梓「どうもこうもないですよ! 蹴飛ばすことないでしょ!?」げしっ!
唯「ちょ、ちょっと試しただけだって!」
ゴー……ン! ゴー……ン! ゴー……ン!
梓「あっ……! 12時! 帰らなくちゃ……!」
梓「シンデレラだから帰らなくちゃ……!」
唯「ま、待って!」
梓「っ……」どきっ
唯「……ガラスの靴は置いて行ってね。ストーリー進まないからー」
梓「っ!? ……ふんっ!」ぽいっ!
唯「な、何で怒ったんだろう……」
翌日
和「この靴の持ち主を探しています。ぴったり合うかお試しください」
澪「やだなぁ、履いて割れちゃったりしたら……」
律「まぁ、履けないのわかってるしね。シンデレラー」
梓「……」
和「わぁ! ぴったりね! あなたが王子様の妃となる方です!」
そして、あっという間に結婚式!
唯「……」
梓「……」
律「なんで喧嘩しているんだろう……」
澪「さぁ……。ギクシャクしてるよなぁ……」
梓「……あっ! 憂!?」
唯「何してるの!?」
憂「ふふふ、今の私は教会の神父なのです!」
梓「神父って……」
憂「まぁまぁ、細かいことは気にしないで。2人ともお似合いだよ?」
唯(そういえば、あずにゃんと結婚……///)
梓(何で唯先輩と結婚……///)
唯梓
唯「……」
梓「……」
唯「ねぇ、あずにゃん……」
梓「は、はい……」
唯「あの、さ……、なんかバカみたいだよね。夢の中なのにさ」
唯「せっかく、こういう風になったんだからさ……」
梓「……そうですね。せっかくお姫様になれたんですものね」
憂「うんうん。まとまったところで誓いのキスを」
唯梓「「えぇっ!?」」
憂「真実の愛を誓うのです。さぁ、誓いのキスを」
梓(えっ……! そ、そんな……! ええええぇ!?)
唯(ど、ど、ど、どうしよう! これは夢! でも……! でもおおおぉ!)
梓「……///」
唯「……///」
唯(いくら夢の中でも、あずにゃんとキスするなんて……)
梓(本当じゃないんだし……、夢なんだし……)
唯(どうせ、夢なんだし……)
梓(そうだよね、どうせ夢なんだし……)
唯「……」
梓「……」
梓(唯先輩となら、いいかも……)
唯(あずにゃんがいいのなら、私も……)
唯「じゃあ……」
梓「あっ……」
唯「……」
梓「……」
唯(ああぁ……! あずにゃん可愛いなぁ……。いいんだよね! キスしちゃうよ!)
梓(唯先輩が来ちゃう! 心臓ドキドキだよおおぉ!)
唯梓「「……んっ」」
───
──
─
律「おーっす! 遅くなったああぁ!」
唯梓「「うわああぁ!」」
律「あ、あれ? スベった?」
澪「こらっ、びっくりさせちゃったみたいじゃないか」
紬「2人とも眠っていたみたいね」
梓「……あ、あれ? 部室?」
唯「ふああぁ……。い、いつの間にか寝ていたよ」
梓「唯先輩、そこで寝ていたんですか?」
唯「うん。あぁ、変な夢見たなぁ」
梓「唯先輩もですか? シンデレラになった夢を……」
唯「あずにゃんも?」
梓「あずにゃんもって、唯先輩も見たんですか? シンデレラ」
唯「うん」
梓「お城でダンス踊って……」
唯「相手は……」
唯梓「「っ……!///」」ぼんっ!
梓(嘘っ!? 唯先輩も同じ夢を見ていたの!?)
唯(あずにゃんも同じ夢を見ていたの!?)
律「2人とも何だかおかしいぞ?」
紬「……さっそく2人とも試したみたいね?」
唯「何を?」
紬「その絵本よ。この絵本はうちの開発部が作った幼児用教育絵本なの」
律「へぇ、そうなんだ」
紬「本に電飾が仕組まれていてね、脳に情報を送って夢の中で物語を体験できるの」
紬「でも結末だけは参加した人の気持ちが反映されるようになっているの」
───(唯先輩となら、いいかも……)
───(あずにゃんがいいのなら、私も……)
唯梓「「えええええぇ!?」」
紬「さて、結末はどうなったのかしらねぇ……」
唯梓「「だ、だめええええぇ!」」
紬「きゃあぁ!」
梓「よし! 奪ったです!」
唯「リセットボタンって書いてある! 押しちゃって!」
梓「よーし! ぽちっとな!」
紬「ああぁ……! データが……」
唯梓「「はぁ……。よかった……」」
律「そんなに慌てるなんて怪しいなぁ……」ニヤニヤ
紬「そうよねぇ……」ニヤニヤ
唯梓「「い、いやいや……!」」
───(唯先輩となら、いいかも……)
───(あずにゃんがいいのなら、私も……)
唯梓「「わあああああああぁ!」」
澪「ふ、2人とも落ちつけ……」
梓「あ、あれは夢の中のことですから
勘違いしないでくださいね!?」
唯「わ、私だってあんなことしたのは夢の中だからなんだからね!?」
律「2人ともそういうのは部室でしないでくれ……」
わー! わー! わー!
澪「……って聞いちゃいないよ」
紬(……まぁ、バックアップはあっちに送られているから後でゆっくり読みましょう)ニヤニヤ
数日後、律と澪が同じ目に遭ったのは言うまでも無い。
END
- 私よりもうつくしいだなんて・・・お、恐ろしい子・・・ -- (なもなきシンデレラ) 2012-09-13 20:20:14
- 上?どこのシンデレラだ! -- (あずにゃんラブ) 2012-12-29 13:23:24
- 唯梓なら世界名作劇場でも通用するぞ(笑) -- (名無し名作) 2013-01-04 10:02:36
- あずにゃんはツンデレラ -- (名無しさん) 2013-04-06 00:10:42
最終更新:2011年08月26日 23:34