また突拍子もないことを言い出した、と私は思う。
夕暮れに染まる帰り道
いつものように唯先輩と並んで帰っていた私は、あずにゃんなんていうまたいつもの呼びかけにぴたりと足を止めて、くるりと振り返って、そしてやっぱりいつものように呆れさせられてた。
本当にこの人は私を呆れさせてばかりで、ひょっとしたらそれが趣味なんじゃないのかなと疑ってしまう。
今日だってそう、輝けりっちゃん作戦だよ!なんていいだして、次から次にくだらないことを繰り広げてくれた。
本当にしょうがない先輩。
だけど。
その眼差しは本当にまばゆいくらいにまっすぐで、真剣だった。
やることなすことはそれはまあ、いくら私を呆れさせれば気が済むんですか、と突っ込みたくなるほどだったけど。
だけど。
唯先輩は本当に律先輩のことを考えて、そうしているってことはいっぱい伝わってきた。
だからこれにしてもそう。唯先輩は本当に真剣に律先輩のことを思って、そしてそう言い出したんだと思う。
そう、口にしたんだと思う。
そんな一朝一夕でできるはずがないし、じゃあ先輩のパートはどうするんですか、とかいろいろ突っ込みは浮かぶけど。
だけど。
きっと、やっちゃうんだろうなって思う。先輩がその気になれば、真剣にそれに取り組めば。
そんなに期間をおかずとも、実現させてしまうんだろうなって思う。そうなったときの唯先輩のすごさは、私もよく知ってることだから。
だけど――だけど、ですよ、唯先輩。
先輩のやることはやはりちょっとずれてるんです。そんな必要ないんですよ。
昨日澪先輩が語ってくれたように、澪先輩が生粋のベーシストであるように。
なんだかんだ言いながら、あの人も――律先輩も生粋のドラマーなんだから。
きっと明日にでも、やっぱドラムだよな!なんていいながら、いつもの快活な笑顔でいつもの位置に座ってるに違いない。
それにですよ、それは律先輩や澪先輩だけじゃないんです。
律先輩がドラムをたたいて、澪先輩がベースを弾いて、ムギ先輩はキーボードを弾いて、私はギターを弾いて、そして唯先輩は私の隣でギターを弾きながら楽しそうに歌ってる。
それがやっぱり、私たちのあるべき姿だと思う。
みんながそれぞれであるように、私が自分のことをさすときにギタリストって思うように、唯先輩もやっぱりギタリストなんだから。
放課後ティータイムのギターは、私と唯先輩なんだから。
だから、私の後ろで――なんてそんなの――
「ダメです」
そんなの、私の目の届かないところにいくなんて、ダメです。
どうせ唯先輩はこうやって、またとんでもないことに行こうとするから。だから私がぐいっと引っ張って、戻せる場所にいないとダメですから。
安心できませんし、それに――唯先輩の音は聞こえるのに、だけど唯先輩の姿が見えないなんて……寂しいじゃないですか。
唯先輩は、ずっと私のそばにいてくれればいいんです。
私は、唯先輩と一緒にギターを弾くの、大好きなんですから。
――なんて、わざわざ口にしたりはしないけどね。
唯先輩は私の言葉に不満そうに声を上げて、口を尖らせたりしてる。
だけど、これでいい。これじゃないと嫌だから。
唯先輩と一緒が、私はいいんだから。
それとも――ねえ、唯先輩。そんなに不満そうにされると、不安になっちゃいますよ。
唯先輩にとっては、私の隣ってことに私が思うほど価値を見出してないんじゃないかって。
「……うん!」
だけど唯先輩はそんな私の不安をかき消すように、元気な声を上げるとぎゅっと私に抱きついてきた。
ああもう、またこんなところで。だけど、今は許してあげようかな。
「やっぱり、私はあずにゃんの隣がいい!だから、ずっと一緒にギター弾こうね!」
きっと、それを私に伝えようとしてくれたんだから。私の寂しさを、わかってるのかわかってないかはわからないけど、きちんと読み取ってくれたから。
本当にもう、だから私は数え切れないほど呆れながらも、やっぱり。
あなたのことが好きなんです、唯先輩。
「そうですよ、唯先輩は――ずっと私の隣じゃなきゃ、ダメですから」


  • ムギが麦になってるぞ! -- (名無しさん) 2010-04-26 20:54:41
  • すみません。スレで筆者の人が訂正していた記事を見落としていました。訂正済みとなります。 -- (管理人) 2010-04-26 21:52:40
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最終更新:2010年04月26日 21:51