唯先輩の家にお泊りすることになった金曜の夜。
お風呂から上がった私は、憂に不思議なことを言われた。

「あっ、梓ちゃん、それお酒だよ!」

唯先輩が渡してくれたお水を指差して、憂がそう言ったのだ。
その隣では唯先輩が、口に手を当てて驚いた顔をしている。
唯先輩も憂の言葉にびっくりしているのだろう。

「え!? あ、あれお酒だったの!?」

「そうだよぉ……料理酒が古くなっちゃったから、
下ごしらえに使っちゃおうと思ってコップに移しておいたのに……」

「あわわ……ど、どうしよう……
あ、あずにゃん大丈夫? 具合悪くない?」

憂の不思議な言葉に影響を受けたのか、
唯先輩まで変なことを言い出してしまった。
私はため息をついて、二人に言った。

「なに言ってるんですか、これはお酒じゃないですよ」

「「え?」」

「だって、私は未成年なんですよ。
未成年はお酒を飲んじゃいけないんですから、
私が飲んだこれがお酒なはずないじゃないですか」

そう、未成年の私はお酒を飲んじゃいけないのだから、
私が飲んだ時点で、もうこれはお酒ではなくなっているはずなのだ。
お水にしては変に甘くて熱くて匂いもするけれど、
それでもこれはお酒じゃない。

「「…………」」

私の言葉に、二人は口を閉じた。
少しの間を置いて、憂が口を開いた。

「……う、うん、そうだね、それお酒じゃないねお水だね」

「そうだよ、憂」

憂が理解してくれたことに安心し、
私は半分ほど残っているお水を飲み干そうとした。

「あっ、梓ちゃん、待って!」

私がお水を飲もうとするのを、なぜか憂が止めた。

「あ、梓ちゃん! お風呂上がりだったら、
お水よりもスポーツ飲料とかの方がいいよ!
代わりのもってくるから、それ渡して! ね!」

「うん、わかった」

そう言って、私はコップの中身を飲み干した。
甘みのあるお水が喉を通り過ぎ、心地よい熱さが体に宿る。
空になったコップを憂に渡すと、
なぜか憂は泣きそうな表情を浮かべた。

「あ、あずにゃん……大丈夫……?」

唯先輩が心配そうな表情を浮かべて、そう聞いてきた。
憂も私の側に立ったまま、そこから動こうとしない。
二人が私の様子を窺っているのは明らかで、
いったいなにを心配しているのだろうと疑問に思い、

(あ、そうか……)

体に宿った熱が、その理由を教えてくれた。
「こんなに暑いのに、パジャマなんか着ていて大丈夫なの?」と、
そう心配してくれているのだ。
確かにこの部屋は暑い。
クーラーが苦手な唯先輩のため、扇風機しかつけられていないのだ。
加えて私はお風呂上がりで、体が温まってしまっている。
部屋の中でも熱中症になってしまうことがあるというし、
パジャマは脱いでしまった方がいいだろう。

「大丈夫ですよ、心配しないで下さい」

そう言って、にっこり笑って、私はパジャマの上を脱いだ。
素肌に扇風機の風が当たって、火照った体に心地よい。
これなら熱中症で倒れることはないだろう。

「あ……あずにゃ、ん……」

私の名前を言いながら、唯先輩の顔がみるみるうちに真っ赤になっていった。
今にも頭から湯気が出そうで……その様子を見て、大変だと私は思う。
暑いのが人一倍苦手な唯先輩なのに、私より先にお風呂に入って、
温まった体を未だパジャマで包んでいる。
そして顔を真っ赤にしてしまっているのだ。
このままでは暑さで倒れてしまうだろう。

(私が唯先輩を助けてあげなくちゃ!)

そう思って、私は唯先輩に一歩近づき、

「唯先輩、脱いで下さい」

「え!?」

「梓ちゃん!?」

私の言葉に、なぜか二人が驚いたような声を出した。
そのまま固まって、二人とも動けなくなってしまったようだった。
どうしてしまったのかわからないけれど……唯先輩の顔は赤いままだ。
疑問を解くよりも、パジャマを先に脱がすべきだと思った。

「わかりました……私が脱がしてあげますね」

「え、ちょっ……!?」

「梓ちゃん! 待って! 待って!!」

私が唯先輩のパジャマに手をかけると、
なぜか憂が慌てて私の腕を押さえた。
いったいどうしたのかと、私は憂の顔を見た。
唯先輩の様子に、憂が気がつかないはずはないのに、
なんでパジャマを脱がすのを止めるのだろう?

「あ、梓ちゃん! 落ち着いて、ね! 落ち着いて!!」

涙目でそう言ってくる憂を見て……私は憂の気持ちを察した。
「お姉ちゃんの面倒は私がみるの!」って、そう思っているのだ。
憂の思いを悟り、身勝手なことをしてしまった自分を恥じた。
憂にとって大事なお姉ちゃんである唯先輩、
その面倒を全部みたいと思うのは当然のことだろう。

「ごめんね、憂……」

顔を俯けて、私は憂に謝った。

「でもね……私も唯先輩のことが大事だから……
いい加減な気持ちじゃないの、それは信じて……」

唯先輩の体調が心配だったから、私はパジャマを脱がそうとしたのだ。
決して憂の気持ちを蔑ろにしたわけではないのだと、
私はそう伝えようとした。

「梓ちゃん……」

私の言葉を聞いて……憂がその手を離した。そのまま後ずさり……

「わかったよ、梓ちゃん……梓ちゃんが真剣なんだったら……
梓ちゃんに、お姉ちゃんのこと、お願いするね……」

憂はそう言ってくれた。
私が真剣に唯先輩のことを心配していることを察してくれて、
そして大事なお姉ちゃんの面倒を私に任せてくれようとしている。
憂の気持ちに、私は感動して泣きそうになってしまった。

「ありがとう、憂……私ちゃんと、優しくするから……」

「うん……お願いね……」

そう言って、憂は涙を拭いながら部屋を出ていった。
私は唾を飲み込んで、唯先輩に向き直った。
憂の気持ちに応えるためにも、
唯先輩の面倒をちゃんとみてあげないといけない。そう思った。

「え……あの……あ、あずにゃ……え……」

私のすぐ側で、唯先輩は無意味な呟きを繰り返していた。
ちゃんと呼吸ができていないのか、言葉が不明瞭になってしまっている。
熱にやられてしまったのかもしれない。
こういうときは……そう、人工呼吸だ。


「あ、あずにゃっ……!?」

動けなくなっている唯先輩の口に、私は自分の口を押し当てた。
でも唯先輩は口を閉じてしまっていて、そのため、息は吹き込めなかった。
一旦口を離すと、涙目になっている唯先輩の顔が見えた。
顔は変わらず真っ赤なままで、早くしてあげないといけないと思った。

「唯先輩……」

ちゃんと人工呼吸をしてあげるため、私は唯先輩をその場に押し倒した。
姿勢が変わって、半開きになった唇に自分の唇を押し当てる。
また口が閉じようとして……私は舌を伸ばして、その口をこじ開けた。

「……ちゅ……んぁ……っちゅぅ……」

「……んちゅっ……あ、ずにゃ……ちゅ……ぅぅ……!」

舌を唯先輩の口に入れ、暴れる唯先輩の舌を押さえ込む。
逃げようとする唯先輩の体を手で押さえて、
私は人工呼吸のために唇を押し当て続けた。
息と一緒に唾液が唯先輩の口に流れ込んでいく。
体の震えで、唯先輩がそれを嚥下するのがわかった。

「……ん…はぁ……」

「……んぁ……あずにゃ、ん……」

唇を離すと、ぼーっとした表情の唯先輩の顔が見えた。
ちゃんと私の名前を言えたということは、
人工呼吸は成功したということだろう。
でも顔は真っ赤なままで、瞳は潤んでいた。
熱はこもったままで、完全に逆上せてしまっているみたいだった。
早く服を脱がしてあげないと。

「大丈夫です、唯先輩……心配しないで……私に任せて下さい……」

「あ、あずにゃん……」

私が言うと、唯先輩が全身から力を抜いたのがわかった。
潤んだ瞳を私に向けて、

「……優しく、してね……」

「はい……」

唯先輩に返事をして……
私はそっと、先輩のパジャマを脱がしていった……

(全年齢版のため中略)

小鳥のさえずりが頭の中で響いて、私は目を開けた。
見慣れない天井に、一瞬ここがどこだかわからなくなり……
唯先輩に家にお泊りをしたことを思い出すまで、
ちょっと時間がかかってしまった。

「あれ……」

でも、昨夜のことを思い出そうとしても……
頭が重たくて、よく思い出せなかった。
お風呂から上がって、唯先輩にお水を貰って……
その後いったいどうしたのだろう?
私はいつ眠ってしまったのだろうか?
頭を押さえながら体を起こすと、薄手のタオルケットがずり落ちて……
その下の素肌が目に映って、

「え……?」

そこで初めて、自分が裸であることに気がついた。

「え……えっ……え!?」

驚きで声が詰まり、慌てて周りを見る。
場所は居間で、周りにはパジャマと下着が散らばっていて、
そして私のすぐ隣には、

「……ぅん……あずにゃん……?」

私と同じように、素肌の上にタオルケット一枚の唯先輩が横になっていた。
うっすらと瞳を開け、微かに頬を染めて……
腕を伸ばして、私の手にそっと触れてきた。
唯先輩の温もりを手に感じ、

「あずにゃん……すてき、だったよ……」

唯先輩のその呟きに、忘れていた昨夜のこと……
お水と間違ってお酒を飲んでしまってからのことを、
一気に思い出してしまって……

「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

私はただ、そう叫ぶしかなかった。
私の叫びに応えるように、窓の外では小鳥がさえずりを続けていた。


END


  • ちゅ・・・中略だとぉ・・・!! -- (I LOVE Azunyan) 2010-07-12 18:38:27
  • わっふるわっふる! ・・・あれ? -- (名無しさん) 2010-08-09 02:50:06
  • R18が存在している今なら・・・ 今なら! いまなら!!!  中略部分をkwskお願いします m(._.)m -- (名無しさん) 2011-03-03 23:46:21
  • 省略とは悲しいな -- (あずにゃんラブ) 2013-01-20 00:40:46
名前:
感想/コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年07月07日 23:04