梓「律先輩のこと笑っちゃったりしたけど、受験生なのに演劇も演奏も頑張るのは大変だよね。今日は練習できるのかな」
音楽室へ「こんにちはー。ってやっぱり誰もいない…どうしよう、自分のクラスの出し物もあるし戻ろうかな…」
迷っていると唯が来る
唯「あっ
あずにゃん。やっほー」
梓「唯先輩!今日は練習できそうですか?他のみなさんは?」
唯「りっちゃんと澪ちゃんは主役だし、むぎちゃんも監督さんだし抜けられないみたい」
梓「唯先輩、みなさんが大変なのにここに来てていいんですか?」
唯「わたしどうせ木だもん。そんなことよりあずにゃん、二人きりだねー」
うぇっへっへと笑う唯。しかし真面目な梓は気を咎める
梓「そんなことよりって…役のないクラスの方も頑張ってたじゃないですか。それに他の先輩方のほうが大変なら、唯先輩がサポートしないとダメです!じゃないと部活とクラスの両立なんてできません。このままだと練習不足で演奏失敗しちゃうかもしれないじゃないですか」
唯「え~?大丈夫だよ~。去年だってなんとかなったし」
梓「去年って…なんですか脳天気な言い方。去年どれだけみんなに心配かけたか、わかってるんですか?」
唯「わかってるよー。でも許してくれたじゃん。ねぇあずにゃん、新しい演奏思いついたの。見て見て~」
梓「もう!真面目に聞いてくださいよ。そんなことやってる場合でもないでしょ」
唯「えぇ~」
梓「…今日はクラスの
お手伝いにいきますね」
唯「ああん、あずにゃん待ってー」
音楽室を去る梓。しょぼくれる唯
唯も決してクラスを軽視しているわけではない。けれど去年、風邪をひいて学園祭の練習をできなかったことは、心残りだった
梓と一緒に練習できなかったことが心残りだった
唯「今年で…最後…なんだけどなぁ」
翌日
和「軽音部のほうも大変だろうからごめんね、連日練習で。クラスのみんなの都合つかなくてね」
澪「いや、しょうがないよ。まだ本番まで時間あるし、気にしないで」
律「そうそう。澪がもっとちゃんとしてれば早く済む話だしね」
澪「うぅ…ごめんなさい。って人の事あまりいえないだろ!」
わいわいがやがや。主要登場人物の練習の横で直立不動の唯
紬「唯ちゃん?そんなに木の練習頑張らなくても…」
澪「どうしたんだ?昨日はギターのアレンジに挑戦するって、はりきってたじゃないか」
唯「うん…でもあずにゃんもクラスの出し物があるからって」
律「なんだよ一人じゃさみしいのか~?」
紬「ごめんね。唯ちゃん」
律「そうだそうだもっと謝れ~!脚本変えすぎなんだよ~」
澪「こら!文句しかいえないのか」
紬「ごめんなさい、だっていいシーンがいろいろ思いつくんですもの」
律「なんだよ~澪も文句いってたじゃん」
ガラッ
梓「こんにちは~。先輩方」
唯「あっあずにゃん!」
律「およ、梓じゃん。クラスの出し物があるんじゃないのか?」
梓「一応様子を見に来ました…まだお忙しそうですね」
澪「ごめん。連絡しておけばよかったな。今日はこっちに集中させてもらうよ」
律「予定ないなら唯と練習しておいてくれよ」
唯のほうを見る梓。昨日のことがあり少し伏し目になる唯
梓「…唯先輩はあまり真面目に取り組んでないみたいだから、みなさんと揃っての方がいいと思うんです」
梓の言葉に顔をあわせる紬と澪。たしかに唯からは真面目さを読み取るのは難しいが、やる気がないわけはないのだ
唯「そうだよね…真面目にやらないとね」
律「唯?」
唯「今日は一人で練習するね。練習、がんばってね」
教室を出て行く唯。微妙な空気が流れる
律「あ、梓ぁ!」
梓「は、はい?」
律に名前を呼ばれてすこし飛び上がる梓。最近ふざけあって苗字を呼ばれることはあったが、名前を呼ばれると本当に怒られている気分になる
律「なにがあったのかしらんが、追いかけろよ」
梓「えぇ?なんで私が…」
そう口にはだすが梓もさっきの唯がおかしかったのは気になっていた
律「いいや、お前が悪い」
断言されて閉口する梓。重ねていう律
律「よくわからんけどさ、唯が真面目にやってないわけ、ないだろ?そんなに短い付き合いじゃないんだから、わかるだろ?」
梓「うぅ…様子、みてきますね」
音楽室に向かう梓。去年のことを思い出していた
梓(唯先輩、風邪ひいてたのに無理に練習しようとしてたっけ)
それで本番出れなかったら意味がない。去年はぶっつけ本番にかけることにしたのだ
梓(本番は大成功だったけど…唯先輩と練習したかったな。皆揃って、学園祭に取り組みたかった)
音楽室に着く梓。扉を開ける
梓「唯先輩?」
音楽室は薄暗い。トンちゃんの前に佇む唯
唯「私、ダメだよね…1年生のときも、張り切りすぎて声からしちゃったし。去年もみんなに…迷惑…かけて…」
梓「唯先輩…泣いてるんですか?」
驚く梓。ぐすぐすと泣いている唯に近づく
唯「でも…私、軽音が大好きだから、何もしてなかった私が初めて本気になれたから…みんなと過ごすの楽しいから…あずにゃんとも一緒に、学園祭の練習したかったの」
梓「唯先輩!もう、泣くのをやめてください!」
こんなふうに唯が泣いているのは初めて見る。いつも大きく包みこんでくれる先輩が、小さくみえた。心がずきずきと傷んだ
梓「唯先輩…」
ぎゅっとうつむく唯の頭を抱きしめる。なんだか去年のことを思い出した
梓「ごめんなさい…唯先輩が軽音部のことに真面目じゃないなんて、あるはずなかったですね。昨日私なにいってたんだろ」
唯「ううん、ちょっとはしゃぎ過ぎてたよ…いつもそれで失敗しちゃうんだよ。こんな状況で新しいことしようとしたりさ、去年もごめんね?」
梓「もう、去年のことは許したじゃないですか…」
風邪をひいたのだって唯のせいではない。去年の自分を思い出して恥ずかしくなった。なんて理不尽なことで許しを請わせるような真似をしていたのだろう…。そしてそれは今も変わっていない
梓「ごめんなさい、唯先輩のことずっと見てきたのに、ちょっと考えなさすぎました」
唯「ううん。ごめんね、あずにゃん…」
梓「もう、謝らないでください…」
伏し目がちに涙目の唯を見ているとこちらも泣きそうになってきた。しんみりした空気を変えるいい冗談を思いついた
梓「唯先輩…仲直りのちゅ~、しましょうか」
唯「へ?」
顔を上げる唯。濡れた瞳に目を吸い寄せられて思わず赤面してしまう
梓「ほ、ほら!去年の唯先輩がいったことですよ!」
早く、そんなこともいってたねーと笑い飛ばして欲しかった。しかし唯にじっと見つめられてますます顔を赤くしてします
唯「うん、しよっか」
梓「え~!?」
真顔で答えられて狼狽する。ますますじっと見つめられる。ずきずきしていた心臓はいまやどきどきに変わっていた
唯「あずにゃん…」
梓「唯せんぱっ、むぅ」
待ったなしで唇を重ねられ、ぎゅっと抱きしめられる
梓(ほ、ほんとにキスしてるよ~!?)
体中がかぁーっと熱くなるのを感じた
梓(柔かい…唇も、包みこむ体も…さっきまでは小さく感じたのに、やっぱり大きいし、温かい…唯先輩)
抱きしめられて少し苦しいけど、それ以上に湧き上がる幸福感を実感する
離れる唇、再び見つめ合う。今度はお互いに惹きあうように顔を寄せる
がったーん!
唯梓「!!」
扉のほうから大きな音がして飛び退るように離れる
紬「もう!澪ちゃん、いいところだったのに!」
澪「きききききキスしてた?よな?」
律「お、おまえら…」
唯「ひどーい。みんな出歯亀だぁ!」
律「ひどーい、じゃないよ!想定外すぎるわ!」
澪「ゆ、唯、梓…そういう趣味の人だったのか?」
梓「そういう趣味ってなんですか!
勘違いです!」
紬「えー?勘違いには見えなかったけど」
唯「え~?勘違いなの?」
梓「唯先輩までなにいってるんですか!」
梓(は、恥ずかしくてしんじゃいそうです…ってなんで唯先輩涙目になってるんですか!な、なにかフォローしないと…)
梓「私は唯先輩が好きなだけです!女性趣味とかじゃないです!」
……
唯「あ、あずにゃん…そこまで言ってくれるなんて」
紬「わぁ♪」
澪「そ、そうなのか。ならいいか」
律「いいの!?」
梓「なにいってんの私~!?」
唯「私もあずにゃん大好き。大好き~!」
律「ああもういいや!」
紬「さっきのいいセリフです!『律!僕たちの立場なんて関係ない!君が君だから愛している』こんな台詞を入れましょう!」
澪「そんな恥ずかしい台詞いえない~!」
律「っていうかジュリエットじゃなくなってるぞおい!」
梓「は、恥ずかしい台詞…もうダメお嫁にいけない…」
唯「あずにゃん大丈夫だよ。わたしがいるじゃない」
おわり
- 梓が嫁になるのは唯先輩だけ! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-17 17:35:35
最終更新:2010年08月16日 00:25