バレンタインの帰り道。唯先輩にもらったアメを舐めながらのんびり帰り道を歩いていると、ふとあることに気が付いた。
そういえば私、唯先輩からチョコもらってないな…このチョコをプレゼントと受け取ってもいいのかもしれないけど、あくまでお返しって名目だし…
…結局、2年間で唯先輩からのチョコはなしか。ま、唯先輩の手作りチョコなんて期待できないけど。

…それでも、一回くらいもらいたかったな…

唯「あずにゃーん!おーい!」
梓「唯先輩!どうしたんですか、息なんて切らしちゃって」
唯「うん…あ、あのね…」

唯先輩の顔は真っ赤に染まっていた。走ってきたからそのせいかもしれないけど、それにしても赤い。なんだかもじもじしてるし…どうしたのかな。

梓「唯先輩?」
唯「あ、あのねあずにゃん!さっきはケーキありがとう!すっごくおいしかったよ!」
梓「いえ、そんな…」
唯「それでね、私もなにかあずにゃんにわたさなくちゃって思ったの。せっかくのバレンタインだし」
梓「え…」
唯「はい!ハッピーバレンタイン!」

そう言って唯先輩が差し出したのは、かわいいリボンのかかったピンクの小袋。
これってもしかして…

梓「…480円」
唯「えぇっ!!」
梓「値札、ばっちり付いてます…」
唯「うあぁ、外すの忘れてたー!」
梓「唯先輩の気持ちは480円ですか…ようくわかりました」
唯「だってしょうがないんだよぅ、おこづかいがなくて…」
梓「はぁ…やれやれ」

まったく、手作りじゃなくてもいいからせめて値札くらいは外してほしい。
ま、唯先輩らしいといえば唯先輩らしいんだけど。そして唯先輩のこういうところが、私は好きなんだと思うんだけど。

梓「もう、バレンタインチョコ買って値札を外さないなんて最低です!唯先輩にはそういう気遣いが足りないです!」
唯「うぅ、ごめんなさい…」
梓「…なにか、おまけがほしいです」
唯「おまけ?」
梓「480円のチョコだけじゃ満足できません!なにかもう一つほしいです!」
唯「えぇ、そんなこといわれても…もうお金ないし…」
梓「…お金じゃないです。もっと気持ちのこもってるものです」
唯「気持ちかぁ…うーん…」
梓「キ…」
唯「ん?キ?」
梓「キ、キス…とか」
唯「えぇ…!?」

唯先輩はきょとんとした目で私を見つめた。うぅ、私ったらなんて大胆な要求してるんだろ…

唯「…わ、わかった!じゃあちょっと目つぶって…」
梓「は、はい」

唯先輩は私の肩を掴んだ。少し力がこもっているのは、緊張してるってことかな…ふふ、唯先輩も緊張するんだな…

唯「…あずにゃん」
梓「はい…?」
唯「大好きっ」
梓「…っ!」

唯先輩のくれたキスは、今までに食べたどんなチョコよりも甘かった。体中から力が抜けて、幸せな気持ちになってく…
崩れ落ちそうになる私の体を唯先輩はギュッと抱きしめた。思わず抱きしめ返してしまうと、唯先輩は嬉しそうに私の顔を見る。

唯「あずにゃん、どう?」
梓「…すごく、おいしいです」
唯「そっか…よかった♪」
梓「…今度は、唯先輩だけのチョコ、作ってあげます」
唯「ほんと!?ありがと!楽しみだな~♪」
梓「そのかわり唯先輩も作るんですよ!?」
唯「?なにを?」
梓「だから…わ、私だけのチョコです」
唯「えぇ…できるかなぁ?ちゅーだけじゃだめ?」
梓「だめです!…もちろん、ちゅーももらいますが…」
唯「ん?なあに?」
梓「な、なんでもないです!それよりもう一回キスしましょう!」
唯「やん、あずにゃんたら大胆…♪」

おわり


  • 何かいいなこれ -- (名無しさん) 2013-01-23 21:41:43
  • バレンタインネタは王道だがやはり素敵 -- (鯖猫) 2013-07-15 06:42:29
名前:
感想/コメント:

すべてのコメントを見る

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年09月09日 13:01