唯×紬 @ ウィキ

3-071

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
『どんなに寒くても…』

冬。真っ白な季節。
私はあまり冬が好きじゃなかった。

寒いのが嫌いだから。
体温は高いほうだけど、だからといって。
寒さに強いかといえば、そういうわけじゃない。

冷える体。悴む手。
それにつられて、心まで冷たくなってしまいそう。

もちろんそんなのは私の気のせいなんだけど。
でも、小さい頃から漠然とそんな意識があって。
だから、冬は好きじゃない。

そんなことを考えながら、いつものように
駅から出て、学校へ向かおうとしていた時だった。

「へへ。だーれだ?」

ふと、視界が真っ暗になる。
それと同時に顔を包み込む暖かな感触。

だれか?だなんて。
私が間違えるはずなんて無い。

あなたは、私の大好きな人だから。

「おはよう。唯ちゃん」

「ばれたか~!」

「おはようムギちゃん!」

この寒空の下でも、満面の笑みはまるで春みたいだ。

「待っててくれたの?」

「ムギちゃんと一緒に行きたくなってさ~」

その言葉だけで、さっきまでの沈んだような気持ちはどこへやら。
私は自分で思うよりも現金な人間なのかもしれない。

「ありがとう。じゃあ、いっしょに行こっか?」

「うん!」

「ねえムギちゃん、手繋いでこうよ!」

断る理由なんてなくて。私は返事の代わりに、彼女の手を握る。

「えへへ。ムギちゃんの手はあったかいね~」

「唯ちゃんの手もとっても暖かいよ」

「ありがと~。ならこれで二人ともあったかだね~」

「ふふ。そうね。あったかだね~」

「寒いし、もっとくっつこうよ。ぎゅ~」

「あらあら…」///

うれしいけど、朝のこの時間だと、人も多くて
ちょっと恥ずかしい、かな。

「唯ちゃん、もしかして寒いの?」

待っててくれたみたいだし、心配だった。

「う~ん、今日は寒いよね~。でも私は大丈夫!」

「それよりもさ」

「ムギちゃん寒いの苦手でしょ?」

「…どうして?」

「だって、冬になるとたまに悲しそうな顔してるもん」

「さっきもちょっと悲しそうな顔してたよ」

こういう所は本当に鋭いんだから。すごいなって素直に思う。

「だから、これからは私があっためてあげる!」

いつも春みたいに暖かくて、自分も、周りの人も
自然にあったかい気持ちにさせてくれる。

こんな風に、人の心を温めてくれる。
そんなところが大好きだ。

「…ありがとう、唯ちゃん」

「じゃあ、これからも、お願いしちゃおうかな」

「どんとこいです!」

そう言ってもっとくっついてくる。本当に暖かい。

だからね。こんなに寒い冬でも。あなたがいれば。

『…僕は、幸せ』

おしまい





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
人気記事ランキング
目安箱バナー