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Stage6:折り返し地点の一幕 - (2008/11/18 (火) 02:32:03) の最新版との変更点
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森に面する町、シュヴァル。
基本的に人が集まる集落には“町”と称される大きさのものしかないが、ここはまだ村と呼んでも差し支えはないかもしれない。
その様相は平和なもので、お祭りごとがあっても飾り付けというものは他の町と比べると比較的控えめなのだが……
「くっそ、社長め……ここまで仕込むか普通……」
誰の仕業か想像は容易なことだが、今はこれでもかとばかりに大量の旗やら何やらが華々しく飾られていた。
一見するとレースに乗じたおまつり騒ぎでしかないようにも見えるが、実際の目的は少し考えれば分かる事で……
まちがいなく、レーサーの飛行を妨げるための障害物である。
「飛べるものなら飛んでみろ、か……」
社長がレース開始前に言っていた一言を思い出す。
そういえば、リックテールを通過するときにも無意味にも思えるまでの飾りつけが、空中を中心に張り巡らされていた。
「やれやれね……」
「クゥ!」
と、そんな事を考えていると、頭の上からそんな声が降ってきた。
このレースが始まってから何度目だろうか。
抜かれ抜きかえしを繰り返している相手……クリエである。
普段からあまり表情の変化のない彼女だが、何を期待していたのかどこか残念そうな表情を見せていた。
「先に戻ってるわよ」
どうやら既にチェックポイントを回って来た後らしく、そう一言言い残すと、相変わらずの器用なボード捌きで、空中の障害物をスイスイと切り抜けてリックテール方面に向けて飛んで行く。
障害物まみれの場所では、どうしても彼女のテクニックで追いつく事が出来なくなってしまう。
「ちっ……」
……最初に推測していた通り、このレースの中ではフィールド上だろうが町中だろうがお構い無しに仕掛けが張り巡らされていた。
リックテールとシュヴァルの間では、またどこかの魔術師にでも依頼したのか、普段ではあり得ない程の嵐が吹き荒れていて、それこそまっすぐ進むだけでもかなりの制動力を要求され……
リックテールの中は、もう説明するまでもないだろうが、お祭り騒ぎに加えてシュヴァルを当然のように上回る装飾。
通行人を避けるだけでも骨だというのに、そこまでされていては低空飛行しかできない身としては走らざるを得なかった。
「やっぱりリューガさんは上位組でしたね」
……シュヴァルのチェックポイントでそんな事を言われたが、あまり嬉しいという感情は沸いてこなかった。
それは、氷樹地帯を通過するまではよかったが、リエステールを足で通過している時と、このシュヴァルを折り返す時……
その際にクリエは全くボードから降りることなく、高い高度を維持したまま余裕で駆け抜けて行ったからだ。
直線ではこちらが圧倒できるものの、複雑な制動が要求される場面では逆に大きく後れを取る。
「…………」
スタイルとシチュエーションに、向き不向きなものが有るのは知っている。
だが自分のスタイルを後悔したことはないし、これからもすることはないだろう。
……しかし、プライドというものはそれとはまた別のこと。
多少の障害など関係ない、このスピードをもって、アイツにだけは勝ってやる……と、リューガは誓っていた。
「――エアリース・グライド!」
出口に差し掛かると同時に箒にまたがり、飛行呪文を行使する。
この後は再びリエステールを通過して、後はゴールであるルナータの門まで一直線に走るだけだ。
リューガはゴーグルをかけなおすと、一気にその速度を自らが出せる最高速まで跳ね上げ、リエステール西平原を駆け抜けて行った。
途中にある仕掛けはかなりの大規模なもので、術を止めて新たに何かを仕掛けることはむずかしい。
それゆえに選手が行って帰ってくるまででその内容が変わっているということはまずありえないだろう。
しかし、社長ならそれでもやりかねないと思えるのも、また事実ではあるのだが……そんな事を気にしていてはキリがない。
リューガは余計な思考を頭から振り切り、目の前の道を飛ぶことに意識を集中させた。
「まってやがれ……絶対、超えてやる!」
[[<<前へ>Stage5:境界を駆ける]]
森に面する町、シュヴァル。
基本的に人が集まる集落には“町”と称される大きさのものしかないが、ここはまだ村と呼んでも差し支えはないかもしれない。
その様相は平和なもので、お祭りごとがあっても飾り付けというものは他の町と比べると比較的控えめなのだが……
「くっそ、社長め……ここまで仕込むか普通……」
誰の仕業か想像は容易なことだが、今はこれでもかとばかりに大量の旗やら何やらが華々しく飾られていた。
一見するとレースに乗じたおまつり騒ぎでしかないようにも見えるが、実際の目的は少し考えれば分かる事で……
まちがいなく、レーサーの飛行を妨げるための障害物である。
「飛べるものなら飛んでみろ、か……」
社長がレース開始前に言っていた一言を思い出す。
そういえば、リックテールを通過するときにも無意味にも思えるまでの飾りつけが、空中を中心に張り巡らされていた。
「やれやれね……」
「クゥ!」
と、そんな事を考えていると、頭の上からそんな声が降ってきた。
このレースが始まってから何度目だろうか。
抜かれ抜きかえしを繰り返している相手……クリエである。
普段からあまり表情の変化のない彼女だが、何を期待していたのかどこか残念そうな表情を見せていた。
「先に戻ってるわよ」
どうやら既にチェックポイントを回って来た後らしく、そう一言言い残すと、相変わらずの器用なボード捌きで、空中の障害物をスイスイと切り抜けてリックテール方面に向けて飛んで行く。
障害物まみれの場所では、どうしても彼女のテクニックで追いつく事が出来なくなってしまう。
「ちっ……」
……最初に推測していた通り、このレースの中ではフィールド上だろうが町中だろうがお構い無しに仕掛けが張り巡らされていた。
リックテールとシュヴァルの間では、またどこかの魔術師にでも依頼したのか、普段ではあり得ない程の嵐が吹き荒れていて、それこそまっすぐ進むだけでもかなりの制動力を要求され……
リックテールの中は、もう説明するまでもないだろうが、お祭り騒ぎに加えてシュヴァルを当然のように上回る装飾。
通行人を避けるだけでも骨だというのに、そこまでされていては低空飛行しかできない身としては走らざるを得なかった。
「やっぱりリューガさんは上位組でしたね」
……シュヴァルのチェックポイントでそんな事を言われたが、あまり嬉しいという感情は沸いてこなかった。
それは、氷樹地帯を通過するまではよかったが、リエステールを足で通過している時と、このシュヴァルを折り返す時……
その際にクリエは全くボードから降りることなく、高い高度を維持したまま余裕で駆け抜けて行ったからだ。
直線ではこちらが圧倒できるものの、複雑な制動が要求される場面では逆に大きく後れを取る。
「…………」
スタイルとシチュエーションに、向き不向きなものが有るのは知っている。
だが自分のスタイルを後悔したことはないし、これからもすることはないだろう。
……しかし、プライドというものはそれとはまた別のこと。
多少の障害など関係ない、このスピードをもって、アイツにだけは勝ってやる……と、リューガは誓っていた。
「――エアリース・グライド!」
出口に差し掛かると同時に箒にまたがり、飛行呪文を行使する。
この後は再びリエステールを通過して、後はゴールであるルナータの門まで一直線に走るだけだ。
リューガはゴーグルをかけなおすと、一気にその速度を自らが出せる最高速まで跳ね上げ、リエステール西平原を駆け抜けて行った。
途中にある仕掛けはかなりの大規模なもので、術を止めて新たに何かを仕掛けることはむずかしい。
それゆえに選手が行って帰ってくるまででその内容が変わっているということはまずありえないだろう。
しかし、社長ならそれでもやりかねないと思えるのも、また事実ではあるのだが……そんな事を気にしていてはキリがない。
リューガは余計な思考を頭から振り切り、目の前の道を飛ぶことに意識を集中させた。
「まってやがれ……絶対、超えてやる!」
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