Aerial World内検索 / 「駆け出しと中堅と先人と」で検索した結果

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  • 駆け出しと中堅と先人と
    駆け出しと中堅と先人と 「まあ気持ちはわからんでもないんだけどな」 良くも悪くも威勢のいい二人組が酒場を出て行った直後、やれやれと微妙な表情を見せながらそれを見送っていたマスターの前に、スカイブルーの髪をした、やや小柄な少女が現れてそんなことを口にした。 彼女もまたマスターや他の客と同じ感想を抱いていたのか、その表情は妙に生温かい。 「おう、ティオ。 来ていたのか」 そんな彼女――ティオの様子を見て、もう一度やれやれ、と思う。 まあ、外見こそやや細身で少々頼りなさげな雰囲気は否めないのだが、一応支援士――ついでにいえば、実力のランク的にはCとBの中間あたりにいるブレイブマスター(仮)である。 (仮)と付けた理由は、まあ色々あるのだがそこは今は重要ではないので流しておこう。 「実際、支援士の有名な話っていうと、華々しい武勇伝。 だから駆け出しの連中は意外と誤解してる...
  • 作品
    ...停止中】 駆け出しと中堅と先人と【※横槍な話 著・龍獅】 黒の剣 【著・神無月カイ】 番外:断罪の月 Black Loulette 【著・hina】 サンドヴィレッジ編  序 1 2 3 4 5 6 7 キャラ紹介(L№s) 21が料理に挑戦するそうです。 HevenlyTears【著・カイ】 第一話 01・02・03・04・05 Untitled 【著・シルフ】 01 日常彩る歯車達 ※普段注目されないような町の人達に視点を置いた短編を募集するシリーズ。 誰でも書きこみOK 図書館シリーズ(図書館関係が多くなってきたので半独立) 大図書館の司書長 【著・龍獅】 大図書館のサボリ司書 【著・ログテル】 ものぐさも大切 【著・龍獅】 大図書館の人々 【著・龍獅】 図書館の一大事 【著・ログテ...
  • チャプター1.戦闘訓練
    ―1― リエステール西街道・ミナルへの道。 この日も若干の雲は存在するものの、太陽はさんさんと輝き、川に沿って散歩でもすると、川のせせらぎもあいまって気持いいかもしれない。 ……そんな中、ミナル川を渡る橋の付近で、ひとつの支援士のグループが魔物の一団と交戦していた。 「我が右手に集え紅を纏う火精 我が左手に集え緑旋を宿す風精」 その中の一人――三人の前衛に守られるように立つ小さな少女が、呪文の詠唱を開始する。 …彼女達の前に立ち塞がるのは、この世界でも最弱とされる魔物であるスライム。 主に集団で現れる事の多い魔物だが、戦闘能力そのものが微弱であり、駆け出しの支援士のいい的だったりする。 ついでに言うなら、赤、青、黄……と様々な色が並んでいるものの、実際は色能力すらも持たない個体であり、弱点等を気にする必要もない。 「我が力を糧に一つとなりて敵を討て! ...
  • 斬鬼伝キャラクター紹介
    刀堂 刀人(とうどう とうと) 名前:刀堂 刀人またはトート・トウドウ 性別:男 年齢:16 ジョブ:ブレイザー→ブレイブマスター 能力:紫・緑(速) 武器:妖刀斬鬼 形見:- 所持能力 マインドラーニング 精神を集中させ、刀に宿る斬鬼の魂と同調することで生前の剣豪「斬鬼」の編み出した我流剣術を習得できる。 しかし、ある一定の技量がないと斬鬼は同調させてくれない。 十六夜出身の駆け出し支援士。 実家は代々続く鍛冶屋だったが、家を継ぐことを拒否し父親との大喧嘩の末に家出同然に飛び出す。 村外れの封印された蔵の奥で意思持つ刀「斬鬼」と出会い、彼の魂の開放する方法を求めることを当面の旅の目的とする。 性格は正義感が強く困っている人を放っておけない典型的な主人公タイプ。 良く言えば一本気・実直。悪く言えば単純・愚直。 ミリエラ・リム・リンシュ...
  • Stage5:境界を駆ける
    Stage5 「あぅぅ……」 氷の樹海の中心部――すなわち、その樹海を創り出した魔法陣の中央にあたる場所。 そこにいた術者であるエミリアは、呪文を発動させた直後から、ぐったりと仰向けという形で地面に倒れこんでいた。 先程まで身につけていた白いドレスは消え、彼女が普段から身につけている黒い衣装が代わりに現れている。 メンタルの枯渇で身動きはほとんどとれない状態のようだが、どうやら意識はまだあるらしい。 「おつかれさま。 それにしても疲れる仕事請けたものだね」 そんな彼女に話しかける声。 ……エミリアが所属するギルドの長、ティールだった。 「青のエメトの欠片と、儀式魔法用の魔導石。 さらに上位魔法陣による魔力効率の増幅に、精霊宮の能力解放……と」 今回の魔法に使った要素を連ねるティールだったが、それはまさに「言うのは簡単」な内容であり、実際に使われたエメトの欠片...
  • 一般モンスター
    スライム 能力:- 武器:- 所持アイテム:スライムの粘液 生息地:大陸全域 所持能力 なし 所持技 なし 詳細 ゲル状の物質の集合体、基本的に雑魚 オブ 雑魚。キング・オブ・雑魚 駆け出しの冒険者でも余裕で倒せるので、主に初心者魔法系、ハンター系支援士の的代わりである。 ゲル状の身体の中心に球体状の核があり、ここを攻撃すればほぼ一撃で倒す事が出来る。 スライムドート 能力:毒 武器:- 所持アイテム:スライムの粘液 ・粘着毒 生息地:大陸全域 所持能力 毒液 所持技 なし 詳細 ゲル状の物質の集合体、ただし、スライムと比べて好戦的で獰猛。 動きは鈍いが近付かれると厄介。スライムと間違えると痛い目を見る スライムラージ 能力:- 武器:- 所...
  • チャプター9.極みへ至る瞳
    ―9― 「――極意・空牙舞風閃!!」 ホタルの目の前で刀を振り上げていた鎧武者が、矢の様な勢いをもって駆け抜けた一陣の風によって胴斬りにされ、次の瞬間には今まで消えていった鎧武者と同様に、空気の中にかき消えていった。 一瞬遅れて、ホタルはその風が吹き抜けた先に視線を向け……そしてその先に、ある一人の武人の姿をその目に映した。 「ホタル殿、お怪我は?」 振向きざまに間合いの中にいたらしい鎧武者を斬り裂きつつ、そう口にするブレイブマスターの青年。 ホタルは呆然としつつも、一度ごしごしと目をこすり、確認するように改めてその姿を見つめる。 ……幼い頃からの友人にして、自分の剣を使うと約束した『竜泉』の後継者…… 「クウヤさん!」 竜泉空也。 まぎれもなく、その人だった。 「クウヤ? さっき言ってた討伐隊のヤツか!?」 また別の鎧武者を相手にしながら、横目...
  • 鏡合わせの少女―夢の国より―:9
    ブレイブ・チャリオット。 全体重を乗せた突撃と、全身を駆ける炎の力を重ねた一撃。 ティールにとっては、彼女が”あのひと”と呼ぶ男性が使うブラスト・チャリオットという技を自分なりの力で再現したものに過ぎないのだが…… 直撃を受けたベティは猛スピードで突進する馬車にでも跳ねられたように吹っ飛び、そのままその直線上にあった大木に激突して倒れていた。 「容赦ないわねぇ。 木槍とはいえ、アレは運が悪かったらただじゃすまない威力よ」 もはや続ける力はないと判断したエルナは、即座に駆け寄り彼女の治癒を始める。 「あれは手加減する空気じゃないよ」 自ら切ったものといえ、気にはなるのか髪の先をいじりながらそう答えるティール。 しかしその態度は平静そのもので、特に悪いことをしたなどという感情は感じ取れなかった。 ……むしろ手加減は失礼に値するというのは、横で見ていたエミリアも理解はしていた。...
  • チャプター11.白き閃光
    ―11― 「オオオオオオオオオオオオオオ!!」 ディンとエミリアが臨戦体勢に入った事を認識したのか、地面まで震えさせるような雄叫びを上げるゴーレム。 そのプレッシャーだけでも、二人は地についた足が浮き上がり、そのまま吹き飛ばされてしまうのでは無いかというほどの感覚に見舞われていた。 「エミィ、行くぞ!!」 「……我が命に従い現れ出でよ冬の精……」 それでも、そのプレッシャーをも振り払い、160cmもの刀身を誇る大剣『バルムンク』を振るい、敵の懐にむけて駆けだすディン。 そしてエミリア、はディンの言葉を待たずに、すでに呪文詠唱を開始していた。 「……汝が司りしは大いなる四季の欠片……」 詠唱が先に進むにつれ、エミリアを中心に空気の温度が徐々に低下していく。 「ディヴァインスレイ!!」 前衛で戦うディンは、振り下ろされたゴーレムの豪腕に剣を叩きつけて強引に軌...
  • チャプター12.黒き旋風
    ―12― 「オオオオオオオオオオ!!」 エミリアはディンが受けるはずだった攻撃の身代わりとなり、ディンはそれで吹き飛ばされた彼女を追うようにして駆け出し始める。 ―しかし、負傷したその足では、敵であるゴーレムの方が僅かに動きが速い。 「くっ……」 このままでは、駆け寄るその前にやられてしまう……いや、このまま駆け寄れば、更にエミリアを敵の攻撃に巻き込み兼ねない。 少し進んだところでそれらを察したディンは、振り返り、ゴーレムに向けて剣を構える。 一人でどうにかなる相手では無いかもしれないし、こんな言葉を発するのは手遅れかもしれないが…… 「あいつだけは……俺が守る!!」 気合い一声、足の痛みも無視し、向かい来る巨体に渾身の力を込めて斬りかかる。 しかし、本気になったらしいゴーレムの攻撃はそう簡単に弾かせてはくれず、逆にディンの剣が力に押され、後方に吹き飛ばさ...
  • チャプター17.荒れ狂う子龍
    ―17― 「……シア……さん……?」 「……リスティ……か……」 闇に落ちていた二人の意識が戻る。 わずかに身体に残る痛みを感じつつも、閉ざされていた瞼を開き……徐々に鮮明さを取り戻していく視界に最初に映ったのは、見慣れた聖女と吟遊詩人の姿だった。 「大丈夫ですか? ……ティールの力が、思っていたより大きくて……」 リスティとシアの二人は、『ラリラル』の術で直ぐにでも治癒しきれる範囲だと思っていたが…… 彼女の技の衝撃は身体の内部にまで響き、外見上のダメージ以上に、奥底に刻まれたダメージの治癒に想定外の時間がかかってしまっていた。 「ガアアアア!!」 しかし、その直後に四人の元に跳びかかる、大戦斧を振りかざすベルセルクの姿。 前線で戦うティールや、ヴァイ達で捌ききれなかった一人だろう。 「くっ……」 倒れたままの体勢からでは間に合わないかもしれないが―...
  • SBS キャラクター紹介
    『すいーと・ぶらうん・すとーりーず』キャラクター紹介  名前:マルシア・ファリャ —Marcia Falla—  性別:女  年齢:16  ジョブ:アリスキュア→クリシュナ  能力:光・赤・精神  武器:レイピア  形見:なし  所持特技(特技・魔法):  (1)治癒《リラ》   (初歩的な治癒法術.)  (2)中度治癒《ラリラ》   (中程度の治癒法術.)  (3)攻撃加護《グロウ》   (攻撃力を上げる.)  (4)防御加護《プロテクト》   (防御力を上げる.)  (5)耐魔加護《リフレクト》   (魔法耐性を上げる.)  (6)双葉 -ふたば-   (二連続で攻撃する.)  (7)エレメンタルソード   (武器に属性付加して攻撃.) 「こんちはー! アタシはマルシア. アタシのパパもママも教会にいるから,当然のように...
  • 追憶の戦
    「口を開いてから撃つまでの時間がルミナスより短いな。 前と同じってわけにはいきそうにないな」 「あの時は、私は気絶しておったからなぁ……そのあたりは二人に任せるのじゃ」 魔砲を回避した体制から、それぞれ立て直す3人。 エメトキャノン――いや、性質上は模造品であるからゼロキャノンとでも言うべきか――は、膨大な力を放出する分直後からしばらく動力に回るメンタルの出力が落ちるらしく、行動を一時停止するか、極端に動きが鈍くなる。 それは目の前にいるゼロも本来のエメトと変わらないらしく、行動が鈍くなると同時に、常に体全体から発せられているシルバーの光が、より暗くなっているのがわかる。 「まぁ、タイミングは今ので大体わかった。 あとは、もう一発撃ってくれなきゃはじまらないね」 エメトゼロとの戦闘が開始した時点で、ティールはエミリアからひとつの皮袋を受け取っていた。 その中身はいわずもがな、...
  • —モレク〜モレク鉱山5—
    《BACK》  一行がグロウクローチと遭遇してからさらに一時(いっとき)が過ぎたばかりのとき、 その出来事はやってきた。 〈ワサッ…〉 最初のきっかけは、脇の小部屋から姿を見せた一体のエビルプラント。 〈カサカサカサッ…ワラワラワラワラ……〉 蔓状の本体から生えている葉を擦り合わせて発した音を合図に他の個体が次々と現れ、 瞬く間に廃坑道を埋め尽くしてゆく…。 「…クッ! カネモリ、退くぞ!!」 「どしたのエンリケ!? そんなに慌ててぇ?」 「ジュリア、今ここで奴らに暴れられたら…」 〈ピキッ……〉 脆い岩肌を這いずり回る植物どもの鈍い振動が、屈強な鉱山の男さえも恐れさせる 最悪の危機を現実のものにしてしまった! 〈カラッ…ガラガラッ!!〉 『落盤!!!』 哀れなエビルプラントの大群を飲み込んで押し潰してゆく、無情なる岩石の大雨。 しかし、その様を見届...
  • チャプター4.開戦
    ―4― 場所はリエステール東街道……では馬車などの通行の邪魔になるので、街道からややはずれた地点を選んでいた。 地形的アドバンテージはどちらにも傾いておらず、兵力差は4:2. 単純な数字の上では、こちらが有利な状況である。 人員に関しても、ティールが斬り込み、ディンが盾に、そしてエミリアとイリスが後方から魔法で攻撃する、とバランスはとれている。 ……ただ、イリスに関してはせいぜい火と風の中級魔法がかろうじて使えるといった具合で、多属性合成魔法も下級魔法同士を組み合わせて中の下程度の威力を出すのが関の山で、中級同士を組み合わせるほどの能力はまだ持ち合わせていない。 尤も、中央都市近辺のフィールドをうろついている魔物程度ならそれでも十分対応できるのだが、今回は”対人戦闘”であり、その相手をする二人組は間違いなく自分達と同格以上なので……イリス単体で魔法を使わせたところ...
  • 第2話「嬉しくともなんともない当たりだけどな」
    <リエステール~ミナル街道-橋付近> エリスの叫びを引き金に勃発したレムリナムの群れとの戦闘は、開始から数分が経過していた。 エリスたちは二手に分かれて応戦しており、すでに残り数匹の状態となっていた。 エリス「そこ!」 エリスが投具のナイフを投げ、レムリナムの注意を引き、 エリス「アル!」 アル「わかってる! はあぁぁぁぁ!」 アルが一気に間合いに踏み込み、気合のこもった一閃で武器ごとレムリナムを叩き斬り、返す刃で吹き飛ばした。 その隙を狙って他のレムリナムが攻撃を仕掛けるが、アルは大剣でその攻撃を防ぐ。 そのまま防いだ部分を支点に左側面に回りこむと同時に足払いを仕掛けてレムリナムを転ばせ、無防備になった背中に一撃を叩き込む。 すぐさま辺りを見渡すが、近くには動いているレムリナムの姿はなかった。 アル「ふぅ、これで...
  • Wonderland of Alice
    ―Wonderland of Alice― 「なっ…!?」 床に降り立った4枚のトランプが突如光を放ち、次の瞬間には手足と兜を被った頭のようなものが現れ、丁度人間と同じサイズにまで巨大化。 スペードのAは刀身にスペードのマークが刻印されたロングソードを、クローバーのJはクローバーマークが刻印された長槍を、ハートのQは先端がハートの形をした杖を……そしてダイヤのKは、ダイヤマークが刻印された戦斧を構え、アリスを守るような布陣でティール達の前に立ちはばかった。 「武器から察するに、Aがブレイブマスター、Jはパラディンナイト、Qがマージナル、Kがベルセルクといったところですか」 周囲が驚く中、カネモリは冷静に現れた敵のいでたちを分析する。 「……しかし、チェスボードの舞台にハンプティ・ダンプティの椅子、そしてウサギとにやついたネコ、トランプの兵士……『不思議の国』に迷い込んだ...
  • チャプター3.鬼ごっこ
    ―3― 「マスター、おはよーっとっと…」 バタンと酒場の扉を開けて、いつもの調子で元気にその店の主に呼びかけようとした支援士の女性だったが、その直後に、不意をつくように飛び出て行った小柄な黒い影に驚き、わずかに身を避けた。 黒い影は、女性が目に入っていなかったのか、何も言わずにそのまま駆け出していってしまう。 「おお、ジュリアか。 丁度いいところに来てくれたな」 「え? なにか依頼でも入ってるの?」 しかし、それについては特に気にした様子も無い女性―ジュリアに向かって、マスターの声が飛ぶ。 ジュリアはぱたぱたと服のほこりをはたいて佇まいを直すと、とてとてとマスターの立つカウンターにむけて移動した。 「ああ、今外に出てったお嬢ちゃんの後を追って、様子を見て欲しい」 「今って、今でてった女の子を? 別にいいけど、何かあったの?」 誰の目にも分かりやすいハテナ...
  • チャプター4.疾風の白刃
    ―4― 自分のものさしだけで全てを測ろうとすると、いつか必ず壁にぶち当たる。 個人の常識など、世界の真理からすればほんとうに小さなものである。 ……これは、彼女がとある読書家から聞いた哲学的な一言だった。 その時はその言葉の意味がいまいち理解できなかったが、今、なんとなくその意味が分かりかけてきたような気がしていた。 「にゃにゃー」 道端につみかさなっていた桶にかるく身体を当て、転倒させるアーリー。 それらはバラバラに転がり始め、彼を追いかけるティールの視界から彼の姿を隠し、行く先を阻む。 しかし、ティールはひるまずその桶の波を跳び越え、ふたたび目標の姿を視界に捉えた。 「…あれ、本当にただのネコ…?」 ―とりあえず、ティールは白猫アーリーの捕獲に奮闘中である。 すでにモレクの町をほぼ網羅するほどあちこち走り回ったのは確実で、もう少しで捕まえられ...
  • 鏡合わせの少女―夢の国より―:3
    船旅――と言っても、一般人ができるものは南北を行き来する定期船くらいのもので、沖に出ていくのは漁師だけというのが現状。 かの黒船の一件以降、海の向こう側にあると言う別の大陸の探索に向けて、長期航行といざと言うときの為の武装も施された、超大型船の建造が南北協同で行われているのは有名な話だ。 まあ、その参考の為に回収された黒船は、破損は激しいものの、今の大陸の技術力では解明が難しい領域が殆んどで、マシンナリーやら造船技術者やらは目を輝かせていたり、逆にノイローゼになっているのもいたりと大変らしいのだが。 「…………こんなのんびりした船旅、初めて……」 そんなことは一般人には、興味は出ても知ったことではなく―― 定期船は、今日ものどかに南北の港を往復していた。 「海上に居るのは半日足らずだけどね」 甲板に出て、何やら感激した様子で船の舳先に立ち、気持ち良さげに両手...
  • 第2話『買い出しの果てに』
    『セレスティアガーデン』第2話『買い出しの果てに』 本編 1 2 3 4 5 6 Ending 1 2 3 その1 ――中央都市リエステール――   ――旧市街 in酒場。 「マスターっ!! アタシたちに頼める依頼がこれしかないって、どういうことっ!!?」 「分かってくれ、嬢ちゃんたち…。 こっちにもいろいろと事情があるんだ…。」  朝の酒場にマグノリアの大声が響き渡る。  ただでさえ未成年の女の子だけで酒場なんて異色な空間に入り込んでいて目立つのに、 その発言は否応なしに周囲の注目を集めることになる。  とはいえ、日も昇りきらない午前中なだけあって、テーブルに着いているのは、 今日の最初の仕事を探そうとやってきた支援士か、朝まで飲んで酔いつぶれたチンピラぐらいしか見当たらないわけだが。 「けど、いくらなんでもこの依頼内容はない...
  • きゃらくたぁ(`・ω・´)紹介
    さて、短話と共に自らのキャラ紹介をやってみようか(・ω・´) ヴァイ・リュークベル (あ、ヴァイさんだ・・)  リスティが道を歩いていると、見知った後姿を見つける。  声をかけようと手を上げようとしたが、  ふとしたイタズラ心に、リスティは一つ、クスリと一人笑った。 (後ろから急に抱きつかれたら、どんな反応するだろう)  タッタッタと、  あと二歩。一歩 「そーれ!」  サッ 「・・・なにをやってるんだ?」 「あ、あれ・・?」  抱き込んだのは、彼ではなく空気。  そんな彼は回避型・・・(´・ω・`)ショボンヌ リスティ  リスティの隠された名前。R・ティサイア家は滅びた旧貴族家である!  だからパパもママも死んじゃってます(´・ω・`)ショボンヌ  だから、家族というモノを人よりもちょっぴり大切にする彼女は...
  • チャプター12.決意と揺らぎ
    ―12― 支援士という職業は、戦士として熟達してくるほど受ける依頼にも幅が出来、自由に選ぶ事が出来る。 一般的な考えはそんなところであるし、実際に強ければ高額な依頼も難なく受ける事が出来ることも事実。 ただ、ランク、と言う形で格分けされた依頼の中で、AランクやSランクともなれば、支援士側に受ける受けないの選択権はなく、よほど不当な依頼内容であるか、依頼者がブラックリストにでも乗っていない限りは、例え気が進まなくとも支援士はその依頼を受けなければならない。 ……今のこの二人は、まさにそんな状況に置かれていた。 「ディン、エミィ。 これは、そこの男の依頼なの?」 一瞬驚愕の表情を見せたティールだったが、次の瞬間には冷静に状況を分析し、目の前のかつての仲間に向けて言葉を放つ。 相手が相手ならわざわざ問いただすようなことは無いのだが、ディンとエミリアの二人はテ...
  • チャプター15.修羅の炎
    ―15― 「お前等の相手は俺だ!」 「がはっ!?」 ヴァイと銀牙が周囲に群がってくる兵士達の相手をしている間に、武器を構えて一歩前に出たティールは、真っ直ぐにかつての仲間に向けて戦闘の意思を示す。 「ディン、エミィ。 ……行くよ」 向こうもこちらも、本心ではこんな形で刃を交える事など望んではいなかっただろう。 それでも、いま自分達に残されているのは”現状”という運命のみ。 状況を変えることは不可能では無いが、互いに非常にリスキーな選択肢しか与えられておらず……。 対峙する二人も、表情に難色を示しながらも黙ってそれぞれの武器を構え、ティールのその意識を受け止めていた。 「―滾るは心――燃えるは魂――我が力、内なる灯火と共に――――ブレイブハート!!」 一度はかききえた魂の炎を、再び灯し――その勢いは、明らかに先程のそれよりも増していた。 それは、かつて”エ...
  • 買い出し
    「セオ~おっきろ~!」 「起きてるよ、怒鳴らないで…。」 「とりあえず起きてよ、買い物行くから。」 「ライとでも行ってくれば…?俺、腹いたいから…。」 それだけ言うとまたもぐりこんだ。 「じゃあ、セオのために何か作ってあげる!」 それを聞いた本人はベットから飛び出し、慌てて着替える。 その様子を微笑しながらイルの姉ルウは見ていた。 「じゃあ行ってくるね。ルウお姉ちゃん!」 「気をつけてね。」 遠ざかっていく二人、それを見送ってからルウはまた本を読み始めた。ライはルカとフェイの様子をしばらく見ていた。 「ん?あれは…。」 フェイもルカもその人物を見てライのところへ走ってきた。 「支援者。怪我してるみたい…。」 ルカはそれだけ言うと、愛用のチャクラムを両手に持ち支援者のほうへ走っていく。それに続き、槍を持ったフェイも走る。 「ルカッフェイッ武器持ってどうする...
  • チャプター8.氷昌の冠
    ―8― 「……エミィ!?」 天空より降り注ぎ、大地を穿つ雷帝の鉄槌。 一筋の光の柱となって舞い降りたそれは、閃光とともにエミリアの身体を飲み込んでいた。 いくら魔法耐性の強いマージナルといえども、無防備なまま受けて無事でいられる一撃ではない…… そのくらいは、魔法についての知識のない自分でも、容易に理解することができた。 「……あっ……?」 そう考え至った次の瞬間、ひらりと足元に舞い落ちる黒い物体。 ティールは抱きかかえていたイリスを地面に降ろし、その物体に目を向けそのまま手を伸ばす。 ……それは、エミリアがいつも身につけている白い十字架と翼の模様が施された、黒地の帽子。 転んだ拍子に脱げ落ち、魔法の衝撃で舞い上がっていたのだろう。 「他愛もなかったね。 あとはあんたたち二人だけか」 勝ち誇ったようにそんなことを口にしながら、その紫電の双剣を構えるリーゼ...
  • チャプター6.命の借り
    ―6― 「……で、俺達に何か用でもあるのか?」 エミリアが去り、ディンとティールの二人だけになった宿の一室で、本を読みかけていたティールに向けて、ディンはそうきりだした。 「なんのことかな」 ぱたん、と開きかけた本を閉じ、問いかけた相手に視線を合わせるわけでもなく、ただそう声に出すティール。 しかしその表情は、問いかけられるのを待っていたかのようにも見えた。 「3人で相部屋に……俺には、『話したい事があるから同じ部屋にできないか』と言ってる様にきこえたんだが」 帰ってきていたのはとぼけた一言だったが、ディンは会話を続けるのをやめようとはしない。 いつもなら一笑に伏すような出来事だったが、なぜか、ティールの『一言』は見逃すつもりにはなれなかった。 「それは深読みしすぎじゃないかな」 「それならそれで構わない。 だが、何かあるような気がしてならないんでな」 ...
  • 劇ASSS04.命が繋ぐ道
    …その頃大部屋の中では、 「…ルイン分かっているわね、だから止められないのよ」 彼女もまた、こちら側で納得できないルインに説明を終えていた。 「でも…!」 「くどい! 行かないなら私から行くわよ!」 納得出来ないルインに、ついに焦れてシローネが先手をとる。 彼女の武器は双剣『ジェミナイ』その剣を構え、狼狽から立ち直っていないルインに向けて斬りかかる。 立ち直ってはいないものの、ルインは一先ずその攻撃を大槍でガードする。 (う…殺気が…シロ姉…本気ね…) 刃にその気迫も直接乗せられ感じざるをえなかった。 初撃の後も一方的にシローネが攻め、ルインがガードするという構図は暫く変わらず数分が経過。 「シロ姉! こんな無益な戦い、止めるべきよ!」 と再度、ルインは最初に言ったことを再び言う。 「例え無益であろうと…」 そのように言うシローネの目を漸く間近で見て...
  • AS01.駆けるが如く
    『作戦開始』―――その言葉を聞き、まず初めに動き始めたのは赤い鎧を着た銀髪の青年『レイヴン』と、ローブを着て特徴的な水晶を体の回りに浮かせている茶髪の青年『アウル』、その二人だ。 「ったく、何でこんな不憫な役を俺らがやるんだ?」 「そうは言っても相棒よ、面白そうではないか」 「まぁな」 そんな会話をしながら広めの通路まで歩いて行くと、 「おお、結構な数がいるな」 そこには浮遊している鉄で出来た目玉上の機械兵器『アイズ』が複数体徘徊していた。それらの機体は彼らが来たことを察知し一斉に襲い掛かろうとしている。 「準備運動には調度いいじゃねぇか…なぁ」 「確かにな、だが羽目を外しすぎて油断はするなよ。後は…」 「分かってる分かってる。さっさと片付けてしまおうか」 「だな」 … 「始まった…みたいね」 「そーだね」 「私たちも急ぎましょう」 ―――...
  • 吟遊詩人と子龍
    -吟遊詩人と子龍- 「よいしょっと」 白いボブキャップに白系の服を身につけた少女が、そのへんの店でパンとコーヒーを買い、教会近くにある広場のベンチに腰かける。 この”紙コップ”という食器は使い捨てではあるが、使い捨てであるがゆえに、本来の陶器の食器のように”飲食店から外には持ち出せない”というデメリットは解消されている。 まぁ要するに、使い捨てなりだからこそ持ち歩けるという便利さがあるのである。 「……様子見に来たつもりだったけど……この様子だと、”人攫い”でもしたのかな」 なにやら遠目に見ても妙な騒がしさを見せているが、確か今日はアリスキュア達の昇格の儀式の日。 ……と思って眺めていたが、どうやら儀式に対する慌しさとはまた違った様相を見せていた。 ”アルティア様はどこだ!”などという声が飛んできている事から、大体なにが起こったのかは想像がつく。 「あら、テ...
  • 束の間の休息
    敵軍の旗艦、ブラック・シップの鎧となる魔術結界の構成の一部となっていた戦艦……今は大陸連合軍の一団により、その船上の敵は殲滅され、連合軍の休憩所のような形として扱われている。 ……この船の占領に一役買ったパラディンナイトの女性が率いる部隊、そしてエミリア・ディン・ティールと、カネモリ・ジュリア・エンリケの6人は奥の小さな倉庫に詰め込まれていた保存食や水を拝借し、つかのまの休息をかねた補給を行っていた。 ……そのうちの6人は、その船上で円陣を組むようにして並び、今後の行動の目算を立てる相談を行っていた。 「これで、今度こそ連中の親玉への障害は無くなったわけだな?」 目を疑うほど巨大な姿を誇る敵の旗艦、ブラック・シップに目を向けながら、エンリケはカネモリに向けてそう声をかける。 「そうですね。 敵の旗艦に進入する、という一点のみを見るならば残った障害は……あの艦の周囲にいる魔物くらい...
  • 集いし戦友
    「……水柱に氷の霧? マージナルの魔法か……」 奪った敵船で交戦しつつ、戦線の奥、円陣を組む8隻のうちの一つに接近するティール達。 ちょうど目の前にある味方の小船が、水煙にまぎれて突き進む姿が目に映った。 そして、煙が上がる前に一瞬見えた姿。 遠目からなので断定する事はできないが、小船に乗っているたのは、モレク鉱山で同行したディンとエミリア、そして、その前に盗賊討伐隊として共に戦ったレオン、クリス、アルトのチーム。 ―奇妙な縁もあるものだね― 多くの支援士が参加して入る戦いとはいえ、めぐり合わせというものはかくも奇妙なものである。 ティールは目の前の状況を確認すると、砲手を務めるフェイタルスキルの元へと駆けた。 「あそこ! 味方が敵艦に乗り込もうとしてる、援護してあげて!!」 指を向けた先にいるのは、船上からクロスボウを構えてずらりと並ぶ異国の兵士達。 水煙にまぎれた小...
  • チャプター10.旅のおはなし
    ―10― 正直に言えば、今まで自分がしてきた旅の話を誰かにするというのは大好きだった。 以前住んでいた世界で、始めて冒険者として街から出たときの小さな旅や、かつての家族達……『英雄』率いる冒険者ギルドのメンバー達との遠征討伐。 そして、この世界に迷い混んでから出会ってきた人々との思い出や、冒険譚。 それらはすべて自分という存在が歩んできた道程で、それを誰かに知って貰うという事は、自身の誇りを知ってもらう事につながっている。 きっと、その時に感じられる感情は子どもが些細な自慢話をするようなものと同じかもしれない。 ……それでも、こうして誰かに自分の事を話すという行為は久しぶりで……自分でもわかるほどに、心が弾んでいた。 「――ああ、そういえば前に聞いた事があるな。 鉱山の巨大ゴーレム」 そして今話しているのは、この世界に来てからの冒険の中で、自分にとって...
  • それぞれの過去
    ティールの放った2発の魂の槍、その二つは、真っ直ぐにアリスの座る浮遊椅子に向かって走っている。 トランプ兵士を間に召喚して防ごうにも、今の位置からではその一歩前に二つの槍は到達するだろう。 座っている浮遊椅子も、移動速度は全くもって期待できない。 「――!」 ここに来て、今まで終始寝惚け眼だったアリスの瞳が、大きく見開かれる。 「アリス様……」 アルの声が聞こえると同時に、魂の槍は宙を舞う椅子……その浮遊ユニットである両脇の翼を貫き、なお勢いを残したまま飛んでいき、そのままホールの天井の一部を破壊していた。 その一瞬の後……浮遊能力を奪われた椅子は急激に落下を始め、ティールはその着地点となるであろう場所に走り出す。 「―ブレイブフィスト―」 そのままハルバードを左手に持ち替え、開いた右手に全身を駆ける魂の炎を集める。 そしてそれを青白く光るグローブのような形状で固定し、...
  • 『ネコを追う者たち』
    『ネコを追う者たち』 ――中央都市リエステール――  ――酒場・カウンター。 「はぁ・・・」  溜息を漏らすのは、ギルド・リトルレジェンドのギルドマスター、ティール。 手には現在依頼受付中の支援士依頼がリストアップされた台帳。 「分かってはいるけど、近場で割のいい依頼はないなぁ・・・」  これでも14歳独身・一児の母。 つい先週、1週間の長期の依頼を終えたばかりで、今はあまり街から離れたくない頃合。 イリスにも今日は早く帰ると言って出た手前、時間のかかる依頼は受けたくないのだが・・・。 「ん・・・?」  そんなことを考えながら、依頼の一覧を見ていると・・・。 「え? なにこれ? 猫の捕獲依頼・・・、報奨金・10万フィズ!!?」  それは、ありえない依頼だった。 ただ猫を捕まえるだけで、10万フィズも報奨金を...
  • チャプター18.天の三妖精
    「東に昇りくる月、西に沈み行く太陽」 「この時間に出番なんて偶然かな? 二つの光が同じ空に在るよ」 「今なら――ごく短い時間でも、全員が本来の力を出せる。 行くよ!!」 ―18― 最後の一歩で、ティールの身体は重力の魔法陣を抜け出していた。 ……しかし、その際に発現した怒りの劫火……それは彼女の肉体の限界を超えた炎で、攻撃そのものが不発に終わった上に、その炎は自らの身体を焼き、ティールはそのまま倒れてしまう。 「クク……ハハハハ!! そうか、感情が炎と化すならば、強すぎる怒りは自ら身を焦がす事になるのだな……」 「ママ! ママ!!」 男の腕の中で、必死に暴れて母親の元へ走ろうとするイリス。 しかし相手が魔術師とはいえ、小さな子どもの力では大の男の腕を振り解くなどとても不可能なことで、その叫びも空しく逃れる事は出来なかった。 「くっ……リステ...
  • チャプター9.無情
    ―9― ちらり、と地面に倒れこんでいるディンへと目を向ける。 先程身動きもとれないほどのダメージを負っていたせいか、それからここまで相手には見向きもされていない。 ……それからここまで、それなりに時間が経っている。 自然回復だけであれば、さすがにまだ立てるような状態では無いだろうが…… 「氷昌の冠(クリスティオンクラウン)の下に――我らを覆い隠せ! ダイヤモンドダスト!!」 意を決し、エミリアは魔法を発動させる。 その瞬間、高く掲げた杖の先から噴き出した氷の微粒子が、この周囲一体を包みこむ濃霧のように展開し…… 一同の視界は太陽光を反射して輝く氷の霧で満たされ、かろうじて相手の位置を把握できるような状態に持ち込まれた。 「イリス!」 「うん! ――焦熱の赤をまとう火精」 その直後、エミリアの一声を受けて詠唱を開始するイリス。 「ふんっ、これで目隠しのつ...
  • 上位モンスター
    ラジア・レムリナム 能力:- 武器:剣 所持アイテム:ぼろいロングソード・ロングソード・トカゲのうろこ 生息地:ミナル川付近 所持能力 なし 所持技 なし -詳細- レムリナムをそのまま巨大化させたような魔物。 通常のレムリナムよりパワーが増しているが、その分スピードが犠牲となり、逃げるだけならそれほど苦労はしないだろう。 ただし、その体表を覆う鱗の防御能力の上昇しているので、貫通力のある技か、それなりの力がないとダメージを負わせるのは難しい。 ※ 『セレスティアガーデン』において翠水晶石をとりこんで巨大化したレムリナムがコア再生したもの。 体内の翠水晶石は失われているので総合的には能力低下しているが、駆け出しの冒険者が相手をするにはかなり難しい。 ナハト・コボルト 能力:- 武器:古びた斧、剣、弓、爪など 所持アイテ...
  • かくして誰かさんは墓穴に埋まる:前編
    かくして誰かさんは墓穴に埋まる 北部の中央都市リックテール。 十六夜ほど極端なものでもないが、地理の関係上当然の如く南部よりも平均気温は低く、そう思いながら周囲を見渡してみれば、僅かにリエステールよりも防寒対策が濃いようにも見える。 そして今は年中で最も気温が低いとされる2月。 ともすれば、町の防寒対策も最も盛んに行われる時でもあり、雑貨屋ではカイロなどの道具が多く並べられており…… 他にこの時期独特の様相を語るならば……町中の空気が色めき、甘い香りに包まれる一大イベントが一つ―― 「リックテール……やっとついたのねー」 北部首都、リックテールの城門付近――一般市民、支援士を問わず北部の他の町々へと向かうための乗り合い馬車が集うこの場所は、一般的に馬車広場とも呼ばれている。 外から来る者、これから外へと出る者、そんな彼らが混沌と集まるこの場所は、大体...
  • そんな事情
    「わ、私を雇って下さい!!」 夏も過ぎると、日差しも緩やかになりはじめる。 過ごしやすい気候になりつつあるこの時期は、食物も豊富に出回り始める秋の始まり。 読書、食欲、スポーツといろいろやりたいことが増え始めるこの時期、リエステールの支援士ギルドであるリトルレジェンドでも、少なからず秋の訪れに生活の形に動きが見えはじめていた。 ……これは、その少女の叫びにも似た声もまた、その一つなのだろうかと思わされた出来事である。 そんな事情 「……いきなり雇えといわれてものお」 いくらなんでも唐突すぎる、とでも言いたいのがありありと分かる微妙な表情で、エミリアは少女に言葉を返した。 そもそも、どちらかと言うと雇われる側にある支援士の自分達に、雇ってくれと言う事自体が不思議である。 「ま、とりあえず順を追って説明してよ。いくらなんでもいきなり来て雇えじゃこっちも困る...
  • →ヴァイと白と戦闘訓練
    ざくッ、と踏み締めた足元から草の擦れる音が聞こえる。 眼前に広がるのは、まばらに並んで生える木々。 森というには見通しがよく、草原と呼ぶには木が多すぎる。 林、というのはこのくらいのものだろうか、などとどうでもいい事が頭に浮かんだ。 「ここで間違いない……か?」 ヴァイはガサガサと酒場で受け取った地図を広げ、ここが指定された場所である事を確認する。 リエステールから少し歩けばある、木々が多少密集しているだけの特に名前もない林。 これといって採れる物もなく、街道からも外れるために普段は誰にも見向きもされない場所だ。 『あなたの戦闘訓練の依頼を受けさせていただきます。  私なりの趣向を凝らしてお迎えしますので、地図の場所に来てください』 ぺらりと地図を裏返し、そこに書き込まれた文章を改めて読む。 妙に丸っこいかわいい文字が気になるといえばなったのだが、それはと...
  • 一陣の風
    馬が走っていた。 それも一匹では無く、馬車を引くためのものでもない……純粋に、人一人が乗騎するために訓練された軍馬が数十頭。 その先頭を駆るのは、武人として、支援士して名声の高い十六夜の名家”竜泉”の嫡男、クウヤ。 後に続く者達は、彼の家系で継がれている道場の門下生達だろう。 「おおおおおおお!!」 進行するその方から向かい来るワイバーン達に放つのは、『無銘の剣』による一閃。 馬上からの一撃で、次々と翼竜を斬り裂いていくその様は、初代”竜泉”の姿を彷彿とさせる。 「若様、見えました!!」 「分かっている、このままルナータに突入するぞ!!」 港町ルナータとフィールドをつなぐゲート。 それはすでにところどころが崩壊し、見る影もなかった。 だがそんなことに構っている時間などない。 今は人間には手が出せない飛行型の魔物だけが大陸内部まで入りこんでいるが、真の危機は地上を駆ける...
  • その5.窮地
    -5- エルナと別れた後、二人は支援士としてもお馴染みの酒場へと足を運ぶ。 一般的に、酒場と言えば酒を飲むためのもの、という認識かもしれないが、もちろんそれだけではなく、軽食を取ることも十分に出来る場所だ。 いつもヴァイやディン達が依頼を受ける酒場……いつものマスターの店では、店の裏でマスターの奥さんが料理を作り、それを店に出しているという方式となっている。 いつものように依頼を受けるなら、カウンター席に座るのだが、今回は仕事抜きの為に、普通の客としてテーブル席に二人はついていた。 「おう、ヴァイ。 今日は仕事じゃ無ぇんだな」 「…だったら悪いのか?」 半ば睨みつけたような印象を持たれそうな瞳をマスターに向けるヴァイ。 だが、それは生来の顔つきや性格が影響しているもので、実際は全く怒ってなどいない。 そんな事を思い、エミリアは心の中でクスリと笑ってい...
  • XW05:只今サボタージュ中…
    ―――一部の人々が突然この世界に巻き込まれたのはおよそ一時間前。 この世界には今や巻き込まれた人々しかいない。 そして、この学園の職員室も例外ではなく本来ならば誰もいない。 しかし、この部屋ではある音が聞こえる。 パリ、パリ、と。 勿論これはバグなんかではなく、誰かが何かを食べている音ではあるが。 「ほぅ…皆、頑張っているな」 と、一人の教職員が椅子に座りながら窓の外の様子を見ながら言い、 「先生…こんな所にいつまでいるつもりですか?」 と、煎餅を口に銜えて、同じように椅子に座った女子生徒が呆れたように言った。 教師のアインと、生徒のルイン、その二人がこの部屋で待機…というか、休憩していた。 「ん…別にこのままずっといてもいいんだぞ? バグなら暫くはこなそうだしな」 「そうは言っても…」 「まぁ、時間は無いわけではない。休息も必...
  • チャプター6.紫電の双剣
    ―6― 「――開け、轟雷宮の門――我が呼びかけに応え、ここに出でよ! 『ライトニングエッジ』!!」 リーゼが高らかにそう宣言した瞬間、その両手を差し出した先……晴天のはずの空に、いくつものの雷光が走るのが見えた。 ――セイクリッドが攻撃系の魔法を使うとは思えない……いや、ありえない。 少なくとも、ティール達四人は、そのような話は聞いた事が無かった……が、次の瞬間、四人は更に驚かされることとなる。 上空を走る雷光が一点に集まり、そのまま轟音と共にリーゼの高く掲げたその腕に落ちてきたのだから。 「なっ……!?」 それは、その直後の事…… その場所には落雷の直撃を受けながら、平然とその足で立つリーゼ。 ……そして、舞い降りた雷光は掲げたその手に吸い込まれていくかのように一瞬の間に収縮していき、バチバチとうねりを上げながら、一つの形へと変化していた。 「……...
  • Side.Erna02
    ■定例友会三日目  「さて、三日間の定例友会も最終日。皆さんとお別れする日がやってきました」  初日の交流会と同じく、最後のお別れ会も生徒皆が一つの部屋に集まり、対面して座る形になっており  そして、初日と同様に進行をするビショップの話を聞いていた。  違いがあるとすれば、今回はお菓子やケーキは置いておらず、机の上にあるものは、お喋りで乾いた喉を潤す為のお茶と水である。というくらいのものだろうか。 「まあ、また来年辺りに会えますが、少なくとも教会の行事で会えるのはしばらく先になります。  まだリエステール組の皆さんが出発するまで時間がありますので、   お手紙の交換をする約束をするなり、友達の顔をしっかり覚えるなりと、それまで自由にしていてください」  以上で説明を終わります。と、ビショップが話を締めるその直後に、  エルナは淡々とした様子で手を上...
  • キノコと虫と…
    「しっかし暗いなぁ…。」 「木が多すぎて光が入ってこないのでしょう。」 「ねぇねぇ、ライ。これ食べられると思う?」 イルが持っているのは、キノコ。 「…見るからに毒キノコだと思います。あんまり触らない方が…あ。」 「どした?……んなっ。」 イルの背後には、巨大芋虫の大群。 「い、いいい。イルさん、う。後ろ……。」 「え…?イヤァァァァァァァ!」 「焼き払え~!」 「無理です!あんなの!」 後ろからガサガサと音を立てて追いかけてくる虫の大群。 「…セオさん。キノコは好きですか?」 「こんな場合にそんなこと…。」 現在地、黒き森シュヴァルツヴァルト。木の上。 「参りましたね…。あの芋虫、私たちの事食べるつもりですよ?」 「そりゃそうだろ…。」 「うーん…。あっちの木に飛び移って逃げられないかな?」 大樹を指して彼女は言う。 「やってみるか…。」...
  • —ミナル〜サンドヴィレッジ1—
     風をもとめて —ミナル〜サンドヴィレッジ— 《前回に戻る》  〈キィィ…カコン キィィ…〉 町の中央を流れる清流から各所へと張り巡らされた運河の上を、人や荷物を載せた小舟が 何艘も行き交っている。 …そう、ここは豊かな水の恵みを受けた河川の町・ミナル。  〈キィィ…カコン キィィ…〉 「ねぇねぇっ、カネモリ。〈ボソボソ〉」 「何でしょう、ジュリア?〈ボソッ〉」 「さっき酒場で会った竜(ドラゴン)の子、ホント可愛かったなぁ〜。 キミだって、そう思うでしょ?」 「『敵の害意を少しでも削ぐように、あらゆる生き物の幼子は可愛げある姿となるのが 自然の摂理』 とも言われていますが、まさにその通りでしたね?」 「…ハァ。 ボクぅ…、もう竜とは戦えないかもしれないなぁ。 どんな竜にでも、あ〜んなに可愛い頃があったかと思ったら…。」 「それは困ります。...
  • —モレク〜モレク鉱山6—
    《BACK》  一夜開けて二時(ふたとき)余り。 太陽は中天の空に向かって歩みを続けている。 〈コンコン!〉 「(カネモリぃー!)」 …………………………。 〈コンコンコンッ!〉 「(ねぇー、イザベルさんが『昼食は何がいい?』ッて…)」 ……………………………………………。 〈ガタン!〉 「起きてよぉ! カネモ…」 …………………………………………………………………。 「…リ……!?」 ジュリアが扉を開いたのは、昨日の冒険で負傷した錬金術師がベッドで寝ているはずの部屋。 しかし、その空間に人の姿はまったく存在していなかった!? 「…………?」 ベッドの上には脱いで置かれた寝間着と、彼の頭に巻かれていた血の滲んだ包帯。 壁に掛けてあった灰色の着物と黒い羽織、そして木箱は主とともに姿を消していた。 …そして、中途半端な角度で開いたままの窓に目をやると…...
  • 中央都市防衛
    「・・・聞こえる」 「リスティ?」 「声が・・・」  どこか遠くを・・・そう、それは遥か北東の方。そこには、ルナータがある筈。  今。そこでは多くの支援士達が黒き船を相手に戦いを仕掛けている筈である。  ・・・それを証明するかのように、ヴァイの足元には幾つもの『飛行魔物』が転がっている。  エルナの魔法で落とし、斬り抜き倒す。  もしくは、止水で構え。受け流しで斬る。そうして倒していった奴等だ。  ・・・ただ。それでも相手は馬鹿ではなく、エルナは負傷したケルトの治癒に回っている。 「・・・けて」 「?」  そして、リエステール東街道中央都市側にヴァイとリスティは立っているワケだ。  ・・・更に、リスティの先ほどの言葉。 「・・・助けて・・・?」 「? 何か、聞こえたのか?」 「わ、判りません・・・。アルティア様の感応能力の一つかも知れま...
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