渚の夢幻城(城突入前)
各々の理由でS市に到着した面々。海辺沿い―正確には海開き直後のビーチ―の指定の合流場所へと到着した。
人払いがされていたのかは定かではないが、周辺には余り人の姿は見えない。到着時刻はまもなく正午と言ったところだろうか。
「着いた着いた。…みなさんはもう到着しているのかな。」
山中からの旅を終え、久々に海に足を運んだレンは、早速他のメンバーを探して辺りを見渡す。
目に入ったのは海の家と書かれた看板の立つ小屋、それに男が二人…いや、もう1人、身長2m半ばの大男が見える。
書面によると、オオイズミ達もこの辺りに来ているようだが、さて、どうしたものかと考える。
…するとそこへ、Y村で盗みを働こうとしていた少年…
カルノの声が聞こえてきた。
「海だー!鈴木さん!魚採ろうよ!」
「この声は…」
「そうだ、こいつにマンボウを生で食わせてみよう」
「マンボウっておいしいの?」
等と話している様を眺めていると、御鈴から話を聞き、報酬目当てで同行した髪結をはじめ、続々とメンバーが集まってきた。
「食べてみればいいんじゃない?」
「あ、髪結のお姉ちゃん、久しぶり!」
「寄生虫だらけだが、お前なら大丈夫だろう」
「久しぶりだねー。なんか設定的にだけじゃなくて色々な理由で久しぶりな気もするねー♪」
…メタ発言は"私"が困る。このシーンはカットしてやろうかと…私情を挟んでいる場合ではない。そう、マンボウだの寄生虫と言った話に頭を抱えつつ、我らが主人公の登場だ。
「マンボウがどうとか言ってる場合じゃないですよ……とりあえずオオイズミさん達を探さないと」
「来てるの?」
「その様ですね。えっと、忍者殿達は……あ、あそこにいるのがそうではないでしょうか?」
レンが指差す方向を見ると、覚えのあるパーマ頭を筆頭に、忍者たちの姿が見えた。
「お、皆来たみたいだな、おぉ~い、ここだここ~」
「マンボウを食べたって大丈夫だよ~、髪お化けちゃん。私、胃は強いからねっ」
「あ、オオイズミさん久しぶり!」
(…か、髪おば、おば・・・け)
オオイズミたちは一行を見つけると、手を振りながら歩いてきた。
「お久しぶりです、皆さん。ここに来られたということは、謎の城の調査に協力していただけるんですね?」
スズイが歩きながら話を切り出すと、各々集まりながら話し出した。無論、鼎はオオイズミを回避しつつ、である。
「うん!おもしろそうだし手伝うよ!」
「あ、忍者さんおひさし~。」
「お城には色々珍しいものありそうだしね♪」
「ええ、そのつもりです。なんでも結界が張られていて調査が難航しているとの事ですが……」
「ああ、結界については目撃情報と実地で張り込みをした結果一つ分かったことがあるんだ。フジムラ君、説明してくれたまえ。」
「おめぇは何だ?王様かなんかか?」
オオイズミの態度にあきれつつも、フジムラが説明を始めた。
「…オホン。まず白の目撃情報を纏めてみた結果、目撃情報は午後8時からの15分間、それも土曜日…つまり今日と同じ曜日に集中しているんだ。」
「実際、目撃地点近辺では午後八時前後に僅かながら発光現象が確認されています。残念ながら、城自体を見ることはまだ出来ていませんが…恐らくは今日の午後8時には姿を現すものと思われます。」
「結界こじ開ける事はできないの?」
「そいつは不可能だぁな。まず完全に位置を特定できるのが結界が限定的に解かれる土曜午後八時前後の僅かな間だけ、加えて結界自体もかなり精巧に出来ているようでな…
ガルシアの旦那が来れれば楽だったかも知れねェが、来れないってんじゃしょうがねえ。」
…因みにみすた君が君の虚斬りを魔術的に再現し、結界をこじ開けるためのアイテムを使ったところ…後1秒遅かったら黒焦げになって死んでいたぜ。」
「ふぅん、大体土曜日の午後8時から15分、かぁ……」
「まあ、そういうわけでして…今日の8時までは此方で過ごして頂いて、時間になったら内部へ移行してもらうことになります。」
…説明を続けるスズイはトラウマが蘇ったのか、かすかに声が震えている。
「午後8時かぁ・・・ 今がお昼だからまだかなり時間あるねー」
「そうね、まだ結構時間あるかぁ……とりあえず腹ごしらえにみんなでどっかに食べに行こっ」
鼎の提案に、空腹に耐えかねたカルノが飛びついた。
「うん!おなかすいた!」
「ああ、そういえば、ここの海の家は太っ腹でな、ランチが500円でビュッフェ形式になってるんだ。」
「びゅっふぇ?」
「ほほう……それは、行くしかないねっ」
「んー、食べ放題みたいなイメージでいいよー」
聞きなれない横文字にクエスチョンマークを浮かべたカルノに髪結が補足説明を加える。更に忍者たちからの情報提供は続く。
「食べ放題!早く行こうよ!」
「それは確かにリーズナブルですね……折角だから行ってみようかな、腹が減っては戦は出来ぬとも言いますし」
「(500円・・・) 是非いきましょう、丁度お腹もすきました」
「海の家でビュッフェってことは、お魚や貝とかきっとたくさんあるよ♪ はやくはやくー」
「それから、結城さんがこの辺りの警備の方に話をつけておいてくれたらしいので、何かもらえるかもしれません。…ああ、それと商人さんも来ているらしいので、持ち物に不安がある方は買い足しておくと良いですよ。割引券も使えるそうです。」
(商人……折角だし投げれるものでも買っておこうかな)
丁度先日、雪宗の特訓で投擲技術を習得していた鼎は、"商人"というワードを逃さず捕らえ、手持ちの装備を再確認する。…遠距離攻撃手段があるに越したことは無い。
鼎は戦闘に備え、ブーメランを一つ買うことに決めた。
そして最後にオオイズミから伝えられた情報は、報酬目当てで同行した髪結をやる気にさせるに十分なものだった。追加報酬である。
…一方待ちきれなくなったカルノは、そんなことはお構いなしに先行ってるよー!と叫びながら海の家に走り去った。その背後を鼎が一番乗りしようと追い縋る。
「私が先だってのー!」
「…俺たちから伝えられるのはこんなところ…あっ!忘れるところだった。結城の旦那が出資してる美術館の品が不足してるらしくてな。城で珍しいものを見つけたら、現金で買い取らせてもらうぜ。」
「!・・・それって、報酬とは別料金で貰えるってことだよね?」
「ああ、そうなるなぁ。頑張って探してくれよぉ!」
報酬が、現金が増える。自分の頑張り次第で。それを聞いた髪結は、上機嫌で一行に続いて海の家へと向かったのだった。
※ここでサブクエスト、『トレジャーハント』が開始されました。城の中で換金アイテムを見つけた場合、クリア後にお金に変える事が出来ます。
「500円500円・・・。」
「追加報酬……最近財布が軽いし丁度良いかな、とりあえずご飯っと。それにしても暑い……」
後方で話を聞いていたレンと御鈴も、全ての情報を再確認すると海の家へと向かったのだった。
~海の家~
海の家へとやってきた一行。甲斐甲斐しく蛤を焼きながら、店主が威勢のいい声を上げる。
「へいらっしゃい!ランチタイムは500円でドーンと海の幸をサービスしちゃうよぉ~!」
「んーと5名様……でいいのかな」
結局一番乗りした鼎が一行の人数を数え、座席を探す。
その後ろでは、どうやらカルノに金銭感覚が無いと判明し、追加報酬の話で機嫌が良くなっていた髪結が払うと言うことが決まったようだ。
「…カルノ君お金ないの? しょーがないなー、今私はちょっと機嫌いいから奢ってあげるよ♪」
「ほんと!?髪結のお姉ちゃんありがとう!」
「・・・ いい? 私の名前は茶織って言うの で愛称はティティ、だからティティって呼んでね?」
「ティティのお姉ちゃん!」
そのやり取りに気付いた鼎が振り返り、髪結をからかい始めた。
「髪お化け~」
「ティティだって・・・もーなんでもいいや! ハマグリとビールくださいー♪」
…こうして一同は海の家でお腹を満たした。そして店主は泣いた。
一方、店主が悲嘆に暮れて店じまいの準備をしている頃、カルノがあることを思い出した。
「警備の人に何かもらえるらしいし行ってみようよ!」
「それが良さそうですね、あっちの方かな?」
御鈴が辺りを見渡し探してみたところ、どうやら一際目立っていた身長2m半ばの大男が湾岸警備の担当者だったようだ。
男は一行の事情を察すると、夜間の警備で使用する電子ランタンと、有事の際に使用する照明弾を一行に手渡した。
「行方不明の件で協力してくださる方々ですね。俺にはこれくらいしか出来ませんが…あの、頑張ってください。」
「おに~さんありがとっ」
最後尾で礼を告げた鼎に軽く会釈し、去っていく一行を見送ると、男は再び自分の仕事に戻って行った。
彼がこの事件の真相を知ることは恐らく無いだろうが、一行の任務遂行中、城の方角に一般人を近づけまいと彼が目を光らせていたお陰で犠牲者が減った事を忘れてはならない。
――そして、時刻は午後8時。オオイズミ伝えられた凡その場所に行くと、城のシルエットがぼうっと浮かび上がるようにして現れていた。
「おぉ!お城が出てる!」
「あれが件の……今なら内部に侵入出来そうですね」
「わわわ… ほんとに出た」
「おー、あれが……」
城は庭を含めて400*400メートル程度の大きさだが、城自体は100*100程。窓の位置から推測するに5階建てで、各部屋の高さは凡そ10mといったところだろうか。
一向は鼎を先頭に、ついに正体不明の城へと踏み込んだ。
…彼らの、彼女らの、長い長い夜の始まりである。
「消えない内に乗り込みましょーかっ」
最終更新:2013年04月25日 12:00