渚の夢幻城(3F)
2Fの探索を終え、3Fへと登ってきた一行。
慎重に罠を警戒しながら―無論、
カルノ以外は、だが―階段を登り終えた・・・その時である!
一行を目掛け、どこから現れたのか巨大なマジックハンドが迫る!
「広いね・・・!?」
「!?」
「え!?」
呆気に取られた一行を意にも介さず、マジックハンドに囚われた御鈴はあっという間にダストシュート的なところに放り込まれてしまう。
「なんでぇぇぇぇぇぇ……!!」
御鈴の叫びはそのまま遠ざかって行った・・・。
「なん…だと…」
「あらー…」
「・・・えっ、が、がんばれー?」
「せ、先輩……せんぱーい! そんな……」
状況が理解できず、混乱する一行。特に鼎は少々ショックが大きかったようだ。・・・と、残された陰鬼が埃の積った床に何か文字を書いている。
「ゴシュジン シンジャ イネーヨ」
「御守神 信者 いねーよ?」
本気で頭おかしいんじゃあないかと・・・
――それはさて置き、御鈴に召喚された式がそのまま現世に留まっているということは、どうやら御鈴はまだ無事のようだ。
「どうしよう… 鈴ちゃんいないと誰が私のご飯作るの?誰が私の服を洗濯するの?誰がお金貸してくれるの…??」
「(ダメダコイツ……ハヤクナントカシナイト)」
(幽霊なのに服の洗濯必要なのか・・・)
髪結はどちらかと言うと自分の心配をしているようだ――内心は定かではないのだが。
「まずいですね……他から合流出来る所を探しましょう」
「…うん、頑張る!」
「せんぱぁい……」
「調べよー!」
「私が……」
何とか気を取り直したレンの提案で、残された面々はひとまずこのフロアの探索を行なうこととなった。
鼎が辺りを調べてみると・・・御鈴が投げ込まれたダストシュートのような所は、マジックハンドと御鈴を飲み込むとグシャグシャに変形して残された一行を阻んでいる。
更に、はっきりとは分からないが・・・このフロアのどこからか、それとなく嫌な気配が漂っている。
「あーあ、ぐしゃぐしゃだねー… これは無理かも」
「通れないね・・・」
「!・・・なんだか嫌な気配がする……気をつけて」
「この扉……、開けてみる?」
「まず開けてこー!」
「ええ、開けてみましょう 御鈴殿が心配です」
「早く合流しないと……」
「とりあえず開けてみるしかないよね? 開けます!ガチャっ!」
西側の小部屋
続いて近くの小部屋に入った一行。
机が一つ、奥の床にトラップドアのようなものが見える。・・・どうやら構造的に開く形になっては居るようだが・・・。
「あの床……開くみたいね」
「なんだろー」
早速鼎が、周囲を警戒しつつ机に何かないか調べ始めた。机の中には何もなかったが、机の上に鍵が一つ置いてあることに気付く。
「これは……鍵ね。どこのかしら」
どうやら、動力室の物とは違うタイプのようだが・・・。
「この部屋……なんの部屋なのかしら」
「慎重に調べていきましょう」
「と言っても早く御鈴先輩と合流しないと……」
焦る鼎をレンが宥めようとするが、鼎は苛立ちを隠せない様子だ。
・・・そんなことを気にも留めないカルノは・・・
「この床少し開けて覗いてみる!」
トラップドアを開けて下の様子を探ろうとしていた。・・・が、扉は一向に開かない。
「開かないなー・・・」
「なら、ぶち壊すまでね」
「よーし!」
「どきなさい、私がやるわ」
「う、うん」
苛立ちが限界に達したのか、カルノを制すると鼎は全力で閉ざされた扉に殴りかかる。
「はぁっ!」
・・・しかし、表面が少々えぐれはした物の、扉はビクともしない。
「くそっ……硬い」
「硬いねー」
「ちょっとへこんだ? ずっと続ければ壊れそう!」
「切る?」
「斬ってみれば?」
「うん!」
「闇切り!」
今度はカルノが闇斬りで斬りかかる。・・・が、これも効果はない。
「あれ?切れない?」
「力の使いすぎよ……」
「後ろの二人もやってみたら? 私はこんなの絶対無理むりーだし」
「魔法かかってるのかな?」
「ただ硬いだけだろうけど……下手な事はしないほうがいいわね……ごめんなさい。
冷静に・・・なってはいないけど、頭は冷えたわ。とりあえずここは後回しにして他を探しましょうか?」
「えー次行っちゃうのー?」
「壊さないのかー どっちみち私は非力なので壊せないからいいけど、気になるなー」
「無理は禁物ですからね 調べられるところを先に調べるのがいいのかもしれません」
「判断は任せる……けど。ここで時間を浪費してもしょうがないじゃない? まあ、私の言えることじゃないけど」
「わかった!次行こう!」
「残念ー またね、床の扉さん!」
レンと何とか冷静さを取り戻した鼎の提案で、この部屋の探索を後回しにして先に他の部屋を回ることにした一行。
「とりあえず、さっき調べた部屋のとなりの部屋でも調べましょうか?」
「そうしましょう」
「開けるよー!」
動力室(3F)
扉を開けた先には、下階で操作したものと同じ操作盤が見えた。・・・どうやらこの階の動力室のようだ。
「ここは、動力室……みたいね。今までのセオリー通りなら鍵が必要だけど……」
そう言うと鼎は部屋を注意深く探ってみたが、今までの動力室との違いはないようだ。
「んー、見たところ今までと同じみたいね。だったら用はない、かな。どうする?」
「また鍵探さないとダメなのかー…」
「向こう側のドア開けちゃおう!」
「残りの部屋にあればいいんだけど… 行ってみる? 鼎さん?」
「そうね、手っ取り早く行きましょうか」
「――で、こっちの扉がこのフロアの最後だよね? 開けてみる? 見るよね? 開けるよ!」
美術品のある部屋
一同は鍵を探しに最後の部屋を探索する事にしたのだが・・・このフロアを訪れた時に感じた気配は、どうやらこの部屋からのようだ。
「なんだか、嫌な気配がする……杞憂に終わったらいいんだけど。警戒して」
「またなにかトラップがあるかもしれませんね」
鼎が慎重に辺りを探り始めた。・・・この部屋に置かれている壺や絵は、どれも高価なもののようだ。骨董品の収集に使われていた部屋だろうか?
「色々高価そうな物があるみたい……ん? タンスの中に何か……なんだろ……?」
箪笥の中には、見覚えのある鍵が入っていた。
「これは……おそらく動力室の鍵みたいね。これでいけるはず」
「この鏡なんだろー?」
続いてカルノが鏡を調べる・・・鏡の裏に鍵が貼り付けてある。
「鍵?」
「どこの鍵だろ?」
「なんか変なの見つけた?」
――と言ってカルノが背を向けた瞬間。
鏡からおぞましい姿をした何者かが這い出してきた――!
「わわわ、また何かトラップ踏んだの? カルノ君!」
「へ?・・・誰?」
「こいつは……なんだっ」
何者かは俊敏な動作で部屋を動き回りながら一行の様子を探っている。
「なっ、早っ!?」
あまりのスピードに驚愕する鼎。敵の正体を探るべく、髪結が占いを試みる。
「ごくり……」
固唾を呑んで見守る一行。やがて浮かび上がったヤツの正体・・・それは・・・!
モ ス マ ン !
「なんか色々分かったし、テレパシーで皆に送るよー!」
占いによると、敵はモスマン、つまり蛾人間と呼ばれるフリークスで、霊体としての特性の他、厄介なことに鏡などの反射物を経由して別次元を行き来する能力を持っているようだ。
鏡の中から出現したように見えたのも、どうやらその能力によるものらしい。
手の内を見破られたのを知ってか知らずか、モスマンは背後からカルノに襲い掛かった。カルノは即座に振り返ると、足を踏ん張り、その衝撃を受けきった。
「物理がきかないのなら!」
何故カルノが物理と言う言葉を知っているかは兎も角、判断そのものは的確だった。相手が霊体ならば、カルノの持つ虚斬りの能力は絶大な威力を発揮する。
――その筈、だった。
「・・・・・!」
カルノが斬りかかった瞬間、モスマンは素早く身を翻すと鏡の中へと"流れ込んだ"。カルノの虚斬りはそのまま空中を空しく掠めて行く・・・。
・・・そう。確かに虚斬りは霊体に有効だが、次元の壁を突破することは不可能だ。
攻撃をかわしたモスマンは、カルノを嘲笑うかのように再び鏡の中から這い出した。
「・・・・・・」
モスマンは反射物を利用した回避を行なう。この情報は、確かに髪結から一行へ伝えられた筈だった。
しかし、カルノはその話を聞いていなかったのである。御鈴が気がかりな事もあり、鼎はカルノを遠巻きに睨み付けたまま口を噤んだ。
・・・そんな鼎を他所に、カルノはモスマンの背後の鏡に向かって虚斬りの派生技である闇斬りを見舞う。
幸い、通常の物体であった鏡は斬られると同時に消滅した。
「これで鏡消えた!もう大丈夫!」
「貴方の頭と目は飾りなのかしら?」
「・・・へ?」
暢気に喜ぶカルノを鼎が毒づく。確かに鏡は消滅したが、この部屋にはまだ多くの反射物が存在する。モスマンがそれらを射程内に収めてしまえば、それこそ千日手だ。
加えて、先程は運良くこちらの次元に再び出てきてくれたから良い物の――もしモスマンが戻らないまま此方を狙って来たとしたら、一行には何ら対策することが出来ない。
状況は多少好転したものの、未だ油断は許されなかった。
「・・・まあいいわ・・・。」
呆れかえった鼎だったが、髪結に伝えられた情報から、既に勝機は見出していた。
――"モスマンは光を嫌う。"
占いで得られた情報の中に、奴の弱点と思しきものが含まれていたことを鼎は聞き逃さなかったのである。
「これはどうっ!」
鼎は探索に使っていたランタンを取り出すと、モスマン目掛け最大光量で照射した。強烈な光に悶え、膝を突くモスマン。・・・思った通りだ。今なら、或いは・・・?
「喰らいなさいっ!」
動きの止まったモスマンを目掛け、鋭い回し蹴りを放つ鼎。しかし、その攻撃は虚しく空をきる。
「くっ・・・まだ霊体かっ・・・!」
「霊体・・・そしてこの部屋で戦うのはなにかまずい気がする・・・光にやられているうちに外で体制を立て直しましょう!」
現状では不利と判断したレンが、一旦広間まで後退する。反射物が多く、狭い室内での戦闘は確かに不利だが、鼎は別の可能性を危惧していた。
(場所を変える・・・?でも、もしコイツが鏡の中を自由に移動できるのなら・・・そのままにはしておけないわね・・・。)
そう。今この部屋で戦って居る限りは、もしモスマンが別の反射物に移動しようとしても目視で判断できる。
しかし、全員部屋を出た状態では、モスマンが何時反射物に移動したのかがわからない・・・。
つまり、姿の見えない敵にいつ奇襲されるか分からない状態で逃げ続けなければならない事を意味する。
果たして、それが本当に正解なのだろうか?判断に迷っていると、鈴木もまた部屋を出る。
「・・・・・!」
・・・が、彼はどうやらもし後退した場合に追ってくるであろうモスマンを警戒し、部屋の出入り口を塞ぐつもりのようだ。
扉を出たところで鈴木が鬼種としての力を解放する。鬼の高い身体能力と反応速度で以って、モスマンを制するという算段だ。
「鈴木のおじさん鬼だったの!?」
(こいつ・・・食い殺してやろうか・・・)
自身が鬼種の代表として樹海を訪れた事から今回の一件に呼ばれたことを完全に忘れていたカルノに対して、鈴木が言い様のない殺意を覚えていると、
今度は髪結がモスマン目掛けて念動波を放つ。・・・確かに手ごたえはあったものの、モスマンの生命力の高さ故か、吹き飛ばすことはできなかった。
「あらら、やっぱりダメだったか…」
「やっかい……ね」
「・・・・・。」
「当たらない!」
一行が立ち直ったモスマンと睨み合いを続けていると、足下から激しい振動が伝わってきた・・・どうやら御鈴は地下で交戦中のようだ。
同時に、待機していた式鬼が召喚解除される。
『SYSTEM Check...Done. BlackPhantom,Scramble! 』
場内に響くアナウンス、地下ではいったい何が起こっているのだろうか・・・
「これって・・・御鈴先輩、無事でいて下さい・・・。」
鼎が御鈴を心配していると、モスマンが鼎目掛けて鋭い爪を振り上げる!
「そんなの当たるわけないじゃないっ!」
虚を付かれはしたものの、鼎の反応速度がモスマンのそれを辛うじて上回り、モスマンの爪は空を切った。
「あ、危ないわね・・・こいつはここで叩くわっ!」
「!!・・・!?!?!?」
一瞬ヒヤリとしたが、体勢を立て直した鼎が再びモスマンにランタンの光を浴びせる。先程と同じく、モスマンの動きが止まった。
・・・が、この程度ではまたすぐに回復してしまうだろう。もっと強い光源があれば、或いは・・・。
「・・・勢いで個人行動をしてしまったけど、みなさんが危ない……部屋に戻らなければ」
一方部屋を出たものの、思い直したレンは、再び部屋に戻ることを決める。
その時室内では、モスマンがランタンに怯んだのを見た鈴木が更なる追撃を試みていた。
「くらえぃ!」
「!?!?!?」
鈴木は持っていた照明弾をモスマン目掛けて放つ。強烈な光にモスマンは堪らず逃げ出そうとしたが、逃げ込むべき反射物が射程内に存在しなかった為に逃れられず、悶え苦しんでいる。
「咄嗟の判断だったけど、部屋に残っている人が危ない……それに今の光は!?」
丁度戻ってこようとしていたレンが照明弾の光に気付く。
・・・それに加え、もう一つレンが気付いた事実があった。
「そして僕しか部屋の外に出てないじゃないか!!」
どうやら後退したのはレンだけだったようだ・・・。レンは全力疾走で部屋へと駆け戻った。
その頃、室内ではカルノが再びモスマンに虚斬りを試みていた。
「よし!怯んだ!いける!」
力強く振りかぶった刀は、動きの止まったモスマンを捉え、今度こそ真っ二つに切り裂いた。
「君が!消えるまで!切るのを!やめない!」
(GM)「なお、モスマンを殺したカルノは」
(GM)「モスマンになりました」
(
T.K) !?
(GM)「なんつってな」
著者注:もし・・・この時GMが本当にこの選択を取っておけば・・・今後の戒めに残しておこう。
何はともあれ、モスマンを倒した一行。
「ふぅん、珍獣の癖にやるのね」
「たおした!ほめて!」
「カルノがモスマンになっていくううううう・・・・・・冗談だ。」
「そうね。すごいすごーい。・・・さ、いきましょうか」
「わぁい♪」
「モスマンさよなら~♪」
鼎の完全な棒読みもカルノは理解できないようだ。・・・所で、お気づきになっただろうか。
・・・悲しい事に、レンが戻ってくる直前にモスマンは倒されてしまったのである。全速力で戻ってきたレンは息も絶え絶えの様子だ。
「ぜーはー・・・ぜーはー・・・」
「・・・大丈夫?」
「だ、大丈夫です ありがとうございます」
「そう、ならいいわ」
息切れ著しいレンと心配する鼎の後ろで、カルノと髪結が何やらはしゃいでいる。
「カルノ君偉いよ♪ ご褒美あげようか?」
「うん!」
「煙草しか、持ってないかも・・・? カルノ君いる?」
「大人にならないとだめっていわれたー。」
と、ここで髪結が改めて部屋を――正確には、部屋の美術品を見回す。
「ま、それはどうでもいいとして・・・改めて見てみると、これとかー、これとかーかなりいいものじゃない??持っていっていいよね?ね?」
「ん、いいんじゃないの?」
「~~~♪」
絵画を手に取った髪結に倣って、カルノも壺を覗き始めた。
「この壺中になにかいるかな?」
「…その壺の中からまたお化け出てきちゃったりして?」
「クモの巣あったよ!」
「悪戯に使っちゃう?」
「使っちゃう!」
と、ここで遊び始めた二人を見かねた鼎が声をかける。
「・・・言っておくけど、遊んでいる時間はないわよ。」
「?」
「この珍獣は・・・。」
――ダメだ。カルノに合わせている可能性のある髪結は兎も角、この珍獣ときたら御鈴の事を完全に忘れている。
強烈な殺意すら覚えた鼎だったが、この珍獣は戦闘力"だけ"は折り紙つきだ。この先も戦闘がある可能性が高いことを考えると、殴り殺す訳には行かない。
心中で激しく逆巻く怒りの炎を抑え、冷静に。あくまで冷静に状況を再認識させる。・・・尤も、怒りは隠し切れなかったのだが。
「・・・今は御鈴先輩と合流する事が先決でしょう?」
「あ・・・」
「あーあ、怒られちゃった 私しーらないっと(ドロン♪)」
「忘れてた、とか言うんじゃないでしょうね。あとそこの髪お化けも逃げないっ!」
「まさしく煙に巻くってね♪ 一服してきますー」
「忘れたんじゃなくて記憶が飛んでただけだよ!」
「・・・先を急ぎましょう」
鼎がカルノに対して怒りを通り越して呆れ帰っていると・・・再び振動が響いた。
「な?」
「うおお!?」
「また!?」
「地震!?」
「これは・・・」
どうやら再び地下で何かが―例えば、大質量の何かが爆発するような事態が―起きている。そして地下には、恐らく分断された御鈴が居た筈だ。
「・・・・・・。」
「床壊して御鈴のお姉さん助けに行く?」
「・・・急ぎましょう。」
「鈴ちゃんなら余裕、余裕! きっとなんとかしてるって♪」
「ふふっ、そう……ですね」
「うん! さぁ、私達は私達で進めよう♪」
「なら動力室行こう!」
(・・・ホントに大丈夫だよね?)
心配する鼎と、自分も同じ心境でありながらそれを元気付けようとする髪結。そして一行はそのまま動力室へ向かおうとしたのだが・・・
その時、動力室近くの小部屋、つまりトラップドアのあった部屋から、何やら物音が聞こえてきた。
一行はひとまずそちらへと向かうことにしたのだった。
西側の小部屋
小部屋に戻ってきた一行。ガコン、という音と共に鍵の掛かっていたトラップドアが開き、小型の昇降機がせり上がって来た。
「あ、床の取れた」
「み、皆さん・・・・・・お待たせしました・・・・・・」
昇降機から御鈴が降りてきた。・・・やはり地下で戦闘があったのだろう。御鈴は全身ボロボロになっている。
「御鈴のお姉さん何があったのさ?・・・ツンツン」
「あはは! こっぴどくやられたね♪」
「み、御鈴先輩! 酷い……」
「御鈴殿、無理はなさらず……」
「ちょっと無茶しすぎただけですから、心配しないで……それより、こっちは今どういう状況ですか?」
「先輩、無茶し過ぎですよ……心配しますってば……」
心配する鼎の後ろから割り込んだカルノが、御鈴に説明ならざる説明をはじめた。
「絵と壺を強奪して蛾人間倒した!」
「蛾、蛾人間……?」
「鏡から出てきた!」
「鏡から……もしかしてモスマンですか?」
「もすまん?」
「んー なんかそんな名前だったけどよく知ってるね? 鈴ちゃん?」
「鏡から出現する蛾の怪人ですよね、話だけは聞いた事があったので・・・」
「強敵でした。鈴木殿達の機転で被害は出ませんでしたが・・・」
「なるほど・・・となると、この階の探索はある程度済んでいるんでしょうか?」
「残りは毎度同じみ動力室ー♪・・・かな?」
「動力室の鍵と変な鍵2つみつけた!」
「では動力室を稼動させてから上に向かいましょう――今晩中に決着を付けます!」
「そうしましょう 御鈴殿、歩けますか・・・?」
「先輩、大丈夫? 歩ける?」
「休む?」
「歩けなくても歩いてみせますよ・・・これ以上時間をかけるとまた犠牲者が増えてしまうかもしれません、急ぎましょう!」
こうして再び御鈴と合流した一行は、改めて動力室へ向かうことにした。
「わたしーのてーいち♪」
そういうと髪結は御鈴の背中に飛び乗った。・・・尤も、霊体である以上重さはないのだが・・・。
3F動力室
「っ・・・・・・!」
部屋まで辿り着くや否や、御鈴が突然ふらつき、倒れそうになる。近くにいた鼎が咄嗟に肩を貸し、御鈴を支えた。
「無理しちゃだめですよ……私に任せてください。」
「……ありがとう、神喰さん…」
「いえいえ、これくらいお安いご用ですよ。」
「…戦闘になったら降ろしてね、支援ぐらいはしてみせるから!」
「先輩……わかりました。でも、無茶はし過ぎないでくださいね」
そんなやり取りをしていると、カルノが起動キーを持って鍵穴の前まで駆け寄っていく。
「鍵差すよー!」
「では、こちらも押しますね。」
配電盤の起動を確認した鼎が、動力スイッチを入れた。今までと同じく、3Fの電源が再起動する。一行はそのまま4Fへ向かうことに・・・。
「これでよし、っと。じゃあ、行きましょうか」
最終更新:2013年05月10日 13:09