手を伸ばせばキミがいる
◆yuri0euJXw
「あ~!変な咳~!」
「‥‥変な言うな。」
ケホケホと‥‥変な咳が出る。
暑かったり寒かったりと不安定な天気が続いたせいだろうか?
そのせいもあるだろう。しかし‥‥奏は最も可能性の高い原因に言及した。
「それもこれも雪ちゃんが窓開けっ放しで寝るからじゃないのさ。」
「ん~,何のことかな~。」
「雪ちゃん!」
「いや~ん。怒んないで~。かなちゃ~ん」
「ったく。」
でも確かにちょっと変な咳だ。
一緒に寝ていた雪乃は何で平気なのかという疑問も頭をかすめるが,奏は違和感のする喉をさすりながら登校の道を進んだ。
う~む。ちょっとマズいかも。
放課後,奏は購買で買ったスポーツドリンクで気を紛らわしていた。
昼休みに平気な振りして食べたサンドイッチは,さっき全部流してしまった。
頭がズキンズキンと痛み,大したことの無い頭脳労働さえも今はボイコットしている。
体中の筋肉がピリピリと痛み,奏は少しの動きすら億劫だった。
「あ~あ‥‥最悪。ダメダメだわ‥‥あたし。」
奏は溜息をついた。
こんな事なら雪乃の言った通り早く帰ればよかったと奏は少し後悔した。
エントランスのベンチに腰掛け,隣接する柱に体を預ける。
無機質な感触が奏の熱を奪ってくれるようでひんやりとして気持ちよかった。
「小さい頃から,なんか先にあたしが風邪引くんだよね。」
生徒も疎らなエントランスで奏は誰ともなしに呟く。
脳裏を掠めるのは小さいころの記憶。
それでいつもゆきちゃんを隔離するんだけど‥‥。
なぜかいつの間にか隣で寝てるんだよね。
まともに考えられない頭に浮かぶ今も薄れない懐かしい記憶‥‥。
自由の利かない体を投げ出して休んでいると,時計は部活終了の時間を知らせていた。
「あっ,マズっ!」
奏は帰り支度をするために,フラフラとしながら部室へ向かった。
「あ~。ヤバいなぁ。」
着替えて荷物を持ち,動き始めるまでは良かった。
しかし,動きだした矢先,体は変調を訴える。
荷物を持つ肩がだるい。オマケにスポーツドリンクしか入ってないクセに胃袋はぐるぐるとしていて落ち着かない。
雪乃との待ち合わせ場所に辿り着く前に,奏は歩くのを止めてしまった。
近くにあったベンチにドカッと倒れ込むように座る。
少し休めば大丈夫だよね。ここからならゆきちゃんが来るの見えるし。
ぼんやりと視線を泳がしている奏の前をパタパタと
小気味いい音を立てて咲夜が駆け抜けようとしていた。
「あっ,奏先輩!」
駆け寄ってくる咲夜に力無く奏は応える。
「‥‥どうかしたんですか?」
いつもと様子の違う奏に咲夜は心配そうに様子を窺った。
「ううん。何でもないよ。ところで咲ちゃん,ゆきちゃんは?」
「雪乃先輩なら購買寄ってくって言ってましたけど‥‥。」
「そう‥‥。」
「本当に大丈夫なんですか?」
「ん。少し休めば大丈夫だよ。」
俯いて頭を抱えている奏の顔色が,いつもと違うことに気付いた咲夜は雪乃を呼びに慌ててもと来た道を掛け戻っていった。
暫くすると,ばたばたと慌ただしい音が聞こえ始めた。
「かなちゃん!」
ガチャンと何かが落ちる音がして雪乃は奏に走り寄る。
音と声に奏は顔を上げると,雪乃の手に激しく泡立ったペットボトルが握られているのが目に入った。
「あ‥‥ゆきちゃん。早く帰ろ。」
奏は青い顔をしてにこっと微笑むと,そのまま雪乃の胸に倒れこむように気を失ったのだった。
奏が覚えているのはここまでだった。
次に気がついた時には寮の自室にいた。
見慣れた天井と心配そうな雪乃が奏の目に入った。
「あれ‥‥?」
「気がついた?」
奏はキョロキョロと目だけ動かして様子を探る。
「もう。びっくりしちゃったよ?」
「‥‥全然覚えてないや。」
奏の額に手を当て雪乃はホッと溜息をついた。
「まだ熱あるみたいだから,もう少し大人しくしてようね。」
雪乃は咲夜の家の人に寮まで送ってもらったこと,寮の近くの医者に来てもらったことなどを奏に伝えた。
「ヒゲの先生がね,たくさん汗かいて休めば良くなるって言ってたよ♪」
いつの間にか着替えた奏のパジャマは,汗でひどくべたついている。
湿ったパジャマを代えるために奏は上半身を起こそうとしたが,バランスがとれず隣にいた雪乃にポスッと倒れこむ。
悔しそうに舌打ちをしながら奏は言った。
「っ‥最悪っ‥。」
「もうっ‥‥心配したよ?無理しないで早く帰ろって言ったのに~。」
「‥‥ごめんなさい。」
ふらつく体を支えてくれていた雪乃にそのまま体を預け,奏は小さく呟いた。
幾分楽になったのは,少しの間でも休めたからなのだろうか。
奏は熱っぽいが,気持ち悪さや体の痛さが取れているのに気がついた。
幾分顔色のよくなった奏を見て,雪乃は嬉しそうに奏に声をかけた。
「あっ,そうだ!かなちゃん,まるまるバナナあったから買ってきたよ!食べる?」
幾分楽になった奏の体は確かに何か欲しがっているようだ。
結局のところ,奏は今朝から殆ど何も食べていないのだから。
でもいきなりまるまるバナナとは‥‥雪乃もかなり意地悪だ。
「いや流石に‥‥まるまるバナナはちょっと‥‥。」
明らかに食べられない事が分かっているのに,これ見よがしに雪乃はまるまるバナナを手にする。
でもそれは明らかな冗談らしい。
「ふふふ♥元気になったら食べてね。」
と雪乃はマジックで何か書き込むと冷蔵庫にしまった。
替わりに取り出したのは一口大に切り分けられた桃缶だった。
「えっへへ♪懐かしいでしょ?」
昔から二人が風邪を引くといつも出てきたのは黄色い桃缶だった。
「そういえば,こんなに熱だしたのも久しぶりかな?」
「いっつも先に熱出すのはかなちゃんで‥‥。」
「‥‥遅れて熱出すのはゆきちゃんなんだよね?」
雪乃は記憶を手繰り寄せながら,着替えた奏を座らせ,上着を羽織らせる。
奏は雪乃にもたれかかりながら,ゆっくりと体を起こした。
「はい,あ~ん♥」
「いいよ,ゆきちゃん。自分で食べれるから。」
傍で食べさせようという雪乃に,奏は照れた表情で答える。
すると雪乃は一瞬考えると,ちょっと頬を赤らめながら真顔で返した。
「口移しがいいの?」
「‥‥どこをどう解釈したらそんな風になるのかな‥‥ゆきちゃん。」
こめかみをヒクヒクとさせて,本来ならおもいっきり引っ張っているはずの雪乃の頬を指先でつつきながら奏は答えた。
暫く考えながら,雪乃は不服そうな顔を奏に向ける。
「奏さんは嫌なんですかぁ?」
「‥‥いぁ,そんなんじゃないけど‥‥。」
「はい,じゃあ,あ~ん♥」
「あ‥‥あ~ん。」
頬を染め,照れながら奏は大きな口を雪乃に向けた。
「美味しい?」
「うん‥‥‥凄く。」
ひんやりとした桃は喉越しもよく,何より雪乃に食べさせてもらったのが奏には格別だったようだ。
にっこりして雪乃もついでに一切れ自分の口に運ぶ。
奏は器から雪乃の口まで運ばれる桃を,熱の籠った視線で一途に見つめていた。
ごくっと鳴らした喉の音に奏は自分を取り戻す。
なに意識してるんだろ‥‥馬鹿みたい‥‥。
熱のせいだろうか。優しく接してくれる雪乃が気になって仕方がない。
奏は,自分の頭の中を振り払うように別の話題を雪乃に振った。
「ゆきちゃんさ‥‥今日どうする?」
「ん~?」
「寝るとこ‥‥。」
近くで寝ると風邪が移るからと奏が続けようとするが,それは雪乃に遮られた。
「大丈夫♥ずっと一緒にいるよ。」
きゅっと奏の手を握る雪乃の手はとても温かかった。
昔から,どちらかが風邪をひくとかならず距離を取らされた。
でもいつの間にか傍にいて‥‥。結局は二人とも風邪を引いてしまうのだが‥‥。
でもやはり,雪乃に風邪を移すわけにはいかないと思う奏だったが,そんな心中はあっさりと雪乃にはお見通しだったようだ。
続くはずの言葉を飲み込み,奏はもごもごと呟く。
「風邪‥‥移っちゃうよ。」
俯いた奏は,わずかに肩を震わせて言う。
でも奏の葛藤は問題ないと言わんばかりにあっけらかんと雪乃は返す。
「かなちゃんの風邪なら平気っ♪」
それでも,何かを迷っているような奏の素振りに雪乃は軽くため息を吐くと,雪乃は奏の手を取り,ゆっくりと優しい声で奏を諭した。
「だって‥‥かなちゃんとずっと一緒にいたいんだもん。」
雪乃は握った奏の手をしっかりとつかみ,自分にもたれ掛かかる奏の体を包み込むように奏の背中側に回り込んだ。
そして奏の背中側から両腕を回し,奏の体をキュっと抱きしめた。
「えへっ,かなちゃん‥‥アツアツ‥‥。」
「だって,‥‥まだ熱あるん‥‥だもん。」
雪乃の言葉と背中に感じる温もりとに,風邪とは違う熱が急速に上昇する。
熱のせいでぼんやりとした頭には急速に血が上り,胸がドキドキと激しく動いていた。
そんなスキンシップは二人の間ではなんでもないことなのに,今日はそれがとても,何と言うか,奏には刺激的だった。
「私に心配かけないように無理してたんでしょ?」
抱き締めたまま,雪乃は奏の耳傍で囁く。
吐息が奏の耳をくすぐると,ゾクっとした刺激が奏の背筋を走った。
じわじわと押し寄せる官能を意識しないようにすればするほど神経は鋭敏になっていく。
弾む呼気を気づかれまいと,奏は雪乃に返事を返す。
「‥‥わ‥‥別れるまでは‥‥そ‥‥そんなに酷くなかったし‥‥。」
雪乃は,緊張する奏の体に気がついたのか,くすっと小さく微笑むと,奏の下ろした髪にキスしてスリスリとすり寄った。
そして,髪の隙間から見える耳にも軽くキスをする。
「っ‥‥‥‥んっ。」
必死にこらえていた矢先の不意打ちに,奏は堪え切れずに声が漏れた。
それを楽しそうに聞いていた雪乃は,奏に優しく愛撫の手を進めはじめるのだった。
「かなちゃん,ごめんね,私のせいで‥‥。」
雪乃は奏の髪を左に寄せ,露わになった首筋にそっと唇を寄せた。
「っぁ‥‥そっ,そんなわけ無いっ‥‥でしょっ?‥‥ひゃっ‥ぁ‥‥。」
もっと確実に官能を呼ぶ刺激が奏に伝わってくる。
柔らかい雪乃の唇が奏の首筋に触れる感触が官能的な刺激となって奏の背筋から腰に向かって走り抜ける。
先ほどから既に十分意識していた雪乃の唇が奏に触れていることが奏の意識をより一層興奮させるのだった。
あ‥‥ゆきちゃんの唇‥‥柔らかくて‥‥あったかい‥‥
雪乃は目を細めて奏の様子を楽しんでいたが,奏は案の定予想通りの反応を返してくる。
触れるだけの愛撫はいつしか,優しく撫でるような生暖かい感触を奏の首筋に伝わらせていた。
「やっ‥ぁ,汗‥かいてるか‥‥ら‥ぁあ。」
雪乃は舌先で奏の首筋を舐めとった。
それまでにかいていた汗と,先ほどからのわずかな愛撫で滲みだした汗の味がした。
でもそれは,決して嫌なものではない。
むしろそれは奏自身を感じさせるものだった。
「かなちゃんの汗‥イヤじゃないよ?」
首筋に進めていた愛撫は範囲を広げ,奏の耳に移動する。
敏感な奏の耳たぶを雪乃がパクつくと,奏からは可愛らしい声が漏れた。
そっと舌先を伝わらせ,内部にまで侵入させる。
ゾクゾクとした刺激が際限なく奏を襲い,熱っぽい吐息を漏れさせる。
何かを我慢しているような緊張した奏の体をきゅっと抱きしめながら雪乃は唾液で濡れた耳元でそっと囁いた。
「ごめんね。私が‥‥。」
「そんなのっ‥‥気にしないっ‥‥で‥ぇ‥‥っぅん。」
濡れた耳元に届く吐息は,より一層の刺激を奏に伝える。
身を震わせてそれを受け止める奏に,雪乃は幸せそうに微笑んでいた。
抱いていた腕をほどき,ゆっくりと奏の体に触れる雪乃の愛撫はじわじわと奏を攻める。
さわさわと触れる雪乃の手つきは,感じるポイントはわかっているとでもいいたげで,それは着実に奏を昂らせていた。
奏は愛撫に導かれるように熱っぽい嬌声を漏らし始めた。
しかしそれが自分でもわかるのか,必死にこらえようとしていた。
冷静さを欠いている奏は素直に雪乃の愛撫をを受け入れ,過敏になった神経は敏感にその刺激を感じ取ってしまうのだ。
「はっ‥‥ダ‥‥メっ‥‥。」
雪乃の優しい愛撫に流されようとしている奏だったが,わずかに残った理性がそれを止めようとする。
しかし逃れようともがく奏の手を絡めとり雪乃はその手を口に含んだ。
「ぱくっ♥」
吸い付く弾力が奏の理性を揺さぶる。
ゾクッとした感覚が指先から閃光のように脳幹に響いた。
指先がこんなにも感じるのかと驚く一方で,それまで感じたことないような快感の予感に奏は戸惑いを隠せなかった。
「ふぁっ‥‥ぁ‥‥ダメ‥‥だよっ。」
「だ~め♥」
「んんんっ!」
奏の指をくわえ, 指の腹を丹念に舌先でなぶりながら,雪乃の手は布の上から奏の胸を優しく揉みし抱いた。
変形するほどに揉みし抱かれるのと同時に奏の切ない声が漏れる。
雪乃の愛撫は,奏の双丘の先端を標的にした。
「ふぅっ‥んっんん?!」
既に起立していたそこを強調するようにつままれると,敏感なそこからまた鈍い快感がにじみ出して奏の全身に広がっていく。
それは全身の神経と共鳴して,何倍にもなって奏を攻め立てる。
「っひぃ‥‥ゆきちゃ‥‥ぁん!!」
泣きそうなほどに敏感になった奏は,懇願するように雪乃の名を呼ぶ。
何を懇願しているのか?
それはきっと雪乃にはわかっているのだろう。
小さく微笑むが,そのまま丁寧な愛撫が続けられた。
奏の抵抗は徐々に弱まっていく。
抵抗力を失った奏の体は与えられる快楽に身をよじり,蕩けそうなほどに緩んだ表情から,素直な嬌声が漏れ始めた。
奏は次から次へと訪れる快感の波にあらがうこともできず,雪乃の愛撫に堕ちていった。
雪乃の腕につかまる奏の手は,抵抗の象徴だった。
力なく掴んだ手はかろうじてとどまっているばかり,もう一方の手は雪乃に含まれたままだった。
その手も雪乃の施した愛撫によって,力の抜けるままにベッドの上にぽすりと落ちた。
それを合図に,雪乃はもう片方の手も解放すると,何事もなかったかのようにベッドから降りた。
支えを失った奏は,枕に体を預けるように静かに倒れた。
奏の視線に入るのは,見慣れた天井。
火照った体を持て余したまま,視線は雪乃を探していた。
「‥‥‥‥ゆき‥‥ちゃん?」
その視線の先には,優しく微笑んだ雪乃がいた。
「かなちゃんの風邪‥‥‥私に頂戴‥‥。」
そういって奏の唇に雪乃は自分のそれを優しく重ねるのだった。
何をされているのか分からない間に,訪れた温もりが体中に伝わる。
穏やかで温かい優しい想いが奏の中に流れ込む。
「ゆきちゃ‥‥ん。」
唇を放すと熱っぽい声が奏から零れた。
信じられないとでも言いたげな表情に,雪乃は優しく微笑んで応じた。
「‥‥だから早く元気になってね。」
雪乃の唇はそっと奏に触れる。額に頬に,鼻先に‥‥。
繰り返される口付けが魔法のように奏を夢の中へ誘う。
雪乃は再び奏に触れると,奏をあやすようにそっと唇を重ねた。
奏に侵入する雪乃の舌先は,奏のそれを見つけると情熱的に絡ませてくる。
それまで施された愛撫から燻っていた奏の裂情は,再び勢いを取り戻す。
穏やかに始まった行為は,次第に激しさを増す。
鼻から抜ける甘い声が,衣ずれとともに僅かな音を作り出していた。
雪乃は,ベッドに身を乗り出すようにして重ねていた唇をそのままに,奏を引き寄せながらベッドにあがった。
より激しさを増す口付けに,奏は息苦しさから空気を求めた。
離れた唇の隙間から,飲み下しきれない唾液があふれる。
零れた唾液で濡れた首筋を伝って,雪乃はそっと舌先を伸ばす。
軽く歯を立てると,奏の体がピクンと跳ねた。
パジャマのボタンを外しながら雪乃は奏の胸元に口付けると,硬くしこった先端を口に含んで転がした。
殺しきれない嬌声が,次々と奏から溢れ出す。
拒絶する理由なんてもう何もなかった。
体中が,雪乃を求めている。心も‥‥‥体も‥‥‥。
「熱い‥‥‥熱いよぉ‥‥‥ゆきちゃ‥ぁん‥‥。」
体の中で大きな熱の塊を抱えているような,そんな焦燥感。
奏の体からは玉のような汗が吹き出す。
雪乃はそれをペロッと舐めとると,また新たな場所を求めて,愛撫の手を広げた。
「折角着替えたのに,また着替えないといけないね。」
肌蹴たパジャマの隙間から流れる汗を伝うように雪乃は指先を滑らす。
「っ‥‥それはっ‥‥ゆきちゃんが‥‥。」
「うん‥‥私のせいだね。何度でも着替えさせてあげる‥‥。」
「あぁ‥‥‥そっち‥‥ダメっ‥‥。」
雪乃は奏のズボンを脱がす。
しかし,湿った布地は滑りにくく,くるくると縺れてしまう。
下着のクロッチに指で触れると,ぬちゃっとした感触が指先に伝わった。
「ぁ‥‥だ‥だめ‥‥さわっちゃ‥‥。」
「うっふふ,これも汗?」
「!‥‥‥」
楽しそうに局部に触れている雪乃と目を合わせることができず,奏は視線を逸らす。
敏感になっている秘芯や秘襞を布地越しに揉みほぐされると,体が跳ねるように反応してしまう。
それをまた嬉しそうに,雪乃は目を細めて見つめていた。
雪乃は奏の下着を脱がすが,やはり湿っているため小さくまるまってしまう。
そのままずり下ろすと,奏の両足を少し開かせた。
その付け根からは湿った音が響き,濡れたそこは廊下から差し込むわずかな光を受けテラテラと光っていた。
「なん‥‥で‥‥‥?」
「いや?」
羞恥に顔を染めた奏は,これから訪れる快感に期待を膨らませながら,でも恐る恐るでも雪乃を確かめずにはいられなかった。
何でこんなことするのか,と‥‥。
雪乃を求めていた奏の欲求を,あいまいな形のままで抱えていたのに
雪乃はそれを知っているかのように,するっと形にしてしまう。
嫌なはずなかった。ずっと求めていて,形にするのが怖くて。
熱なんか出して体が弱っていると,なんだか心も弱ってしまって。
ほんの少しだけ求めた温もりが,こんな形で奏にやってきた。
「‥‥いやじゃ‥‥ないよ。‥‥いやなんかじゃない‥‥。」
はじめは戸惑ったけれど,思いの外心地良い快感は奏を優しく包んでいた。
直接触れている雪乃の指先の動きをダイレクトに感じる。
恥ずかしさも十分に感じていたが,それ以上に雪乃にすべてをさらけ出している解放感が,少しだけ奏を楽にさせた。
「ちょっとね‥‥さみしかったの。」
「な‥‥にっ?」
雪乃の指先が,敏感な場所に触れると奏もそれに応じて体を震わす。
「私のために無理しちゃうかなちゃんが,ちょっとさみしかったの。」
「ぁっ‥‥ゆきっ‥‥‥!」
指の代わりに奏に降り立ったのは,雪乃の舌だった。
指とともにうごめく舌先は,また指と違った快楽を奏に送り込む。
指とともに繰り出される共同作業は,奏の意識を確実に削っていった。
「かなちゃんの中‥‥熱い‥‥。」
「ひぐっ‥‥ぅ‥‥‥ゆきちゃん!!」
奏の中を抉るように指を動かす。腹側のざらついたところを念入りに揉みこむと,奏は面白いくらいに乱れた。
舌先は,奏の陰核を唇で挟んだまま,壊れ物に触れるようにそっと,そっと突く。
ちょっとの刺激も奏には十分で,眼尻に涙を溜めて必死に刺激に耐えていた。
全身から玉のような汗が浮き出ては流れていく。
想いが溢れ出し,体の奥で疼く熱い熱の塊は今にもはじけそうだった。
「すきぃ‥‥ぁ‥‥あた‥し‥‥ゆきちゃんっ‥‥大す‥‥きぃ‥‥っ。」
「うん。私もね‥‥かなちゃんのこと‥‥大好きだよ。」
奏の一際高い嬌声と,熱く湿った空気が行為の終わりを告げていた。
次に奏が気付いた時には,部屋は閑散としていた。
奏ははっきりと覚醒すると,がばっと体を起こす。
さらっとした着心地のパジャマがそれまでの記憶と異なった。
あれ?
奏がさっぱりとした体や,楽になった体調に気がつく前に,静かにドアが開いた蔭から雪乃が部屋へ戻ってきた。
「あっ!起きたの?大丈夫?かなちゃん。」
急いで駆け寄ってきた雪乃の手には,たくさんのタオルや奏の着替えが抱えられていた。洗濯でもしていたのだろうか。
「‥‥ん‥‥そう言えば‥‥大丈夫みたい。」
改めて体に意識を向けてみると,随分と楽になったのに気がつく。
そして,軽い運動をしたあとのような倦怠感と,体の奥の方で感じるちょっとした違和感。
夢みたいな記憶が奏の脳裏をフラッシュバックする。
込み上げてくる恥ずかしさに,奏では顔を俯かせる。
そっと上目づかいに困ったような顔を雪乃に向けると,雪乃は屈託のない笑顔を奏に返すのだった。
「良かったね。早く落ち着いて♪」
「‥‥‥‥うん。」
「でも,まだ休んでないとだめだよ?」
優しく奏の頭を撫でる雪乃の手は温かい。
触れた場所から,優しさが染みわたる。
時計はもう深夜を指していた。
「ゆきちゃん。」
「なぁに?」
「一緒に寝よ?」
「うん♥」
奏の隣に横になる雪乃の手をいつものように握り締める。
そして,ちょっと躊躇うように視線を雪乃に投げかけると,にこっとした微笑みが返ってきた。
そして一息深呼吸をして奏は雪乃の胸に顔をうずめるのだった。
全身で感じるお互いの温もりが穏やかな眠りを誘った。
そして朝を迎えて‥‥。
「‥‥あれ?案の定,いつも通り?」
「う~ん。そうみたい。」
けろっとした顔で起きた奏の隣で,頭を抱えて雪乃が唸っていた。
「ゆきちゃんは,今日学校休みなさいね。」
「いや~。今日は休めないの。」
「テストかなんか?」
「今日は,咲ちゃんに幻のショコラムースをもらう日なの~。」
「‥‥‥何と引き換えに?」
「何って‥‥‥。」
雪乃の言葉に空気が固まる。
ヒクヒクと眉を動かす奏は雪乃に詰め寄ると,子犬の様な瞳を奏に向けた。
その瞳に一瞬ドキッとする。
熱っぽくて赤らめた顔が,咳で苦しそうに潤んだ瞳が病気の気配よりも,色っぽを演出しているように見えてしまうのはなぜだろう。
「‥‥あ‥あたしが貰ってきてあげるから,きょ‥‥今日はゆっくりしててよね。」
「?」
体ごと雪乃から体を背けると,奏はドキドキする胸を落ちつけようと必死に自分と闘っていた。
「それじゃぁね‥‥‥‥。」
雪乃は奏の背中に甘えたような声をかける。
奏は振り向いて雪乃を見ると,気だるそうな雪乃の姿に引き寄せられてしまった。
「かなちゃんが,キスしてくれたら,言う通りにしてあげる♥」
昨日の雪乃も,同じだったんだろうか‥‥。
ふとそんな考えが脳裏をよぎる中,奏は小さく呟きながら,そっと雪乃と唇を重ねた。
「もう‥‥‥ゆきちゃんのバカ‥‥。」
部屋を出ていく奏の手には,大事そうにまるまるバナナが抱えられていた。
そこには,可愛らしく赤いマジックでこう書かれていた。
『かなちゃんの,元気の素♪』
最終更新:2010年11月08日 09:48