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咲夜リポート【夏祭り編】

◆yuri0euJXw


注)咲夜リポートが『 』で入ります。

『こんばんは!咲夜です。今日は雪乃先輩からグッドな情報を頂いたのでバレないように寮の入り口で張り込んでいます。』

『その情報というのは,なんとお菓子好きな奏先輩は屋台巡りも好きらしいんです~。それで今日は近所のお祭りにお出かけになるとか!!貴重なプライベートの奏先輩を激写するチャンスなのだ~。』

人知れず,胸の中でリポートしながら,咲夜はガッツポーズを決めた。

とととっ,そうしている間に奏先輩の気配が!

「も~,ゆきちゃん強引なんだから~。」
「いいの,いいの♥かなちゃん可愛いんだから~。」

『なっ,なんと!コレはレアですぅ。決まってますぅ。超素敵です奏先輩~♥』

二人とも色違いの浴衣を着ているではありませんか。シンメトリックな組み合わせと和風な装いが相乗効果で,二人の周りだけが別世界のようだった。

『わぁ~♥奏先輩も素敵だけど雪乃先輩も綺麗‥‥。』

衣装に合わせて雪乃も髪をアップにしてる。
首筋の色っぽい曲線に目を奪われないものはいないだろう。

『いけないいけない。思わず見とれてシャッターを押すの忘れてた。てへっ♥』

咲夜は早速二人の写真をカメラに収めるといつものように二人の後に続いた。
しばらく歩くと沿道を歩く人が少しずつ増えてくる。
二人をちらちらと振り返る人がいるのは言うに及ばす,その後に続く少女の姿もかなり人目を誘っていた。

路地奥に入っていく二人に続いて咲夜がそこに入っていくと,そこはなんと屋台が所狭しと並んでいるような通り道だった。
まさかこんな所があるなんて,咲夜も思いもよらず,唖然としていた。
その時,近くの店から,雪乃のはしゃいだ声が聞こえ,咲夜は慌ててそちらに向かった。

「ほらほら~,かなちゃん♥クレープ♥クレープぅ~。」
「はいはい。お待ちくださいなっと。」
「おぉ!お嬢さんたち可愛いね~。おじさんオマケしちゃおうかなぁ?」
「ホント?じゃ~あ,私フルーツ多めで!」
「あたしは生クリーム多めで!」

機嫌良く,クレープを焼き始める屋台の主は鼻歌交じりに調理し始めた。

「かなちゃんクリーム多めだと~。おなかのお肉が‥‥。」
「また言うか!!こいつめ!!」
「いひゃいひゃいひゃいっ!!」

雪乃の柔いほっぺたはおいしそうなくらいよく伸びた。

「気にするこたぁないよ!ほれっ!一丁上がり!」

二人は子供のようにはしゃぎながらクレープ屋のおじさんから焼きたてのクレープを受け取って二人揃ってにっこりとお礼を言った。
二人はクレープをぱくつきながら,再び沿道を歩き出す。
一歩進んではまた一歩,屋台の前ではしゃぎながら一向に進まない足取りで二人は楽しそうに笑っていた。

『奏先輩可愛いなぁ。』

咲夜はクレープをパクつく奏の幸せそうな顔にフォーカスを合わせる。
パシャっとシャッターを切ると,モニターには慌てふためく奏の顔が映っていた。

「ななななにっ?!」
「クリーム付いてるよ♥」

生クリーム大目を注文した奏のクレープからクリームがはみ出し,その生クリームの一部が奏の頬に付いていた。
それに気づいた雪乃はそこをぺろっと舐めたのだ。

「ん~おいし~♥」
「やっ‥‥‥止めてよ‥‥‥もぅ‥‥。」

顔を真っ赤にした奏は,ツンデレを発揮するどころか,あまりの衝撃の強さにほぼKO寸前だった。

『あ~ん。雪乃先輩超うらやましいですぅ。』

テレテレに照れた奏をカメラに収めた咲夜は遅れをとるまいと後に続いた。

「はい。次は?」
「かなちゃんの番でしょ?」
「ん~~そうねぇ。じゃ,あれにしよ!あれ!」
「これだけあると綺麗だねぇ~。」
「おじちゃん2個ちょうだい!うんそれそっちのピンクいのと青いの!」

ホクホク顔の奏は,ぱくっと口に含む。
その姿を咲夜は何と正面からとらえているから凄い!

『いや~ん。ちょっと卑猥なアングルだったかな?』

何を妄想しているか,クネクネと咲夜はあやしく悶えている。
しかし,雪乃が言ったようにこれだけカラフルなチョコバナナが並んでいると,風景的にはなかなか見ごたえがある。
咲夜はその様子も,カメラに収めた。

「普段だったら,あんなにカラフルなものって食べにくい気がするんだけど。」
「ほぉ~お?ほいひけへばひひんではぁい?」
「‥‥‥そうね。」

カラフルなチョコバナナの感想を感動一杯に語ろうとする奏に,雪乃は口いっぱい頬張ったまま答えるものだから情緒もなにもあったもんじゃない。

二人はお祭り気分を十分に盛り上げるチョコバナナをたいらげると,雪乃は,そそっとある屋台に近づいた。

「ほらぁ!」

手に持っていたのはキツネとタヌキのお面。

「可愛いでしょ♥つけたげる。」
「うわぁ。ちょっとどこつけてんのよ!」
「顔だとぉ可愛いかなちゃんが見れないし,頭だとぉ折角の髪が崩れちゃうから,背中!!」
「‥‥もぅ。こんなの誰かに見られたら,ちょー恥ずかしいったら。」
「大丈夫だって,高校生にもなってこんなとこではしゃいでないよ~。」
「‥‥‥ゆきちゃん。あたし達は?」
「‥‥あれ?」

なんだかんだ言って,そのままお面を飾って,二人は続いている沿道を進んでいった。
途中下車をあちこちでしながら,楽しそうに微笑む二人の姿は咲夜のカメラに余すとこなく収められていった。
その中で一際目立つのは,今日もしっかりと握られた二人の手だろうか。
お土産品も徐々に増えていくのに,その手だけは片時も離れることはなかった。

『‥‥‥いいなぁ。ああいうの‥‥。』

咲夜の口からぽろっと漏れる。奏が好きなことは本心だと思う。
でも奏に言ったように雪乃のことは嫌いじゃない。
むしろ先輩としても姉のように慕っているのだ。
咲夜の望むポジションに雪乃はいる。
でもそれは決して咲く夜を不快にするようなことはなかった。

「ちょっと甘いものが続いたから,焼きソバでも食べよっか。」
「うん♥」

雪乃は焼きソバ屋に,奏は飲み物を買いにそれぞれ手分けすることになった。
ジュース屋は待ち合わせの場所からはやや遠い。
奏の後姿を見届けると,雪乃はくるっと振り向いて何かを探しながら焼きソバ屋へ向かった。
お目当ての探し物はなかったのか,奏と落ち合った時には,普通よりもやや多めの焼きソバを手にしていた。

「焼きソバ屋のお兄さんがね,おまけしてくれたの♥」
「おまけはいいけど,あたしが座るとこ探してこなかったら,食べられないじゃないのこんなにたくさん!!」
「だってぇ~。食べさせてあげるから怒っちゃいや~。」
「‥‥どう見たって3人前はあるよ。これ‥‥。」

ジュースを買うついでに沿道の脇に座れる場所を見受けた奏は,雪乃と落ち合うとそこへ移動した。当然咲夜もついていく。

器用に一口大にまとめた焼きソバを箸でつまみ,雪乃は奏と向き合う。

「はい,かなちゃん♥あ~ん♥」
「あ~‥‥‥‥。」

口を開けて差し出された箸に近付いていく奏は,不審な視線を感じて,動きをやめる。

「どうしたの?はい♥」
「‥‥‥いつからいたの‥‥‥咲ちゃん?」
「あっ,私のことは気にせず,続きをどうぞ。奏先輩。」

隣のテーブルの陰から,写真を撮っていた咲夜はとうとう見つかってしまった。
というか,ほとんど隠れるところのないもので身を隠そうというのに無理がある。
とりあえず,差し出された焼きソバを口にすると,奏はばつが悪そうに引きつった笑顔を見せた。

「あぁ?!やっと見つけた。咲ちゃんも一緒に食べる?焼きソバ。」
「良いんですか?じゃぁお言葉に甘えて。でも箸は2膳しかないですよね。」
「そうみたい。じゃ,あたしもらっ‥‥‥。」
「それじゃあ,あたしは奏先輩から口移しでいただくってことでいいですよね。」
「うん。」
「ちょっと,ゆきちゃん!冗談にもなってないし!」

ぷりぷりと膨れながら,奏はサッサと立ち上がって先ほど焼きソバを購入した店に箸を分けてもらいに行った。
奏の姿が遠ざかると,咲夜は雪乃に口を開く。

「知ってたんですか?わたしがいること。」
「うん。だって,咲ちゃんかなちゃんの写真撮るの好きでしょ?」
「はい♪超素敵な写真一杯撮れました。」
「今日はね,かなちゃんの写真撮ってないから,いい写真あったら私にも分けてほしいの。」
「焼きソバは,そのお礼♪」
「‥‥いつもと逆ですね。」

二人の話が終わる頃,都合よく奏は戻ってきた。

「はい,これ食べたら一回りして帰るよ。」
「「はーい。」」

『雪乃先輩のが1枚上手だなぁ。でも,こんなに素敵な奏先輩の隣で,焼きソバ食べれてちょっと幸せ。あっ,そうだ。後で奏先輩の使った箸を持って帰らなくちゃ!!』

咲夜の不穏な考えは顔に出ていたらしく,食後の片づけはすべて奏に取り上げられてしまった。

二人で始まった屋台巡りは,焼きソバを食べたあと3人になり,今は電気提灯の繋がった夜道を散歩している。

「今日はホントにありがとうございました。雪乃先輩,奏先輩。」
「気をつけて帰りなよ。」
「咲ちゃんのおうち遠いから気をつけてね。」
「はいっ!」

でも元気よく振り返った矢先,咲夜はバランスを崩して倒れそうになった。

「あ~あ。言わんこっちゃない。」

転ぶと思った衝撃は咲夜には来なかった。
代わりに訪れたのは柔らかな感触。衝撃に備えてきゅっと瞑っていた目を恐る恐る開くと,ありえない至近距離に奏の顔があった。
咲夜は転びそうになった寸前,奏に手を引っ張られ,胸に抱き寄せられたようだ。
奏は無事なことを確認すると,すぐに体を放す。

「カメラも大事かもしれないけど,足元ちゃんと気をつけなさいよ。」
「あ‥‥はい‥‥ありがとうございました。」

咲夜は奏たちと別れ,通りへと向かう。おそらくそこには迎えの車が待っているのだろう。
日も落ちた夕暮れに咲夜の顔は目立たないがしばらくの間頬を染めていた。
いずれにせよ,咲夜にとって今日というこの日は忘れられない1日となったようだ。

「かなちゃんかっこいい!!」
「そんなんじゃないって‥‥てか今の写真撮ってたの?」
「かなちゃんのかっこいいところ。激写♥」
「もう!」
「えっへへ,可愛いところも撮ったよ♥」
「‥‥もう。」

雪乃は奏の隣に並ぶと,そっと手を握る。二人の背には,タヌキとキツネのお面が,可愛らしく飾られたままだ。キツネとタヌキは,足並み揃えて寮への帰路を辿る。
しっかりと握りしめられた手は寮に戻るまで片時も離れることはなかった。


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最終更新:2010年11月08日 09:52
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