アットウィキロゴ

SS-14

更衣室で‥‥(中編)

◆yuri0euJXw


あたしの頭の中で,雪ちゃんの言葉が繰り返し響く。

『今日は,私がどれだけかなちゃんのことが好きか体中にちゅーして教えてあげる♥』

更衣室を出てからずっと,雪ちゃんはそれまでのことは何でもなかったようにいつもと変わらず,屈託のない笑顔であたしに話かける。
雪ちゃんが全然気にしてないのに,あたしが気にしてるのもどうかと思う。
だからしばらく落ち着かなかったけど,今は雪ちゃんと同じようにいつも通りに振舞っていた。

でもずっと頭の中では雪ちゃんのセリフが繰り返されてる。
それに何であんなことしたんだろう。勢い余って『よろしくお願いします』なんて言ってしまったけど,どこまで本気なんだろう,雪ちゃんは‥‥。
あたしの中ではそんなことばかりがずっと廻っていた。

いつもと何も変わらないのに,今日は何だか握った手がとても熱く感じた。
いつものようにしっかりと手を握ってあたしと雪ちゃんは寮までの道を歩いて帰る。
何も変わらないはずなのに,今日はちょっと違った。

あたし‥‥意識してる?

そう思うと急に顔が熱くなる。

「どうしたの?かなちゃん。顔赤いよ?」
「なっ何でもないって。早く帰ってご飯食べよ。もう~!あたしお腹空いちゃったぁ~。」

シャワー室のキスの最中,あたしが思い描いたこと。
はっきりと形作られた自分自身の気持ち。それは今も鮮烈に胸に刻まれている。
それがなぜかすごく気になって,あたしは心中落ち着かなかった。
何かを振り払うように頭をぶんぶんと振って寮への帰路を急いだ。

◇◆◇

「わぁ~い。今日はハンバーグぅ♥」

寮生で賑わう食堂で,雪ちゃんは嬉しそうにホクホクとした顔でおかずと向き合っていた。
そんな様子もいつも通りで,あたしはその様を温かい目で見守る。
あたしは雪ちゃんの分までお茶を用意して雪ちゃんの所まで持ってきてあげたのに,雪ちゃんは冷たい水もほしいという。
相変わらずのわがままっぷり,仕方がないからもう一回取りに行った。

「わぁい。ありがとう♥かなちゃん大好きぃ~♥」

というと,雪ちゃんはその水を一気に飲み干す。そしてまた嬉しそうな顔してハンバーグと向き合っていた。あたしも自分の分に手をつけた。
他愛もない話をしながら,ふと雪ちゃんの顔を見ると,ほっぺや鼻の頭にデミグラスソースがついていた。

「ほらぁ,雪ちゃん。ソースついてるよ。」
「えっへへ~。かなちゃん,ありがと~。」

いつもと変わらない日常のはずだった。でもあたしはそんな時でも雪ちゃんを意識しないではいられなかった。

「かなちゃんお風呂入りに行こうよ~。」

雪ちゃんは一頻りいつものブログの更新を終えると,ちょっと早い入浴を宣言した。
隣で今日の課題に集中していたあたしはすぐに返事を返そうとしたけど,一瞬雪ちゃんの裸を思い浮かべて,手が滑ってしまった。

ヤバいかも‥‥あたし。まともに雪ちゃんのこと見らんないよ‥‥。

「あ‥‥あのさ‥‥まだ課題終わんないから,先入っててよ。」

動揺を抑えて,あたしは無難な返事を返す。

「そう?じゃあ待ってるから。」
「いいよ。入っておいでってば。」
「やっ!一緒に入りたいんだもん。」

雪ちゃんは低反発枕を抱きしめて駄々をこねた。
とほほ,人の気も知らないで。
仕方ないので,課題にキリを付け一緒にお風呂に入ることにした。
どうせ,一人残ったとしても,悶々として課題なんか手に付かないのは目に見えている。
そうだよ。見なきゃいいんだ。意識しなければ大丈夫。
あたしはこの浅はかな考えをもったことにあとから死ぬほど後悔した。

◆◇◆

「かなちゃ~ん♥洗いっこしようよ~♪」
「だ~!だからいつもしてるでしょ!」
「えへっ♥今日も~♥」

浴室にはいると早速雪ちゃんがあたしに飛びついてきた。
あの~。胸押し付けるのやめてください‥‥。
湯気がこもっててよかったのか悪かったのか。
ほかの子もいたしいつもと何も変わらない‥‥はず。
と言うか,おかしいのはあたしの方だ。
雪ちゃんの体を洗うのに緊張しすぎて変な触り方しちゃうし,雪ちゃんの洗い方が気持ちよくて,あたしは頭がくらくらしていた。
あたしは何とかことを終わらせ,雪ちゃんから逃げるように湯船につかった。

「どうしたの?かなちゃん。なんか‥‥かなちゃんらしくないよ?」

流石にあたしの行動がおかしいことに気付いたのか,雪ちゃんは心配そうに声を掛けてきた。
逸らしていた視線を戻して雪ちゃんのほうを向くと,今まさに雪ちゃんは湯船に入ろうとしているところで,思いもかけず雪ちゃんの全身裸体を余さず視野に入れてしまった。

何でもないことなのに,いつもと何一つ変わらないはずなのに‥‥。

あの瞬間から,あたしにとっては世界が一変するほど全てが変わってしまった。

わかんないよ。どうしちゃったんだろ‥‥あたし。

雪ちゃんとキスしただけじゃない。そうだよ。キスだけなら小さい時にだってしたし,この間だってこっそり雪ちゃんの寝起きにほっぺたに‥‥。

あ,でも‥‥雪ちゃんからのは‥‥初めて‥‥かな?あたしの知る限りでは。
それに‥‥お互いの意識がはっきりしてる時のなんて‥‥は‥‥初めて‥‥で‥‥。
それに‥‥それに‥‥雪ちゃんのあのセリフ‥‥。

あ‥‥ダメ‥‥また緊張してきた‥‥。

雪ちゃんがそばに寄りそう。コツンと肩が触れた。
あたしは緊張のあまり,ピクッと震えて,何もできなかった。
何か言わなきゃ。また変に思われちゃうよ。
さっき出ていった子で最後だから,今はあたしたち二人だけ。
誰もいないうちに何とかごまかしておかないと。
あたしがパニック状態の頭でごちゃごちゃと考えている間に,雪ちゃんの方から話しかけてきた。

「かなちゃん。」
「な‥なに?」

声が上擦るのがわかる。胸がドキドキしてる。おかしいよ‥‥あたし‥‥。
気持ちが落ち着かなくて,なんとなく動かした手は湯面に波紋を作る。
その波紋がプールと重なって,記憶に新しい今日の出来事が鮮明に浮かび上がり,混乱の元が脳裏をかすめる。

「かなちゃん‥‥緊張してる?」
「はぃ?!」

雪ちゃんの質問に声がうらがえってしまった。

「私があんなことしたから?かなちゃん困ってるの?」

雪ちゃんはつぶらな瞳を潤ませて上目遣いでこちらを見る。
あぁ‥‥またこんな目であたしのこと見て‥‥。

「違う。違うよ。雪ちゃんのせいじゃない。」

そうだ。雪ちゃんにキスされたのがショックなんじゃない。
あの時雪ちゃんにキスされて驚いたけど,ほんとは凄く‥‥嬉しかった。
好きって言葉が体中に染み込んでいくみたいに安心できて‥‥。

ただ,戸惑ったのは自分の気持ち。

雪ちゃんのこと大好きで,内緒でチューしたりしてたけど,それ以上にもっともっと雪ちゃんのことが欲しくなってる自分が信じられなかった。

ちょっと自己嫌悪に陥ってたのに‥‥。

それなのに雪ちゃんはあんなこと言って。
あたしは雪ちゃんの言葉に期待して,自分だけじゃないんだって嬉しくなって,急にそんな風に意識したから‥‥あたしが‥‥勝手に空回りしてただけ。
それなのに‥‥。

「‥‥たぶん‥‥あたしのせい。あたしが勝手に‥‥。」

じっと,雪ちゃんはあたしを見つめている。
吸い込まれそうな雪ちゃんの瞳。あたしのこと釘づけにして‥‥このままどうにかなっちゃいそうだよ。

ヤダ‥‥あたし‥‥やっぱりおかしいよ‥‥止まらなくなっちゃう‥‥。

あたしの中の葛藤がどんどん膨らむ。言いたい。伝えたい。自分の気持ち。
でも雪ちゃんの気持ちと違ってたらどうしようか。あたし一人勝手に突っ走って。
雪ちゃんのあのセリフ勘違いしてたらバカみたい。でも‥‥もう限界。
早く言ってしまいたい。そして受け入れてほしい。あたしの本当の気持ち。
心だけじゃなく,体も全部,雪ちゃんと繋がっていたい。
雪ちゃんが欲しいって‥‥。あたしは雪ちゃんと一つになりたいんだって。

「あたし‥‥。」

感情が昂って目頭が熱くなる。
でも告げようとした言葉をあたしは結局飲み込んだ。
ほかの子がはいってきたこともあったし,あたし自身もう限界だと思ったけどあたしはやっぱり雪ちゃんに言えなかった。

「かなでー。顔真っ赤だぞー。逆上せたかー?」
「んー。そーかも。もう上がるよー。」

入ってきた寮生に声をかけ,あたしは雪ちゃんと湯船から上がった。
本当に逆上せる寸前だったみたい。
きっと頭に血が昇ってたんだ。やっぱりおかしかったのはあたしのほうだ。
雪ちゃんは消化不良顔だったけど,脱衣所にもちらほら人がいたので,あたしは何事もなかったように雪ちゃんの髪を乾かしてあげた。
湯上りのほくほくした体に,適度なエアコンが気持ちいい。
いい加減のぼせた頭もこのまま覚ましてくれたらいいと思う。
あたしは結局湯船での会話に触れることなく,部屋に戻る準備をした。

◆◇◆

雪ちゃんにはちょっと珍しく,ぷぅっとふくれっ面が続いた。
浴室から部屋に行くまでの間,一言もしゃべらないなんて珍しすぎる。
今度は雪ちゃんのほうがおかしくなったみたい。
あたしはさっきの雪ちゃんみたいにちょっと心配になって声をかけた。

「あの~。雪ちゃん?」
「なに?」
「‥‥どうかしたの?」
「‥‥何もないよ~。」

この調子で,プイっとそっぽを向いてしまう。
でも面白いのは,繋いでいるのが手ではなく腕だということ。
怒ってるにしても,なんか矛盾してない?雪ちゃん。
そうこうしているうちに部屋に着いた。

あたしは雪ちゃんより先に部屋に入って電気のスイッチを入れようとした。
でもその手は雪ちゃんに受け止められる。
すぐ後ろにいた雪ちゃんはドアを後ろ手に閉めると,暗い部屋の中で,あたしの手を勢いよく引っ張った。
勢い余って,あたしは壁に押しあてられ,そのまま壁に押し付けられた。
反動でカレンダーのピンが外れる。でもそんなの気にしてる場合じゃなかった。

デジャブ‥‥

そんな生易しいものじゃない。あたしはシャワー室の時みたいに,ううん,それよりももっと強引に雪ちゃんに唇を奪われていた。
両手首を握られて,壁に押し付けられて。密着する唇の感触が凄くリアルに感じる。
強引に唇を割られて雪ちゃんの舌先はあたしの全部をなぶるように侵入してくる。
絡めとられる舌,触れられる生暖かい弾力にあたしは一瞬理性が飛ぶ。
いつも突然で驚くけど,この感じイヤじゃない。
体の奥のほうから熱いものがこみあげてきて,頭の奥からぼぅっとしてくる。

もう‥‥何も考えられなくなる。

あの時みたいに,どうしようもないくらいの劣情が込み上げてくる。

あたしも‥‥雪ちゃんが欲しい。

あたしは欲望のままに自分からも舌先を絡めだす。
すると握り止められていた両腕を雪ちゃんは解放してくれた。
あたしは解放された腕を雪ちゃんの背中にまわす。
雪ちゃんもあたしの背中に腕をまわした。
抱きしめる腕に力を込める。お互いにお互いを引き寄せる。
シャワー室の時よりずっと自然にキスしてると思った。
雪ちゃんのキスはすごく上手で,あたしはもう頭の芯から蕩けそうだった。
そして,あの時思い浮かんだあたしの欲望が顔を出しはじめる。

雪ちゃんが欲しい‥‥。雪ちゃんと一つになりたい‥‥。

唇が解放される。
名残惜しそうに伸ばすあたしの舌先と雪ちゃんの唇の間に銀のかけ橋がかかる。
それが途切れるのを見届けると同時に,あたしは腰から下に力が入らなくなってしまって雪ちゃんにもたれかかった。

「どうして‥‥。」

あたしは雪ちゃんを抱きしめたまま,荒い息を吐きながら言った一言はそれだった。
何でいつもそうなの?あたしができないこと,雪ちゃんは簡単にやってしまう。

「それは私のセリフ‥‥。」
「‥‥え?」
「私‥‥かなちゃん困らせるようなことした?」

雪ちゃんは,あたしのこときゅっと抱きしめてちょっと語意を強めて言った。
いつもと様子が違う。少しだけ,涙声な気がするのは,きっと気のせいじゃない。

「ねぇ,かなちゃん。私,かなちゃん困らせたの?」

ぎゅっと抱きしめて,あたしにしがみつくみたいにしてる雪ちゃんをあたしは抱きしめる。
あたしが一人空回りしてるのを見てて,不安だったのは雪ちゃんのほうだったんだとあたしは今気がついた。信じてなかったのは,あたしのほうだった。

「違う。違うの。雪ちゃん。あたしは‥‥。」

あたしは‥‥雪ちゃんが欲しくてたまらなかったんだ。
想いが言葉にならなくて,雪ちゃんをもっと強く抱きしめた。
涙が溢れてくる。子供みたいな嗚咽が部屋に響いた。

「かなちゃん。落ち着いて?」

雪ちゃんの柔らかい唇が涙を拭いてくれる。優しい温もりが心に染みる。
ごめん雪ちゃん。ごめんなさい。
あたしは泣きながら,知らないうちに何度もそう呟いていた。

「ねぇ,かなちゃん。」

雪ちゃんが頭を抱きしめて,やさしい声色であたしを呼ぶ。
落ち着いた嗚咽は勢いを弱め,涙で濡れた瞳をあたしは雪ちゃんのほうへ向けた。
おでこをこつんとくっつけて,雪ちゃんはあたしに優しく囁く。

「かなちゃんは‥‥私のこと‥‥好き?」
「うん‥‥大好き‥‥。」
「ちゅー‥‥してくれる?」

茶化す雰囲気なんか微塵もない。やさしく,少しだけおびえて,少しだけ照れたまぎれもない雪ちゃん自身があたしを待っている。
あたしは,雪ちゃんに,あたしの大好きな雪ちゃんにそっと触れるだけのキスをした。

「えへっ,初めてちゃんとしてくれたね♥」
「‥‥うん。ごめんね,雪ちゃん。」

おでこをくっつけ合ったまま,あたしたちはクスッと微笑みあう。
やっと穏やかな時間を取り戻すことができたみたいだった。

「あたし‥‥なんかもう一杯一杯だったみたい。」
「なにが?」
「だから‥‥雪ちゃんが‥‥。」

あたしたちは二人で床に部屋にへたり込んだまま会話している。
しっかりと握りあった両手と,くっ付け合ったおでこでお互いの温もりを感じていた。

「その‥‥だっから‥‥。」

あ‥‥ダメ‥‥ドキドキしちゃって‥‥言えないよぉ‥‥

結局あたしは,思い出すことがすべて恥ずかしくて,何も言えなくなってしまった。
雪ちゃんには,「かなちゃん,ゆでダコだよ♥」なんて言われる始末。
あー。あたしダメダメだわ。ちょー格好悪い‥‥。

「つまり‥‥こういうこと?」

雪ちゃんが悪戯っぽくあたしのこと見ながらそんなこと言った。
何を言おうとしているのかと考える暇もなく,また雪ちゃんの唇があたしに触れた。
シャワー室やさっきみたいな強引な奴じゃなくて,すっごく優しい丁寧なキス。
そっと唇をなめられて,あたしは背筋がぞくっとして,小さな声が漏れた。
でも,雪ちゃんの唇は離れることなく,今度は歯茎の裏側や舌の付け根,上あごなんかを
丁寧に丁寧に舐めてくる。唇をたっぷりしゃぶって解放された時にはあたしはもう,蕩けそうなくらいくらくらしていた。

「かなちゃんは‥‥ずっとこんな気分でいたんだよね?」
「ふぇ?」
「シャワー室で私がちゅーしたときから,それと‥‥。」
「それと‥‥?」
「私が,かなちゃんに言ったこと~♥」

『今日は,私がどれだけかなちゃんのことが好きか体中にちゅーして教えてあげる♥』

雪ちゃんは嬉しそうなにこやかな笑みを浮かべている。なんかちょっとしたり顔だ。
悔しいけど,そんなとこだ。
改めて面と向かって言われると,はっきり意識してしまって雪ちゃんの顔が見れない。
あたしはまた,雪ちゃんに「かなちゃん,耳までゆでダコ♥」なんて言われてしまった。

「嫌われたのかと思っちゃった。急にあんなことしたから。」
「‥‥だって,ゆ‥雪ちゃん平気な顔してるんだもん。茶化されたのかと思って‥‥。」
「違うよぉ~。嬉しかったの♪かなちゃんが『いいよ』って言ってくれたから。」
「ゆ‥‥ゆきちゃん?」
「かなちゃんが『泡になっちゃう』なんて言うから‥‥。」
「ちょっ‥‥雪ちゃんってばっ‥‥。」
「あたしの一番はかなちゃんだって‥‥何で信じてくれないのかな~♥」
「ゆきちゃっ‥‥んんんっ‥‥ふっぅ‥‥。」

雪ちゃんの舌が伸びてくる。くすぐるようにあたしの唇を舐める。
誘われるようにあたしも舌をのばす。そっと触れ合わせていた舌は徐々に激しく絡み合って,また,唇を重ねて貪るようにキスした。
もうこれで何度目になるんだろう。あたしは雪ちゃんのキスにもう充分蕩けきっていた。

「ふぁ‥‥あたしも‥‥ゆきちゃっ‥‥大好‥き‥‥もっと‥‥。」
「もっと?」
「あ‥‥あたしっ‥‥もぉっ‥‥。」

雪ちゃんはあたしの太ももや服の中に入れた手でさわさわと撫でながら,あたしの言葉を待っている。
たっぷりされたキスのせいで異常に昂ぶっているあたしの神経はそんな動きでも敏感に感じてしまっていた。
いや違う。雪ちゃんの手だから,雪ちゃんが大事にしてくれているからこんなに感じてるんだ。
もう‥‥言ってもいいよね?あたし‥‥勘違いしてないよね?
あたしの言いたいこと,もうわかってるって雪ちゃんが言ってるみたいに雪ちゃんの優しい視線があたしの次の言葉を促していた。

「あ‥‥あたしっ‥‥もぉっ‥‥。」
「あたしも?」
「ゆきちゃんっんんっ!」
「私が?」
「‥‥ほしっ‥‥んんっ‥‥。」

ああぁん,ひどいよ。全部言い切る前にキスするなんて。
でもそのキスが一番優しくて,甘かった。

「ねぇ,かなちゃん。もっと‥‥してもいい?」
「‥‥。」
「大好きなかなちゃんに,いっぱい好きだって教えてあげる♥」
「‥‥イヤって言ってもするんでしょ?」
「イヤなの?」
「‥‥イヤなんて‥‥言うわけないじゃない‥‥。」
「えっへへ♥」

雪ちゃんは,足腰から力が抜けて満足に立てないあたしを笑いながら,手を貸してくれた。
いつも二人で寝てるベッド。
狭い部屋を有効活用するために一緒に寝ることになったベッド。
そんなのはただの理屈で,あたしたちの間では一緒に眠るのは決まっていた‥‥。
二人を繋いでいた手は,今もしっかりとあたしたちを繋いでいる。
そしてこれからも,もっと強い絆であたしたちを繋いでくれる。

「‥‥かなちゃん。」
「ゆきちゃん‥‥。」
「大好きだよ‥‥。」

今夜,重なり合う影は‥‥一つになる。


上へ /  次に進む  /  一つ戻る



最終更新:2010年11月08日 09:56
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。