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SS-17

咲夜×奏

◆yuri0euJXw


咲夜好きは注意!設定がアレ(^^;なので‥‥。

奏は一人で街を歩いていた。
どこに向かうでもなく,そこに道があるから歩いている。
人の流れとは違うリズムで,ただひとり街を彷徨っていた。
いつも隣に雪乃がいた。それがごく自然なことだったのに‥‥。
奏が一人でいるという風景はなんだかとても違和感があった。
すっきりしないもやもやとした感情を抱えているのか,奏の表情は覇気がなく無表情に近い。
それは,二人の間に起きた出来事に対しての後悔がにじみ出ているようだった。

深い溜息を吐き,頼りない足取りで奏は歩いていた。
立ち止まる様子もない。
ただ何かしていないとおかしくなってしまいそうだった。

いつしか空には薄暗い雲が立ち込め,ぽつぽつと雨粒が奏の肩を濡らす。
しかし奏はそれを避けようともせず,そっと顔を空に向けた。
何かを求めるように空を仰ぐ。徐々に大きくなる雨粒が奏の頬を打った。
ほどなくして,勢いを増した雨粒は奏の全身を濡らした。
濡れたまま,奏は自嘲的な笑みを浮かべる。
雨の中,空を仰いで立ち竦む奏はやるせない思いを抱えたまま,ただ自分を責めていた。

奏の横を通り過ぎたいくつもの車の中で,高級そうな見慣れない一台が通り過ぎた。
その車は奏を通り越した先で,急に停車した。
ハザードランプの点いた車から見慣れた小柄な少女の姿が現れ,可愛らしい傘が開くと小走りに奏に近寄っていった。

「奏先輩!」

奏を打ち濡らしていた雨は差し出された傘で遮られ,代わりに傘を打つ鈍い音が響く。
奏は自分の名前を呼んだ人物を確認する。

「‥‥咲‥‥ちゃん。」

奏は,驚いたように咲夜の顔を見つめる。

「どうしたんですか?こんな所で?お一人ですか?‥‥とにかく車に乗ってください。寮までお送りしますから。」

奏がどうしてこんなところにいるのか,咲夜も驚き顔だ。
濡れ鼠の奏に,車に乗るよう勧めるが,奏は顔を横に振るばかりだった。

「‥‥いいよ。ゆきちゃんのとこには‥‥寮には帰りたくないんだ‥‥。」
「‥‥でも,そのままじゃ,風邪引いちゃいますよ?」
「‥‥うん。そうだね。」

街の喧騒の中,二人の周りだけがいやに静かだった。
帰りたくなくても,奏にはほかに行くあてはない。
それは咲夜も知っているところだろう。
しかしそんなことより,雪乃のところには戻りたくないと言った奏はどうしようもなくさびしそうで,頼りなく見えた。
奏の瞳の奥の陰りを見つめ,咲夜は何も言わずに奏の手を取った。

「うちに‥‥来ませんか?このままよりはきっとましですよ?」

そのまま泊っていって下さい!,と咲夜は奏を連れて車に向かった。
強引な行為ともとれるが,奏は拒否しなかった。
雨の中,奏の流した滴は雨粒に紛れてしまったのに咲夜は気づいただろうか。
でも流した涙と今も流れている心の涙はきっと誰にも隠すことはできない。
奏は,咲夜の申し出にコクンと頷くと導かれるままに車に乗った。
今はただ,どうしようもない寂しさと後悔から逃れたかった。

◇◆◇

「奏先輩,バスルームは向こうですから。取り敢えず体温めてください。」

奏は,とぼとぼと頼りない足取りで勧められるままに部屋に入った。
通されたのは来客用の部屋らしく,落ち着いた雰囲気で統一された部屋でシングルベッドも設置されていた。
まだ水の滴る奏に柔らかいタオルをあて,咲夜は奏の濡れた髪を拭こうとした。
しかし背の高さに阻まれ,奏の髪を十分に拭くことができない。
手を伸ばして拭こうとする,一生懸命な咲夜の姿に奏の表情は和らぎをみせた。

「ありがとね。咲ちゃん。」

街で出会ってから,初めて見せる奏の微笑み。
奏は,咲夜からタオルを受け取り自分の濡れた髪を拭った。
アップにした髪をほどくと,重々しく髪が下りる。
奏は近くにあったサイドテーブルにピンとゴムを置いて,わしゃわしゃとタオルを動かした。
やっと表情を見せた奏に咲夜はホッと胸を撫で下ろす。

「なんか温かい物でも持ってきますね。」

咲夜は奏を部屋に残して出ていくと,程なくして戻ってきた。
誰かの声が聞こえたので,どうやら廊下で用意された飲み物を受け取ってきた様子だ。
奏はそれを受け取りごくんと一口飲む。雨に打たれて冷えた体に,じんわりと温かさが広がった。
心配そうに奏を眺める咲夜と目が合う。普段の咲夜からは想像がつかないほど心配そうな顔を見せている。
そんな咲夜の顔を見て,奏はなんだか少し胸が暖かくなった。

「心配かけちゃったね。」

奏はそっと咲夜の頭を撫でると,咲夜は照れたように嬉しそうな顔を見せた。

「それじゃ,先輩。お風呂へご案内します。」

咲夜に案内されるまま,奏はバスルームへ向かった。
咲夜に続いて廊下を歩いていると,急に孤独感が襲ってきた。
いつもなら隣に雪乃がいて,咲夜と雪乃の不可解に展開される会話に冷静に突っ込みを入れ,端から見れば漫才のような和気藹々とした日々を過ごしているのはもうすでに日常だった。
廊下を歩きながら奏はキュッとタオルを握りしめた。
咲夜はその様子を横目で見ながら,咲夜の胸もまたタオルのように締め付けられる思いだった。

「バスタオルはこれを,着替えは取り敢えずこれを着て下さい。 今着てる服は急いで洗いに出しますから。」
「あっあのさ‥‥咲ちゃん。」
「あっ,ぜんぜん気にしないでください。気なんか使わなくて大丈夫です。今日は両親も不在ですし,お手伝いさんももうじき帰りますから。」

奏に口をはさむ暇を与えないように,次から次へと咲夜は言葉を続けた。
奏が気にしそうな理由をすべて封じて,咲夜はバスルームに奏を押し込んだ。
最初で最後かもしれないこんなチャンスを咲夜がそう簡単に逃すはずはない。

「それとも‥‥一緒に入りますか?奏先輩のお体隅々まで洗ってあげますよ?」

極めつけに冗談めかして咲夜はそういう言う。
でも奏からは予想外の返答が返ってきたのだった。

「‥‥そうだね。一緒に入ろっか?」
「えっ?!ええっ~!!‥‥‥いいんですか?」
「‥‥いや‥‥かな?」
「いやなわけありません!!お背中お流ししますぅ!!」
「はははっ。」

顔を引きつらせるも,楽しそうに笑う奏だった。
一方,満面の笑みを浮かべる咲夜だったが,頭の中は疑問符でいっぱいだった。

◇◆◇

「先輩の肌ってとってもすべすべですね~。」
「いや‥‥普通っしょ‥‥。」
「いえいえ♪」

普通なら逃げそうな‥‥それ以前に一緒に風呂に入るなんてありえない奏だったが,今は咲夜の希望通り,背中を洗ってもらっている。
あまりに素直な奏なので,咲夜は真面目に背中を流していた。
これが少しでも普段の奏だったら,いつものようにちょっと強引なこともできたかもしれない。

「じゃあ,あたしも咲ちゃんの背中洗ったげるよ。」

スポンジを受け取り,慣れた手つきで咲夜の背中を洗った。
小柄な咲夜は雪乃よりもずっと小さくで華奢な体をしていた。
もっちりとした肌の質感と,後ろから見えるボリュームのある胸が咲夜を強調しているようだった。
あとは自分でやるからと,咲夜はスポンジを受け取り自分の体を洗った。
奏は髪を洗う。もらったタオルで髪をまとめると,咲夜が今度は髪を洗う所だった。

「咲ちゃん。髪の毛洗ったげるよ。」
「はい?えっ!?ええっーー!!」
「今日泊めてもらうお礼。いつも雪ちゃんの髪洗ってるから上手いよ,あたし。」
「はっはい!おっお願いします!」

なんだろう。こんな親しげな行動は,かえって違和感を感じる。
でも,奏の指は気持ちよく咲夜の髪を梳いていく。
咲夜は憧れの櫻井姉妹に少しだけ入り込めたようなそんな幸せを感じていた。

「はい。流すからギュッと目つぶってね。」
「は,は~い。」

姉が妹に接するように奏は優しく咲夜をあやす。
咲夜は下を向いているため,奏にはその表情は見えないが,思いがけない奏の行為に咲夜は困ったような照れた様子で頬を染めていた。
でも何があったのだろう?咲夜の疑問は深まる。
他人に入る隙間を与えない仲のよい二人なのに,一体二人の間に何があったのだろうか。
何れにせよ,今夜奏が咲夜の家で一夜を明かすことに変わりはない。
咲夜は奏との仲を深める良いチャンスだと心配する一方で内心喜びを隠せなかった。

◇◆◇

簡単に夕食をご馳走になり,広い屋敷に咲夜と二人だけになった奏は,来客室で二人で寝ることにした。
慣れない他人の家で一人で置いておかれても困るという理由もあるが,何より,奏が一人になりたがらなかったのが大きな原因だった。
そういうわけで,今は二人でベッドに潜り込んでいる。

「奏先輩?」
「ん,何?咲ちゃん。」
「いえ‥‥。あの‥‥。」

いきなりなにがあったのか聞くのも悪いと思ったのか,咲夜はいつも雪乃に聞くようなプライベートな質問を奏にする事にした。
お風呂でリラックスできたのか意外にも奏は咲夜の質問に快く答えていた。
しかし奏が答えていたのは奏自身のことではなく奏と雪乃のこと。
ことさら雪乃の話を中心に奏は話すのだった。
奏は湯上がりの上気した肌にバスローブだけという無防備な姿で,二人は並んで転がっている。
幾分元気を取り戻した奏であったが,咲夜にはそれが空元気にしか見えなかった。

「先輩と雪乃先輩ってほんと仲良いんですね。双子ってそういうものなんですか?」

咲夜は折を見て話を切り出す。
奏との時間が居心地が良すぎて,嬉しそうに雪乃のことを話す奏に胸が締め付けられる思いで,普段は感じないような,嫉妬感に苛まれていた。
そんなに雪乃のことが好きなのに,どうして奏は寮に戻りたがらないのか?
どうしてあんな所をふらふらと歩いていたのか。
咲夜の中に膨らんだ疑問は一つ一つ弾けようとしていた。
奏は咲夜の顔を見ながら,逡巡していると,おもむろに口を開く。

「咲ちゃんてさ‥‥その‥‥あたしのこと‥‥好きなんだよね?」
「はいっ!!」
「あ‥‥あのね‥‥こんなこと聞いて変だと思うかもしれないんだけど‥‥。」

奏は,咲夜とのパジャマパーティーに慣れたのかポツポツ口を開き始めた。

「咲ちゃんてさ‥‥女の子が好きなの?‥‥それとも‥‥あ‥あたしが好きなの?」
「あの‥‥質問の意図がよくわからないんですが‥‥。」
「あっ!?ごっゴメン。咲くちゃんに聞くことじゃないと思うんだけど‥‥ほかに聞ける人いないし‥‥。」
「え~と,それって奏先輩にとっては大事なことなんですよね?」
「‥‥うん‥‥まぁ‥‥そう‥‥。」
「雪乃先輩とのことにも関係するんですか?」

咲夜は詰め寄るように奏に聞き返した。奏はたじろぎながら,やや視線を外し,無言に徹していた。
わかりやすい反応を返す奏が,とても可愛く感じる咲夜だった。
「かわいいとこもあるんだな,奏先輩って。ますます好きになっちゃいそうです。」と心の中で呟きながら
咲夜は,奏の質問に答えるのだった。それまでにも何回かした告白。
いつもはぐらかして返事を返さない奏。
‥‥いや返事を返されたらそれまでの関係が変わってしまうことが怖くて返事をさせないようにさせていたのは咲夜のほうだ。
誰も入り込めない二人の間に唯一割って入った人物。
三人でばかばかしい時間を過ごすのがやっと日常になりかけていた。

「あたしは‥‥奏先輩が好きなんです。女の子に告白されたことはたくさんあるけど,それは条件になりませんよ。」
「どういう風に好きなの?」
「どうって?」
「友達の延長?それとも恋人として?」

真剣な瞳で奏は咲夜を見つめた。
自分の中の葛藤がそこに詰まっていることを奏は自覚していた。
自分自身で感じていた戸惑いに答えが見つけられなくて彷徨っていた。
いつまでもそれは自分の中で曖昧にしておきたかったことだったのかもしれない。

「‥‥好きってさ‥‥どういうことなのかな?あたし‥‥なんかね‥‥わかんなくなっちゃってさ。」

普段の活発な奏はそこにはいなかった。恋に悩む少女のいじらしさがそこにあった。
とても年上とは思えない奏のかわいらしさに,咲夜の胸はキュンとなる。
咲夜自身,奏のどこが好きなのか言えと言われたらきっと困るだろう。
普段の奏と,今目の前にいる奏と,バスルームで見せた姉妹のような奏と‥‥奏の魅力は一口でなんか言いきれない。
咲夜はごくっと唾を飲み込んだ。

「先輩はあたしのこと嫌いじゃないんですよね?」
「咲ちゃんは‥‥いい子だよ?どちらかといえば‥‥好き‥‥かな?」
「それじゃ‥‥試して‥‥みませんか?」
「試すって?」
「先輩の「好き」がどういうものか,私の「好き」と比べたらわかるんじゃないですか?」
「咲ちゃんの「好き」?」

咲夜はすぐ隣にいる,奏の頬にそっとキスした。
奏は驚きながら,自分の頬に手を添える。

「さ‥‥咲ちゃん?」
「いやですか?あたしが雪乃先輩ならこんなに奏先輩のこと悩ませたりさせませんよ。」
「さ‥‥咲ちゃん?!」
「違ってたらごめんなさい。でもそうなんじゃないですか?」

奏を引き寄せ,咲夜は奏を押し倒すと,その上に圧し掛かった。

「雪乃先輩は,私と奏先輩が仲良くなれるように協力してくれるって言ってたのに‥‥。」
「ちょっ‥‥咲ちゃん‥‥放し‥‥。ふぐぅっ!!」

咲夜は奏の唇に自分のそれを押し当てる。
じたばたとしていた奏も初めてのキスの感触に身動きするのも忘れた。

「はぁ‥‥好きです,奏先輩。私で‥‥奏先輩の気持ち‥‥確かめて下さい。」
「ちょっ‥‥咲ちゃ‥‥ん‥‥ふぅ‥‥んっ!!」

抵抗の手の弱まった奏に,咲夜は再び口付ける。
奏の唇を割って挿し入れた咲夜の舌は,おびえるように震えている奏のそれを優しく愛撫する。

「ふぅ‥‥んっ‥‥むぅ‥‥ん。」

眼尻に涙を溜め,咲夜のキスを受け入れる奏は,抵抗する様子もなくなすがままにされていた。

「抵抗しないんですか?」
「‥‥‥。」

唇を離して,咲夜は奏に尋ねる。奏は無言のまま,咲夜を見つめた。
上気した頬が色っぽくて,吐息は弾んでいた。瞳の奥に潜む影がまた少し見え隠れしていた。
奏の中に自分の姿がないことは,十分に分かっている。
でも‥‥それでも‥‥今奏が受け入れてくれているならそれでいい。

「あたしはその方が嬉しいですけどね。」
「ふぅ‥‥っん‥‥。」
「好きです。奏先輩。私の奏先輩に対する好きは,こういう好きですよ。」
「ぁ‥‥っぁ‥‥っぅ‥‥っん‥‥。」

滑るように奏の首筋に咲夜の唇が触れる。敏感にそれを感じ取る奏の口からは小さく声が漏れた。
バスローブの腰紐を解き,肌蹴させた布地の中から,一糸纏わぬ奏の体が現れる。

「抵抗するなら,今のうちですよ?」
「‥‥ごめんね,咲ちゃん。こんなあたしで‥‥ごめん。」
「私は奏先輩がいいんです。奏先輩じゃなきゃダメなんです。好きですよ,奏先輩。」

雪乃が好きで‥‥雪乃が大好きで‥‥堪らないのに,いざ直面したら耐えられなかった。
どういう意味で,雪乃が好きだったのかわからなくなった。
生まれた時からずっと一緒で,今もずっと一緒で,双子の姉の雪乃。
でも姉妹だから,それ以上にもそれ以下にもなれない。

――姉妹だから――

そう思ってたのに‥‥。そうやって自分を誤魔化してきたのに‥‥。
ある日突然やってきた。雪乃の告白。そして,初めてまともに交わしたキス。
好きなのに,大好きなのに‥‥。いろんな事が一度に押し寄せてきて‥‥。
耐えられなくて,雪乃から,雪乃を振り払うように逃げ出してきた。
あんな風に飛び出して‥‥もう‥‥雪乃に合わす顔がない‥‥

さみしくて,あんな風にした自分が嫌で,消えてしまいたかった時に咲夜に優しさを感じた。
ちょっと変った所のある子だと思ってたけど,好かれているということは嬉しかった。
こんなふうに体を重ねていても,今日はなんだか嫌じゃない。
ほくほくと温かい咲夜の温もりが,傷ついた心を癒してくれるようなそんな気がした。
優しい愛撫が体に染み込んで,何度も囁かれる告白が心地よかった。
咲夜のことを利用してるとわかっていた。だから奏は咲夜に謝罪した。
でも誘ったのは咲夜‥‥それを受け入れたのは奏‥‥。
咲夜の優しい愛撫が徐々に下に移動していく。
胸を揉みしだかれて,啄ばまれる胸の先端から,じんわりとした刺激が体の中に響く。
触れられる手が優しくて,何もかもを忘れてしまいそうになる。

「上手だね‥‥咲ちゃん。」

弾む吐息の間に奏が投げかけた言葉。咲夜は自嘲的に言葉を返した。

「‥‥女の子とするのは‥‥慣れてますから。」
「‥‥えっ?!」
「軽蔑しますか?好きでもない子とエッチしてるって。」

愛撫の手を止め,咲夜は奏に顔を寄せる。そっと近づいて耳元で囁いた。

「‥‥でも自分から好きになったのは奏先輩が初めてですよ?」

奏の様子を確かめるようにゆっくりと唇を近づけた。
でも,奏はそれを避けることもなく,触れることを許す。
軽蔑などしていないと,奏が言っているように咲夜のキスを受け入れた。
そして再びそれが離れると,咲夜はにっこりと微笑んで,奏への愛撫を再開するのだった。
奏は,複雑な思いだった。奏は投げ出していた腕を,そっと咲夜の頭に乗せた。
そして抱きしめるように手を回す。

「奏先輩?」
「ん‥‥なんとなく‥‥ね。」
「同情ですか?」
「‥‥‥違うよ。」
「いいです。同情でも‥‥。私は奏先輩とずっとこうしたかったんですから。」

咲夜の手が奏の下半身へ延びる。これから使用とする行為に奏の体が強張る。
誰にも侵入を許したことのない,大事な場所。それは雪乃ですらそうだった。
ふわふわとした心地よさに理性がどこかへ行きそうだったが,咲夜の動きに引き戻され,急に奏の理性は正気を取り戻した。

「うわぁっ,ちょっと待ってっ‥‥そっちはっ‥‥。」
「今更やめませんよ。抵抗するなら早くにしてくださいって言いませんでしたか?」
「やっぱ‥‥だめっ‥‥だめだよっ‥‥あたしには‥‥無理っ‥‥。」

体を丸くして抵抗するが,手慣れた咲夜には敵うはずもなく,隙間を滑るように咲夜の手は,奏の秘所に指先を滑り込ませた。
敏感な秘芯を撫で,その奥の秘裂をそっと指先で撫でる。
少しだけ力を込めて指先を食い込ませると,そこは熱い愛液で満たされていた。

「濡れてるじゃないですか‥‥奏先輩。感じてくれて嬉しいです♪」
「ちがっ‥‥違うのっ‥‥。」
「何が違うんですか?こんなに濡らして‥‥ほらっ。」

奏の秘所に湧き出た愛液を掬い取るように咲夜は指先を滑らす。
濡れた指先を奏に見せつけるように奏の目の前に突き出して見せた。
奏は恥ずかしさのためにそれを見ることができずに視線を逸らした。

「奏せんぱぁい。好きですよぉ。」
「ひゃぁっ‥‥だめっ‥‥っぁん‥‥だめっぇ‥‥。」
「感じてる時の顔も素敵です♪」
「いっ‥‥言わないでっ‥‥っぇ‥‥。」
「無理ですよぉ‥‥ホントのことですから。」
「いやっ‥‥いやぁ‥っ‥‥だめっ‥‥ゆきちゃっ‥‥ゆきちゃ‥ぁん。」

咲夜の愛撫は加減を知らず,奏を急き立てるように快楽の波を引き起こす。
奏は,拒絶の言葉と雪乃を求める言葉を喘ぎ声とともにこぼすが,咲夜の手を拒絶することはなかった。
咲夜の言ったとおり,咲夜に対する同情かもしれない。
それとも丸々バナナ3日分のフォローを何もしなかった雪乃の後始末かもしれない。
それとも,今日の出来事にかかわった咲夜に対する奏の贖罪かもしれない。

「はぁっ‥‥はぁん‥‥ふぅ‥‥ん‥‥っぁ‥‥はぁん‥‥。」

奏の気持ちなど咲夜にはわかっていた。咲夜に抱かれているのではない。
はじめからお試しだと。愛し合うことがどういうことなのか。
奏の雪乃に対する想いがどの程度のものなのか試すために,咲夜が挑発したのだから。

「イきそうだったら言って下さい。私も一緒にイきたいですから。」

奏の恥じらいつつも素直に感じる様子が煽情的で,咲夜はいつになく興奮していた。
自分の火照った秘所に指を伸ばして,自分も昂ぶらせる。
そんなことしなくても,奏の様子だけで,脳の奥まで痺れるくらい咲夜も感じていた。

「はぁっ‥‥はぁん‥‥もうっ‥‥なんかぁ‥‥っぁ‥‥くるっ!‥‥。」
「‥‥いいですよ。イってください。奏先輩っ‥‥ぁあん!!」
「はぁっ‥‥はぁん‥‥もうっ‥‥っぁ‥‥ああっぁん‥‥ぁんんん!!!」

二人同時に達すると,部屋は静寂を取り戻し,二人の荒い息使いだけが部屋に響いた。
咲夜は奏の胸に頭を乗せ,息を整えていると,優しく包み込まれるような温もりを感じた。
その温もりは奏のもの。
奏が咲夜を抱きしめていたのだった。

「‥‥ありがと。」

奏の涙声に咲夜は顔をあげた。

「それと‥‥ごめん。あたしは‥‥。」
「優しいんですね?お試しって言ったのは私なのに‥‥。それに半分無理やりみたいになっちゃったのに‥‥。」
「‥‥それでも咲ちゃんは‥‥優しかったから‥‥。」
「少しくらい,私のことも考えてもらえませんか?」

溜った涙を吸い取ろうと,咲夜は奏に顔を寄せるが,今度は奏に制された。

「駄目だよ。咲ちゃん。やっぱりあたしは‥‥。」
「せっかくの相思相愛なのに‥‥手放したら勿体無いですよ?」

咲夜は,いつもの元気な笑顔で奏を励ました。
このまま,咲夜の手で奏を堕とすのも容易なことかもしれない。
でも本当に咲夜の好きな奏は‥‥。

「今日はゆっくりしてって下さい。これ以上もう何もしませんから。」
「‥‥‥うん。わかった。」
「明日,ちゃんと雪乃先輩と向き合ってくださいね?」
「‥‥‥うん。‥‥わかったよ。」
「‥‥‥今夜だけ抱き締めてくれませんか?」

奏は咲夜の求めるままに咲夜を抱きしめ,二人は朝を迎えた。

◇◆◇

咲夜の言った通り,朝には奏の服はすべて揃っていた。
簡単な食事を済ませた頃,神山邸には来客の案内があった。
咲夜が呼ばれて,一人で玄関先に向かった。

その間,奏は一人でダイニングにいた。これからどうしようか。どうやって雪乃に会おう。
そればかりを考えていた。なんて謝ろう。どうやって自分の気持ちを伝えよう。
それ以前に今の自分を雪乃はどう思っているのだろう。
不安が胸に込み上げてきて,胸がドキドキする。
このまま,雪乃が自分に愛想を尽かしていたら,奏は一体どうしたらいいのだろうか。
不安が胸いっぱいに広がる中で,咲夜の声が聞こえた。

「奏先輩。お客様ですよ。」

奏に来客とは?奏も首をひねりながら,咲夜に連れられて玄関へ向かった。
開いたドアの先には見慣れた人影があった。

こちらをうかがう様子もなく,玄関より少し離れた先に,恋い焦がれた人の姿があった。
会いたくて,会いたくて,でも会うのが怖くて,誰よりも一番自分に近い最愛の人。

「どう‥‥‥して?」
「さぁ,行って下さい。奏先輩。今度は逃げたらだめですよ?」
「‥‥咲ちゃん!」
「昨日のことは内緒です。私も忘れますから,またこれまで通り奏先輩のこと追っかけてもいいですか?」
「‥‥咲ちゃん‥‥。いいよ。常識の範囲内でなら!」
「何言ってるんですか?!私は常識人ですよ?」
「はははっ。本当にお世話になりました。またねっ,咲ちゃん!」
「はいっ!よろしくお願いしますぅ。」

弾んだ足取りで,外へ向かった奏の背を咲夜はずっと見ていたかったけれど,すぐにドアを閉めた。
これ以上見ていても二人には邪魔なだけだ。それに自分の気持ちの整理も今は必要だった。

「‥‥‥ますます好きになっちゃうじゃないですかっ‥‥奏先輩‥‥。」

咲夜は一人,取り換える前の客室のベッドで悶えていた。

◇◆◇

「ゆき‥‥ちゃん‥‥。」

優しげな笑顔で雪乃は振り向いた。泣き腫らしたのか,眼尻が少し腫れて赤くなっていた。
奏と対峙すると,雪乃は立ち尽くしたまま,また涙が込み上げてくるのだった。
奏に会うまでに一途に考え抜いた言葉をゆっくりと口にする。
嗚咽と重なってとぎれとぎれになるが,奏はそれを黙って聞いていた。

「かな‥‥っちゃん。ごめっ‥‥もう‥‥あんなこと‥‥しっ‥‥しないからぁ‥‥。」

込み上げてきた涙が,とめどなく流れていく。

「だか‥‥っらぁ‥‥戻ってきて‥‥私のこと‥‥ぅてないでぇ‥‥えふっ‥‥ふぇっ。」

子供のように泣きじゃくる雪乃を前に奏は立ち尽くしていた。
小さいころから喧嘩したり,泣き合ったり,仲直りしたりの繰り返して今までやってきた。
こんなにも素直に,雪乃は自分を受け入れてくれているのに‥‥。
奏も込み上げた涙が一筋流れた。

「あたしも‥‥ゆきちゃんのこと‥‥好き‥‥大好きっ‥‥。」

溢れ出す想いをうまく言葉にできなくて,奏は力いっぱい雪乃を抱きしめた。
雪乃はそんな奏に驚きながら,嬉しそうに抱きしめ返した。そして,奏は雪乃の顔を見直すと,そっと唇に唇を重ねた。

「ごめん‥‥‥ゆきちゃん‥‥あたしも‥‥雪ちゃんと同じ‥‥ゆきちゃんのこと‥‥大好きだから。」
「かなちゃん‥‥。」
「ごめっ‥‥なさい‥‥ごめん‥‥なさっ‥‥い‥‥。」

泣きながら謝る奏をあやしながら,雪乃はやさしく奏を支えていた。
二人の寮への帰路へ向かう背中を,咲夜は窓から見守っていた。



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最終更新:2010年11月10日 23:53
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