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咲夜×奏のその後

◆yuri0euJXw


☆その前の続きはこちらから☆

「はい,かなちゃん。」

にこやかに奏を呼ぶ雪乃の手にはまるまるバナナが‥‥。
マジックで「カナ」と書かれているのは気のせいだろうか。

「あ~!あたしのまるまるバナナぁ!」

何か作業をしていた奏は横目でチラ見をすると,直ぐに向き直ってそう叫んだ。

「はぁ~い。お姉ちゃんが,食べさせてあげる~。」

雪乃は奏の目の前にそれをつきだして嬉しそうに言うが,奏は呆れた顔をしてそれをあしらった。

「いやいや,ってかさっき夕ご飯食べたばっかっしょ‥‥。」
「食べないのぉ?いらないんだったら私が食べるぅ~♪」

さも残念と言わんばかりに深い溜め息を吐きながら,その表情は爛々と目を輝かせた獲物を狙う顔だ。

「だって~。食べて食べて~ってずっと言ってるんだよぉ?食べてあげなきゃ可哀想でしょ?」
「だ~か~ら~,それはあたしのまるまるバナナだってばっ!」

雪乃の手からまるまるバナナを奪い取ると奏は元あった場所にそれをしまう。

「もう,油断も隙もないんだからっ!もうっ!」

残念そうにそれを見送ると,懲りずに雪乃は口を尖らせて言う。

「食べて食べて~って言ってるのはまるまるバナナだけじゃないもん。」
「ん?まだ他にも何か狙ってるんだ‥‥。」
「次の美味しいもの,食べちゃおうかな~?」

しばし見つめ合う二人。一瞬の沈黙が訪れる。

「ん~~~いひゃあいひゃあい!!」

言うが早いか,奏は雪乃の頬をつまみあげて締め上げる。今日もよく雪乃の頬は伸びた。
雪乃が反省の言を述べるのを確認して,奏は雪乃を開放し,自分の席に戻る。
引っ張られた頬を撫でながら,雪乃は机に向かう奏を見つめた。
雪乃は頬をさすりながら幸せそうに微笑んでいた。

「ん?なに?」

視線に気が付き,奏はちらっと雪乃の方を向く。

「ううん,なんでも。真剣な顔してるかなちゃんもだ~い好き♥」
「ばっ‥‥何言うのよ!いきなり‥‥。」

何気なく交わされた言葉に,奏は頬を染め,プイっと前を向きなおす。
しかし,雪乃からは耳まで真っ赤にした奏がよく見えた。

「照れちゃって,可愛いんだからぁ~♥」
「はいはい。ふざけてないでやることやっちゃいなさい。」
「ぶ~。かなちゃんのいけず~。」

奏をいじって機嫌のよくなった雪乃は,ウキウキとブログの更新を始める。
奏はそんな雪乃の様子を一通り眺めると,奏はふぅ~っと一呼吸して,また黙々と作業を続けた。
一時はどうなるかと思われた奏の家出(寮出?)も咲夜の機転で事なきを得た。
今では以前にも増して雪乃と仲睦まじく過ごしている。
でも一つだけ違うことがある。雪乃はそれを気にしていた。
隠し事なんてまったくと言っていいほどないはずなのに,奏は何か隠している。
雪乃はそれが心の片隅に引っ掛かっていた。
聞けない間柄ではないはずなのに,なぜかそれを聞くのを躊躇ってしまう。
雪乃は一度だけ聞いた。
真面目に聞くのがなんだか怖くてちょっとふざけて尋ねた。

「咲ちゃん家でなにかあったの?」
「‥‥ん。」

一瞬奏が返事をためらったように見えたけれど,その後すぐに神山大豪邸の話題に移ったので深くは追及しなかった。
唯一,いつもにもまして強く握った奏の手が,雪乃にはとても印象的だった。
あれから,幾日か過ぎ,まるであの時の出来事が嘘のように今は穏やかに過ごしている。
咲夜の奏に対する際どいアプローチも相変わらずで,雪乃を買収することにも余念がない。
でも少しだけ違う。奏の雰囲気が変わった。きっと奏自身も気付いていない微妙な違い。
多分雪乃にしか分からないだろう。

『食べて食べて~って言ってるのはまるまるバナナだけじゃないもん。』

雪乃の言わんとすること‥‥‥。それは奏の雰囲気の違いだった。
以前とは違うそのわずかな違いに,雪乃は戸惑っていたのだ。

―― 気を緩めたら,キス以上のことをしかねない誘惑のオーラ ――

でもそれこそ,今度こそ取り返しのつかない出来事になってしまったら‥‥。
簡単には踏み出せない一歩に,雪乃は戸惑いを隠せなかった。
奏をそんな風に変えたのはきっと咲夜‥‥。
雪乃はとある考えに行きついていた。しかしそれは確かめようもないことだ。
いや,奏が口にしようとしないのだからむしろそれが証拠と言えるかもしれない。
でもいつまでもそんなもやもやとした気持ちを抱えているわけにはいかない。
機会を‥‥二人を繋ぐ絆を確かめあう機会を雪乃は待っていた。

「さってと,今日の課題終わりっ♪」

鼻歌を歌いながら機嫌よさそうに奏は両手をあげて体を伸ばした。
どうも,本日の仕上がりは思った以上によかったようだ。
いそいそと先ほどしまったまるまるバナナを持ち出して自席に戻る。
じーっと雪乃は視線を送る。まるまるバナナと奏を交互に見つめた。

「ごはん食べた後じゃなかったの?」
「課題終わったからいいの~。」
「ひとりで‥‥‥食べるのぉ?」

いつの間にか奏のそばまで移動してきた雪乃は椅子の背もたれを抱え込んで,子犬のような目で奏を問いつめる。
雪乃の潤んだ目に見つめられて,奏はその瞳に見入ってしまう。
照れた様子で視線を逸らしながら,奏は答えた。

「‥‥‥‥‥えとっ‥‥はんぶんこ‥‥‥しよっか?」
「うん!」

奏は器用にバナナごと半分に割ると,生クリームの多い方を雪乃に渡した。
おいしそうにぱくつく雪乃を眺めながら奏もおいしそうにまるまるバナナにぱくついた。

「雪ちゃん。ほっぺに生クリームついてるよ。」

一心不乱に食べきった雪乃の頬に生クリームを見つけると,指を伸ばしてすくい取ろうとする。
しかし雪乃は奏から一歩下がってそれを避けた。
そしてそのまま雪乃は奏を上目遣いで見つめる。見つめたまま,またそっと近づいた。
さっきよりももっともっと近くに‥‥。
その仕草に奏は胸が熱くなるのを感じた。
雪乃が奏にさせようとしていることがなんとなく予想できたからだ。
そして想像通り,雪乃は生クリームが付いていると指摘された頬をそっと奏に突き出した。

「か~なちゃん。ん~~♥」

指以外の何でこの生クリームをとらせようというのか。
雪乃の仕草に一瞬たじろぐ奏だったが,ごくっと唾を飲み込むと,雪乃の魔法に一瞬で堕ちてしまったかのように奏はそっとそこへ顔を寄せた。
そして伸ばした舌で,雪乃の頬についた生クリームを舐め取る。
しっかりとついた生クリームはちょっと舐めるだけでは取りきれず,必然的に少し力を加えることになる。
柔らかい雪乃の頬に奏の舌先がツツっと沈みこんだ。
あの日以来,雪乃とキスしていない。
意識しない程度に欲求不満だったのか,奏はやわっこい雪乃の頬をしばらくの間堪能していた。
奏も自分の変調が気になっていた。
あの日以来‥‥‥咲夜と抱き合ってから,無性に雪乃が恋しくて仕方なくなる瞬間がある。
でもそんな自分に戸惑って,また素直になれないでいた。
あの日以来,雪乃は気遣っているのかキスすらしてくることはなかったのだ。
奏が感じていること,それは不安とかそういう類のものではなくて‥‥。
ただもっと雪乃を傍に感じていたいだけ。
あとは‥‥後ろめたさが‥‥少し‥‥。

「やぁん。くすぐったいよぉ~。かなちゃ~ん。」

雪乃の言葉に奏は我に帰った。
でも今日の機嫌の良さからか,奏は少しだけ行動的だった。

「ん。もうちょっとだけ‥‥。」

そう言って,奏は雪乃の頬にそのまま口付けた。
チュッと軽く音の聞こえるくらいのキス。
あの日以外,以前も以降も,奏からするのは珍しかった。

「さってと。もう寝よっか。」

呆然とする雪乃の顔に,にっこりと上機嫌に微笑んで,奏は雪乃の傍を離れた。
椅子に座ったまま,雪乃は陶然と奏を眺めていた。
心臓がトクトクと速いリズムを刻み始める。奏の行為は,雪乃の心を揺さぶった。
刺激された心は,堰き止めていた想いを少しずつ溢れさせる。

ちょっとだけ‥‥。もうちょっとだけ‥‥。

胸が張り裂けそうに苦しい。辛いわけじゃない。
でも堪え切れない想いが胸いっぱいに広がって,切なかった。
雪乃は何かに引き寄せられるように奏に向かって歩き出す。

「かなちゃんばっかりズルいよ。」

雪乃は寝る準備を始めた奏の背中をそっと抱き締めた。
どちらの鼓動だろう。忙しなくトクトクと脈を打っている音が体に響いている。
思いがけない行為に奏は戸惑いの声を上げるが,構わず雪乃は強く抱きすくめた。

「私も‥‥もう少し‥‥。」

雪乃は鼻先を奏の項に当て,その感触を楽しみながら言った。
むずむずとした何ともいえない刺激が奏の背筋に響いて上擦った声が漏れる。
それを聞いて,また悪戯心が刺激されたのか雪乃は軽く唇でそこに触れながら奏の様子を探っていた。

「ちょっ!!ゆきちゃん?!」
「なぁに?」

慌てて雪乃を振り解こうとする奏の無防備な耳朶を雪乃が隙を見て甘噛む。
すると艶っぽい吐息を漏らしながら奏の抵抗の手は緩んでしまう。

「ふっ‥‥。」

雪乃は漏れる息を噛み殺している奏の髪に手を伸ばして,まだ纏められていた髪を解いた。
ふわっと落ちる髪とともに全身から力が抜けたように奏もその場に崩れ落ちた。
奏の様子を目を細めて確認すると雪乃は一人ベッドに腰掛けた。
悩ましい刺激から解放された奏だったが,解放された今も落ち着かないのか艶っぽい吐息とともに潤んだ瞳は宙を彷徨っていた。
ドキドキしたままの胸を押さえながら,奏をこんな風にした張本人を探す。
恥ずかしさと切なさが入り混じる複雑な感情のまま,部屋のぐるりを眺めると,最後に視線を向けた先に雪乃はいた。
雪乃は少しだけ挑発的な笑顔を奏に向ける。
奏は更に鼓動が早くなるのを感じた。
雪乃は奏を誘うようにそっと手を伸ばした。
奏はそれに誘われるままに手を伸ばした。
そっと触れ合う手は躊躇いがちに触れ合う。
そして雪乃の指を遠慮がちに奏は握った。
その手はいつもにも増して熱くてしっかりと二人を繋いでいた。
誘われるままに奏は雪乃の隣に座る。
でも見つめ合ったままの視線はそらすこともできず,雪乃に捕らえられたままだ。
見つめ合う視線は近くなり,奏は雪乃と額を触れ合わせた。
高鳴る鼓動は収まることを知らず,ただ奏の中に潜む欲求が高まっていることを知らせていた。

「ゆきちゃん‥‥ちゅー‥‥してもいい?」

雪乃からの返答はない。
でもふれあう額は‥‥握り合った手は‥‥とても優しかった。
奏はゆっくりと雪乃に唇を重ねた。自分からするのは初めてではない。
でもこんな気持ちでキスするのは初めてだった。

雪乃に触れたい。もっと‥‥感じていたい。

言い表せられない衝動が奏の中で渦巻いていた。
その衝動は奏を意のままに動かす。
求めるままに雪乃の中に忍ばせた舌先は気の済むまで雪乃を味わおうとしていた。
少しずつ激しさを増す奏の口付けに戸惑うこともなくそれを受け入れた雪乃は高揚する気持ちと裏腹にわずかに影が差していた。

少しの間も逃さず奏は求め続ける。
触れ合う唇は唾液に塗れ,絡み合った唾液を二人で分かち合う。
飲み下しきれない唾液は雪乃の頬を濡らした。
いくら求めても求めきれない。
とめどなく溢れる想いのままに奏は雪乃を求めていた。

どちらからともなく距離をとると二人の間をつなぐ糸が煌めき,途切れた。
熱い溜息を吐きながら奏は雪乃にすがりつくように胸元に倒れ込んだ。

「‥‥ごめん。ゆきちゃん。」

弾む気持ちを落ち着けるためか顔を雪乃の胸に埋めながら投げやりに言った。

「‥‥なんで?」
「‥‥。」

奏に問い返す雪乃だったが奏からの返答はなかった。何かを押し黙るような重い空気が立ち込める。
でもその空気を破ったのは雪乃だった。

「咲ちゃんに‥‥‥許したこと?」

ビクッと奏の体が強張る。
その強張りを解そうとするかのように雪乃は奏の頭を撫で,優しく髪を梳いた。

「分からないと思った?」
「‥‥うん。でも‥‥なんで?」
「さぁ,何ででしょう?」

奏の心配など余所に雪乃はいつもの調子で答える。
それがなんだか気恥ずかしくて,奏は再び顔を雪乃に埋めるのだった。

「本当はね,色々気になることがあったんだ‥‥。」
「そう‥‥なんだ。」

なんかバカみたいだね,あたし‥‥と自嘲的に笑う奏の顔を雪乃は上向かせて自分の前に持ってきた。

「ううん。私のためなんでしょ?いっつも優しいんだからぁ,かなちゃんは。」

今だってバカみたいといいながら奏の目尻には涙が浮かんでいた。
知ったら雪乃が傷つくかもと,そればかりを気にしていた。
それと,雪乃以外の人と関係した事が後ろめたかった。
軽い気持ちじゃない。でも軽率だった自分を奏は責めていた。
雪乃はそっと奏の目尻にキスした。
雪乃は奏をあやすように何度も口付けると,奏の緊張が少しづつほぐれていく。
雪乃が奏の唇にちゅっとキスすると,いたずらっぽい表情で奏に問いかけ始めた。
にっこりと微笑む雪乃の顔に隙はなく,奏はその瞳に見入られたまま逃れることはできなかった。

「咲ちゃんになんていって口説かれたのかなぁ~?」
「なんてって‥‥。」

今度は雪乃が奏に詰め寄る。
じりじりと後退する奏との距離を縮めるようにベッドの隅へ追い詰める。
奏は背中に壁の感触を感じると同時に唇を柔らかい物で塞がれたのを感じた。

「んんんっ!!」

奏に逃げ場はなかった。
今度は雪乃の口付けを一方的に受けることとなる。
しかし,なんと甘美なキスだろう。
さっきの奏の本能的なキスに対して雪乃のキスは慈愛に満ちていた。
丁寧な愛撫は奏の理性を溶かすには十分すぎて,奏は頭の芯が蕩けるように熱くなるのを感じた。
咲夜のキスとも違う。雪乃の官能的なキスに奏は陶酔していた。

「‥‥それで?」

解放された唇からは熱い溜息が零れる。
奏の熱に浮かされたような瞳は雪乃に捕らえられたままだった。
雪乃はまるで暗示でもかけるように奏に微笑みを向け返答を促した。

「咲ちゃんの好きを教えてくれるって‥‥。」
「咲ちゃんの好き?」
「あたし‥‥ゆきちゃんに対する気持ち‥‥分かんなくなってたから‥‥。」

雪乃は少しづつ話し始める奏に相槌を打ちながら頬に額に何度も口付けていった。

「それで‥‥優しくちゅーされて‥‥。」
「私とどっちがよかったのかなぁ?」
「ふぅん‥‥ゆきちゃん‥‥ゆきちゃんのちゅー‥‥好‥きぃ‥‥。」
「ふふふ。かなちゃん可愛い。」

雪乃は奏の好きな雪乃のキスを再びする。
その行き先は唇を離れ,敏感な奏の耳をたっぷり舐ると首筋にかけてそっと触れ合わせる。

「それから‥‥どんなことされたのかなぁ?」

奏の上擦った艶やかな吐息を耳にしながら雪乃は楽しむ様に唇を滑らせる。

「体中にちゅーされて‥‥なんかふわふわした感じがして‥‥。」
「気持ち‥‥よかったんだ。」

雪乃は咲夜がつけたと思われる鬱血の痕跡の上から新しく印を付け直した。
奏は気付いてないようだったが奏が戻ってきた日から雪乃は気になっていたようだ。
しかし雪乃自身も実際にそれを目にしたことなく,当初は半信半疑であった。

「気持ちいいとかじゃなくて‥‥なんか凄く寂しかったから‥‥ゆきちゃんがいなくて ‥‥あたし凄く‥‥心細かったから‥‥。」
「咲ちゃん‥‥優しかったでしょ?」
「ん‥‥体が半分無くなったみたいに不安定だった‥‥咲ちゃんの優しさに‥‥あたし甘えてた‥‥。」

ゆきちゃんから逃げたのはあたしなのに‥‥と上擦った声を響かせるのにそれは物悲しかった。

「あたしの頭の中‥‥ゆきちゃんのことで一杯だったのに‥‥それでも良いからって‥‥。」

服の中に滑り込んだ雪乃の手は奏を包み込むように抱いた。
そっと背筋に沿わせて指先で撫でると首を反らせて奏は艶やかに鳴いた。

「どんな風にされたの?」
「どんなって‥‥ぇ?」
「ちゅーだけじゃないでしょ?他にどんなことされたのかな?」

全身から力の抜けた奏は雪乃に促されるままベッドに横たわった。

いたずらっ子の口調で楽しそうに囁きながら雪乃は優しくキスの雨を降らす。
ゆっくりと奏の服を脱がしながら何度も囁いた。

「ほらぁ,かなちゃん。」
「やだっ‥‥言えないよっ‥‥そんなのっ‥‥。」
「言えないようなこと‥‥したんだ。」
「‥‥っぅん‥‥。」

奏は必死に拒否の言葉を紡ぐが,雪乃の優しい愛撫は次々と官能的に奏を揺さぶる。
雪乃は奏を煽るように奏に刻まれた刻印の痕跡を一つ一つ丁寧に解説を始めた。

「かなちゃんは気づいてないようだったけどね‥‥。」

そっと先ほど口付けた場所に触れる。

「咲ちゃんの残したキスマーク‥‥見つけちゃったんだ。」

びくんと奏の体が弾んだ。

「ほらぁ‥‥ここにも。」

雪乃は奏の鎖骨の傍にあったもう薄くなりつつある跡をペロッと一舐めし,そこもまた少し強めに吸った。
新しく付けられた刻印は鮮やかに奏の肌に刻まれる。

「咲ちゃん,上手だね。ギリギリ服から隠れるところについてる。それに‥‥。」
「‥‥かなちゃんが可愛くなるとこばっかり♥」
「はぅっ‥‥ふっ‥‥。」
「ほらぁ‥‥こっちも‥‥。」

雪乃は次々と痕跡を探り当てながらその跡の上に新しい自分の印を残していった。
指摘した中の殆どは咲夜とは何も関係ないのだが元々気付いていない奏にはわかりようもない。
それに今は誤魔化せない位にはっきりと鮮やかに雪乃の刻印が残されていた。
一際敏感な所ばかりを執拗に舐られ,吸われる度にそこはじんわりと熱くなる。
咲夜の時とは違う。奏は確実に自分が興奮していると感じた。
雪乃に触れられる度に体は喜びに震え,口付けられる度に官能の熱が広がる。
見つめられる視線は優しくて包み込まれるような安らぎを感じた。

「はぁ‥‥ん‥‥ゆきちゃぁ‥‥んっ。」
「咲ちゃんもこんなコトしたのかなぁ?ねぇ,かなちゃん♪」
「あ‥‥ぁ‥‥もっ‥‥言わないで‥‥ゆきちゃん‥‥。ゆきちゃんが‥‥いいっ‥‥も‥ゆきちゃんじゃなきゃ‥‥ダメ‥ダメなんだ‥‥からっ‥‥。」

熱に浮かされたように繰り返す奏は雪乃をしっかりと抱きしめていた。
くすっと微笑みながら,嬉しそうに雪乃は言った。

「かなちゃんてば,ずっと私に"食べて食べて~"って言ってるんだもん。ちょっとは咲ちゃんにも感謝しないといけないのかなぁ?」
「なん‥‥でっ?」
「だってかなちゃんが咲ちゃんと何にもなかったら,かなちゃんの事,こんな風に抱き締められなかったよ?」

もう,悔しいなぁと雪乃は顔をくしゃくしゃにして奏に笑みを見せた。
咲夜がいなければ奏は自分の気持ちすら分からなくなっていたのだ。
お互いに見つめ合うと,どちらからともなく,くすっと微笑み合った。
穏やかな笑顔がお互いの不安を埋めていく。そして素直な気持ちを言葉にする。

「っん‥‥抱いてよ,雪ねぇ。あたしはゆきちゃんが一番好き‥‥大好きなの。」
「うん‥‥私もかなちゃんのこと大好き。一杯ちゅーしたいし,もっと沢山かなちゃんのこと感じたい。」
「いいよ‥‥あたしはゆきちゃんだったら‥‥ううん,あたしもゆきちゃんと同じ。ゆきちゃんのこと‥‥いっぱい感じたい‥‥。」

震える奏の唇に雪乃のそれが重なる。触れ合う唇は温もりと気持ちを伝え合う。
とき解された心は柔軟にお互いを包み込み‥‥。

「気持ちいい‥‥。」

奏は胸一杯に広がる充実感に酔い痴れていた。
それまで感じたことのないような一体感。
優しい温もりに包み込まれ慈しまれる悦びを素直に感じていた。

「かなちゃんのエッチ~。」

雪乃は奏の胸の膨らみを大事に撫でながら,色付いた先端に口付ける。

「はぁん‥‥そういう意味じゃ‥‥ぁ‥‥ふぅん。」

感じるままに奏の口からは甘く艶やかな声が漏れた。

「ん‥‥わかってる‥‥。わかってるよ‥‥かなちゃん‥‥。」

何度も奏の名を囁きながら雪乃は奏の胸を優しく揉み解し,丹念にそこを舐る。
奏から漏れる喘ぎは少しずつ激しさを増す。
体中に広がる心地よい刺激が奏の心中をくすぐった。
奏の声が聞こえる度に雪乃は胸が熱くなる。
滑るように奏を撫でる手はひどく敏感でそれだけで頭の奥が熱くなる。
こんな気持ちを,どう表現したらいいのだろう。

「かなちゃん‥‥好き‥‥。」

求められることが嬉しくて,受け入れてくれることが幸せで‥‥。
二人の息遣いと衣擦れの音が部屋を支配する。
サラサラと雪乃の髪が奏を弄るとまた熱い吐息が漏れた。

「ゆきちゃんも‥‥脱いでよ‥‥。」
「もぅ。恥ずかしがり屋さんなんだからぁ~。」
「そっ,そんなんじゃないよ。ただ‥‥。」
「ふふっ。こうしたいんでしょ?」

肌けた胸を奏に押しつけるように雪乃は肌を重ねる。
熱く火照っているのをお互いに感じ,愛しさがこみ上げてきた。

「これで一緒だよ♥」
「うん‥‥‥。」

全身で感じる温もりが心地いい。奏は求めていた温もりを得て,満足そうな笑顔を見せた。
しかし雪乃は,頬を高揚させ奏を驚かせるようなことを言ってのけた。

「それじゃ,私も人に言えないようなことぉ,かなちゃんにしちゃおっかな?」
「ひぇっ?あっあぁ‥‥ちょっ,ちょっと待って‥‥,待ってってばぁっ。」

するっと,奏の衣服を取り去り,全裸にしてしまう。
奏の足の間に入り込み,雪乃はそっと奏のふとももに指を這わせ始めた。

「どこまでされたの?」
「‥‥どこって?ふぁ‥‥やぁだっ‥‥そんな風に触んないでっ‥‥っくぅ‥‥ん。」
「教えてくれるまで,放してあげな~い♥」
「そんなの‥‥言えない‥‥よぉ。」

ゆっくりとせりあがっていく雪乃の指先を感じながら,奏は鼻から抜けるような甘い声で呟く。

「まだ触ってないのに‥‥ほらぁ‥‥すごい‥‥。」
「ぁ‥‥見ないで‥‥。」

問答無用に開かされた両足の付け根がもう十分に濡れているのが見て取れた。
ヒクヒクと震えながら,そこは何かを求めているようだった。

「ねぇ,かなちゃん。どんなふうにされたのか,かなちゃんがしてみせて♪」
「っ!!‥‥‥もしかして‥‥やっぱり怒ってるの?」

あまりの雪乃の言動に,奏の体が強張る。
すまなさそうな元気のない声が,雪乃のもとに届いた。

「ううん。違うの。‥‥‥う~ん。やっぱり怒ってることにしとこっと♪」
「‥‥‥?」

雪乃はくいっと奏のふとももを持ちあげ,両膝を開くような格好に持っていった。
奏は頬をひときわ赤く染めるも,抵抗する様子はなかった。

「かなちゃんこんなに可愛いんだもん。‥‥私,ちょっと悔しいかな?」
「‥‥ゆきちゃん。」
「だからぁ,かなちゃんが私の言うこと聞いてくれたら,機嫌♥直してあげる♪」

ぺろっと舌を出して,奏に微笑みかける雪乃に奏は見惚れてしまった。
自分のすべてを受け入れてくれる雪乃に感謝しつつ,思案する。

「ほんとに,ほんとに‥‥その‥‥したら‥‥許してくれる?」
「うん♪」

邪気のない笑顔で答える雪乃に,ため息を吐きながら奏はじっと雪乃を見つめた。
魅入られる瞳はまっすぐで,胸の奥底まで見透かされているみたいだ。
奏は自分のしようとしていることに顔が紅潮してくる。
しかし,雪乃の視線に隙はなく,期待の色に染まっていた。
おずおずと,指を伸ばし,奏はそっと指先を自分の愛液で濡らした。
その動きひとつひとつも逃さず,雪乃に見られている。
奏は体の奥の方がずくっと疼くのを感じた。
そしてまたそこは新たな体液で満たされていく。

「あっ‥‥‥。」

少し触れるだけで,そこはとても熱くて信じられないくらい敏感になっていた。

「っぁ‥‥ぁん‥‥。」

濡らした指先を,前後に動かして指をそこに馴染ませる。
柔らかく弾力のある秘襞がするりと擦れるたびに,電気のような刺激が奏の背筋を走った。

「はっ‥‥はぁっ‥‥。」

指先を秘芯に向けて移動させると,指先にコリコリとした感触を感じた。
しかし,それは冷静ではいられないくらい強い官能をもたらした。

「そこが‥‥いいんだ‥‥。」

雪乃は顔を紅潮させ,奏を見守る。

「咲ちゃんにもしてもらったのかな?」
「ふっ‥‥ん‥‥したっ‥‥されたっ‥‥でもぉ‥‥。」
「でも?」
「全然違っ‥‥こん‥なっ‥‥こんな‥にっ‥‥。」
「気持ちいいの?かなちゃん,すっごくエッチな顔してるよ?」
「はぁ‥‥言わないでぇ‥‥いっちゃ‥やぁっ‥‥ん。」

雪乃の言葉とともに,指の動きは激しさを増し,奏は艶やかに体をくねらせ喘いでいた。

「ダメぇ‥‥ゆきっ‥‥なんっ‥‥くるぅ‥‥。」
「気持ちよくなるとこ‥‥見せて。」
「ふぅ‥ん‥‥見て‥‥て‥‥もっ‥‥ダメっ‥‥はぁ‥‥んんんっ!!」

びくびくっと体を震わせ,甲高い声をあげて奏は弾けた。
ぴくぴくと震える体と,激しい呼気の音が雪乃の前に広がった。

「ね‥‥私も触っていい?」

言うよりも先に,雪乃は奏に覆いかぶさるようにして抱きながら,片手を奏の下腹部へ向けた。
脱力して無防備な奏は,何が起きたか分からないという表情をしていたが,新たに湧き上がる刺激に,何とか状況をつかんだ。

「もっ‥‥今イったとこだからっ‥‥っ!」
「だってぇ,かなちゃんとっても可愛いんだもん。我慢できないよぉ。」
「ちょっ!我慢てっ何よぉ。」
「今度はぁ,私がかなちゃんのこと気持よくしてあげる♥」

雪乃はたっぷりと濡れた奏の秘所を指でなぞり,ぷくりと膨れた秘芯をそっと撫でた。
そこはよほど敏感になっているのか,触れるたびに奏は甲高い声をあげて喘いでいた。
その様子を雪乃は目を細めて楽しむと,今度はさらに奥を目指して指先を進めた。
溢れる泉の源泉に向け,弾力のある肉壁を分け入っていく。

「ふぅん‥‥んっ‥‥んぁっ‥‥。」

眼尻に涙を溜め,雪乃を見つめる奏の顔は艶やかで,雪乃はそっと唇を寄せた。
涙を舐め,唇を重ねると,同時に指先を奏の奥へ深く沈めた。
濡れそぼったそこは熱くて,雪乃の指をきゅっと締め付ける。
唇を塞がれたままなので,奏はうめき声を洩らす以外にできることはなかった。

「どう‥‥かな?こんなこともされたかなぁ?」

奏の中に指をなじませると,雪乃はやっと奏を開放する。
激しく息を吐きながら,なにかに耐えるように奏は言葉を紡いだ。

「っ‥‥ない‥‥雪ちゃんが‥‥初めて‥‥っやぁ‥‥そこっ‥‥あんまり動かさなっ‥‥。」
「ここがいいの?」

コクコクと首を振り,奏は答えた。もう声は言葉にならない。
奏はまだ経験したことない激しい昂ぶりを体の奥底に感じていた。

「今,かなちゃんの中に私の指が入ってるよ。すっごく熱いの。」
「っ‥‥どうにかぁ‥‥なっちゃぅ‥‥よぉ‥‥。」
「大丈夫,お姉ちゃんが一緒にいるから。大丈夫だよ。」
「はぅっ‥‥雪ちゃっ‥‥ゆきちゃぁ‥‥ん!!!!」

奏の頭の中が真っ白になっていく。
でもしっかりと雪乃に抱きしめられている感覚だけははっきりしていた。
奏ももう二度と放さないといわんばかりにきゅっと抱きしめると,
荒れ狂う快楽の波に身を任せ,意識を解き放っていった。

「かなちゃん,イジワルしてごめんね♥」

奏を横たえ休ませると,雪乃は奏の頭を撫でながらそう呟いた。
もしかしてあの時言わなければ,こんなに奏を苦しませることもなかったのにと雪乃は後悔しない日はなかった。
でも,雪乃は言った。そして奏はそれに答えた。
今日もまた,奏を苦しめたことを雪乃は後悔していた。
でも,今雪乃の目の前には奏の無防備で安らいだ顔が小さな寝息を立てている。

「私にはね,かなちゃんのいない生活なんて考えられないんだよ?」

あどけない奏の頬をつついて,雪乃は奏を抱き寄せた。
二人はお互いに求めたぬくもりに包まれて眠りにつく。
新しく繋いだ二人の絆を大事に育てていくために。

目覚めたら,きっと一番の笑顔を見せられる。
一番大切なキミのそばで‥‥‥。


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最終更新:2010年11月11日 00:13
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