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SS-24

悩みのタネはキスマーク

◆yuri0euJXw


寮の風呂は狭い。
いや人数の割に狭いだけで広さ的にはそんなに狭くないのかもしれない。

「かなちゃ~ん。お風呂上がったらアイス食べよ~♪」
「そうだね~。ハーゲンダッツの新しいの出てるみたいだし。」

あたしは寮生の喚声が響く浴室のざわめきに負けないくらいに隣に座る雪ちゃんと声を張り上げながら喋っていた。
髪を洗いながら一息吐く。
髪の長さは同じくらいなのに同時に洗い始めてもあたしの方が洗い終わるのは早かった。
雑なのかなと思いながらふと雪ちゃんの方を見ると,ちょうどうなじが露わになっていた。
なめらかな曲線に一瞬目を奪われたけど,慌てて頭を振り払った。

どっかのエロおやじかっ!あたしはっ!

ぶんぶんと頭を振るも,見慣れたはずの雪ちゃんの姿に何か違和感を感じた。
改めて雪ちゃんの襟足をよくよく見つめた。
湯気で見間違えた訳じゃなさそうだ。
よくわかんないけど赤く鬱血したような跡が隠れるように首筋についているように見えた。

「‥‥だっから~,見えるとこに付けるなんてサイテーだって。」

誰かわからないけどそんな会話が耳に入った。

「キスマークなんて見えるとこに付けられてもこっちが迷惑よ!つけるならもっとこう‥‥。」

裸になる場ではこんな話題も珍しくない。

「うなじとか髪や服で隠せるとこの方が付けられた方も嬉しいもんよね~。」

やだ~♥もぅ~♥という何人かの声と共に水しぶきが飛んできた。
女子高ではよくある会話。女子高でなくても別によくある会話なんだろう。
いつもなら聞き流したり一緒に騒いだりするのに,今日はそうはいかなかった。

雪ちゃんにうなじの跡の事を聞こうと途中まで伸ばした手をあたしは引っ込めた。
別に聞いちゃいけないとかそんなことない。
でも,なにかがあたしの胸に引っ掛かって,今その問いを雪ちゃんに投げかける気にはなれなかった。

「ん~,どうしたのぉ?ぼ~っとして‥‥。」

気がついたら雪ちゃんはもう髪をタオルで拭いていた。

「煮えちゃいそうだから先に出てるね。」

そう言い残すと雪ちゃんはこの最高に人口密度の高い浴室から先に出ていった。
見慣れたはずの雪ちゃんの姿を見つめ,無意識のうちに視線はうなじに集中する。
眺めていた後ろ姿がドアで隠れると,あたしは雪ちゃんに置いて行かれたことに気がついた。
あたしは焦って転びそうになりながら,急いで雪ちゃんの後を追いかけたのだった。

結局雪ちゃんが「アイスアイスぅ~」と騒ぐので襟足の事は聞き損ねてしまっていた。

あるわけないし‥,でも‥‥やっぱり気になる。
普通じゃあんなとこにあんな跡つかないもんね‥‥。

昨日もその前もなんかここんとこ,雪ちゃんとは部活やら何やらですれ違ってたっけ。
あたしも色々やることが重なってて結局一緒にいたのはごはん食べるときと寝るときだけ。
あんなもの一つでこんなに動揺してさ‥‥。
なんかちょっとフラストレーション溜ってるのかな?
あたしは胸にかかったもやもやのせいで折角食べさせてもらったアイスの味も良くわかんなかった。

久しぶり‥‥なんだけどなぁ‥‥。

雪ちゃんの満面の笑みを恨めしく思いながら軽くため息を吐きたい気分だった。

◇◆◇

色々お喋りしながら二人は眠りにつく。

あぁ~,こうやって寝るのが一番気持ち良く眠れる‥‥‥‥‥‥いつもなら。

そう。いつもなら。でも今日はそんな気分じゃなかった。
しかも例の事も気になって眠れない。
奏はしばらくの間寝ようと努力したが,目は覚めたまま眠れずじまいだった。
隣からは雪乃のすやすやという穏やかな寝息が聞こえてきていた。
奏はこそっと起き上がって,雪乃が眠っているのを確認すると深くため息を吐いた。

「‥ぅん‥かなちゃんはぁ‥‥わたしの抱き枕なのぉ‥‥。」

一体どんな夢を見てるのやら‥‥。
雪乃は寝言を言いながら寝返って奏に背を向けた。
するっと雪乃の髪が流れ落ち,ちらちらと白い首が髪の隙間から浮かび上がる。
そう言えば赤くなったところをきちんと見なかったな?と奏は風呂場での情景を思い出す。
きっと風呂場で変に意識しただけだ,いま改めて見れば何かが擦れたとかそんな傷に違いない。
奏はそっと雪乃の髪をかきわけ,その跡を再び確かめたのだった。

赤く擦れたようなその跡は,奏を困惑させる。それもそうだ。

キスマークなんて見てわかるか!‥‥経験もないのに。

奏は心の中でそう叫びながら,そっとその跡に触れた。
むず痒そうに雪乃は反応するが,穏やかな寝息に変化はなかった。

「‥‥そうだよね。‥‥どうかしてるよ‥‥あたし。」

不安を隠せない表情のまま,奏は雪乃に触れ続けた。
眠ったままの穏やかな寝息は時々,鼻を抜けるような甘い声に変わる。

「あ‥‥‥やばっ‥‥‥。」

奏はどきどきと胸が熱くなるのを感じた。
急いで手を引っ込めると,雪乃はもぞもぞと寝返りを打った。
無垢な寝顔が奏に向けられる。
柔らかそうな唇に奏は釘付けになってしまう。

「‥‥‥雪ちゃんが‥‥いけないんだからねっ‥‥。」

どうしようもなく,触れたい衝動に駆られた奏は,そっと,できるだけそっと雪乃を起こさないように気を使いながら,頬を染めてそっと雪乃に顔を寄せた。
頬にそっと触れる。唇からは雪乃の柔らかさとぬくもりが伝わってくる。
離れるとなんだかさみしかった。
奏を魅惑する桜色の唇は,無邪気に奏を誘っているようだ。

「‥‥ちょっとだけ‥‥ちょっとだけだからね‥‥。」

雪乃に言い訳をするかのようにつぶやくと,奏はより一層
顔を赤くして雪乃の唇に自分のそれを重ねた。
触れるだけの重なる唇は,軽く触れ,すぐに離れるはずだった。

「ふぎゅっ!むぅんんんん~。」

しかし,奏の予想に反して伸ばされた雪乃の両腕に抱え込まれたまま奏は身動きが取れなくなってしまう。
雪乃に覆いかぶさっていたはずの奏は見事にひっくり返され,今度は雪乃が奏を押さえつけるような体勢になっていた。
上から覗き込む雪乃には,奏が荒い息をつきながら驚きに溢れた表情がよく見えただろう。
その顔を雪乃はにっこりと微笑み返し,いたずらっぽく言うのだ。

「かなちゃ~ん。現行犯だよ~♥」

何をかなんて言うまでもない。
恥ずかしそうに紅潮した奏からは言葉も出ず,再び唇を奪われるのだった。
雪乃からの長くて深いキスに,もがきながら抵抗していた奏だったが次第に抵抗の力も弱まっていった。
雪乃の味と匂いと,絡みつくような舌の感触に籠絡された奏は,いつしか自分からも雪乃を求めるようになっていた。
雪乃は奏の舌をしゃぶりながら,名残惜しそうに離れた。

「眠れないのぉ?か~なちゃ~ん。」

雪乃は奏の顔に軽くキスしながらそう尋ねる。
奏は心地よいキスの雨に身を委ねながら,恐る恐る雪乃に尋ねた。

「ん‥‥ゆきちゃんさ‥‥首んとこ‥‥どうしたのかなぁって思って‥‥。」
「首?」

雪乃は奏に馬乗りになったまま,自分の首を手で触れながら考えた。
そしてしばらく考えると,奏に質問で返した。
奏はキスの余韻にまだ陶然としていて,雪乃の表情の変化を感じることができなかった。

「首‥‥どうかなってた?」
「どうって‥‥その‥‥あ‥‥赤く‥‥。」
「ふふっ‥‥キスマークかと思った?」
「ふぇっ!!そうなの?!」
「さ~♥どうでしょ~?」

奏はにやにやとする雪乃の表情からそっと目をそらし口を尖らせて言う。

「だって‥‥。でも‥‥よくわかんないし‥‥。」

ぶつぶつと奏は言い訳を並べてみる。
すると雪乃は,あっけらかんとして奏に解決策を提示した。

「それじゃぁ,付けてみたら?」
「はいっ?!何をですかっ?!」

唐突な雪乃の物言いに奏は声がひっくり返る。

「だぁかぁらぁ,‥‥‥キスマーク♥」

雪乃の提案に,奏は焦った。
焦った勢いでベッドの上に起き上がった奏に,雪乃は髪を持ち上げどの辺にあるのかと奏に尋ねた。

「あ‥‥うん‥‥その辺‥‥。あっこれこれ。」
「このままでいい?それとも寝た方がいい?」
「あ‥‥えと‥‥そのままで‥‥。」

だんだん激しく奏の心臓は拍動を繰り返す。
雪乃はウキウキとした声で奏を促す。
促されるままに奏は雪乃に手を添えた。
徐々に縮まる距離に反比例するように顔が熱くなる。
吸い込まれそうな雪乃の白い項に引き寄せられるように奏はそっと触れた。
そして少しだけ強めに吸ってみる。

「あれ?付かないよ?雪ちゃん。」

そう言うと,奏は疑問符を飛ばしながら雪乃に尋ねる。

「もっと強くないといけないんじゃない?」
「ふ~ん,そうかも。」

じゃあもう一回と言って奏は再び雪乃の首筋に口付けた。
雪乃の口からわずかに声が漏れた。
でも一生懸命な奏にはそれは届くことはなかった。

「あっ!今度はついた。」

気になっていた傷のすぐ近くについたキスマークは似ても似つかないものだった。

「どう?」
「ん‥‥気にしすぎだったみたい。全然違うよこれ。」

ホッとしたのか,奏はうれしそうに雪乃に伝えた。
雪乃はじっと奏を見つめると,ドキッとするような視線を奏に向けた。
その視線にとらえられたまま,奏も雪乃を見つめる。

「これで私‥‥かなちゃんのモノだね♥」
「なんで?」
「だってぇ~。これこれ♥」

雪乃はにこにこして首筋の跡を指差す。

「えっ?!ええっ??‥‥‥はっ!!だってそれは雪ちゃんがっ!!」
「私のせい?」

しんみりと,さみしそうに雪乃は言う。
奏は急に罪悪感を感じ,あたふたと慌てふためいて言った。

「そっ‥‥そんなの無くったって‥‥あたしは雪ちゃんのこと‥‥その‥‥好きだしゅ。」

勢いあまって噛んでしまったのはご愛敬だ。

「‥‥‥かなちゃんは?」

きゅっと手を握って子犬のような目を向ける雪乃に奏は続きを言う。
言わなくても分かってると思ってた。
でも言わないといけない時もあると感じた。

「あたしは‥‥あたしだって‥‥雪ちゃんのものだよ‥‥雪ちゃんだけなんだから‥‥。」
「うん‥‥。」

奏にそっと近づいて雪乃は触れるだけのキスを奏にした。
啄ばむように何度も繰り返される。
心地よいぬくもりに身を委ねるように奏はやがてベッドに身を沈めた。

◇◆◇

「やきもち?」
「ん?」

雪ちゃんとの優しいキスの間に交わされた言葉。
あたしが雪ちゃんに聞き返すと,ニヤついた雪ちゃんの顔が目の前にあった。

「そんなんじゃ‥‥‥‥‥‥ちょっと気になっただけ。」
「じゃあ,本当にキスマークだったらどうしたの?」
「ふぅっ‥‥そんなっの‥‥考えられないっよぉ‥‥。」

さわさわと動く雪ちゃんの指の動きと,ピンポイントに攻めてくる唇の愛撫があたしの思考を鈍らせる。
こうして触れ合っていると不思議。
今まで漠然と感じていた不安なんか吹き飛んでしまうみたい。

「最近‥‥忙しかったから‥‥かな?」
「ふふっ‥‥溜ってるんだ‥‥‥。」
「ななななな何が!!!何がよっ!!」
「ス・ト・レ・ス♥」

くすくす笑いながら雪ちゃんはあたしの耳を甘噛みしてくる。

だめだよっ,あんなこと言うから‥‥余計に感じちゃうじゃない。

久々に感じる雪ちゃんの優しい愛撫に全身が蕩けそうになっていた。
不意に耳元で雪ちゃんが囁く。
夢現でそれを聞いていたら,すぐに現実に引き戻された。

「かなちゃんのことも調べてあげるね♥」
「はい?!ないっ‥‥ないよ,そんなのないって‥‥ありえないっ‥‥くぅ‥ん‥‥。」

唇で触れるだけだったはずの愛撫は,少しだけ強くて今まで感じたことのの無い刺激だった。

「無いなら,付けてあげる。私の印。」
「ふぁっ‥‥だめぇ‥‥。」

感じるところ,少しだけ強く吸われるとジンジンしたみたいに熱くなってく。
どんどん熱くなってく。‥‥焦げちゃうよぉ。
雪ちゃんはなんだか今日はすごく積極的。でも‥‥すごく優しい。
じりじりと焦らすような愛撫に,もうすっかり蕩けさせられていた。

「はぁ‥‥あっ‥‥あつぃ‥‥よぉ‥‥。ゆきっ‥‥ちゃ‥‥ぁん。」
「そんなにシたかったんだ。」
「ちがっ‥‥違う‥‥よ‥‥っん‥‥そうじゃなくて‥‥。」
「私は‥‥かなちゃんと早くこうしたかたんだけどなぁ?」
「ふぇ?ぅんんっ!あ‥‥あしっ‥‥あしっ‥‥。」

こんな体中ジンジンしてる時にそんなところ触らないでよぉ‥‥。

あたしの足の間に割って入っている雪ちゃんの膝が,焦らすようにあたしの大事なところを撫でるように擦っていた。
体中を強烈な快感が走る。
それと同時に,どうしようもないくらいの飢餓感。
もっと,もっとして欲しくてじれったくて堪らない。

わかんないよ。もう何がなんだかわかんない‥‥頭の中ぐちゃぐちゃ。
な‥‥なんで今日‥‥こんなに感じちゃうの?
あうっ,それに‥‥なんで今日の雪ちゃんはこんなにエッチなんだよ~!!

「今日のかなちゃん,すごくエッチな顔してる♥」
「やっぁ‥‥ん‥‥そんなっ,雪ちゃんだってなんでそんなノリノリ‥‥。」
「だっからぁ,言ったでしょ?すっごくシたかったって。かなちゃんからちゅーしてきた時は,もうホントどうしようかと思っちゃった♪」

あぁ,あたし‥‥なんであんなことに悩んでたんだろ。
バカみたい‥‥ダメダメだわ,あたし‥‥。

心配事が心配事でないことに今更気付くなんてやっぱりバカだ。
でもまたきっと繰り返す。それでまた思うんだ。

あぁ,あたしやっぱり雪ちゃんのこと好きなんだって。
それで思い知るんだ。雪ちゃんもあたしのことすっごい好きなんだなぁって。

あたしは,嬉しそうににこにこしている雪ちゃんに向かって最高の笑顔を向けた。

「もう,雪ちゃんエッチ過ぎ。」
「それはかなちゃんもでしょう?お風呂場でじっと私のこと見つめてたの知ってるんだから~。エッチな顔して。」
「そっ,それは別のこと考えてただけで‥‥って‥‥なんで知ってんのよ!ってかヒドイそれ!!」
「はいはい,怒んないの。かなちゃんが好きなとこ一杯してあげるからぁ♥」
「えっ‥‥ちょっ‥‥待って‥‥待ってってばぁっ!!」

雪ちゃんは手際よくあたしの服とスパッツを脱がせると,もう十分に潤っているあたしの中心へ触れる。

「こんなに可愛いかなちゃん知ってるの‥‥私だけだよね。」
「ふぅ‥‥ん。そう,そうだよ。他に誰がいるのよっ?」
「‥‥かなちゃんのイイところ,一杯知ってるのも私だけだよね。」
「他に‥‥誰が知ってるのっ‥‥よ。はぁ‥‥そんなこと。」

雪ちゃんはあたしの一番感じるところに触れる。
これをされて,耐えきれたことなんて一回もない。

「かなちゃん。だ~い好き♥」

次に目覚めた時には,あたしはその後のことをほとんど覚えていなかった。
でもずっと囁いてくれていた雪ちゃんの声だけは覚えていたみたいだった。
ただ,体に感じるこのヒドイ倦怠感は‥‥‥。
きっと,隣で呑気に寝ている奴が犯人だということだけはわかっていた。
そして,起き上がって幸せに浸るあたしをどん底にたたき落としたのは‥‥。

「雪ねぇの~~ばか~~!!」

あたしはしっかりとつけられたキスマークの数々に途方に暮れた。
あぁ,お風呂どうしよう。

私はこの前の娘達と同じ悩みを,バカ姉のために抱かなくてはならない羽目になってしまったのだった。
どう責任取らせようか?
心配とは裏腹に,あたしは少しだけニヤケながらもう一度呑気な姉の隣で眠りについた。



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最終更新:2010年11月11日 17:15
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