慧音×ゆっくり系6 ゆっくり奇々怪々(中)


※これはfuku2324.txt「ゆっくり奇々怪々(上)」の続きです。
独自解釈・設定ありです。
長いので注意。




翌日、鶏小屋には人だかりが出来ていた。
10匹からなる鶏達が、血と羽を残してこつ然と消えていたのである。
何かに喰い散らかされたのは明白だ。
「け、慧音様、これは・・・。」
男の顔は蒼白だ。後ろに控える妻、村長も険しい表情。
慧音は鶏小屋の中に入り、一通り惨状を見渡すと、言った。
「・・これがもし、妖怪や熊の仕業だというのなら、網や戸が破られているのが
普通だ。しかし、見たところこの小屋には目立った損傷は無い。あるとすれば」
と、鶏小屋の仕切りの接地部分を指差す。
そこはわずかに土が掘られており、隙間が空いていた。
「犯人が狐ならばこの穴があれば納得できる。だが、
狐と言えど一晩で鶏を10匹も腹に入れることは出来ん。」
「つ、つまり・・・。」
男の顔色は蒼白を通り越して土気色だ。
「うむ、君の言ったことは間違いでもなさそうだ。」



その後、慧音は村長に村人を広場に集めるよう頼んだ。
そこで自身の口から、村長の息子を襲い、鶏を食い荒らしたものが
同じモノによる仕業で、それはゆっくりである可能性が高いことを説明した。
当然、村人達は戸惑った。
この村は慧音が驚いたように、ブリーダーを筆頭としてゆっくりとの共存関係が
うまく成り立っていることもあり、ゆっくりへ好意的な見方をする者が多い。
毎日熱心に働くれいむやのうかりん達の姿を見ていればなおさらだ。
「・・・・ゆぅ、残念だけど、お兄さんみたいな人達に色々教えてもらってない
ゆっくりたちの中には、人のものを盗ったりする悪いゆっくりはいるよ。」
ざわつく村人たちの中で、ブリーダーに抱えられたれいむが発言する。
「・・・私も、畑を荒らされた。」
続いてブリーダーの足下にいるのうかりん。
「でも、鶏さんを食べちゃったり、人間に噛み付くゆっくりにはまりさ達会ったことないよ。」
最後にまりさが発言する。三匹の発言は村人達の気持ちを代弁していた。
「・・私としても、ゆっくりがこのような事を起こしたとは
考えたくない。お前達のようなゆっくりを見ていれば、なおさらだ。」
そう言って、ゆっくり達を勇気づけるように笑いかける。
「だが、この状況を放っておく訳にもいかん。よって、本日からこの
村を中心とした一帯を調査したい。村の若衆、協力してくれるか?」
そういうことならばと、続々と手が挙がっていく。
「慧音様、僕も一緒に行きます。」
ブリーダーの青年も手を挙げる。
「いいのか?」
ゆっくりを殺すことになるかもしれないんだぞ、と言いかけて、やめた。
ブリーダーという仕事はゆっくりをただ愛でて育てるだけの職業ではない。
時には悪いゆっくりを懲らしめ、場合によっては駆除するという役割も持っている。
青年の目は真剣だ。のうかりん達の姿を常に見ているからこそ、
この件に対する気負いも人一倍強いのだろう。
そこまで思い至った慧音は言葉を引っ込めた。
「考えれば、村でお前ほどゆっくりに詳しい者はいない。頼りにさせてもらうぞ。」
「ええ・・・れいむ達、行ってくるよ。」
「ゆっ!ゆっくり気をつけてね!!」
こうして、慧音、ブリーダーの青年を先頭に、調査隊は出発した。




「・・・・見て下さい慧音様!!ここにも。」
調査隊は男が襲われた場所よりも森側に来ていた。
叫んだ若衆の一人が指差すのは、一本の木の根元だ。
そこには、何かに齧られたような傷跡がついている。
「ここにもか。」
出発し、襲われた現場に着いたあたりから、木にこのような傷跡がつき始めた。
「熊などは自分の縄張りの印として爪痕を残すらしいが、
これは明らかに爪痕ではない、強いて言うならば歯形だ。」
爪が使える動物ならば、わざわざまずい木に噛み付く事は無い。
だが爪が使えないモノだとしたら?
そう、例えば、ゆっくりのような。
ここにきて、犯人はゆっくりであるという確信めいたものが慧音、若衆達にはあった。
青年も、険しい顔で現状を分析している。
「・・・可能性は高いでしょうね。」
「だろうな。では、もっと奥に行こうか。」




進んで行く慧音の前に、茅葺きの屋根が見える。
「あそこにはどなたか住んでおられるのか?」
青年に問う慧音。
「ああ、あの家にはおじいさんが一人で住んでいますよ。
ブリーダーとしての先輩にも当たる方で、仕事を始めた
頃はとてもお世話になりました。
・・・あまり人付き合いが得意な方ではないですから、この
場所に一人で住んでいるんですよ。あの方に聞けば、
今回の事に関して何かわかると思いま」
「待て!!」
「え?」
「気づかないか?・・・このにおいに。」
「・・・・・これって・・・!」
家から漂ってくるにおい。
それは何かが腐ったようなにおい。
「急げ!!」
慧音は家に向かって走り出す。
続いて走り出す青年達。
家が近づいてくる。畑を突っ切る。
雑草が伸びている。おかしい、畑の世話を怠るような人じゃなかった!!
青年の鼓動は早鐘のようだ。走っているからではない。
慧音は戸まで辿り着き、施錠されていない戸を思い切り開いた。
青年は中に入ろうとして、慧音の背中に阻まれる。慧音が入り口で立ち尽くしていたからだ。
「先せ・・・・い・・・・?」
見てしまった。
荒らされた家具。
腐りかけた食糧の残骸。
その真ん中には。
「・・・・う、うげええっ!!」
先頭二人の間から中を見た若衆が、口を押さえてよろめく。
「何という事だ・・・。」
部屋の真ん中には、腐敗し、所々が欠損した死体が転がっていた。
「あ・・・・そんな・・・・。」
青年は思わず床に膝をつく。
慧音はかがみ込み、青年の方を軽く抱く。
「・・・すまん、だがこの状況だ。このご遺体は、この家の方か?」
「・・・・・はい、服装から見て間違いありません。」
「わかった・・。」
慧音は遺体に近づくと、手を合わせた。
と、どたどたと誰かが走る音が家に近づいてくる。
駆け込んできたのは、万が一の時に備え村に残った若衆の一人だった。
息を切らし必死な様子の彼に、慧音が振り返って尋ねる。
「どうした?」
若衆は絞り出すように言う。
「大変です・・・・村に・・・・化け物が・・・!」




村は、若衆の呻き声で満たされていた。
ある者は木に叩き付けられ。
ある者は腕や足を齧られ。
皆が身動きが取れないほど痛めつけられていた。
その中心には。
「ゆっへっへ・・・・ありす、やっぱりにんげんなんてたいしたことないんだぜ」
「そうね、とかいはのしたでれいぞくするべきいなかものたちなんてしょせんこんなていどよ」
人間の腰までの大きさのゆっくりまりさとありすが、倒れ伏した若衆の一人の背中にのしかかっていた。
「う・・・う・・・。」
「ゆ!!みてありす、このにんげんうーうーうなってるぜ!!」
「まるであのはねつきぶたまんみたい。おお、ぶざまぶざま!!」
そう言って飛び跳ねながら、大口を開けて笑う二匹。
大きく開いた口からは、血で薄汚れた牙が。
よく見れば、その体は筋肉組織のようなものが表皮の下にあることを
伺わせる隆起があり、更にその瞳は爬虫類のように縦長だ。
ただのゆっくりではない。
いや、もはやゆっくりと呼んでいいのか。
ここにいるのは、人を喰らう妖怪と何ら変わりのない存在であった。
「・・・・最悪だ、こんな時間に村まで来てしまうなんて・・・。」
齧られた肩を押さえながら、村長の息子は二匹の前にいた。
調査隊が行ってしまってる時間である事が災いした。村に残っている男でかろうじて
動けるのはもはや彼一人。女子供、老人は絶対に家から出ないように言ってある。
「まりさ!!あいつこのあいだまりさがかみついたにんげんだよ!!」
「おじさん、せっかくにがしてやったのに、またたべられにきたの?
ばかなの?しぬの?しなすよ?ユッヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘッ!!」
「で、出て行け!!化け物ども!!!」
「これだからいなかものは!!わきまえなさいよ」
「おじさん、いますぐにくをもってくるんだぜ。おんなやこどものにくがいいんだぜ!!
さもないと、おじさんのあたまからばりばりかじってやるんだぜ!!」
「とかいはにふさわしいきのきいたむすめをつれてきなさい!!それで、すっきりー!!!
させてあげる。ありすのぺにぺにでよがりくるわせてアゲルゥゥッ!!」
ゆっくりがただ食糧を要求するのでなく、女子供を喰い、犯そうとしている。
その事実に、男の背筋にぞわっとした感覚が走る。
「そ、そんな要求は、飲めない!」
男は今にも逃げ出したい気持ちを抑え、手にしたゆっくり撃退用の棍棒を握り直す。
「じゃあしかたないぜ、おじさんからむしゃむしゃしちゃうんダゼェェェ!!」
飛びかからんとするまりさ。


「ゆ、まってまりさ!!」
「ゆぅ・・・?」
と、二匹の動きが止まる。
「お前・・・。」
男と二匹との間に、のうかりんが現れた。
男を二匹から守るように手を広げ、二匹を視線で射殺さんと睨みつけている。
「まりさ!!こののうかりんは!!」
「おもいだしたんだぜ、あのくそじじいのところのなんだぜ!!」
「・・・おじいさんにいっぱい懲らしめられたのに、まだわからないの?」
「わかるわけがないんだぜ!!くそじじいはみのほどしらずだったんだぜ!!」
「そうよ!!だからわたしたちあいつを」
「おじいさんに何をしたの!!!!」
普段寡黙なのうかりんの大声に、男は驚いた。それは二匹も例外ではないようだ。
「・・・ゆ、うるさいんだぜ」
「・・な、なにをしたかって・・・ねぇ?ゆっふふふ♪」
のうかりんの剣幕に多少気圧されながらも、二匹は不敵な表情を崩さない。
「でも、ひとつだけおしえてやるんだぜ♪」
「・・・・・・!!」
「あなたのだーいすきなくそじじいは、もうしんだのよ♪」

「「ゆっははははははははハハハハハハハハハッ!!」」
のうかりんは二匹に向かって突進していた。
「ブザマァ!!!!!」
笑っていたまりさはのうかりんの突進を真正面から受け止め、逆にはじき飛ばした。
男の遥か後方、家の壁に激突し、崩れ落ちるのうかりん。
「のうかりん!!くそ!!」
「ゆぅ、まりさ、あののうかりんにはきょういくてきしどうがひつようだわ」
「あいつにはさんざんいたいめにあわされたんだぜ。ゆっくりすっきりさせてからころしてヤルンダゼエェ!!」
二匹は牙を剥き出しにし、のうかりんへ突進しようとした。
しかし。
「ゆぅ・・・ありす・・・?」
「ええ・・・まりさ・・・しおどきのようね」
と、二匹は用心深く辺りを見回すと、のうかりんや男がいる場所から反対方向の家の屋根へと一瞬で跳躍した。
「きょうのところはこのくらいでかんべんしてやるんだぜ!!!」
「こんどもりへくるときはみつぎものをもってきなさい!!かんげいしてあげるわ!!!!」
ゆっくりらしからぬ洪笑をまき散らしながら、二匹は去っていった。
そこへ。
「大丈夫か!!!?」
調査隊が、慧音を先頭に村へ帰ってきたのだ。



村は、負傷者の手当に追われていた。当初は逃げた二匹を追うべきという
意見も出たが、慧音が深追いを制し、体制を立て直すことを優先したのである。
手当の傍ら対策本部としておかれた村長の家には、男、青年、慧音の三人が集っていた。村長は手当の指揮をしている。
「そうですか、森の方ではそんなことが・・・・。」
「あの化け物ども、おじいさんだけじゃなく、村のみんなまで・・・!!」
青年は激昂し、畳に拳を叩き付けた。
「・・・・・。」
慧音は考えていた。
目の前で被害が出てしまった以上、犯人がゆっくりであることは確定した。
しかし。
普通では考えられない身体能力をもったゆっくり。しかも、あろうことか人の肉を要求したという。
何故、そのようなモノが現れたのか?
ふと、開かれた縁側の方へ目を向けると、庭でのうかりんが月夜の下、手にしたじょうろに目を落とし、立ちすくんでいた。
それを遠巻きに心配そうな目線をおくるれいむ、まりさ、ちぇん。
「・・・・彼女は、あのご老人のところで育てられたそうだな。」
「はい。」




のうかりんがまだ幼いゆうかりんだったころ、あるゆっくりの群れによって家族を殺された。
いくら他のゆっくりより優れた能力を持つゆうか種でも、圧倒的な数の優位は覆せない。
森の片隅で花を育てていた一家に襲いかかった賊は、ゆうかりんの父親を圧殺し、母親を犯し尽くして殺した。
二匹に素早く木立の中に隠されたゆうかりんは、全身を貫かれるような思いでそれを見ていた。
何度飛び出してやつらと刺し違えようと思ったか。
しかし、両親の願いは、彼女に生きてもらうこと。ここでやつらに踏みつぶされることではない。
そう悟るほどに聡明だったゆうかりんは、涙を振り払いながらその場から逃げようとした。
しかし、運悪く見張りをしていた一匹に見つかり、捕らえられてしまう。
大れいむにふみ殺されようというその時、群れは周辺から悲鳴に包まれていった。
ブリーダーが組織した討伐隊だった。
助けられたのうかりんは、そこでおじいさんに会った。
怖いと聞かされてきた人間。
初めての人間は、勇気づけるような笑顔だった。

おじいさんに引き取られ、育てられたゆうかりんはすくすくと成長し、畑の作り方も覚えた。
彼女は二度と畑荒らしの駄ゆっくりどもに負けないよう、鍛錬を欠かさなかった。
ゆうかりんはおじいさんがいなくとも多くのゆっくりを蹴散らせる程に強くなった。
おじいさんに育てた花や野菜を褒められ、自分が強くなっていくと感じる日々。
ゆうかりんは幸せだった。
やがて体ができ、のうかりんになると、おじいさんは村の新米ブリーダーのところで暮らすよう言われた。
おじいさんは言った。お前はもう一人前だと、お前の育てる花で今度は大勢を笑顔にするんだよと。
のうかりんは寂しさを覚えたが、いつでもおじいさんには会えるのだし、多くの人に自分の花を見てもらいたくもあった。
こうして、のうかりんは村で暮らすようになり、今に至る。


「そうか・・・・辛いだろうな。」
「・・・ええ、彼女のもう一人の父親とも呼べる人でしたから。」
「君も大丈夫か?」
男が青年に尋ねる。
「・・・泣くのはこの件が片付いてからにします。それで、慧音様。」
「うむ、のうかりんから情報があったそうだな。」
「はい、まず、あの二匹のゆっくりに関して、やつらにはのうかりんが以前会ったことがあるそうです。」



のうかりんがまだおじいさんの畑を守っているころ、家族らしきゆっくりの一団が畑を襲撃した。
情けはかけなかった。
親らしき二匹以外は全て踏みつぶし、残った二匹ーまりさとありすも散々痛めつけて動けなくした。
ぼこぼこになった体をよじりながら悪態をつくさまを見て、のうかりんははっとした。
こいつらは、のうかりんの親を殺した群れの一員だったと。
無論、当時見かけた姿より大きくなっていたが、顔に張り付いた下衆の表情は忘れようが無かった。
討伐隊に狩られた時はまだ小さかったこともあり、混乱に乗じて逃げ延びたのだろう。
憎い仇の一員。しかし、わめき散らす二匹を見て、のうかりんは最早哀れみしか感じていなかった。
自分はあれからいろんなことを学んだ。だが、こいつらは違う。学べなかったのだと。
このことをおじいさんに報告すると、温厚な顔を憤怒の形相に変えて、更に二匹を痛めつけた。
泣き叫び、しかしなお悪態をつくまりさ達に、おじいさんは彼らを監督下におき、性根を叩き直すと宣言した。
それが、のうかりんが村に来る直前の出来事である。



「では、あいつらは最近までおじいさんの家で監督されていたということか。」
「そのようです。」
「・・・・・。」
二人の会話を聞きながら、いまだ慧音は考えていた。
あの二匹の出自はわかった。
しかし、やはりわからない。
何故、おじいさんを、人一人殺せるようなゆっくりが生まれたのか。
「原因はわからないが、あいつらがあんな化け物になって、おじいさんが最初の犠牲になった・・・。」
「・・・・さっきご遺体をあらためましたが・・・やはり欠けていた部分はやつらに齧られていたようです。」
そう言うと、青年は顔を伏せ、歯を食いしばるような表情をした。
慧音は思った。耐え難いだろうと。恩師が亡くなり、それもゆっくりに喰われたのが原因で。
ゆっくりに喰われた。
ゆっくりが、人の肉を、喰った。
「ん、慧音先生、どうしたんですか。」
はっと顔をあげた慧音に、男が尋ねる。
「・・・少し、長話をしていいか?」




「君たちは、妖怪が仙人の肉を喰らったらどうなると思う?」
「・・・・?」
「え?」
姿勢を正した慧音の第一声がそれだ。
「・・お前には寺子屋で教えた筈だがな。」
「へ?あ、ええと。」
青年は記憶を辿る。
「確か、妖怪としての格が上がって、強くなるんじゃありませんでした?」
「その通り。では、獣が仙人の肉を喰らった場合はどうなる?」
「妖獣になることがある、でしたよね?」
「そうだ。」
「あの、慧音様?それと今回の件は」
「気づかないか?」
「?」
怪訝な顔をしている男の横で、青年は言う。
「今回ゆっくりは、人間の肉を喰った・・・?」
「そうだ。」
「・・・・!!まさか。」

獣+仙人の肉=妖獣
ゆっくり+人間の肉=


「ゆっくりが、人間の肉を喰らって、妖怪になった・・・?」
青年が、自分の言ってることが信じられないといった調子で、呟く。
「・・・私も完全には信じられないがな。傲慢な言い方になるかもしれんが、客観的に見て
ゆっくりにとっては人間とは我々にとっての仙人のような存在だ。その体を取り込む
ことで生物としての格が上がるのは、むしろ自然なのかもしれん。」
「し、しかし、それではどの時点でやつらが化け物になったのかわかりませんよ。
おじいさんの家に閉じ込められていたわけですし、人間の肉を喰う機会なんて。」
男が戸惑ったように意見する。
「やつらはおじいさんのご遺体を齧るまでは、ただのゆっくりだったのだろう。」
「そ、それでは、それ以前におじいさんは亡くなっていたと・・・・?」
「・・・・おじいさん、胸が悪かったんだよ。」
「のうかりん・・・。」
いつのまにか縁側にはのうかりんがいた。
三人に向かって更に口を開く。
「心配かけたくないからって、村の人には誰にも言ってなかったんだけど、おじいさん
怒ったり重いもの運んだりした後はたまに胸を押さえて苦しそうだった。だから、多分
あいつらを懲らしめてる最中にすごく怒ってしまって、それで苦しく・・・・・っ。」
のうかりんは耐えられなくなったというように両手で顔を覆う。
青年のうかりんに近寄り、軽く抱き寄せる。
「恐らくは、このようなことだったのではないか。」
慧音が口を開く。





その日、おじいさんは監視下においていたまりさ、ありすと対峙していた。
散々罰を与えても直らない二匹の性根。二匹はその日も傲慢な態度を取り続けた。
おじいさんは、いつものように罰を与えた。
いつもなら泣いて謝るところまで来て、その日二匹はいまだ罵詈雑言をやめなかった。
愛娘と言っていいのうかりんの仇ということもあり、おじいさんは激昂してしまい、更なる罰を与えようと
立ち上がった。

そこで、限界が来た。
おじいさんは胸をおさえて苦しみだし、床に倒れ伏す。
驚く二匹。もしくは自分達の力だと勘違いしたかもしれない。
周りに人もいなく、助けを求めることも出来ず、やがておじいさんは息を引き取った。

残された二匹は狂喜したに違いない。憎い相手が動かなくなってくれたのだから。
二匹は好き放題部屋を荒し、食糧を喰い荒らした。
しかし、食糧はすぐに尽きてしまった。
更に、元々二匹を逃がすまいと厳重だった戸締まりは、二匹が外へ逃げることを許さない。
次第に衰弱していく二匹。
このまま朽ちるのか。
いや・・・・朽ちるのは、おじいさんの体の方が先だった。
腐敗し、形が崩れた遺体へと目を向ける二匹。
贅沢は言っていられない。
彼らにとって、目の前にあるのは人間の体ではなく、腐りかけの肉だった。
二匹は遺体へのそのそと近づき。
口を開け。
齧り、ついた。











やがて、戸は破られ、二匹の化け物・・・・妖ゆっくりは、野に放たれた。










無理矢理な解釈で混乱させてしまったかもしれません。やっぱもの書くのって難しい・・・・。
予想以上に長くなってしまい、上下のつもりが上中下構成になってしまいました。
続きは3、4日中にはあげたいと思います。

ゆっくりゃバーガーの人






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最終更新:2009年05月13日 23:39
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