「つきましたよ、ここです。じゃあ、さっき言った通りよろしく頼みますよ」
頼んだところで、言った通りにちゃんと動いてくれるとは、美鈴は思っていない。
見た目と仕草が可愛い人語を話す豚──と言うのが、れみりゃに対する彼女の評価だ。
「うー! わかってるどぉ~! れみ☆りゃ☆う~♪」
あまりわかっていない。言うまでもなく、当然だが。
下ぶくれのへちゃむくれな、人によってはブサキモ可愛いと思う顔面に、楽しそうな笑
顔を浮かべご満悦のれみりゃは、この種たちが「れみぃのぷりちーさに、みんなまいっち
ゃうどぉー」と思いこんでいる仕草をしてから、
ゆっくりと件の八匹が眠る朽木に歩み寄
る。
「ぎゃぁお~! た~べちゃ~うどぉ~! うっうー!」
れみりゃは八匹の不運なゆっくりが眠る巣穴を覗き込みながら、この種たちが「れみぃ
のこわさに、みんなおちっこじょーだどぉ~」と思いこんでいる威嚇のポーズをする。
これを見て恐怖を感じる人間や妖怪は皆無と言っても良いが、ゆっくりに対しては非常
に効果的である。
「ゆっ! ゆゆゆぅ!? れ、れみりゃー! た、たいへんだよ~!」
「ゆゆゆゆゆゆっ! た、たすけておかーさぁーん! ごわ゛い゛よ゛ぉぉぉぉ!」
「ゆっ! ゆう゛ぐぐぐっ! ゆう゛っ……ゅ……」
「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむをたべるんだぜっ!」
「ゆゆゆっ! ゆっ! たべていいのはれいむとありすだよ! まりさはみのがしてね!」
「ゆっ! ありす、ぱちゅりー! ゆっくりしてないではやくおとりになって、まりさた
ちをにがしてね!」
「い゛や゛ぁぁぁ~! ぜっがぐい゛ぎのびだのにぎぃぃぃぃ! ごごでじぬ゛な゛ん゛
でぇぇぇ~!」
「むきゅっ! れみぃ! ぱちぇがぎせいになるから、れいむとありすはたすけてあげて!」
たちまち巣の中は大混乱。
それぞれの性格がよくわかる悲鳴を、ゆっくりたちは上げている。
れいむ母子は愚鈍で他力本願、まりさ母子は狡猾で薄情──と言う世間の認識通り、さ
して新鮮みを感じない反応だ。
しかし、ありすとゆっちゅりーの反応は、型通りのものではなかった。
大多数のありすは、このような危機に直面しても「とかいは」のプライドで無意味に強
がるのだが、この一家のありすは早くも絶望に打ち震え嗚咽している。
ゆっちゅりーもまた、危機に瀕しては、混乱する仲間を落ち着かせるか、一緒に怯えて
混乱しクソの役にも立たないかのどちらかな場合が多いのだが、この巣に住むゆっちゅりー
はいきなり自己犠牲である。
「なんなのかしらねぇ……れいむとまりさは普通なのに、ありすとゆっちゅりーは妙ね」
巣穴とは逆側の位置に控え、ゆっくりたちに姿を見せず声を聞いていた美鈴は、連中の
悲鳴を聞いて呟いた。
プランをちょっと変更しようかしら──考えながら、れみりゃが指示に外れた行動をし
ないか監視する。
「うっうっー! いただきますだどぉ~!」
二匹いる子れいむのうちの一匹を、れみりゃは無造作に掴んだ。
「ゆぅぅぅぅぅっ! やべでぇぇぇ! たべばびでぇぇぇぇ! お゛があ゛さあ゛ん゛!」
母親にすがったところで、この危機を脱せるわけもないのに、捕らえられたれいむは無
駄な悲鳴を上げた。
「い゛や゛ぁぁぁ! れ゛い゛む゛の゛ごども゛があ゛ぁぁぁ! ゆ゛っ゛ぐり゛や゛べ
でぇぇぇ!」
その身体の大きさならば、死も辞さぬの覚悟で体当たりすれば、運が良ければれみりゃ
ぐらい撃退出来そうにも関わらず、無力で無能な母れいむはただ悲嘆にくれる。
姉妹が大ピンチで、母親が恐慌状態にある中、もう一匹の子れいむはと言えば、
「……ゆぅ……ゅ……ゅ……」
恐怖のあまり失神し、白目を剥いて少量の餡子汁を漏らし震えていた。
この一家のれいむたちは他力本願、臆病、無能、愚鈍と、仮に救おうとする者が現れた
としても、生かす価値を見いだしてはくれそうにない体たらくである。
「お、おがぁざんっ! れいむがたべられてるうちにっ、に、にげようよっ!」
「ゆっ! そ、そうだぜっ! ありすとぱちゅりーにとつげきさせれば、まりさたちはに
げれるんだぜっ!」
「はっ、はやくっ! ゆっくりしないではやくっ、にげようよっ!」
本人たちは小声のつもりだが、朽木の向こうにいる美鈴からも丸聞こえ大声で、まりさ
母子は一緒に暮らす家族を犠牲にして、自分たちだけが助かるための家族会議を行ってい
る。
「うん、決めた。まりさはなるべくひどく殺そう」
不快感に眉を歪め、厚い朽木の壁の向こうで美鈴は呟いた。
元から彼女は、ゆっくりまりさが大嫌いである。
しょっちゅう強引に門を突破し、メイド長に叱責される原因をこしらえてくれる、あの
白黒の魔法使いと顔が似ているにも関わらず、本物の白黒が持っている美点を何一つ持た
ず、悪いところだけをグロテスクに誇張したような存在であるため、美鈴は心の底からゆ
っくりまりさを嫌悪していた。
「だべよ゛おあぢゅり゛ー! じびだぐなびげど、あ゛り゛ずがぎぜびに゛なずば! ど、
どう゛ぜ……い゛ぎででも゛づらい゛ごどばっがだじぃぃぃぃ!」
涙と鼻水と涎で声を濁音まみれに詰まらせながら、ありすはゆっちゅりーに言った。
「むきゅ! そんなことないわ! ありすはいきなきゃ! いままでつらいじんせいだった
ありすには、しあわせになるけんりがあるの!」
頬を膨らませて、ゆっちゅりーはありすを本気で叱った。
「おあぢゅり゛ー……う゛う゛う゛っ、あ゛、あ゛じがどお゛ぉぉぉぉぉ!」
自らが分泌した液体でべしょぐしょな顔面を、ありすはゆっちゅりーに擦り付けながら
慟哭した。
たいがいのありす種は、このように肌と肌を接触させると、たちまち発情し淫乱ビッチ
なセックスアニマルと化す事が多いが、このありすはただ身を震わせて泣くだけである。
そんなありすを優しく、愛おしそうにゆっちゅりーは受け止めて、
「むきゅ! ありすぅなかないでよぉ……げんきださないと、ゆっくりできないわよ」
顔に向かって舌をのばし、すごく汚らしい各種液体を舐め取ってやる。
とても微笑ましいが、見る人の感性によってはちょっとキモいと思う光景である。
「ますます妙ね……変なありすとゆっちゅりー」
気の流れを把握する事で、見なくともどのように動いているかを察知できる美鈴は、テ
ンプレに外れた動きをするこの二匹に強い興味を覚えた。
「まぁ、まずは作戦を進めましょう……どうするかは後で考えよう」
この後の二匹の行動次第では、生かしておくもの面白そうだと美鈴は考えた。
「うっうー☆ あ゛ぁ~ん!」
大きく口を開いて、れみりゃは手に持った子れいむを、その中へ放り込もうとしていた。
このサイズのれいむならば、どうにか丸ごとに口に納められるので、全てを口に入れて
からゆっくりと時間を掛けて咀嚼するつもりである。
「こらっ! 違うじゃないの」
プラン外の行動をれみりゃが取り始めたのに気付き、死なず肉体が損壊せず程度の威力
に手加減した気弾を二発放った。
「うあっ! あっぶないどぉ~!」
カッ!
「……えぇっ!」
なんと、れみりゃは美鈴の放った気弾をグレイズした……!
「し、信じらんない……なに、このれみりゃ……」
あまりの事に呆然となる美鈴。
本当は、うっかりと自機狙いではなく、対象の左右に広がる2way弾を放ってしまい、
それに対してれみりゃが片方に向かって鈍重に近づいたので、偶然グレイズとなっただけ
の事なのだが、美鈴はその事実に気付かなかった。
弾の速度がもっと遅ければ、むしろれみりゃから当たって行くと言う結果になったのだ
が、ちょっと弾が速すぎたのも、この希有な偶然の発生を助けたのである。
「う~、いそいでたべて、おうちかえるどぉ~! あむ゛っ!」
「ゆ゛っ!? ゆ゛ぎゃっ!」
れみりゃは手に掴んだ子れいむの頬にかぶりついた。
「むぐむぐ……あっまーいどぉー♪ うまうま♪」」
急いで食べるのならば、丸ごと口に入れるのが最も早いのにも関わらず、れみりゃは愚
かにも普通に一口ずつ食べている。
「ゆ゛ぎゃ! ゆ゛ぎぃぃぃぃ! い゛だい゛ぃっ! お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛ん!」
表皮ごと中の餡子を食いちぎられる激痛に、子れいむはこの世の終わりが来たような悲
痛な叫びを上げた。不運な事に、この程度では致命傷には至らない。
「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ! べびぶの゛ごどぼがあ゛あ゛あ゛あ! だべな゛びでぇぇ
ぇぇぇ! や゛べでぇぇぇぇぇぇっ!」
餡子をわけた子供が食われるという、親としてとても辛い光景を見せつけられ、母れい
むは泣き叫び、我が子の助命を嘆願する。
ただ泣き、悲鳴を上げ、お願いするだけで、事態が好転するほど世の中は甘くないのだ
が、身体の芯から甘い餡子で満たされている、この愚劣で下等な安息ばかりを求める生命
体は、そんな簡単な事もわからない。
この母子のように、れいむ種が悉く愚鈍で無能な虫けら並の存在と言うわけでもなく、
中にはもうちょっとはマシな個体も存在するのだが、大多数は似たり寄ったりである。
「いい? まりさがあいずしたら、いっせーのせでとびだすんだぜ?」
「ゆっ! わかったよ! あのれみりゃがれいむをたべおわって、おかあさんれいむにお
そいかかったら、だね?」
「ありすとぱちゅりーは、ほんとうにやくたたずだね! まりさたちのためにたたかいも
しないで……ここでゆっくりしねばいい! ゆっくりくるしんでしねばいいい!」
ゴミクズどもは、外敵がれいむを最初の標的としているのを察して、具体的な逃走プラ
ンをほぼ完成させていた。
狡猾で薄情なこいつらは、その愚鈍さにつけ込んで、今まで散々に利用してきたれいむ
母子を生け贄とし、奴隷のようにこき使い罵倒し虐めてきたありすとゆっちゅりーを置き
去りにして、この場から疾く早く逃走する気でいる。
ちなみに、今ちょうどれみりゃに食われている子れいむは、母まりさが母れいむで性処
理した際に出来た子である。
子まりさは、母れいむが母まりさに命じられて、タチ役をやらされた際に出来た子であ
るから、れいむ母子とまりさ母子は世間的に考えるならば普通に家族であった。
にもかかわらず、母まりさは妻であり夫である母れいむも、自らのタネ餡子粒によって
生まれた子れいむも、自分と自分が産んだ子のために積極的に犠牲にする気である。
母が母なら子も子で、自分たちを作る元になったタネ餡子粒を提供した母れいむと、母
体違いの姉妹である子れいむを、自らが助かるために容赦なく犠牲とする事に対して、何
の痛痒も感じていない。
「んっ、ぱちゅりー……ありがと……もう、だいじょうぶよ」
ゆっちゅりーの努力によって落ち着きを取り戻したありすは、こんな危機的状況には似
合わない微笑みを浮かべた。
「むきゅーん、ありすぅ……ぱちぇがんばるから、ちゃんとにげていきのびてね」
「ううん、むりしなくていいわ! ぱちゅりーがしんでありすだけいきのこっても、いみ
ないよ! いっしょににげるのよ!」
相変わらず自己犠牲に固執しているゆっちゅりーを、今度はありすが叱咤した。
「むきゅきゅぅ~、うれしいけどそれはむりよ……あのまりさたちがいるから、ぱちぇと
ありすはすていしにされるうんめいだわ……むきゅ……」
薄汚いゴミクズどもの卑劣な考えを見通しているゆっちゅりーは、ありすの楽観論に対
して否定的見解を述べ、悲しそうに目を伏せ涙をこぼした。
そんなゆっちゅりーを元気づけるように、
「……なかないで、ぱちゅりー……とかいはのありすががんばるから、ね! ぜったいだ
いじょうぶよ!」
ありすは精一杯の虚勢を張って励ました。
だが、色々な逆境をこれまで味わい、辛酸舐めさせられてきたありすは、強がってはみ
たものの弱気な本音を見せる。
「でも……もしだめだったら、いっしょにしんでくれる?」
「むきゅ? そんなこといわないでよ! しんじゃらめよぅ……でも、でも……しぬとき
は、ぱちぇもありすといっしょがいいわ……むきゅぅん」
ありすの本音に触れたゆっちゅりーは、強い調子で叱りながらも彼女の気持ちを受け入
れた。
「ぱちゅりー……ごめんね、ありがとう……だいすき……」
「むきゅぅ~ん、ありす……こっちこそ、ごめんね……ぱちぇもだいすきだよ……」
二匹は今まで秘めてきた想いを告白し、どちらからともなく唇を重ね、お互いを慈しむ
ようなキスをした。
こんな事態が訪れなければ、死ぬまで秘めたままであっただろう恋心を吐露した二匹は、
生命の危機が迫る中で得られた束の間の幸せを噛みしめながら、確実視される死への覚悟
をゆっくりと固める。
「うっまいどぉ~♪ あっまいどぉ~♪ おいっしいどぉ~♪」
子れいむの頬を噛みちぎって作った傷口から、でろっと緩慢にこぼれ出す餡子を、れみ
りゃはぺちゃべちゃびちゃぐちゃはしたない音を立て舐めていた。
でろんと垂れてくる餡子を舐め取る姿は、まるでチョココロネを細い方から食べて、太
い方から垂れるチョコを舐める、某貧乳がステータスな女子高生を彷彿とさせる。
急いで食べる、と言った事はもう完璧に忘れている。
胴体が無いれいむやまりさたちは「ゆっくり」「ゆっくり」言う割には、こと食事に於
いては物凄く早食いなのだが、胴体と手足が備わっているゆっくりれみりゃは、このよう
にゆっくりと食事をするのが大好きなのである。
「ゆ゛ぎぃぃぃぃ! や゛べでぇぇぇぇぇぇっ! べびぶのぉな゛がびぃ、な゛べな゛び
でぇぇぇぇぇっ!」
痛い痛い痛い怖い怖い怖い──噛みちぎられた傷口は焼けるようにずきずきと痛み、少
しずつ生命の素が外へ奪われて行く恐怖が、休むことない絶叫を子れいむに強いる。
「お゛ね゛がい゛ぃぃぃぃ! べびぶの゛ごどぼ、ゆ゛っぐじじな゛びでばびゃぐばな゛
じでぇぇぇぇぇ! だぜがだずげでよ゛ぉぉぉぉぉぉぉっ! ばがぁぁぁぁぁ!」
我が子の苦しみを前にして、立ち向かおうともせず、ただ不明瞭な言語で泣き叫び、来
るあてもない助けを呼ぶだけの、愚鈍にして蒙昧な母れいむは、自らの無力を嘆くでもなく、
誰も助けが来ない事への不満を口にしはじめる。
「べびぶの゛っ! べびぶの゛がばびびごどぼがじに゛ぞう゛な゛の゛に゛! どぼぢでだ
べぼだずげでぐれ゛な゛びの゛ぉぉぉぉぉぉ!」
「はーい、じゃあ助けてあげるわよ」
れみりゃにグレイズされたショックから立ち直った美鈴が、やっと動いた。
青竜刀を構え、彼女は跳ぶ──。
「うー? うっ……う゛う゛う゛う゛っ!?」
なんでれみぃのからだがみえるの?
地面に転がる生首となったれみりゃは、棒立ちしている自らの身体を見つめていた。
痛みは、全く無かった。
なのに何故か、首と胴が離れている。
「ふぅ……やっぱり弾幕よりも、こっちのが楽ね」
肉汁に汚れた刃を、美鈴はぺろりと舐めた。
一刀のもとにれみりゃの首を斬ったのである。
あまりにも疾い、一瞬の出来事であったため、斬られたれみりゃには何が起こったのか
全くわからなかった。
「い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉぉっ! だずげでよ゛ぉぉぉぉぉっ!」
首を失ったれみりゃの手に掴まれたままの子れいむは、目前の危機からは一応脱した事
に気付かず、相変わらず濁音が鬱陶しい悲鳴を上げていた。
「ゆ゛っ! なに? なにがおきたのっ?」
目の前で我が子をいたぶり食べていたれみりゃが、突然首無しとなったのを見て、母れ
いむは驚きに目を見開いた。
「たすけがきたんだぜ! ひごろのおこないがいいまりさたちは、これでたすかるんだぜ!」
「そうだね! おかぁさん! これでゆっくりできるね!」
「でも、すみっこで、へどがでそうなさんもんれんあいげきやってる、やくたたずのあり
すとぱちゅりーは、ゆっくりしんでほしいね!」
どう言うわけか普通の人間や妖怪よりも、こう言う時の状況認識だけは素早いゴミクズ
母子は、自分たちは助かったと思いこみ、安堵していた。
「ぱちゅりー……んっ……」
「むきゅぅん……ありすぅ……」
完全に二匹の世界を作っている、ありすとゆっちゅりーには、突然起こった状況の変化
などどうでも良かった。
どうやら救援に類するらしい事が起きた、と言うことはなんとなくわかっていたが、同
時に自分たちの命運はもう尽きているとも悟っていた。
れみりゃが倒されたなら、倒した者はそれより強大な存在である。
ならば、どうあがいたところで生き延びる事は不可能だと、ありすとゆっちゅりーは考
えるまでもなくわかっている。
生きようと苦労しても死ぬ。頑張っても死んでしまう。何をしても殺される。
不可避の死が迫っている以上、あがいて苦労するよりも、愛する存在と、このまま死が
訪れるまでゆっくりしていたいのである。
──こうして、この二匹は現実からの逃避を選択した。
「う゛っ! う゛っ……う゛ぁぁぁぁっ! れ゛びぃのがら゛だがぁぁぁぁぁっ!」
やっと自分が斬首され、跳ねる事も転がる事も出来ない、無力な生首と成り果てた事に
気付いたれみりゃは、嘆き悲しみ絶叫した。
再生するまでは、ただ叫ぶしか出来ないれみりゃヘッドを、美鈴は無造作に拾い上げると、
「うるさい。黙れ」
と言って、気を送り込み失神させた。
自失の後に、グレイズされたのはきっと偶然だと結論付けたものの、やはりイレギュラー
因子は排除するのが賢明であると、美鈴は判断していた。
気の力で気絶させるよりも、ひと思いに潰して殺した方が早いが、最初かられみりゃは
生け捕りにして持ち帰るつもりでいたので、あえて殺さずに済ませたのである。
もうちょっと利用してから、手足を引きちぎって賞味したり、無理矢理それを食べさせ
たり、下半身に性的な虐待を行ったりなどして、死なない程度に痛めつけ、苦しめて楽し
む予定だったが、あっさりと美鈴は当初のプランを放棄していた。
「作戦通り状況が動くとは限らない、っと……もう気の向くままに進めましょ」
れみりゃヘッドを適当に投げ置き、まだ棒立ちのままのれみりゃボディに目を向ける。
「ゆ゛ぎぃぃぃぃっ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! お゛があ゛ざあ゛ぁぁん゛!」
「ゆっ! れいむ! ゆっくりがまんしてね! もうれみりゃはしんでるから!」
遅ればせながら、強大な敵が何時の間にか無力化されている事に気付いた母れいむは、
傷の痛みを訴える子れいむを言葉で励ます。
相変わらず具体的に何か行動するでもなく、言葉だけでどうにかしようとしている。
「……口先だけの母性愛、か……」
忌々しげに呟くと、美鈴はゆっくりたちの巣穴に近寄り、
「もう、大丈夫よ! ゆっくりしていってね!」
見る者を温かく落ち着いた気持ちにさせる、とっておきの笑顔を浮かべた。
「ゆっ! おねえさん、ゆっくりできるひと? ゆっくりできるひとなら、まずれいむの
こどもをたすけてね!」
母れいむは、れみりゃを倒してくれた礼を言うよりも先に、我が子の救助を要求した。
もっとも、今まで死なずにここまで大きく成長できたのが不思議なほど、すこぶる愚鈍
なこの個体は、れみりゃの首を刎ねたのが美鈴だと言う事には、まだ気付いていなかった。
「ゆゆゆっ! おねえさん、まりさをたすけてくれてありがとうだぜ! おれいにどうか
ここでゆっくりしていってくださいだぜ!」
母ゴミクズは、早くも強者に媚びはじめた。
今までこのゴミクズが、どんな事を言っていたのか知らなければ、物の道理がある程度
わかっている「良いゆっくり」だと思えたかも知れない。
これが両棲動物の糞をかき集めて腐らせたような存在だと、美鈴は知っているので、そ
の態度にますます嫌悪を強めた。
「ゆっくりしていってね!」
子ゴミクズのうち一匹は、無邪気な子供を装った。
自分の母には及ばないが、そこらの成体れいむよりは奸智に長けているこれは、外部の
存在の前では普通の子供として振る舞う。
もし生き延びられるならば、母を凌駕する天然記念物クラスのゴミクズになれるかも知
れない。
「ありすとぱちゅりーはゆっくりしね!」
美鈴の挨拶を無視して、もう一匹の子ゴミクズは、未だありすとゆっちゅりーの死に
執着していた。
奴隷同士が幸せに浸っているのが、とにかく気にくわないらしい。
いつもならば、こう言う時は母ゴミクズを煽動し、ありすとゆっちゅりーをいじめてゲ
ラゲラ笑うのだが、れみりゃの襲撃中はそれが出来なかったため、非常に強い不満を抱え
ている。
「ねぇ、ぱちゅりー……もしいきのびられたら、いっしょにくらしてよ……やくそく、し
てくれる?」
起こるはずもなく、期待もしていない延命という奇蹟を、ありすは口にした。
叶うはずもない約束だが、こうすることで、死んでもきっと一緒にいられると、ありす
は思ったのである。
「むきゅっ……いいの、ありす? ぱちぇはよわいから、あしでまといになるよ」
ありすが何を考えているのか、ほぼ正確に察しているゆっちゅりーは、それにあわせる
事にした。
「そんなことないわ! ぱちゅりーは、わたしなんかよりずっとつよいよ……だって、ぱ
ちゅりーがいてくれたから、わたしはいきてこれたんだもんっ!」
「むきゅきゅっ……そんなことないわよ。ありすのおかげで、ぱちぇはいきていられたん
だよ……だから、いきのびられたらいっしょにくらそうね。やくそくするよ、ありす」
こうして二匹は、全く期待していない奇蹟でも起きない限りは、絶対に叶わない約束を
した。
一般的に死亡フラグとは、生存を前提としていると立つが、このように死を前提として
いる場合は、どうなるのか……全ては美鈴が決める事である。
「ゅ……ゅ……ゆゅゅゅぅ……」
れみりゃの出現と同時に、恐怖のあまり失神した子れいむは、母をはじめとする家族全
員ばかりか、美鈴にもその存在を忘れられていた。
失神しているうちに、再び寝入ってしまったようで、今は安らかな寝息を立てている。
「ふふふっ、お姉さんは、すごくゆっくりできる人よ」
「ゆっ! それならよかったよ! さぁ、はやくれいむのこどもをたすけてね! ゆっく
りするのはたすけてからだよ!」
ここにいるゆっくりたちの関係や、だいたいの性格など把握済みの美鈴は、まず最初の
標的を、この愚鈍で無能なれいむ母子にしようと決めた。
「あらあら、私はゆっくりできる人なんだから、まずゆっくりしたいのよ。助けるのは、
私がゆっくりしてからね」
まずは軽い言葉のジャブ。
「ゆゆゆっ! だめだよ、おねえさんっ! ゆっくりしたいなら、れいむのいうこときい
てね!」
身の程を弁える、などという高等な事は、この愚母れいむには無理な相談だ。
「あら、どうしてあなたの指示に従わないといけないの? ゆっくり教えてね」
心の底からバカにして見下している存在が、多少強気に出たり失礼な事を言ったとして
も、心に余裕があれば案外腹は立たないものである。
「ゆっ! おねえさん、あたまわるいねっ! ここはれいむのおうちなんだから、れいむ
のめいれいはぜったいなんだよ! はやくりかいしてね!」
ぷくーっと頬を膨らませ、母れいむは美鈴を怒鳴りつけた。
危害を加えて来ない相手に対しては、とことんまで強気に出るのが、このゆっくりとい
う生命体の基本である。
「おねえさん! そのれいむはうそつきだぜ! だって、ここはまりさのおうちなんだ
ぜ!」
横から茶々を入れる母ゴミクズ。
この巣の主は、この家族のリーダーは、自分だと自負しているゴミクズは、母れいむの
「れいむのおうち」発言を聞き逃さなかった。
普段そんな立場を弁えないような事を母れいむが言った時は、体当たりをして肉体を痛
めつけてから、強引に生殖行為に及んで心を痛めつけ、その後は子ゴミクズとともに三重
奏で悪口雑言を浴びせると言う、厳しい折檻をしているのだが、今はれみりゃを簡単に屠
るような強者がいるので、それを利用する気だ。
「そうだよ、おねえさん! おかあさんのいうとおり、ここはまりさたちのおうちだよ!
このれいむたちは、いつもうそつきでこまってるんだよ!」
「うそつきれいむにおしおきしてよ、おねえさん! あと、あっちのありすとぱちゅりー
は、わるいゆっくりだから、ゆっくりくるしめてからころしちゃっていいよ!」
母ゴミクズをすかさずサポートする、二匹の子ゴミクズ。
他のゆっくりたちが相手の時、こうやって意見を合わせる事で相手を意のままに動かし
て来たゴミクズたちは、今回もそれで行けると確信していた。
狡知に長けているとは言え、所詮ゆっくりはゆっくりである。自分たちの尺度でしか、
相手の事を推し量れないのであった。
「そうなの? それじゃあ、れいむ。あなたの言う事はきけないわね」
本当は今すぐにでも、ゴミクズ母子が汚らしい口を二度開けないように、永久に泣いた
り笑ったり出来なくしてやりたいのだが、この先の事を考えて、あえてその口車に乗った
ふりをしてみせる。
「ゆっ! なにいってんの! ちがうよ! れいむうそつきじゃないもん! うそつきは
まりさだもん!」
心外だと言わんばかりに、強い調子で反論する母れいむ。
「ひどいぜ、れいむ。まりさは、いままでいっしょにくらしてきたかぞくなのに、そんな
こというなんて、ひどすぎるぜ……ゆっ、ゆぐぐぐっ……
母れいむにとっては当然の反論であったが、ゴミクズはさもショックを受けたように悲
痛な声を出し、涙を浮かべ泣き出した。
もちろん、嘘泣きであるが──。
「ゆっ! ひどいよ、おかあさんれいむ! そんなうそつくから、おかあさんないちゃっ
たよ! ゆっくりあやまって、じっくりはんせいしてね!」
「かぞくにつみをなすりつけるなんて、さいていだね! おかあさんがかわいそうだよ!
ひどいれいむは、ありすとぱちゅりーといっしょに、ゆっくりしね!」
すかさず二匹の子ゴミクズは、自分たちの母が正しく、母れいむは悪であるとアピール
する。
ゆっくりでも人でも妖怪でも、人語を解する生き物は、どちらがウソか本当かわからな
い事象に直面した際、多くの者が正しいと言った方を真実だと思いこみやすい。いわゆる
多数決の魔力である。
このゴミクズたちは、それを本能で知っていた──みんながいえば、うそもほんとうだ
とおもわせられる──と。
「どに゛がぐだずげでよ゛ぉぉぉぉ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! ごばびよ゛ぉぉ
ぉぉぉ!」
「ゆっ! れいむはだまってて! おかあさんはいまだいじなはなししてるのっ!」
いつまで経っても助けて貰えず、硬直した首無しれみりゃボディの手に掴まれたままの
子れいむの助けを求める悲痛な叫びは、その母によって即座に却下された。
「あー、もう……そろそろ面倒になってきたわ」
所詮ゆっくりの母性なんかこの程度か──興が削がれた美鈴は、そろそろ直接的なアク
ションに移ることにした。
「ゆっ! めんどうじゃないよ! だいじなことだよ!」
美鈴の言葉を聞きとがめ、すかさず母れいむが抗議した。
「何が大事なのよ?」
もう優しいお姉さんを装うのをやめた美鈴は、ぞんざいな調子で聞いた。
「ほんとうにおねえさん、あたまわるいねっ! れいむはうそつきじゃない! うそつき
はまりさ! そして、れいむのこどもをはやくたすける! この……ひとつ、ふたつ、え
っと……とにかく、それがだいじなことなのっ! りかいしたねっ!?」
数は二までしか数えられない。
「あっそ、じゃ助けるわね。ほいっ、と」
れみりゃボディに向かって両手をのばし、その左右の上腕部を無造作に掴むと、そのま
ま腕を引きちぎった。目にもとまらぬ早さで、しかも左右同時にひきちぎったため、腕を
失った首無しれみりゃボディはバランスを崩すことなく、まだ倒れずに立ったままだ。
「ゆっ……ゅ~、ゆぅぐぐ~っ……」
れみりゃハンドに掴まれたままの子れいむは、美鈴が腕を引きちぎった際の衝撃で目を
回し、意識を失った。
「ほら、助けたわよ」
と言って、美鈴は母れいむの眼前に、引きちぎったれみりゃの両腕を手先を向けて突き
つけた。
「ゆっ! ありがとう、おねえさん! でもれいむのこどもが、まだつかまれたままだよ!
はやくそのきたないてをどかしてあげてね!」
それぐらい、近寄って口と舌を使えば難しい事ではない。
しかし、徹頭徹尾他力本願なこの母れいむは、自分が出来る事も他者任せである。
「うん、そう……だが、断る!」
れみりゃの腕を母れいむの眼に向かって、素早く突き出す。
「れみりゃぱ~んちだどぉ~……なんちゃって!」
ずぬっ!
「ゆ゛っ! ゆ……ゆ゛ぎゃぁぁぁぁっ! べ、べびぶの゛、べ、め゛がぁぁぁぁっ!」
眼窩にれみりゃの腕を突き刺され、両目は完全に潰された。
れみりゃアームは、母れいむの眼を潰しただけではなく、外皮よりも脆弱な目の奥の薄
皮も突き抜けて、中の餡子にまで達するほどに深く突き刺さっている。
「あははっ、目から腕を逆さまに生やしてるよ……はははっ!」
不格好なアンテナを生やしているようにも見える。
「ゆ゛ぎっ! ゆ゛ぐぁぁぁっ! ど、どぶじでぇぇぇぇ! べびぶの゛べぇぇぇぇっ!」
あまりの激痛に母れいむはのたうち回った。
動き回ると巣の壁や巣の中の雑多な物に、突き刺さったれみりゃアームがぶつかり、そ
れが傷口を刺激し、さらには中の餡子までもかき乱すため、余計に多くの苦痛を味あわさ
れる。
「どう、れいむ? あんたの大好きな子供、助けてあげたよ」
「ゆ゛びゃぁぁぁぁ! ごどぼがな゛ん゛がよ゛じっ、べびぶの゛べぇぇぇぇっ!」
こうなってしまっては、母性愛も何もあった物ではない。
「あらあら、ひどいわね。可愛い子供は、目の中に入れても痛くないはずよ……あははっ」
「う゛ぞぉぉぉ! ぞぶな゛の゛う゛ぞよ゛ぉぉぉぉ! べびい゛べばら゛い゛だい゛ぃ
よ゛ぉぉぉぉっ!」
とにかく刺さっている物を抜こうと、母れいむは狂ったように身体を震わせる。
身体を振動させると、れみりゃアームも刺さったまま動くため、新たな痛みが生じるが、
じっとしていても痛い以上、動き回るしか方法が無かった。
「ゆ゛ぎぃぃぃっ! ぐら゛びよ゛ぉぉぉぉぉっ! い゛だい゛ぃよ゛ぉぉぉぉっ! ご
ご、どごぉぉぉぉぉっ! お゛があ゛ざあ゛ぁぁん゛!」
れみりゃアームを抜こうとする母れいむの努力は、れみりゃハンドに掴まれたまま今ま
で失神していた子れいむが目覚めると言う、この母子双方にとって歓迎できない結果とな
った。
目が覚めたら、噛まれた傷は痛いし、周りは真っ暗だし、なんかぐらぐら揺れるしで、
れみりゃハンドに捕らわれた子れいむは恐慌状態に陥り、目茶苦茶に動き回り暴れ回った。
その甲斐があって、やっとれみりゃハンドの魔手からは開放されたが、その開放された
場所は──母れいむの餡子の中である。
「ゆ゛っ! だべぇぇぇっ! べびぶの゛な゛がで、あ゛ばべな゛びでぇぇぇっ!」
「な゛に゛ぃぃぃぃ! な゛ん゛な゛の゛ぉぉぉぉ! お゛がぁ゛ざあ゛ぁぁぁぁん゛!
だずげでよ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!」
母の声はすれど姿は見えず、周りは何か泥のような物で囲まれていて、真っ暗という状
況で、落ち着いてじっとしていられるわけも無く、子は母の姿を求めて動き回る。
「いいタイミングで起きたみたいね。ふふっ、目の中に入れた子供と、しばらく遊んでな
さい」
外部から何か刺激するよりも、この場合は放置しておいた方が、れいむ母子をより長く
苦しめられると判断した美鈴は、次の標的をに照準を向ける事にした。
その次の標的とは、言うまでもなくゴミクズ母子である。
「さ、次はあんたたち……よ……あれ?」
ゴミクズたちが居た方向へ視線を向けた美鈴だったが、そこにはありすとゆっちゅりー
が佇んでいる。
この二匹は巣の入り口から見て、もっと奥の方に居たはずなのだが、何故か先ほどまで
ゴミクズ母子が居たあたりにまで移動してきていた。
「おねえさん! とかいはのありすが、ここはとうせんぼよっ!」
「むきゅっ! ありすだけじゃないわ、ぱちぇもいるわよ!」
キッと二匹は美鈴を睨む。別に怖くない。
「うん、それで?」
最終的な処遇を決めかねていた、どことなく変わっているこの二匹が、どのように行動
するか、美鈴は出方をうかがう事にした。
「むきゅ……きゅ……むきゅ……」
「……うん……わかった」
なにやら小声で、ゆっちゅりーとありすは相談している。
「…………」
期待を込めたまなざしを向け、美鈴は二匹の次のリアクションを待った。
「……えっと、しょせんちゅうごくははってんとじょうこく! あ……うん……そのちか
らはとかいはの、にわりはちぶろくりんにもみたないのよっ!」
詰まった際に、ゆっちゅりーが耳打ちしたとは言え、ありすは長いセリフを最後まで言
えた。
「そこのもんばん! ぱちぇのおうちであばれないで! きょうはぜんそくもちょうしい
いから、あんたといい、まりさといいきょうわやくびだわ!」
無理に継ぎ接ぎをして意味不明になっている口上を、ゆっちゅりーは述べた。
「……なるほど……」
予想外というよりも、予想の斜め上な事を喋った二匹に対して、美鈴は感慨深げに重々
しくうなずいた。
「つまり、あんたたちの後ろに、あれは隠れたわけね」
「ちょっと! よそうがいのりあくしょんはやめてよ! とかいはのありすでも、こまっ
ちゃうわよ!」
「むきゅ! ありすのいうとおりよ! ここは『ゆっくりはたべてもいいまんじゅうだっ
ていいつたえが……』とか、いうべきところよ!」
なんだか妙な雰囲気になってきた。
「そのセリフは負けフラグだからいいたくないのよ……と言うか、あんたら私と戦って勝
てると思ってんの?」
美鈴は右手に持った青竜刀を、ありすの目の前に突きつけた。
返答次第では、このままざっくりと殺さない程度に刺すつもりである。
「そんなさまつなことは、どうでもよかったのであった」
「どうでも良くない」
思い切り手加減して、左手でありすの顔面を殴りつけた。
本気で殴ればそれだけで、ゆっくりなんか砕け散る。
「ゆぐっ! う゛ぅぅぅぅ……ぐっ、ぐずっ!」
ありすは涙目になり、なにかを堪えるように小刻みにぷるぷる震えている。
「ぐっ、ぐじゅっ……い、いたくないわ!」
「うそつけ!」
再び左手で、今度も手加減してありすの顔面を殴りつけた。
次に、どう反応するか、美鈴はすでに予想している。
「ぐべっ! ゆ゛ぐっ……う゛ぅぅぅぅ……ぐじゅっ……か」
「かんじないわ? と言いたいの?」
言うであろうセリフを、先に言った。
「!? ……か……か、か……」
「ふふふっ……ほら、言ってごらんなさいよ?」
美鈴の予想は正しかった。
言おうとした言葉を先に言われて、ありすは言葉に詰まり、横目でゆっちゅりーを見る。
しかし、頼みの綱であるゆっちゅりーは、
「むきゅ……む~、むきゅ~ん……」
悲しそうな面持ちで左右に首──この場合は全身を振った。
「……ま、まいりました……ありすのまけよ……うっ、ひぐっ……う゛ぁぁぉぉぁん゛!」
火がついたような勢いで、ありすは泣いた。
「うん、なかなか面白かったわ……それじゃ茶番は終わりよ!」
恐怖を煽るように、これから何をするのかゆっくりわからせるように、非常に緩慢な速
度でありすに見せつけながら、美鈴は青竜刀を振り上げた。
■つづく■
あとがき
ご笑覧いただきありがとうございます。過日、18禁を投下しやがった者でございます。
またも美鈴です。美鈴大好きです。尻とか太ももとか。
だらだら書いていたら、かなり長くなってしまいましたので、とりあえず前編です……
虐待がさわりの部分程度で少なく、すみません。
あと、メタ表現が多めで、苦手な方には本当に申し訳ありません。
校正や校閲がまたも手抜きで、みょんな箇所多く申し訳ございません。
先日投下した際に「途中まで400行書いたのがある」的なことを書きましたが、今回の
ではなく別のやつです。
いくつか同時進行で、ちょこちょこ別の作業中の合間に書いてます。現在の所、これの
次を含めて6本ほど同時で……なお、全て東方キャラ×ゆっくりです。俺主人公は読むの
大好きですけど、今のところ自分で書くのは……加減を掴みかねてまして。
スレ見るのも作業中にちょい見な感じのため、ご感想いただいたのに反応できず申し訳
ありません。スレの流れが早いと、幽香の移動速度よりも鈍重な私では、流れに乗れない
のでございます。
なので、この場にてご感想のお礼をいたします。ありがとうございます。
エロ投下もおkなようでしたら、スレの空気を頑張って読みつつ、大丈夫そうな時にま
た18禁も投下させていただきます。
最後に……ゆっくりまりさ、別に嫌いじゃないですよ。むしろ大好きです。可愛い可愛いゴミクズですから大好きです。
最終更新:2008年09月14日 11:17