俺は虐待お兄さん。最近、
ゆっくり虐待のために大枚をはたいてあるアイテムを購入した。何でもゲーム用の機械らしい。俺はしばらく機械を検分し、その大まかなところを理解した。
 さあ、今日も張り切って虐待だ。
 ゆっくりぴこぴこ
 透明箱の中では、れいむとぱちゅりぃがゆっくりできずに飛び跳ねている。
「むっきゅうううううん!!」
「ぜまぐてゆっぐりできない!!おうちかえる!!!!」
 俺は二匹の前に姿を現す。
「おにいさん!!はやくれいむをここからだしてゆっくりさせてね!!きこえないの?ばかなの?しぬの?」
「ぱっちゅはからだがよわいのよ!!いたわってあげてね!!むきゅ!!」
 一切取り合わない。時間の無駄だ。用件だけを告げる。
「今日は君達がゆっくりできるものを持ってきてあげたよ」
 とり出したるは、大きな箱(テレビというらしい)と小さな箱(スーパーゆミコン)。
 まずテレビの電源を入れる。すると箱がぶうんと音を立て、表面が黒い光を放つ。
「ゆゆっ!!」
「すごいわ!ぶんめいのあけぼのね!!」
 お前に文明の何がわかるのかと。
 さらに、ゆミコンを操作する。箱の表面に開いた穴に、ゲームのカセットを差し込む。それからボタンを押す。
 テレビが鮮やかな色彩を映し出し、音を奏でる。その表面に浮き出た文字は――
<<ゆイナルファンタジー4 イージーモード>>
「おにいさん!!これなに!?すっごくゆっくりできそうだよ!!」
「きれいだし、すっごくちてきこうきしんがそそられるわ!!」
 落ち着かない素振りでぴょんぴょんと飛び跳ねる二匹。
「これを使って操作する」
 俺は小さな箱から伸びたコントローラーを、透明箱の餌穴から中に入れてやる。
「押してみて?」
「いわれなくてもわかってたよ!!ゆっくりとびのるよ!!」
 れいむが飛び跳ねて端末の上に着地する。その圧力で端末のボタンが押される。
 ぴっ。画面が切り替わる。
<ゲームスタート>
「ゆゆーん!!」
「すごいわれいむ!!そのちょうしよ!!」
「ぴっこ、ぴっこ……しあわしぇーーー!!」
 俺は大体の操作を説明してやり、ゆーゆーむきゅむきゅとはしゃぐ二匹を置いてその場を離れた。
 ゲームは既に俺が一度クリアしている。簡易な筋書きに加え、
おまけとしてもらった別の道具(プロアクションゆプレイ)によって、主人公の能力値のすべてを最大に調整してある。これなら超簡単。ぱちゅりぃ程度の考えがあればクリアできないことはないだろう。
「こんなもんすたー、れいむのてきじゃないよ!!ゆっくりしんでいってね!!」
「むきゅううううん(嬉)!!!!」
 壁越しの声に一瞬イラっとした。どうせこうげきコマンド連打してるだけだろお前……。
 数日後。
「ゆっくりやったよ!!!」
「むきゅ!むきゅ!」
 俺は一際大きいゆっくりの声で目を覚ました。
「やったのか……っ!?」
 俺は部屋へと踏み込む。
 テレビからは間違いなく、テストプレイの際に俺が見たのと同じ、大団円の結末が流れていた。
「ぜんぜんかんたんだったわ!!」
「ゆっくりぃぃぃ!!!」
 二匹のゆっくりはここ数日、夢中になって遊んでいたおかげで餌も少ししか食べていないし寝てもいない。
 若干やつれた表情でこちらに向き直る。
「おにいさんありがとう!!すっごくゆっくりできたよ!!」
「それは良かったね」
「たんじゅんだけど、それなりにきょうみぶかかったわ、むきゅ、むきゅ」 
「とりあえずお休みなさいな」
 休憩を取らせ、俺は次のゲームをセットする。
<<ゆラゴンクエスト>>
 さらに数日が経過した。
 今度は前のゲームほど手ぬるくはない。ゆっくり達は泣き、叫び、時に餡子を吐き出し、地団太を踏みながら、やっとのことでその場面――ゲーム最終盤の選択肢までたどり着いた。
 俺は物陰に息を潜めて、ことの次第を見届ける。
 *「よくきたな ゆっくりよ。わしが おうのなかの おう りゅうおうだ。 
 *「わしは まっておった。 そなたのような わかものが あらわれることを… 
 *「もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを ゆっくりに やろう。 
 *「どうじゃ? わしの みかたに なるか? 」
 れいむが箱の中の敵の親玉を威嚇するようにふくれっつらをする。
「ゆゆっ!!そんなのとんでもないよ!!せかいはぜーんぶれいむとぱちゅりぃのゆっくりぷれいすだよ!!かんちがいもいいかげんにしてね!!」
 やばい!このままでは――
 そう俺が戦慄したとき、ぱちゅりぃがれいむに異議を唱える。
「まってれいむ!!よくかんがえるのよ!!」
「かんがえるまでもないよ!!べぎらまーでいちころだよ!!」
 俺ははらはらしながら見守る。
「いいこと。ゆっくりはここまでたいへんなきずをおっている。えむぴーもすくないわ。
 いくらゆっくりがさいきょうのゆうしゃといっても、こんなつよそうなのとたたかってまけたらいちだいじよ!!」
 そりゃ一大事に決まってる。何しろこいつらセーブしないでぶっ通しなんだもん。俺?教えてやらないけどな!!
「ゆゆ!やりなおしはいやだよ!だけどかてばもんだいないよ!!」
「きけんなぎゃんぶるはしないのよ!ここは、せかいのはんぶんでゆるしてあげるのよ!!」
 ぱちゅりぃの提言に不満そうなれいむ。しかし、ここまでゲームを進めることができたのはぱちゅりぃの助言があってのこと。
 渋々といった感じで、ぱちゅりぃの言葉を受け容れる。
「ゆ……わかったよ、はんぶんでゆるしてあげるよ!!」
 ヤ ッ タ ー ! ! ! ! ! ! ! !
 俺は内心の喜びを押し隠し、物陰から歩み出る。
「おおっれいむにぱちゅりぃ、もうくりあするのか(棒読み)」
「そうよおにいさん!このげーむもあっけなかったわね!!
 いまやいちりゅうげーまーのぱちゅりぃにとってはねむねむすぎてあくびがでそうだったわ!!
 たったいま、あくのごんげとせっぱんではなしをつけたところなのよ!!」
 ねむねむ過ぎるのは寝てないからだよ、うん。
 もう一週間近くかかりっきりじゃねえか。
「かんだいなれいむがはんぶんでゆるしてあげるよ!!ゆっ!」
 れいむがボタンに飛び乗り、選択肢を選ぶ。
ニア は い
  いいえ
  ピコッ
 *「ほんとうだな? 
 *「では せかいの はんぶん 
  やみのせかいを あたえよう! 
 それは俺にとっては既知の展開。ゆっくり達にとっては意外な流れだ。
「ゆぅ…?やみのせかいじゃゆっくりできないよ!!ひかりのせかいをちょうだいね!!」
 *「そして…そなたに ふっかつの じゅもんを 
  おしえよう! 
  ちにはらろ ぐうのへなふみ 
  やりわげず げでぶ 
 *「これを かきとめておくのだぞ。 
 *「おまえの たびは おわった。 
  さあ ゆっくり やすむがよい! 
  わあっはっはっはっ 
 俺はりゅうおうと一緒に笑い出したくなるのをこらえて、ゆっくりのために復活の呪文を書きとめ、渡してやる。
「むきゅん!!なるほどね!!これをつかえばおーるくりあーなのね!!」
「さすがぱちゅりぃ!えんでぃんぐたのしみだよ!!」
 一文字ずつ復活の呪文を打ち込むれいむ。
 そして……
 ぴこりーん。
「なんで……?」
「うぞ……なにごれ……」
 れいむとぱちゅりぃは呆然とする。りゅうおうから貰った復活の呪文。それを使って現れたものはこのようなデータだ。
 ステータス
  ゆっくり  LV3
        HP 20
        ちから 7
        すばやさ 2
        かしこさ ⑨
        けいけんち 8
 りゅうおうの甘言にのせられたけっかがこれだよ!!
 先ほどまでのクリア直前のデータからは似ても似つかない、ほとんど無価値な代物だ。
「むきゅ!こんなぱらめーたーじゃゆっくりできないわ!!おかしいわ!むきゅ!」
「あいてむなくなっちゃった?れべるもひくいよ!?なんで!?なんでえええ!!???」
 混乱する二匹に、俺はダメ押しをしてやる。
「おいおいまさかりゅうおうなんかにだまされちゃったのかい?恥ずかしいなあ!!
 賢いぱちゅりぃがついていながら、どうしてこんなことになっちゃったんだい?」
「ゆぎくっ……」
 れいむがぴくっと身体を震わせ、怖い顔でぱちゅりぃに向き直る。
「ぞうだよ……ぱちゅりぃが!!ぱちゅりぃがはんぶんでゆるしてあげてなんていうから!!ぱちゅりぃのせいだよおおおお!!ゆぐううんんん!!!!」
「ぱっちゅはわるくないわ!!わるいのはりゅうおうよ!!」
 そう言いながらも恥ずかしさに身悶えるぱちゅりぃと、いままでの時間のすべてが無為に終わったことに絶望するれいむ。
 空腹を我慢し、
 寝る間を惜しんで一生懸命れべるを上げ、
 操作をミスっては塔から何度も墜落し、
 やっとたどり着いた結末がこんなものだなんて……
「うそ!うそよ!!こんなのうそよ!!!むきゅうううんんんんん!!!」
「やりなおすのやだああああ!!!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!!!」
 二匹仲良く、イヤイヤと身をよじって悲しむ。
「なるほどね。ぱちゅりぃのせいで、りゅうおうもたおせず、こんなゆっくりできないれべるになっちゃったんだね?
 ぱちゅりぃはばかなの?しぬの?」
「むっきゅーーーー!!!いわないでぇーーーーーー!!!」
「ゆああああああんんんんん!!!!」
 しかし、驚くべきことにぱちゅりぃはへこたれなかった。
 三日三晩泣き通したあと、燃える闘志を餡子に秘め、けなげにもふたたび立ち上がったのだ。
「むきゅ、むきゅ……れいむ、めいよばんかいのちゃんすをちょうだいね!!
 おにいさん!!こんなくそげーじゃなくてもっとぱっちゅにふさわしいのをさせてちょうだい!!」
 俺は感動のあまり目元に浮かんだ涙をふき取る。
「わかったよ、次は頑張るんだぞ。あと、その前に少し寝れ」
 ぱちゅりぃとれいむの次なる挑戦のために、俺はゲームを吟味する。
 経験を積んだ二匹には今までのようなゲームでは手ぬるい。ぱちゅりぃも簡単すぎてあくびが出たって言ってたし。
 真のゆっくりを味あわせてあげるには、やっぱりそれなりに(Lunatic的な意味で)手ごたえのあるゲームじゃないとね。
「よしっ!これだ!!」
 その後、二匹が餓死寸前まで<<ゆぺランカー>>に挑戦する羽目になったのは言うまでもない。
 おしまい
 □ ■ □ ■
 あとがき
 背景世界への知識が足りず、テレビ、電気の有無等が曖昧になってしまいました。もっと勉強せな……
 読了ありがとうございました。
 過去に書いたSS
 豚小屋とぷっでぃーん
 豚小屋とぷっでぃーん2
 エターナル冷やし饅頭
 れみりゃ拘束虐待
 無尽庭園
 ゆっくりできない夜 
最終更新:2008年09月28日 20:56