あれから3週間後。
少し生暖かい風が吹く真夜中。
庭に二匹のゆっくりが居た。
一匹はバレーボールぐらいの大きさのれみりゃである。パタパタと地面から数cm上を飛んでいた。
そして、数m移動するたびに後ろを振り向いている。
振り向いた先に居るのは、野球ボールぐらいの大きさのれみりゃである。
このれみりゃは普通と違い、右側の羽が無い。
羽の生えるべき場所はハンダで潰されていた。
それゆえに、この子れみりゃは飛ぶ事もできずに、地面を普通のゆっくりのように跳ねながら移動していた。
しかし慣れていないのか、どこかたどたどしい動きである。
どこに行くのかが気になったので追いかけることにした。
れみりゃと違って夜目の効かない俺は追跡に結構苦労したが
しばらくすれば目も馴れるものである。
二匹がついた場所は、近くの野原。そこに草や石が不自然に多く固まっている場所があった。
おそらくはゆっくりの巣なのだろう。すると今日は狩りの練習にでも来たのだろうか?
「うーうー!」
「う・・・うー!」
親れみりゃは歩き疲れている子れみりゃにすりすりとほっぺを擦りつけながら何かを言っている。
子の方はそれに嬉しそうに反応していた。
何を喋っているのか全くわからないのが結構悔しかったりする。
親れみりゃは草や石を退かし始めた。
一通り退かし終えると、そこにはポッカリと大きめの穴が現れた。
「うー♪」
親れみりゃはそこへ遠慮なく入っていく。
同時に穴の中から声が聞こえてくる。
「ゆゆ〜♪・・・ゆげぇ! どう゛じででびりゃがいるのおおおおおお!!!!」
「ゆっぐりじないでででいっでねえええええええ!!!!」
「うー♪うー♪あまあまー♪」
「ゆがあああああああああああ!!!」
「でいぶううううううううううう!!!」
「おぎゃーじゃああああああんんん!!!」
声だけで何が起きているのかよくわかるのも珍しい。
想像どうり、穴から出てきたれみりゃは、中身の無くなったれいむとまりさはを口で掴んで現れた。
そしてそのペラペラの皮をポイっと捨てると、子供にせかすように唸った。
「うー!うー!うー!」
「ううー!」
子供の方も、ポンポンと跳ねて気合十分なのをアピールしている。
それを見た親は、もう一度巣穴に入ると、口に何かを加えて戻ってきた。
「ゆゆ・・・ゆっきゅちはなちちぇええええええ!!!」
「まりちゃおいちくにゃいよおおおおお!!!」
子供である。3匹ほど居るだろうか。
親は子供を口から離すと、子供たちはすぐさま逃走した。
「ゆっきゅちちないでにげりゅよ!」
「おきゃーしゃんたちのびゅんまでゆっきゅちちゅるよ!」
「みんにゃでにげりゅよ!」
しかし悲しきかな。ナメクジと同じレベルのスピードでは到底逃げられまい。
大きさから考えるに恐らく生まれて一週間も立っていないのだろう。
「うっうー!」
親れみりゃがまずは見本を見せるようだ。
さっと飛び立つと、そのまま低空飛行で一匹のれいむに狙いを定める。
「ゆゆ! きょっちにきょないでね! きょないでね! きょないでね!」
何度も何度も拒否の言葉を口にするが、それが通じる訳もなく、親れみりゃはあっさりと子供の頭に牙を突きたてた。
「ゆびぃ!」
突然の、そして生まれて始めての痛みに表現しずらい顔で喚く赤れいむ。
親の方は容赦なく牙で中の餡子をチューチューと吸い上げる。
「ゆべべえべえええげええげえええぎゃあがいあsfにlkげあgyhゆdjgkk・・・・・」
餡子を吸われた影響か徐々に言語が狂っていっている。
他の二匹はその惨事を見ないように必死で走っていた。
「ごみぇんねれーみゅ! まりちゃはいみょうととれーみゅとおきゃーしゃんたちのびゅんまでゆっきゅりちゅるよ!」
「ちゅるよ!」
涙を流しながらの逃走である。
その後ろから子れみりゃが追いかけていることには気づいていないようだ。
子れみりゃは馴れない動きながらも必死に追いかけ、ついに赤まりさの帽子にまだ小さい牙を突きたてた。
「ゆぎゃん!」
しかし移動中だったためか、はたまた浅かったのか。
牙はまりさの皮を抉りながら、帽子をもぎ取っただけだった。
「ばりちゃのおびょうしぃいいいいいい!!!」
「だめだよまりちゃおねーしゃん! ひゃやくにげよー!」
「きゃわいいおびょうしいいいいいい!!!」
子まりさは泣きじゃくりながら子れみりゃに突進してきた。子れみりゃにとっては運がよかったのだが、
肝心の子れみりゃの方は、牙に引っ掛かった帽子が中々取れないらしく、どうするべきかオタオタしていた。
「うー?うー?」
「ゆっきゅちちねえええええええ!!!!」
まりさの渾身の体当たりが子れみりゃへと・・・・届かなかった。
その前に親れみりゃに阻止されたのだ。
後ろからがっしりと体を押さえつけられた子まりさは、何が起きたのかわからない。
「ゆ? どうちてぇうぎょけないの?」
黒く染まった牙が頭を狙っていることになど気付かなかった。
結局二匹は帰路に付くようだ。二匹仲良く夜道を歩いている。
なんだかんだでこのれみりゃは片羽という状況に順応してしまっているのだ。
ほらこう・・・なんというか・・・そう! 飛ぶことによるメリットを失った感じがしないのだ!
しかしこちらから手を出すのは俺ルール違反である。
そんな事を考えていると、二匹の後ろから何かが現れた。
「まりさとれいむのかたきだねえええええええええええええ!!! わぁかるよおおおおおおおおおお!!!!」
「ちぇええええええええええんんんん!!!」
「チーーーーーーーーンポ!!!!」
やたら気合いの入ったちぇんとみょんとらんが奇襲を仕掛けてきた。
「う! うー!」
気づいた親れみりゃはとっさに空中に逃げる。
「うー!うー!」
しかし空中に逃げられない子れみりゃはそのまま捕まってしまった。
「このれみりゃはかたほうしかはねがないんだねー。わかるよー。」
「うううううううううううう!!!!」
子を助けようと地面へ向かうれみりゃ。と、目の前に何かが現れた。
「よふけにゆっくりをおそうなんてとんだいなかものね!」
「むきゅん! さいていね!」
「そんなれみりゃ! ゆっくりしゅうせいしてやるんだぜ!」
「もこたんいんしたお!」
「ぱるすぃぱるすぃ!」
「おお、きめえきめえ。胴がないきめえ丸です。」
「オン!バシ!ラー!」
「うつしくざんこくに、このゆっかりプレイスからいね!!」
ワラワラと大量のゆっくりが現れたのだ。その数実に100近くである。
この状況とセリフから推察するに、どうやらこいつらはあの家族の仇討ちに来たらしい。
群れに属していたのかあいつら。
親れみりゃはこの光景を見て動きを止めた。
流石の捕食種も、この状況を見ればどちらが有利かぐらいはわかるら。
そして子供を取り返そうにも既に捕まっている。
この状況で取る選択肢は・・・
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!さくやあああああああああああああ!!!」
泣きながら逃げて行った。ていうか胴なしも「さくや」って言うんだ。
「うううううううううう!!!!!」
子の方も子で、親の突然の裏切り行為にただただ泣き叫んでいるだけだった。
これが他のゆっくりなら怒りをぶつけるなり泣きながら助けを求めるのだろうが
言葉の壁は厚いものである。
「ゆっくりしんでね!」
「じゃおおおおおおおお!!!」
「う!!!」
周りをゆっくりに囲まれた子れみりゃはリンチを受けていた。
簡単に死なないように手加減された体当たりで全身が土だらけになっている。
「うう・・・う!」
立ちあがろうとしてもすぐさま吹っ飛ばされる。そんな事をさっきから1時間以上続けていた。
「れみりゃにはゆっくりするしかくなんてないよ! ゆっくりりかいしてね!」
「このれみりゃはかたはねしかないね! だからおやにみすてられたんだね!」
「おお、おろかおろか。」
「むにょーなれみりゃはゆっきゅちちんでね!」
全員が嘲笑いながられみりゃをいたぶる。
れみりゃには反撃するすべなどなく、ただ涙を流しながら耐えるしかなかった。
「うううう・・・・」
涙が溢れているその目には何が映っているのだろうか。親との楽しかった日々だろうか。
まあ姉妹を食べたこいつにそんな日々が与えられただけ幸運だったのだ。仕方ないね。
れみりゃはついにピクピクとしか動かなくなった。
そこへ群れの中から一匹のゆっくりが現れた。
「みんにゃのきゃたきだよ! ゆっきゅちちんでにぇ!」
あの赤れいむである。その目には怒りの炎があった。
「ちね!」
そのままれみりゃの頬へ齧り付く。
「うわああああああああああ!!!!」
「ちね! ちね! ちねええええええ!!!」
れいむはひたすら噛みちぎり続けた。羽根以外の全てが無くなるまで。
俺は家に帰ると、庭のれみりゃの巣を設置してあるカメラで覗いてみた。
そこにはすやすやと寝ているれみりゃがいた。
俺はカメラを回収すると、その中へホースで十分ほど水を入れた。
その後、今日の事をデータとしてパソコンに入力する作業に取り掛かった。
別にゆっくりの研究をしている訳でもない。ただの趣味である。
『それから』
とある野原。そこにはゆっくりの群れがあった。
その中の一つ。群れの長のゆかりん一家の壁に、奇妙なものが飾ってあった。
それはれみりゃの羽だった。
「れいむ! ゆっかりおきてね!」
「ゆゆ! れーみゅおきるよ! ちぇんもおきちぇね!」
【あとがき】
空を飛べるのは逃げるのに便利ですよね
by バスケの人
最終更新:2009年01月21日 22:33