以下のものを読んだ後だと、より一層
ゆっくりできると思います。
具体的には、部屋の配置とおりんの
ゆっくりプレイスが良く理解できるかも。
別にどちらも内容に大きく関係しないので、読まなくても平気です。たぶん。
「さて……どうしたものかな」
「どうしたんだい? おにーさん」
「今度はね、普通のれいむとかまりさにしようかと思ってるんだ」
「ゆゆ! じゃあおりんの
ゆっくりプレイスはつかわないんだね!!!」
「…………」
「……つかわない、よね?」
「残念だったな。今回もこの部屋使うぞ」
「ゆがーん……ゆっぐりでぎないよぉ……」
◇ ◇ ◇
「さあ、こんかいみんなに集まってもらったのは、大事な話があるからです」
「むきゅ? パーティーかなにかかしら?」
「う~☆ パーティーは
ゆっくりできるんだどぉ~♪」
何でこんな時期にパーティーするんだよ。
一年のうちパーティーする機会だなんて俺の誕生日ぐらいだろ。
「残念、パーティーじゃないんだ。誰か正解することができたら、みんなに
ゆっくりとしたご褒美あげちゃうぞ!」
「ひゅい!? にとりにあたらしいすいそうさんをくれるの!?」
「くろまく~! あたらしいれいとうこ~!」
「あたいったらさいきょーね!」
「こぼね! こぼねこぼーね! こーぼねー!!!」
「……げーむき」
「じゃあえーりんも姫様と同じものをおねがいします!」
「――――」
「―――」
「――」
「―」
その後も騒がしい喧噪はしばらく続いた。
というかお前ら自分の欲しいもの言ってるだけだろ。俺の財政状況は無視か!?
あれだな、ご褒美と言ったのがまずかったらしい。もう全員
ゆっくりとしたご褒美のことしか考えていない。
あっ、でもれみりゃが欲しいものは『ごーじゃすなケーキ』だそうだ。それくらいなら覚えていたら駅前のコンビニで買っとこ。
「……さて、みんな言い終わったかな?」
「ゆゆぅ……もうだめだよおにーさん。おもいつかないよ。
ゆっくりしたものはさっきのものだけでいいよ……」
なにが『だけ』だ。
全部買ったら間違いなく家計が火の車になる。むしろ出血多量で入院コースか?
とりあえず赤くなるのには違いあるまい。
「それじゃあ、みんなに大事なお話をするぞ! それはな―――」
「それは―――?」
「なんと、みんなの中から何匹かが
ゆっくりできなくなります!!!」
「「「「「ゆうぇえぇぇぇ!?!」」」」」
◇ ◇ ◇
次の休日。
「ゆゆっ! やめてね! れいむをはなしてね!」
「まりさをはなすんだぜ!
ゆっくりできないんだぜ!」
俺は準備が終わった後、山で適当に二匹を捕まえた。
他の
ゆっくりと違って、わりと見つけやすいのが便利だよな。
「いいかい? 今日はね、れいむとまりさに
ゆっくりとしたお話を持ってきたんだ」
「ゆゆゆっ!?
ゆっくりできるの!?」
「れいむ、だまされちゃだめなんだぜ! にんげんさんは『じゃあく』で『やばん』ないきものなんだぜ!」
おお、このまりさは意外とましだな。
人間に近づこうとは思わないのは、生きていく上で正解だ。
まあ、こうして俺に捕まったら意味がないわけだけれど。
「なに、そんなにむずかしいことじゃないよ。
ゆっくりとしたレースにかてば、あまあまをあげるんだ」
「ゆっ! まりさ、あまあまだよ!
ゆっくりさんかしようよ!!!」
「だめだぜ! きっとまけたら
ゆっくりできなくなるんだぜ!!」
「あはは、そんなことないよ。負けたところでおれは何もしない。本当さ」
「ほら、なにもしないって!
ゆっくりできるよ!!!」
「ゆゆーん……」
「まりさはむれでいちばんかりがうまい
ゆっくりなんだよ! れいむはいちばんうつくしいゆっくり! ふたりならむてきだよ!!!」
「れいむ……でも……」
お、迷ってる迷ってる。もうひと押しだな。
「大丈夫。レース中は死ぬことはない、簡単な障害物競走さ。それに相手は我が家にいる
ゆっくりとかだから、勝てると思うよ?」
「……ほんとうに、しなないんだぜ?」
「ああ、レース中には絶対に死なないよ。もし死んだら、生き残った方に好きなだけあまあまをあげよう」
その一言で、まりさは折れた。
◇ ◇ ◇
さて、今回の虐待の内容を説明しよう!
ゆっくりレース会場はおりんの
ゆっくりプレイス、もとい観察系虐待部屋!
今この部屋は襖が外されているため、四方のうち一か所だけ壁がない部屋をイメージしてほしい。
中央にはベニヤ板で作った壁が一つだけ、入口から延びている。
つまり、入口の右から入って左から出るだけの、凹型のコースというわけだ。
ゆっくりレースが開催されるたびに、俺はこのレースに仕掛けを施す。
そして、先にゴールした方が優勝だ!
「―――と、いうのはお前たちに説明しても分かんないよな。こっちから入って、ぐるっと回ってここから出てこれたら勝ちだ」
「「
ゆっくりりかいしたよ!!!」」
「俺が『よーい、ドン!』って言ったらスタートだ。わかるか?」
「「とうぜんだよ!!!」」
うんうん、素直な
ゆっくりは大好きだぞ。
さて、我が家の
ゆっくりはどういう反応だろう?
「…………」
「おや? にとり、
ゆっくりしてないな?」
「……
ゆっくりできないよ」
「そんなこと言うなって。もし勝てたら、新しい水槽をあげるんだぞ?」
「…………」
にとりが元気ないのも無理はない。
今ここら辺全体は、一晩中かけたエアコンの『ドライ』のせいで、すごい乾燥した空気になっている。
おそらく今この瞬間も、いつ乾ききってしまうのか心配で
ゆっくりできないに違いない。
ちなみに我が家の
ゆっくりは、選手以外は観察部屋か二階にいるよう命令してある。
「というわけで、こっちの一番手はにとりからだ。そうそう、お前たちは片方でも先にゴールできたら勝ちだからな」
「ゆっゆっゆ! おじさんはまりさたちをあまくみてるね?」
「そこのにとりはすごく
ゆっくりしているけれど、れいむたちはもっと
ゆっくりしているんだよ?」
「「
ゆっくりかったもどうぜんだね!!!」」
うん、まあ、間違っちゃいない。
今回は最初から、お前たちが勝つようにセッティングするんだからな!
「それじゃあ第一レース。よーい、ドン!」
◇ ◇ ◇
見えきった勝負だ。結論から言おう。
にとりは負けた。
乾燥しかけた体だとうまく動けないとは知っていたが、まさか魔理沙たちがゴールするまでに半分も進めないとは思ってもいなかった。
「ゆゆ~♪
ゆっくりかったよ! やくそくどおりあまあまをちょうだいね!!」
「ゆゆーん♪ まりさはやっぱり
ゆっくりしてるよ♪」
まりさたちはもう有頂天である。
実際にレースに勝てただけじゃないだろう、飼い
ゆっくり―――つまり、自分たちよりも
ゆっくりしている
ゆっくりに勝ったのだ。
まりさたちだって、飼い
ゆっくりの境遇を知らないほど馬鹿じゃない。
自分より上のものに勝つということは、とても
ゆっくりできることなのだ。
「…………」
反対ににとりは悔しがっていた。
ただ無言で涙を流していた。
にとりにしてみれば、自分より不細工で
ゆっくりしていない
ゆっくりに負けたのだ。
それも、にとりが望まない勝負によって。明らかに負けるとわかってても、参加しなくちゃいけなくて。
今この場で、そのことをれいむとまりさに言うこともできなくて。
ここでにとりは、ただの道化だった。
「……おい、にとり」
ここで俺は、にとりにだけ聞こえるように言葉を掛ける。
だが、にとりは俺を見ようとすらしない。逆に、そっぽを向かれてしまった。
……これはちょっと虐めすぎたかな。
「あとで胡瓜を買ってやるから、機嫌を直してくれ。な?」
「―――リ」
「ん?」
「3キューリで、
ゆっくりゆるしてあげるの」
「ああ、わかった。三本だな」
よかった、それなら100円あれば十分だ。
何で金を気にするかって?
若手社員に金が余ってるわけないだろ。虐待も経済化の時代なんだよ!
「ゆっ! おじさん!」
「ん? どうしたまりさ?」
「やくそくどおり、あまあまちょうだいね!!!」
「ああ、そうだな、
ゆっくり待ってろ」
そして俺はまりさたちにも見えるよう、近くのちゃぶ台の上のお皿に、二粒だけ
ゆっくりフードを置いた。
「ほら、まずはこれだけだ」
「ゆっ! これだけじゃなりないよ!! もっともってきてね!!!」
「そうだよ! これだとれいむは
ゆっくりできないよ!」
「まあ待て、これからお前たちが勝つたびに、この
ゆっくりフードは2倍になる……って言っても解らんか。
いいか! まりさたちは勝てば勝つほど、もらえるあまあまが一気にふえるんだ!!!」
「「
ゆっくりりかいしたよ!!!」」
うん、単純な言葉って便利だよね。
「んじゃあ、次はちるのだ」
「あたいってば
ゆっくりさいきょーね!!!」
◇ ◇ ◇
「ちゃんといわれたとおりだよ! はいったあと、はやくでてくればさいきょーだよ!!」
「だからって、入口から入ってすぐ出てきたらルール違反だろ……」
実は最初からちるのにはこうなるように、わざと聞き間違える説明をしたのだが。
「ゆっふっふ、ちるのはやっぱり⑨だね!」
「『るーる』さんもりかいできないなんてね! おお、おろかおろか」
「ちるの、まるきゅーじゃないもん! てんさいだもん!」
「はいはい、それじゃあちるのはそこにいな。―――あとでこっそりアイス買ってやるから」
「ゆっ……
ゆっくりりかいしたよ!!!」
どうでもいいけど、ちるのってバカと言うより短絡思考なだけだよな。
「んじゃ、
ゆっくりフードをほいほいっと」
「ゆゆぅ? あんまりふえてないよ!」
「大丈夫だ、次からがすごいぞ」
次のに勝てば八個になるのだ。
慎ましい
ゆっくりなら十分な数だろう。そんな
ゆっくり、野生では見たことないが。
「それじゃあ、次のれてぃに挑戦だ!」
その前にエアコンを暖房にしないとな。……うわ、あっちぃ!
夏に暑さ我慢大会する奴の気持ち、俺にはわからんよ。
◇ ◇ ◇
「く~ろ~ま~く~……」
「ゆゆっ! れてぃ、
ゆっくりしてね!」
正直、れてぃは善戦した。
最初は中のバニラアイスも動くにはいい塩梅だったのだが、エアコンの下にきて暖房をもろに浴びた時、れてぃは動けなくなったのだ。
そしてすぐに暖房を切ったのだが、これ以上ひどくならなくとも回復するわけがなかった。
俺はレースが終わった後に待機していたちるのへ冷やすよう命令して、今に至る。
れてぃはまりさたちに悔しがる余裕もないらしい。
割と本当にやばかった。
「……動けるようになったな? とりあえず冷凍庫に入ってろ。後で様子を見に行く」
「さて、まりさたちにはあまあまをあげよう。ほれほれ」
「ゆゆっ! ……ゆ? これだとまりさは
ゆっくりできるけれど、れいむは
ゆっくりできないよ!」
「ほんとうだよ! れいむのぶんしかないよ!」
お前たち、よくその会話でけんかしないな。どっちも自分の分が優先かよ。
「大丈夫。次もまりさたちが勝てば、これが倍……つまり、二匹分もらえるんだぞ?」
「ゆゆゆっ! じゃあさっそくちょうせんするよ!」
「ゆふん! もはやかちはきまったもどーぜんだね!!!」
ああ、決まってるとも。
今のうちに良い思いをするがいいさ。
◇ ◇ ◇
その後も出来レースは続き、まりさたちは勝ちを重ねていった。
れてぃの次に出てきたゆゆこには驚いたようだが、俺が天井にゴムで吊るしたお菓子を吸い取ろうと頑張っている間にゴールした。
ゆゆこには今度、腹二分目まで食べさせてあげる約束をした。ちなみに普段は腹一分目も食べさせていない。
その次のてるよふは楽勝だったでろう。全く動かなかったのだから。
でも、なぜか三百円を要求された。今度ゲーセンでシューティングをやるらしい。
次はえーりんである。普通の仕掛けであれば、まりさたちに負けることはなかったはずだ。
だが、途中にてるよふを置いたら動かなくなった。えーりんは何もいらないらしい。いいやつ。
続いてもこたんを走らせた。すると途中のてるよふを攻撃しようとして、えーりんと喧嘩を始める。いつもの光景だ。
欲しいものはタバコとかほざいていたため、棒付きキャンディを買うことにした
さて、次はえーきさまだ。今は走らせてるのとは別の野生の
ゆっくりの足を焼いて置いといた。
まりさたちは『
ゆっくりできないね!』と言いながら去って行ったが、えーきさまは延々と人間に近づかないように説教し続けた。
ちなみに、欲しいものはシークレットブーツ。不可能だからあきらめてもらった。
じゃじゃーん! 次はおりんである。おりんはゾンビ
ゆっくり五匹との参加である。
そのときれいむが『かずがおおいなんてはんそくだよ』なんて言っていた。ゾンビは遅いからむしろハンデだよ。
途中に空気しか入ってないビニールプールを、道幅いっぱいになるよう置いておく。高く跳ねれないゾンビは全滅し、おりんは泣いた。
要求してきたのは、次こそこの部屋を使わないでとのこと。……気が向いたらな。
最後のいくさんは空気を読んだ。
まりさたちとつかず離れずの接戦の末、なんと僅差でれいむが勝った。最後の大ジャンプが功を奏したらしい。
まりさも『
ゆっくりとしたきょうてきだったぜ……』などと言い、熱い握手(?)を交わしていた。
ちなみに欲しいのはダンシングレボリューション。買えないといったら、ならなにもいりませんと返してくれた。
キャーイクサーン!!! 素敵すぎるぜいくさん!!!
さて、みんなから聞いた欲しい物をメモ帳にまとめたのだが、これなら何とかなりそうだ。
飼い主って大変だね!
「ゆっひょぉぉぉ……」
「ゆぅぅぅ……」
まりさとれいむは、ちゃぶ台の上を眺めて感嘆の息を漏らしていた。
ちゃぶ台の上は
ゆっくりフードで山ができている。もちろん、ピラミッド状の、とんがった山だ。
ここまで俺がちゃんと置いていれば、1024個である。
もちろん途中から数えるものめんどくさくなった。
だから適当に箱から出して山にしているだけなのだが、それでもすごさだけは伝わっているはずだ。
「
ゆっくり……これだけあれば、いっしょう
ゆっくりできる……」
「ちがうよまりさ……まごまでのこしていけるよ……」
ちなみに、そこまで量はない。
消費期限を考えなければ、ちびちびと我慢しながら食べれば一生持つかもしれないが、強欲な
ゆっくりであれば三日で食べきるはずだ。
付け加えるならば、この量ならゆゆこの毎日の食事である。これで腹一分目もいかないって……
「まりさ……正直俺は、お前を見くびっていたようだ。我が家にこれ以上のあまあまは、ほとんど残っていない。だから、次で最後にする!」
もちろん嘘である。
本当はゆゆこがいるため、問屋から卸してもらっているほどだ。
「ゆっ! いさぎよいね! でもまりさはまけないよ!!!」
「わかった、挑戦するんだな。……ちなみに次に勝った時、このあまあまの山をもう一つつける!」
「「ゆゆゆっ!?」」
要するに二倍である、最初と言っていることは変わらないのに驚く
ゆっくりたち。
「……ゆっ! 大丈夫だよ! たとえちぇんでも、けーねでも、……いまなられみりゃやふらんにも勝てるよ!!!」
「よし、言おう。次の対戦者は……この俺だ!」
「「……ゆ?」」
れいむとまりさは目に見えて呆然としていた。
相手が強すぎるから? いいや、逆である。運が悪い相手を憐れんで、だ。
ゆっくりは基本的に顔と帽子の大きさで相手の強さを判断しているため、にんげんを軽視する傾向にある。
最初は人間を警戒していたまりさも、先ほどから美
ゆっくりに勝ち続けている今では警戒心が薄い。
むしろ『いまならにんげんさんにだって……かてる!』と思っていても、なんの不思議ではないのだ。
「……にんげんさん、こうかいしないね?」
「ああ、大丈夫だ……負けた時の覚悟は、できている」
それどころか、俺は勝った時のことも考えている。むしろそっちがメインで。
「それじゃあ、合図はいくさんに頼もう!」
「
ゆっくりよーい……ドンですわ!!!」
テクテクテク、テクテクテク、テクテクテク。
はい、ゴール。
「「……なんでぇぇぇ!?!」」
いや、当然だろ。
◇ ◇ ◇
「さて、れいむとまりさ。お前たちは敗者になったわけだ。理解してるか?」
「「
ゆっくりりかいしたよ……」」
二匹はすっかり意気消沈していた。
まあ、最後が圧倒的過ぎたからな。
「というわけで、後はお前たちの隙にするといい。もう自由にどこかに行ってもいいぞ」
「「ゆゆゆ!?」」
「に……にんげんさん、あのあままのおやまさんは?」
「ん? ああ、お前たちのものだ」
「……まりさたちになにもしないの?」
「やだな。そう言う約束だろ? 忘れちゃ困るな」
「「ゆゆゆゆゆ!?!」」
一気に顔に輝きを取り戻していくまりさたち。
まるで夜中に部屋の明かりを点けたような変わり具合だ。
「「ゆわーい!! ゆわーい!!」」
「それじゃあ、後は頑張って逃げてくれたまえ」
「……ゆ?」
気がつけば二匹の周りは、
いくさんが、
おりんが、
えーきさまが、
もこたんが、
ゆゆこが、
れてぃが、
ちるのが、
そしてにとりが、隙間なく囲んでいる。
「まあ、自分たちがバカにしたんだから俺は関係ないということで。みんな、絶対に殺すんじゃないぞ?」
「「「「「
ゆっくりりかいしたよ!!!」」」」」
「「ゆんぎゃぁぁぁ!?!」」
そして二匹は連れ去られていった……のだが、なぜかゆゆこだけが戻ってきた。
「ハーフーーー!!! こぼねっ♪」
嬉しそうにに
ゆっくりフードの山を吸いこんだゆゆこ。
それがれいむとまりさの物だったのは、一夜にも満たない、儚すぎる時間だった。
「まあ、せっかくあいつらにあげたのに食べてもらえないのはかわいそうだからな……
おいゆゆこ。今日の分はいつも通りやるから、それとあわせて腹二分目の約束は帳消しな?」
「こーぼねー♪」
「う~♪ こんかいはいじわるされないし、れみりゃのひとりがちだどぉ~☆」
「ああ、お前はここの片づけな」
「うぅー!? ひどいどぉー! おうぼうだどぉー!!」
「片付けなければ明日のぷっでぃ~んは抜きだ」
「うわぁぁぁ!?!」
安心しろ、お前にはすでに『ごーじゃすなケーキ』を買ってある。
明日のおやつの時間には、それを出してやろう。
もちろん目の前で俺が食べるのだが。
◇ ◇ ◇
れいむとまりさの扱いは、ひどいものだった。
「かっぱっぱー♪ もうちょっとみぎにいどうさせて」
「ゆっ! こうだね!」
「およよ、あばれないでください」
最初は、にとりが新しく作ったパチンコの実験台にされた。
いしさんが当たって
ゆっくりできなかった。
「あたいったらさいきょうね! ……へくちっ!!!」
「…………」
「…………」
「では、もこたんにもっていきますね」
次に、ちるのに何回か氷漬けにさせられた。
寒くて
ゆっくりできなかった。
「くろまく~♪」
「じゃじゃ……さむっ! れてぃ、
ゆっくりたべちゃだめだよ?」
「くろまくー……」
れてぃの中は暖かかったけれど、
ゆっくりと融かされた。
怖くて
ゆっくりできなかった。
「ハフッ! ハフッ!」
「ゆんぎゃぁぁぁ!!!」
「れいむのかわいいほっぺがぁぁぁ!?!」
ゆゆこのおやつにほっぺを食べられた。
喰われて
ゆっくりできなかった。
「じゃあ、次はこの『す』さんを入れてみましょうか。大丈夫、
ゆっくりできるかもしれないわよ?」
「……ユッグリデギナイヨ」
「あら? ゾンビ
ゆっくりみたいな話し方になったわね?」
えーりんには変なものを注射された。
くすりさんは
ゆっくりできなかった。
「もっこたん~♪ もこたんの『すみびやき』だよ~♪」
「あじゅいぃぃぃ!!!」
「もうやべでぇぇぇ!!!」
もこたんには『すみびやき』にされた。
暑くて
ゆっくりできなかった。
「―――いいですか?
ゆっくりしたことばにつられるのはしかたありません。ですが、きめたのはあなたたちなのです。ですから―――」
えーきさまにはお説教された。
お説教は
ゆっくりできなかった。
まりさたちを捉まえてた
ゆっくりも、
ゆっくりできていなかった。
「ん~~~……ふぃーばー!!!」
「ゆびびびびび!!!」
「ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!!」
いくさんにはふぃーばーされた。
ふぃーばーは
ゆっくりできなかった。
そして、最後にたどり着いたのは―――
◇ ◇ ◇
「……さて、お前たち? 俺のところに回されたということは、どういうことだか解るな?」
「…………」
「…………」
ほとんど目が死んでるな。
まるで『しんだほうが
ゆっくりできるよ……』とでも言ってそうだ。
いや、目は口ほどに物を語るという。
ならば、そう考えて間違いないだろう。
「さて、お前たちも今日で最後だ……最後で最大の苦痛を与えてやる」
「「…………」」
れいむとまりさは、何も答えない。
体は傷だらけで餡子もボロボロだろうが、どこも欠損はなくて生きているのだ。
答えれないわけじゃない。答えたくない、自分で言って理解したくないのだろう。
「じゃじゃーん! さいごはおりんのでばんだね!」
どこからか、おりんがやってきた。
後ろにはゾンビ
ゆっくりを連れている。
「れいむとまりさは、しんだあともおりんのゾンビ
ゆっくりになるんだよ! ゆっくりしていってね!!!」
「ああ、お前の出番ないから」
「どぼじでそんなごどいうのぉぉぉ!?!」
何か勘違いしていたのか、おりんは突然泣き出した。
いや、だってお前、この前みんなと一緒になってまりさたちを虐めてたんじゃないのか? それで充分だろ。
「とりあえず、お前たちは元々いた群れの近くに帰してやる」
「「……ゆゆ?」」
「おりんはゆっぐりでぎないぃぃぃ!!!」
「はいはい、おりんは黙ってろ。……もう一度言おう、群れの近くに帰してやる。そして、静かに群れと一緒に暮らすんだな。」
おお、なんか信じられないという顔しているぞ。
まあいいか。おれは返答なんて求めていない。さっき言ったことを実行するだけだ。
そしてれいむとまりさは、本当に群れの近くまで返されたのだった。
◇ ◇ ◇
「むきゅ、ほんとうによかったの? あのれいむたちをにがして」
「ん? ぱちゅりぃは不満なのか?」
「当然よ! もしあのれいむたちが、ほかのにんげんさんになにかしゃべったら……」
「ははは、何の問題もないよ。―――少なくとも俺は。
むしろ俺は
ゆっくりした人と言われ、
ゆっくりしてないのはここの
ゆっくりたちだろうと言われるね」
「……ぱちゅりぃはどうなってもしらないわよ」
「ああ、大丈夫。どちらにしろあの
ゆっくりたちは、もうすぐ最高に
ゆっくりしないまま死ぬだろうから」
「むぎゅー! どこにそんなほしょうがあるのよ!!」
「……いいか、よく覚えておけ。群れのことで―――社会性のことで、人間以上に詳しい生物なんていないんだよ」
野生動物は一度大きな怪我を負うと、生きていくことはできない。
それは
ゆっくりも同じこと。
弱った
ゆっくりが生きていけるわけがない。
群れに戻ったれいむとまりさは、満足に動けなかった。
そのため満足な狩もできず、群れの中でも白い目で見られた。
ゆっくりできたはずのみためだって、虐待のせいで火傷だらけで、髪もかざりもボロボロ。
群れの
ゆっくりはこっちを見るときに目をそらす。
そんな
ゆっくりが復讐しようと言っても、誰も付いてくるわけがない。
最後は邪魔者扱いされて死んでしまった。
群れの仲間に殺されてしまった。
それを咎める者は誰もいなかった。
これがれいむとまりさ、最後の
ゆっくり生における、たった二日間の全容である。
あとがき
チルノの裏の会話で普通の
ゆっくりの虐待を望んでいた人がいたので、
ゆっくり徹夜で書いてみました。
前に書いたもの
B級ホラーとひと夏の恋
ゆっくりできないおみずさん
最終更新:2022年01月31日 03:01