「ゆ――……」
まりさは目を覚ました。
なぜか知らないが、体の節々が痛い。いったいどうしたというのだろう?
訳も分からず、周りを見渡した。
見覚えのある壁、見覚えのある天井、そして見覚えのある草のベッド。
忘れようはずもない。ここはまりさの巣だった。
なぜ自分はこんなに傷だらけでベッドに横たわっていたのだ?
狩りで失敗でもしたんだっけ? それとも、れみりゃにでも襲われて、何とか逃げ切ったからなのか?
何が起こったのかを思い出そうとするまりさ。しかし、なかなか思い出せない。
そんな時、入口のほうから、聞きなれた声が聞こえてきた。
「……まりさ、おきたの?」
聞き違える筈もない。まりさの最愛の
ゆっくりにして、未来のまりさの妻であるれいむの声だ。
なんでれいむがここにいるのだろう? 今日、遊ぶ約束をしていたかな?
もしかしたら、この痛みの原因をれいむが知っているんじゃないか?
いや、そうに違いない!! やさしいれいむは、何でか忘れたが、傷を負った自分の看病を付きっきりでしていたのだろう。
やっぱりれいむは素敵なゆっくりだ!! まりさは痛みも忘れて、入口に這っていった。
なぜれいむの声が暗いのか、そして、いつも巣の中まで入ってくるれいむが、今日はなぜ入ってこないのかなんて、まりさには些細な事に過ぎなかった。
「れいむ、まりさはゆっくりげんきになったよ!!」
入口から出て、まりさはれいむの姿を見つけ、最高の笑顔で言葉をかけた。
痛みはあるが、そんなの気にしない。いや、れいむの顔を見たとたん、そんなもの全部吹き飛んでしまった。
しかし、当のれいむは、そんなまりさを見て、表情を変えない。まるで能面のような顔だ。
能天気なまりさも、さすがに気になった。
「れ、れいむ、どうしたの? まりさがげんきになったのがうれしくないの?」
「そう……げんきになったのね。よかったね……」
「れいむ……?」
いったいどうしたというのだ?
れいむはまりさの看病をしていてくれたのではなかったのか?
まりさが元気になったというのに、なぜれいむはあんなにも無表情で居られるんだろう。
まりさは気づいていなかったが、れいむは無表情であるものの、その体は小刻みに震えていた。
まるで、怒りを抑えつけるかのように……
「ねえ、まりさ。まりさはうそつきじゃないよね?」
「ゆゆっ!? なんでそんなこときくの?」
「いいからこたえてね……」
「あ、あたりまえだよ!! まりさは、れいむにうそなんかつかないよ!!」
「そうだよね。うそなんかつかないよね。ううん、つかなかったよね……」
「……れいむ、いったいどうしちゃったの?」
「ねえ、まりさ。なんで、にんげんにかったなんてうそついたの? れいむはうそつかなくても、まりさのことがだいすきだったよ」
「ゆっ!? にんげんにかったって……………ゆゆゆゆゆっ!!!!!」
そのれいむの言葉が、まりさの餡子を刺激した。
そうだ!! すべて思い出した!! まりさは、あの召使いに裏切られて、ボコボコにされたのだ。
思い出すと、とてつもなく腹が立った。
れいむの出現で忘れていた痛みも、あのことを思い出し、再びまりさを襲ってくる。
更にあの召使いに激しい憤りを感じた。
よくも、愛するれいむの目の前で大恥をかかせてくれた。次に会ったら、ただではおかない!!
最後のあたりは記憶にないが、まりさが自分の巣にいる以上、おそらくれいむやぱちゅりー達が、気絶したまりさを、何とか巣まで運んでくれたのだろう。
本当にれいむには頭が上がらない。
しかし、それなられいむがこんなにも暗い顔をしているのが、余計腑に落ちない。
心やさしいれいむなら、まりさが助かったことを真っ先に喜んでくれるはずだ。
以前、狩りで傷を負った時も、何日も付きっきりで看病してくれ、傷がなおったら、自分のことのように嬉しがってくれたものだ。
そういえば、れいむはさっきなんて言ってたんだっけ?
確か、「なんでにんげんにかったなんてうそついたの?」だったっけ?
どういう意味だ? まりさは嘘なんて付いていない!!
確かに、2度目は、男の卑怯な戦法によって惜しくも勝利を逃したが、1度目は紛れもなくあの男に勝ったのだ。それだけは間違いない。
れいむが聞いているのは、1度目のことについてだろう。
「れいむ、まりさはうそなんかついていないよ。たしかに、さっきはゆだんしてまけちゃったけど、そのまえには、まりさのかんぜんしょうりだったんだよ!!」
「まりさ……もうそんなうそつかないでよ……」
「うそじゃないよ!! ほんとうにまりさはかったんだよ!! なんでしんじてくれないの!!」
「どうすればしんじられるの? あんなにぼこぼこにやられておいて……」
「ゆっ……そ、それは、だから、あのめしつかいがひきょうなてを……」
「なんにもひきょうなことはしてなかったよ……れいむにだってそんなことはわかるよ。ゆっくりうそをつかないでね」
「……ゆゆー」
確かに、悔しいがれいむの言う通りだ。
男が卑怯な手を使っていないことなど、言われなくても分かっていた。
しかし、プライドの高いまりさは、それを認めるにはあまりにも傲慢で、あまりにも若すぎて、そしてあまりにもゆっくりすぎた。
もう、この際2度目の戦いはどうでもいい。問題は1度目の勝利だ。れいむもそれを聞いているのだ。
誰が何と言おうと、あれは確実にまりさが勝った。あの男だって、それを認めたのだ。
そこだけは、どうしても譲れない。
まりさは、どうして信じてくれないれいむに、誤解であることをしっかりと説明する。
「れいむ、ちゃんとまりさのはなしをきいてね!! まりさはちゃんとあのめしつかいにかったんだよ!!」
「……」
「まりさのひっさつわざ『まりさすぺしゃるでらっくす』がめしつかいにあたって、めしつかいはたおれたんだよ!!」
「……」
「そのあと、あのめしつかいは、まりさのつよさにほれて、まりさのめし『もうやめてねっ!!!!』つかいにしてあげ……」
れいむの声がまりさの言葉を遮る。それほどまで大きな声だった。
まりさは、未だかつて聞いたことのない、愛しのれいむの悲鳴にも似た叫びに、ビクッと体を震わせた。
「いいかげんにしてね!! もうぜんぶわかってるんだよ!!
まりさがにんげんになんてかってないことも!! めしつかいなんてうそなことも!! にんげんのいえからおかしをかってにもってきたことも!!
ぜんぶ、れいむたちはわかってるんだよ!!!」
「ゆゆっ!! れいむ、なにいってるの? まりさはうそなんて……」
「いいかげんにしてっていってるでしょ!! いつまでもよくもそんなうそをいってられるね!! まりさのせいで、あ、あ、ありすは……」
「ありすがどうかしたの?」
「まりさのせいでありすはしんじゃったんだよっ!!!」
「ゆ―――!!!! ありすがしんだって……なんでっ!!!」
「かわにじぶんからおちていったんだよ!!」
「ゆゆっ!! な、なんで……」
まりさは分からなかった。
ありすが自殺したことではない。いや、それも気にはなっているが、それ以上に気になることがあった。
なぜ、ありすの自殺がまりさのせいなのかだ!!
まりさはありすに死んでほしいなんて思ったことは一度もない。
れいむほどではないが、ありすも小さいころからよく知った仲だ。よく遊んだ仲だ。親友だったと自負していた。
それがなぜ、まりさのせいなのかが理解できなかった。
「な、なんでまりさのせいなの? まりさ、何にもしてないよ!!」
そんなまりさの言葉に、れいむはあれだけ激しかった口を閉ざし、俯く。
必死で歯を食いしばっている。何かに耐えるように……
まりさは、れいむの反応を待った。いくら考えても、分からないものは分からないのだ。
1分程度だろうか? 森の中を静寂が包んでいたが、その静寂を壊したのはれいむだった。
れいむは、人間の家に行く前にまりさが演説をした切り株の上に登る。
まりさの巣は、背の高い草に覆われている場所にあるので、今までれいむの下半身(口より下)が見えていなかった。
しかし、一段高い切り株に上ったことで、れいむの全貌が見えるようになった。
まりさは、そんなれいむの姿に言葉を失った。
「な……な……なんなの、そのすがた……」
まりさは、やっとの思いで、言葉を発した。それほど、れいむの姿が衝撃だった。
れいむの口より上の部分は、いつもと変わらぬ、綺麗なれいむだった。
しかし、その下には、自然には決して出来ない黒ずんだ痕が刻み込まれていた。
やけどの跡だ!!
以前、雷が森の木に落ち、山火事が起きたことがあった。
幸いにも、その後都合よく大雨が降り、大火災は免れたが、何匹かはその火事で帰らぬゆっくりとなり、そして何匹かは醜い火傷を負った。
それで、まりさはれいむの傷跡が火傷であると分かったのである。
しかし、まりさが言葉を発せられなかったのは、火傷の痕があったからではない。
綺麗なれいむの体に一生物の傷が付いていることは許せないことではあるが、そんな程度で壊れるほど、まりさのれいむに対する愛情は薄くない。
まりさがそれを見て言葉を失ったのは、れいむが火傷を負った場所のせいだ。
口の下。顎よりも少し下の部分。そこは、ゆっくりたちの生殖器があるところなのだ!!!
相当な熱さの何かを押し付けられたような歪んだ痕。
完全に炭化して黒ずんだ皮。
れいむの奥の奥まで、火傷の痕があるのが、下から見るとはっきりと理解できた。
「まりさ……わかったでしょ……」
「な……なんで……なんでこんなことになったの?」
「まりさをぼろぼろにしたあのおじさんがやったんだよ……」
「おじさん? まりさのめしつかいのこと?」
「そうだよ……」
まりさは呆然としていた。考えを纏めることが出来なかったのだ。
え、れいむのあそこってあれがある場所だよね?
なんでそこを火傷してるの?
火傷してるってことは、もう子供が産めないってこと?
そんなわけないよね!! だってれいむは将来まりさのお嫁さんになって、ゆっくりした赤ちゃんを産むんだもんね!!
あれ、でも、あんな黒ずんでる所に入れて、本当に子供なんて産めるの?
てか、なんでれいむがあんな目にあってるの?
誰がまりさのれいむにあんな酷いことをしたんだっけ?
そういえば、まりさの召使いがやったって、れいむは言ってたような……
でも、なんでれいむがあんな目に会わなくちゃならないんだろう? れいむは何もしてないのに?
そうか、きっとぱちゅりーたちがなんか失敗を遣らかしたんだ!!
そして、体の弱いぱちゅりーの代わりにれいむがお仕置きをされて……
いや、それはないよね!! ぱちゅりーは頭がいいもん!! 失敗なんてするわけないよ!!
じゃあ、なんでれいむがあんな目に?
そういえばあの召使い、まりさのことを裏切ったんだよね。
分かった!! あの召使いは悪い人間だったんだ!! だから、れいむにこんな酷いことをしたんだ!!
長かった。本当に長い時間、まりさは自分の考えを纏めるのに時間を要した。
まりさの短い人生の中でもぶっちぎりで長い時間、一つの考えに費やした。
餡子は今や、ペンティアムD(幻想入り)並みに熱くなっていることだろう。
まりさは頭から湯気が出そうなほど、血というか餡子が上っていた。
それほど、あの男に対し、怒りを覚えていた。
殺してやる!! れいむをこんな目に合わせたあの男を殺しまくってやる!!
痛みが残っているが、そんなの関係ない。
勝てる勝てないの問題じゃない。やるかやらないかの問題だ。
例え、まりさの命が亡くなろうとも、れいむをこんな姿にしたあの男を、完膚なきまでに破壊してやる。
「れいむ!! まりさはいまから、あのおとこのところにいってくるよ!! れいむをこんなすがたにしたあのおとこをころしてくるから、ゆっくりまっててね!!」
まりさはれいむに笑顔を見せた。
自分でも理解していたのだ。もう、れいむの元に戻ることはないと……
それが分かっていても、まりさの決心は鈍らなかった。
最後に愛するれいむに、「がんばってね!!」と言われれば、それだけでまりさは地獄にも畜生界にも行くことができた。
だからこそ、れいむに最後のお別れにと、最上の笑顔を見せたのだ。愛するゆっくりに、不安な表情は残したくない。
しかし、そんなまりさに帰って来たものは、無感情なれいむの言葉だった。
「……なにいってるの、まりさ?」
「ゆゆっ!! だから、まりさはいまかられいむのかたきをうってくるからね!!」
「かたきって……だれのことをいってるの?」
「ゆっ? それはもちろん、まりさのめしつ……いや、あのわるいにんげんのことだよ!!」
「……ねえ、まりさ。まりさは、なんでれいむがこんなめにあったかわかってないの?」
「ゆゆっ……」
まりさは分からなかった。
なぜ、れいむは嬉しそうな顔をしてくれないのか?
自分を心配して、止めようとしている訳ではなさそうだ。
だからといって、まりさに仇を討ちに行ってほしい訳でもないように見える。
れいむは、まりさの心底分からないといった顔を見ると、呆れたと言うように、ゆっくり説明した。
「まりさ……わかってないようだから、はっきりゆっくりいうね……
れいむがこんなすがたになったのはね……」
「まりさのせいだよ」
れいむのその声は、特に大きくはなかった。
どちらかといえば、小さい部類に入る。
しかし、まりさには、それがそんな爆音よりも大きく、鋭く、ずっしりと耳に入った。
しばらくの間、れいむの言葉を餡子の中で反芻していた。
まりさは的確な答えを導き出すことが出来なかった。れいむに問い返した。
「れいむ……いま、まりさのせいだってきこえたんだけど……」
「そうだよ、まりさ。れいむはまりさのせいだっていったんだよ」
「な、なんで!!」
「まりさがうそをつかなければ、みえをはらなければ、れいむたちはあのにんげんのいえにいかなかったんだよ」
「ま、まりさ、うそなんかついてないよ!! ほんとうに、にんげんにかったんだよ!!」
「……もううそはいいよ、まりさ……」
「おねがいだよ!! しんじてね、れいむ!! おかしだって、あのにんげんがくれたんだよ!!」
「まりさについていって、おしおきされたのはれいむだけじゃないんだよ。
ぱちゅりーも、ありすも、みょんも、ちぇんも、みんなあのにんげんにやかれたんだよ……
もう、れいむたちこどもがうめないからだになったんだよ……
ありすは、それでおかしくなって、じぶんからかわにとびこんだんだよ……
まりさが……まりさが……まりさが、うそをついてれいむたちをつれていったから……」
「ぢがうよおおぉぉぉ!!! まりざはうぞなんがづいでないよおおぉぉぉ!!! なんでじんじでぐれないのおおおぉぉぉぉ―――――!!!!」
「な、なんでしんじられるの……あ、あんなかんたんにま、まげでだのにいいぃぃぃ―――!!!
ゆっぐりまりざをじんじだけっががごれだよおおおぉぉぉぉ―――――!!!」
まりさが泣き、れいむがそんなまりさに釣られて泣きじゃくる。
まりさはなぜ信じてくれないのかと。
れいむはこんなバカなまりさを信じるんじゃなかったと。こんなまりさを信じた自分は、なんて馬鹿だったんだと。
二匹は泣いた。泣きに泣いた。泣き声が、森の一角で、延々と響いていた。
先に泣きやんだのは、どちらだったのか?
涙も枯れた二匹は、無言でその場に佇んでいた。二匹の間を乾いた風が、吹き通る。
それが合図だったのか、れいむは涙も出なくなると、もうまりさと話すことはないと言わんばかりに、その場を後にしようとした。
しかし、それをまりさが止める。
「ま、まって、れいむ!! まりさはどんなすがたになっても、れいむをあいしてるよ!! こどもがうめなくたって、ぜんぜんへいきだよ!!
だいたい、まりさはさいしょからこどもなんてほしくなかったんだよ!! だから、れいむがきにすることないよ!!」
れいむが、帰っていく。まりさにはそれが、永遠の別れのような感じがした。
確信はない。しかし、まりさの勘はそう言って止まない
信じてもらえないならそれでも構わない、でも、自分の元を離れないでくれ!!
まりさは、そんな覚悟でれいむに言葉を投げる。自分の本音を隠したまま。
しかし、そんな時、まりさの巣の周りがガサガサとざわめきを立てた。
なんの音だ? とまりさは訝しむと、音を立てる物体が、その姿を現した。
それはゆっくりの集団だった。
百だろうか二百だろうか? あるいは、森中のゆっくりが全員居るのではないかという数だ。
一体いつからいたのだろう? まりさは全く気づきもしなかった。
ゆっくりの集団は、ゆっくりまりさを囲んだ。れいむはその集団の中に入っていく。
れいむがゆっくりの輪に入ると同時に、輪から出てきたゆっくりが、まりさに近づいてきた。
ゆっくりぱちゅりーである。
しかし、このぱちゅりー、まりさの友人であるあのぱちゅりーとは別のゆっくりである。といっても全く関係がないわけではない。
実はこのぱちゅりー、まりさの友人のぱちゅりーの親にして、この森の全ゆっくりの長でもあった。
長ぱちゅりーは子ぱちゅりーに事件の概要を聞いて、まりさの巣に来ていたのである。
そして、まりさとれいむの会話を森のゆっくり全員で隠れて聞いていたのだ。
長はまりさのすぐそばまで来ると、悲しげな表情でまりさに語りかけた。
「むきゅ……まりさ、ぱちゅりーたちはとてもざんねんだよ……」
「な、なんなの、とつぜん?」
「れいむとのやりとりはぜんぶきかせてもらったよ。そして、わかったよ。まりさはうそをついたにもかかわらず、ぜんぜんはんせいしてないことがね」
「ゆっ?」
「すこしでもはんせいしていたら、ぱちゅりーたちはゆるそうとおもっていたよ。まりさはまだまだこどもだからね。
じぶんにどのくらいのちからがあるかなんてわからないだろうし、だまされてついていったほかのこにも、せきにんがないわけじゃない。
でも、まりさははんせいをしないで、うそじゃないとごうじょうをはった。
そんなまりさは、このもりのなかにおいておくわけにはいかないよ!! これよりうそつきのまりさにけいばつをあたえる!!」
長ぱちゅりーの言葉を機に、森の中でも一際屈強なゆっくりが5匹、まりさの周りにを囲むと、まりさが動けないように体を押し付けてきた。
まりさは同年代の他のゆっくりに比べて、多少大きくて力も強いが、完全な大人5匹に囲まれては、動ける筈もない。
「けいはゆっくりいばらのけい。これより、まりさをしっこうばしょにれんこうする!!」
長ぱちゅりーが言うと、先頭に立って刑の施行場所を目指していった。
続いてまりさと、まりさを囲んだ屈強な5匹のゆっくりが、まりさを逃がさないように、長ぱちゅりーの後に続く。
その後に、刑を見届けるべく、多くのゆっくりが後に続いた。
「ゆ、ゆっくりいばらのけい!? な、なんでまりさがそんなことをされなくちゃならないのおおぉぉ――――!!!」
まりさは叫ぶ。何とか逃れようと暴れる。しかし、大人ゆっくり5匹から逃げられるはずもない。
長ぱちゅりーは、やれやれといった感じでまりさに振り向くと、一言だけ呟いた。
「……そんなたいどだからだよ」
一行は刑の執行場所に辿り着いた。
そこでは、あらかじめ用意をしていたゆっくりが、一行を出迎えてくれた。
「ぱちゅりー!! よういはできてるよ!!」
刑の準備をしていた大人れいむが、長ぱちゅりーに近づき声を掛ける。
その大人れいむの後ろには、茨やイガ、鋭い石などが敷き詰められていた。
今から何が行われるか、容易に想像が出来る。
「ばちゅり――――――!!! なんでまりざが、ゆっぐりいばらのげいをうげなぐぢゃいげないのおおぉぉぉ――――!!!」
まりさは道中、狂ったように泣き叫び、前を行く長ぱちゅりーに止めてと懇願する。
しかし、長ぱちゅりーの意思は堅かった。
まりさが自発的に刑を受けないと分かるや、まりさを押さえつけていた屈強な5匹のゆっくりに「やってちょうだい」と命令を下す。
長の命令が下ると、5匹のゆっくりは、まりさを全員で担ぎ、「ゆ・ゆ・ゆー!!」の掛け声とともに、茨の中にまりさを投げ込んだ。
「ゆぎゃああああぁぁぁああぁぁああああぁぁああぁぁぁぁぁぁああ――――――――――――!!!!」
まりさが茨の中で絶叫を上げる。
普通に入ったのではなく、高いところから落ちたので、痛さも倍増だ。
すぐさま、そこから出ようとするも、茨の周りは大人のゆっくりが完全に固めており、まさしく蟻の入る隙間すら見当たらなかった。
まりさはあまりの痛さに、体を捻る。
しかし、ここでそんなことをしては逆効果。体中に茨が刺さり、さらに痛々しい悲鳴を上げる。
「だずげでえええぇぇぇぇ―――――!!!! れいぶううぅぅぅ!!! でいぶうぅぅぅ!!! だずげでええええぇぇぇぇえ―――――――!!!!!」
体に棘を刺し、絶叫と共に、最愛のれいむの名を口にする。
そんなれいむはといえば、子ぱちゅりー、ちぇん、みょんと共に、最前列でその様子を眺めていた。
全員が顎下に痛々しい火傷の跡を負っている。
子ぱちゅりー、ちぇん、みょんは、まりさに対し、積もりに積もった侮蔑の言葉を投げかける。
「むきゅ!! うそつきにはおにあいのすがたね!!」
「わかるよー!! まりさはもっとくるしめばいいよー!!」
「ちーんぽ!! まりさはゆっくりしね!! ちーんぽ!!」
れいむは言葉こそ掛けなかったものの、忌々しいものでも見るような目で、その様子を眺めていた。
そんなれいむと視線が交差したまりさ。
れいむのその目が、自分を憎んでいることが否応なく分かった。
まりさは絶望した。もう、ここにまりさの味方はいないのだと。
そんな刑が、まりさの命が無くなる寸前まで続けられた。
「むきゅきゅ!! ゆっくりいばらのけいを、しゅうりょうする!!」
長ぱちゅりーの言葉が出るや、茨の周りを囲んでいた大人のゆっくりは、全員その場を退いた。
まりさの皮はボロボロ、餡子も致死量まではいかないが、相当体外に排出した。
しかし、こんな茨の中にいつまでもいられない。
まりさは気力を振り絞って、茨の中から脱出した。
息も絶え絶え、体はボロボロ、早く傷を手当てしなければ、死んでしまうだろう。
しかし、まりさに手を授けるゆっくりは1匹も居なかった。
長ぱちゅりーは、そんなまりさの元に行くと、まりさに言葉をかけた。
「むきゅ!! まりさ、よくゆっくりいばらのけいにたえたね!! これによって、まりさのつみはゆるされたよ!!」
「……」
「もちろん、これからもむれにいてもかまわないよ!! でも、まりさがうそをついたというじじつはいっしょうきえないよ!!
いままでとおなじようなせいかつはできないものとおもってね!!」
「……」
まりさは長の言葉に答えない。反論しない。
出来ないのだ。
自身の体がボロボロなのもあるが、なにより心が完全に折れていた。
自分は嘘をついていない。なのに、信じてもらえない。
それでも、他の全ゆっくりがまりさを否定しても、れいむ1匹が信じてくれさえすれば、まりさはどんな苦しい思いも耐えられただろう。
しかし、今やそのれいむも、まりさの味方にはなってくれない。
長ぱちゅりーが「てっしゅうする」と、群れに号令をかけると、ゆっくりたちはようやく終わったとばかりに、まりさを置いて離れていった。
れいむも、まりさを一瞥しただけで、何もすることなく群れの中に溶け込んでいった……
後にはボロボロのまりさ一匹が残された。
まりさは完全に1匹になった。
「うーん……ゆっくりの世界もなかなかシビアだな」
こっそりと一連の様子を窺っていた男が、まりさを見て見て呟いた。
男からすれば、まさかここまで大事になるとは、予想もしていなかった。
男が考えた作戦。
まず、まりさに負けたふりをして、まりさの友人たちを家まで連れてくる。
そこで、戻ってきた時、初めて会ったふりをして、友人たちの目の前で、まりさをボコボコに痛めつける。勿論、殺しはしない。
その後、まりさが、お前たちを騙してここまで連れて来たと説明し、その友人たちを痛めつける。
今回は熱した焼きごてを、ゆっくりの生殖器に当てて、子供が産めないようにしてやった。
後は、そのまままりさと友人を巣に返せば、ミッションコンプリートだった。
こんな目にあったのはまりさのせいだとさんざん言いくるめておいたから、巣にもどればまりさは友人たちからハブにされるだろう。
その後、男はハブられたまりさに男の作戦を教え、最後に絶望を味あわせながら、殺してやる!! と、思っていたのだが……
ゆっくりたちの思考は、男の予想の遥か斜め上を行っていたようだ。
まさか、ゆっくりたちにこんな裁判と刑罰があったとは……
そんなことも想像できない俺には、虐待お兄さんの素質はないようだ。
男はまりさに言葉を掛けようかと思ったが止めた。
体はボロボロ、意識も半ば、一瞬で殺すほうが、どれだけ救われるか分からない。
せいぜい、最後まで俺の家に入ったことを後悔しながら死んでいくがいい。
男は、ゆっくりその場を後にした。
「ゆーゆゆゆ――ゆゆーゆーゆーゆっ!!」
男が家に帰る途中、里の道でゆっくりまりさの親子が歌を歌っていた。
親子の前には汚いカンが置いてある。
どうやら、最近下手な歌で里で迷惑をかけているという、歌って稼ぐゆっくりとやらだろう。
男がそこを通りすぎようとすると、立ち止まって聞いてもいないのに、親子は
「おじさん!! まりさたちのおうた、じょうずだったでしょ!! ゆっくりきいたんだから、おかねをいれてね!!」
とか、ぬかしてきやがった。
子ゆっくり達も続けて、「おかねをいれてね!!」と、ハモっている。
ゆっくり聞いてなんていないし、そもそも立ち止まってすらいないのだが、この態度。
幻想歌舞伎町にあるバーのポン引きよりタチが悪い。
そんなまりさの姿を見て、あのまりさに召使い扱いされた屈辱を思い出した。
まあ、ゆっくりなんてどいつでもいいだろう。
男はあのまりさを殺す代わりに親子を踏みつぶすと、家路をゆっくり戻っていった。
「はあ~!! 帰ったら家の掃除か……」
俺の書く制裁物は、全部ゆっくりが家に侵入するワンパターンものばっかりだな……
少し自重しよう
今まで書いたもの
チェンジリング後①
チェンジリング後②
最終更新:2008年09月14日 08:16