ゆっくりれいむとまりさの髪飾りを入れ替えてそれぞれを"まりさ""れいむ"と認識させてから一週間。
そろそろ次の段階に移るころだと白衣の男は考えていた。
その次の段階とはこの二匹をそれぞれの家族のもとへ返してやることである。
勿論入れ替えたままだ。
つまりぼうしれいむはまりさ一家へ、リボンまりさはれいむ一家のもとに行くことになる。
飾りがついているのだから殺されたりはしないと思うが、家族が受け入れるだろうか。
少なくとも二匹の間には何の問題もない。互いをれいむ、まりさだと思い込んでいる。
この一週間で"れいむ"もだいぶれいむらしくなった。時折だぜ言葉が出てくるが。
完璧なれいむになりきる前のほうが面白くなりそうだったので男はまず"れいむ"を家族のもとへ返すことにした。
「やあ、ゆっくりしていってね」
「「ゆっくりしていってね!!!」」
この二匹にはそこそこの暮らしをさせていた。健康そのものだ。
あとは適当なことを言って"れいむ"を連れ出せばいい。
「今日は嬉しいお話と悲しいお話があるんだ。どっちから聞きたいかな?」
「ゆっ! うれしいほうがいいんだぜ!!」
「れいむもうれしいほうがいいよ!!」
まあゆっくりならこう答える。
「じゃあ話すよ。実は"れいむ"の家族が見つかったんだ。だから"れいむ"をお家まで連れて行ってあげようと思うんだ」
「ゆっ!? かぞく! れいむあいたいぜ!!」
興奮するとだぜ言葉が出るようだ。
「よかったんだぜれいむ!! かぞくとゆっくりできるんだぜ!!!」
"まりさ"も友達の幸福を喜んでいる。
二匹の餌には性欲抑制の薬を混ぜておいたのですっきりしてはいない。
飾り入れ替えゆっくりの子供については興味があるが今はその時ではないからだ。
しかしおめでたい頭をしている。この後、悲しいお話が待っているのに。
まあ大したことではないのだが。
「それじゃ次は悲しいお話の番だ。嫌でもちゃんと聞くんだよ」
「ゆぅ…わかったんだぜ」
「はやくおわらせてね…」
もっと嫌がるかと思ったが案外素直だ。
「さっきも言ったけど"れいむ"をお家まで連れて行こうと思ってるんだ。つまり今日で君たち二人はお別れなんだ」
「「ゆが~ん!!!!!」」
謎の文字を背負いまさにショックといった表情でかたまる二匹。
ゆっくりにとって一週間は長い。その間寝食を共にした友達との別れは辛いのだろう。
先に動き出したのは"まりさ"だった。
「ゆっ! まりさはかなしいけどかなしくないぜ!! れいむがかぞくとゆっくりできるのはまりさもうれしいんだぜ!!!」
立派なことを言う饅頭もいたものだと男は少しばかり感心した。
まりさ種は大体二つに大別できる。
一つは家族や群れを平気で裏切り、嘘を重ね、根拠のない自信を持つ身の程知らず。
いわゆるゲスまりさだ。
憎まれっ子世にはばかるというが、どうにもこちらのほうをよく見かける。
そしてもう一つが一家の大黒柱であったり、群れのリーダーであったりといったしっかりものだ。
こちらはむやみに人間に立ち向かったりもしないし、ゆっくりにしては思慮深い面もある。
こういった個体が長生きするとドスまりさになるとされている。
ただしドゲまりさというものがいるらしい。ドスとゲスの合わさった最悪のゆっくりだそうだ。
ともかく"まりさ"がなりきっているのは後者のまりさ種らしい。
「ゆぅ、まりさがそういうなられいむもかなしくないよ!! おにいさんかぞくをみつけてくれてありがとう!!!」
これにはさらに感心した。この"れいむ"はつれてきた時はゲスまりさタイプだったのだ。
それが人間に礼まで言うようになった。思い込みの力は凄まじい。
だがこれも髪飾りがなければ上手くはいかないだろう。
今回の実験が終わったら色々試そう、男は早くも次の実験についてあれこれ考えていた。
そこへ"れいむ"が話しかけてきた。
「おにいさんれいむをおうちにつれていくのあしたにしてほしいよ!」
「なんだ、すぐに会いたくないのか?」
「あいたいけど、きょうだけまりさとゆっくりしたいよ…」
「れいむ…おにいさんまりさもおねがいするんだぜ」
「「ゆっくりさせてください!!!」
別れればもう会うことはできないことがなんとなくわかるのだろうか。
ずいぶんと下に出た態度だ。
男は情が移ったわけでもないが今日一日ゆっくりさせてやることにした。
急ぐわけでもない。一日ぐらいは誤差の範囲だ。
念のため餌に入れる薬の量を増やしておいた。
翌朝、男が部屋へ入ると二匹は寄り添って眠っていた。
愛護派にはたまらない光景だろうが男にとっては大して興味のあるものでもない。
この様子だと存分にゆっくりできたのだろう。薬のおかげかすっきりした形跡は見られなかった。
男は"まりさ"を起こさないように"れいむ"を持ち上げた。
起きればまたお別れの挨拶だのなんだのと面倒だろうからだ。
巣に向かう間も結局目を覚まさなかったが。
「起きろ"れいむ"お前のお家の近くまで来たぞ。」
「ゆふぁぁぁ。おはようおにいさん」
家族の方は一匹足りないことなんか忘れてるかもしれない。
とりあえず男は巣穴をのぞく。するとなにやらゆっくりたちの話が聞こえてきた。
「みんな! ごはんをたべたられいむをさがしにいくよ!!」
「きょうはきっとみつかるね!!!」
「そうだよみんなでさがしてるんだから!!!」
「おねえちゃんといっしょにゆっくりしようね!!」
「れいむのいもうとだからきっとげんきだよ!!!」
どうやらずっと探し回っていたようだ。
家族愛の強いれいむ種らしい光景だ。
そこに男が声をかける。
「ゆっくりしていってね」
「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」
「君たちのお話が聞こえたんだけどなにを探してるんだい?」
「れいむだよ! ちょっとまえにまいごになっちゃったからみんなでさがしてるんだよ!!!」
「なかなかみつからないんだよ…おねえちゃん」
見つかるわけはない。それは男の研究室に今もいるのだから
「ひょっとしてこの"れいむ"かな。家族とはぐれちゃったれいむなんだけど」
男が親れいむに"れいむ"を見せる。
いきなり拒絶する可能性も考慮していたが、杞憂だった。
「れいむ!!! ぶじだったんだね!!!!! しんぱいしたんだよ!!!!!」
「ゆっ! おかあさんごめんなさい!!!」
「おねえちゃんだー!!! ゆっくりしよう!!! ゆっくりしようね!!!!」
「さすがはれいむのいもうとだね!! げんきにかえってきたよ!!!」
一家は大喜びだ。やはりリボンが本物だからだろうか。
男は適当な嘘を並べて家族を納得させた。
怪我をしていたから元気になるまで世話をしていた。
治ったから連れてきてあげた。
これだけですっかり家族は男のことを信用した。
これで次に様子を見に来るときに警戒されずにすむ。
「よかったな"れいむ"。家族とゆっくりしろよ」
「うん! ゆっくりするよ!! おにいさんありがとうね!!!」
「「「「「ありがとうおにいさん!!!!」」」」」
あのリボンまりさはいつまで大丈夫だろうか。
運がよければずっとゆっくりできるかもしれない。
だが抜け切っていないだぜ言葉が命取りになる可能性があった。
男はひとまず引き揚げることにした。
研究室に戻ると"まりさ"が寂しそうにしている。
だが"れいむ"が家族とゆっくりできそうだと伝えると自分のことのように喜んでいた。
翌日には何事もなかったかのように元気だった。
"まりさ"を家族に会わせるのはまだだ。
"れいむ"の観察が終わり次第の予定なのでいつになるかわからない。
数日後、男は"れいむ"の様子を見に行った。
先日の様子だとうまくやっているかもしれないと男は考えていた。
だが"れいむ"は巣穴から少し離れた場所で死に掛けていた。
理由はわからないがとにかく男は声をかけた。
「どうしたんだ"れいむ"ぼろぼろじゃないか。家族はどうしたんだ?」
「おにいさん…れいむはれいむなんだぜ? おかあさんのこどもなんだぜ?」
だぜ言葉になっている。おそらく考えていたとおりのことが起きたのだろう。
予想よりだいぶ早かったが。
この"れいむ"は興奮するとだぜ言葉が出る。まりさ種の我の強さのせいだ。
男はだぜだぜ言ってるとゆっくりできなくなると教えていたが無理だった様だ。
初めこそ受け入れられた"れいむ"だったがこの数日の内にだぜ言葉のせいで追い出されてしまったのだ。
れいむ種は家族愛、姉妹愛が強い。それだけに異端者に対しては厳しい。
もっとも、異端を激しく嫌うのはどのゆっくりも同じだが。
"れいむ"の話をもとに数日間の出来事を書いていこう。
最初の日家族は盛大なお祝いをした。
心配で心配で夜しか眠れず、ご飯も普段の半分の五食しか食べられないほど
大事な娘が、姉が、妹が優しいお兄さんのおかげで元気に戻ってきたのだ。
みんなでご馳走を食べ、姉妹は仲良く遊び、親は目を細めてその様子を眺めていた。
これ以上ないほどゆっくりできたのだった。
"れいむ"は一緒にすごした"まりさ"について家族に話した。
とても素晴らしいまりさですごく仲良くなれたと。
かっこいい喋り方をするのだと。
いくら話しても足りないほどだった。
親はゆっくり聞いていてくれた。姉妹は先に眠ってしまったが。
しかし幸せなのはこの日だけだった。
れいむ種に囲まれていたからかこの日はだぜ言葉が出なかったのだ。
次の日、家族は出かけることになった。
昨日のお祝いで普段より食料を消費したので集めに行くことにしたのだ。
そこで"れいむ"は大活躍した。
もとがまりさ種なので運動神経がよかったのだ。
実際は思い込み程度にしかれいむ種との差は無いのだが。
家族は"れいむ"を褒めちぎった。
さすがれいむのこどもだね! だのおねえちゃんすごーい! だの
様々だ。
だがそれに対する"れいむ"の返事がいけなかった。
「こんなのれいむにとってはかんたんなんだぜ!!!」
と言ってしまったのだ。
親と姉はおかしいと思ったようだ。妹はよくわからないらしい。
"れいむ"は自分を見る親と姉の様子がおかしいのに気づいたが原因はわからなかった。
「どうしたの? はやくおうちでゆっくりしようよ!」
「「それがいいよ!!」」
本人とちびっこたちははやく帰ろうと騒いでいた。
とりあえず気にしないことにした親と姉は巣へと帰ることにした。
親は、熱心にまりさの話しをしていたからそのせいかな? などと考えていた。
だが巣へ帰ってからの食事の際に再びだぜ言葉が出てしまった。
自分が頑張って手に入れた餌を食べたときに
「めっちゃうまいんだぜこれ!!」
と言ったのだ。
れいむ種は
「すごくおいしいよ!」などあまり荒れた言葉は使わない傾向にある。
「れいむそういうしゃべりかたはだめだよ!!」
親がしかりつける。
"れいむ"は何がいけなかったのかわからないが謝ることにした。それは誤りになるのだが。
「ごめんなさいだぜ!」
おそらく家族と共にいるという環境が"れいむ"の中のまりさの部分をわずかに戻してしまったのだ。
だぜ言葉がいけないものだなどとは思いもつかないことだろう"れいむ"は泥沼にはまったようなものだった。
「だめだっていってるでしょ!! おかあさんのいうこときけないこにはごはんはあげないよ!!!」
「どうじで!? れいむわるいごどじでないぜ!!?」
ならばなぜさっきは謝ったのか。これもまりさ種にありがちな処世術だ。
「まだわからないの!! そんなばかはゆっくりはんせいしててね!!」
そういうと親は"れいむ"に体当たりをする。
跳ね飛ばされた"れいむ"は巣の隅で怯えていることしかできなかった。
ゆっくりはその名に反して気が短いといえる。考え方も単純かつ短絡的だ。
これだけのことでこの家族は"れいむ"はおかしいと判断した。
ひょっとして自分たちの家族ではないのではないかとまで考えていた。
確かに本物では無いのだがそれがわかるゆっくりでないことは明らかだ。
つまり実の子供だとほんのすこし前まで信じていたのにもう疑っているのだ。
この"れいむ"がしたことといえば数回だぜ言葉を使っただけだ。
一回目には親も勝手に納得してそれですんだというのに。
だが一度生まれた疑念はどうにもならない。
「こいつがいたらゆっくりできない」
これがれいむ一家の出した結論だった。
次の日の朝、"れいむ"は他の家族より早起きをして巣の中をきれいにし、朝の分の餌をとってきた。
これならきっとお母さんも許してくれると信じて。未だに何が悪かったのかは理解できていないが。
それは次の行動でも明らかだ。
「みんなおきるんだぜ! びっくりするんだぜ!!」
自分はれいむだという思い込みは続いているはずだが、一度表層に出てきた喋り方は直らなかった。
ともかく、起きたみんなは自分を褒めてくれるに違いない、昨日は何かの間違いで今日はゆっくりできるはず
"れいむ"は本気でこう考えていた。
しかし、"れいむ"が抱いていたゆっくりできる想像は大好きなお母さんによって打ち砕かれた。
"れいむ"の元気な挨拶への返事は無言の体当たりだった。
数発で巣穴から追い出され、ダメージとショックで動けない"れいむ"の目の前で巣穴の入り口は閉ざされた。
危険の少ない場所に暮らすゆっくりは悪天候や冬篭り以外では基本的に入り口は開放している。
例外的に、何か危険が迫っていると判断した際にはあわてて閉じることもある。
例えば人間の足音を聞いたとか、発情ありすの声が聞こえたとかだ。
つまりこれは"れいむ"に対するこれ以上ない拒絶の表れだった。
いったい自分が何をしたのだろうか。"れいむ"にはわからなかった。
ただみんなとゆっくりしたかっただけなのに…
しばらく考えて餌が足りなかったのかもしれないと"れいむ"は思いついた。
しばらくして"れいむ"は、一匹が集めるには大変な量の餌を持って巣穴の前まできていた。
入り口は依然として閉じたままだった。
"れいむ"は大声で中の家族に呼びかける。
「みんな!! もっとたべものもってきたんだぜ!!! ゆっくりあけてほしいぜ!!!」
返事はなかった。もちろん開く様子などまったくない。
「ゆぅぅ…どうしてだぜ…」
もう一度"れいむ"は考えた。そしてプレゼントを持ってくることを思いついた。
必死になってきれいな花や珍しい石、よくわからないガラクタなどゆっくりにとって宝物になりうるものを集めて戻ってきたときには
夕暮れ時になっていた。
先ほどと同じように"れいむ"は声を張り上げる。
しかし結果は変わらなかった。
それでも諦めるわけにはいかない。夜はゆっくりできないからだ。
「どうじでれいむにいじわるずるの!!! ごれじゃゆっぐりでぎないよぉぉぉぉ!!!」
追い詰められたことで逆にだぜ言葉でなくなっていた。
まりさがだぜ言葉で喋るのは余裕があるときだ。
たまにどんな目にあっても使い続けるものもいるが。
「おねがいだがらながにいれでえぇぇえぇ!!! ごめんなざいいぃいいぃ!!!!!」
"れいむ"わけもわからず謝罪を続けていた。もう何も思いつかなかったからだ。
そうして、声がおかしくなってきたころ入り口がわずかに開いた。
"れいむ"はやっとゆっくりできると思った。
だがそれは違った。
「うるさいよ!!! みんながゆっくりできないからやめてね!!!!
このあたりはよるでもゆっくりできるからとっととどこかへいってね!!!!!!」
親ゆっくりはそう怒鳴り散らすと、食べ物を放り出しまた入り口を閉じてしまった。
わずかに見えた希望は潰えた。"れいむ"はそれでも離れていこうとはしなかった。
というより動けなかった。ショックと疲労でだ。
それでも空腹には逆らえない。這いずって、放り出された食べ物に近づいた。
再びショックを受ける"れいむ"。その食べ物は自分がみんなのために早起きをして集めたものだった。
まったく食べた様子がない。要するにいらないから捨てられたのだ。
自分の頑張りは無駄だったと知った"れいむ"はそのまま泥のように眠ってしまった。
翌朝、"れいむ"は自分が集めた食べ物を食べた。
そして静かに待ち続けた。
きっと今日は餌を集めに出てくるはず。
そのときお話してなんとかしよう。そう考えていた。
だがどうにもならなかった。
たしかに家族は巣穴から出てきた。全員が出た後に巣穴は閉じられた。
そして"れいむ"には気づいていないかのように行動した。
前に出ても、声をかけても、体当たりさえしたのにもかかわらず無反応だった。
餌集めを終えたれいむ一家は巣穴へ戻り入り口を閉ざす。
そのころには"れいむ"はもう、とぼとぼと一家についていくだけだった。
朝と同じように食事を済ませ、"れいむ"は眠ることにした。
明日にはなんとかなると信じて。
やさしいおかあさん、かわいいいもうとたち、たよりになるおねえちゃん
家族とゆっくりする夢を"れいむ"は見ていた。
だが夢とは醒めるものだ。
不幸な現実は夜明けと共に近づいてきていた。
男が"れいむ"を見つけた日の朝
昨日と同じように待っていると巣穴から一家が出てきた。
急いで近づく"れいむ"だったが親れいむに跳ね飛ばされた。
そしてそのまま男が"れいむ"を発見した場所まで蹴り転がされた。
その時点でボロボロだったが"れいむ"は何とか口を開く。
「どうじで…れいむ…みんなどながよぐじだいよ…」
「どっかへいけっていったでしょ!!! うるさいしじゃまだよ!!!
おまえがじぶんでうごかないからこんなめんどうなことしなくちゃいけなくなったんだよ!!!」
いつまでも巣の近くにいて鬱陶しいので一家は痺れを切らしたのだった。
たった二日といえどゆっくりにしてみればかなりの時間なのだ。
「ころしはしないからかんしゃしてね!!! にどとれいむたちのところにこないでね!!!
さあみんな! いたいめにゆっくりあわせておしえてあげようね!!!」
家族でない者に対して容赦はなかった。
あっという間に"れいむ"はやられた。はじめから抵抗するつもりもなかったが。
「ゆっ! これでわかったね!! こんどこそどっかへいってね!!!」
「ゆっくり…したかったんだぜ…おかあさんとみんないっしょに"れいむ"も…ゆっくり……したかったんだぜ」
搾り出すような"れいむ"の言葉に対する返事はこれまででもっともダメージが大きいものだった。
「おまえはれいむじゃないよ!!! だぜなんていうこはれいむのこどもじゃない!!!
でもりぼんつけてるからまりさじゃないね!!! おまえはへんなゆっくりだよ!!!!」
それだけ言い残し一家は去っていった。
このすこし後に、"れいむ"は男に発見された。
"れいむ"はもう長くないだろう体の傷はともかく精神が駄目になっている。
見つけてからずっと
「れいむはれいむ…おかあさんのこどもなんだぜ…」
と繰り返している。
ともあれ実験にはよく貢献してくれた。
髪飾りはたしかに強い影響力を持つが完全ではなさそうだ。
親ゆっくりやある程度成長したものは髪飾りだけで判断しているのでは無いのかもしれない。
意外にも喋り方も重要だったというのは新たな発見だ。
つまり、だぜまりさでなければもっと家族として上手くいくかもしれないわけだ。
あるいはまりさ種だからいけないのかもしれない。
現に"まりさ"はほぼ完璧だ。
ここで色々考察していても仕方がない。
男は研究室に戻ることにした。
"れいむ"についての結果をまとめ、"まりさ"の方についても考えなければならない。
最後に、男は"れいむ"に感謝の意を伝えた。
「君のおかげで実に面白い実験ができたよ。ありがとう、まりさ」
「まりさ…ちがう…れいむ……れいむじゃない…なんだっけわかんない」
あの時と同じで自分がなんなのかわからなくなっている"れいむ"、いや、リボンまりさに背を向けて男は森を後にした。
この親れいむ曰く「へんなゆっくり」が自分を取り戻すことはもうないだろう。
自分ではわからず、あの時と違い誰も教えてはくれないのだから…
つづく
あとがき
なんかタイトルの割りに髪飾り出てこないです。大して影響ないように見えてしまう。
ただ、れいむ一家が"れいむ"が自分でどっかいくのを待ってくれたのはリボンのおかげです。
どんなにゆっくりできないように思えても「同じタイプの飾り」をつけた相手には多少甘くなるということで。
最後には我慢できなくなってしまいましたが。
いつのまにか"れいむ"だけで長くなってしまいました。
"まりさ"は短くなっちゃいそうなんですがどうなることやら。
待っていてくれた方には申し訳ないですが、髪飾りの影響 後 "まりさ"編、執筆中ですので今後もよろしくお願いします。
ALSUS
以前投下したもの
盲目の子れいむ
髪飾りの影響 前
まりさは本当に強いのか
武器を手にしたゆっくり
最終更新:2022年05月03日 09:45