近年多発するゆっくりによる田畑の被害。
 それを一掃、または予防するために様々な対策を話し合う事になった、今日はその会議の一回目である。
 では、今日は山之辺さんの対策について話してもらいます。それではどうぞ。

 うちは主に芋を作ってるんです、味は上々で良く美食家が揃うと言われている紅魔館から、直接仕入れに来てもらったりもしているんです。
 そんなわけで、コレまでも小動物に食われるということは多々ありました。
 でも初めてゆっくりに畑が襲われてから考え抜いた末、毎年こうして利用しているんです。



 朝露が乾き始めた頃、何時ものように畑に向かっていた彼が見たのは自分の畑の上で騒いでいるゆっくり達だった。
 農道で区切られている畑の一つ、それがゆっくり達によって無残に食い荒らされていた。
 近く程に目を背けたくなる。
 かじられた芋がそこらじゅうに散乱していた。
「おじさんどうしたの?ここはゆっくりたちのおうちだよ♪」
 さらっと、更に癪に障るようなことを言うゆっくり、どうやら魔理沙種のようだ。
 彼は、注意深く辺りを見回した。
 ゆっくり魔理沙が一匹、霊夢が三匹、れみりゃとちぇんが一匹ずつ。
 楽しそうに芋を食べているそれらを見ていると、沸々と怒りを覚えた彼だったが、口調だけは穏やかにゆっくり
に話しかけた。
「君達はどこから来たのかな?」
「もりからきたの」
 霊夢種の一匹が答える。
「もりにはこわいおじさんがいるからにげてきたの」
 もう一匹の霊夢種だ。どうやら加工場職員の事を言っているらしい。
 ずっと森で暮らしていたから、人里のことがよく判らなかったのだろう。
「ここはおじさんの畑なんだよ」
「はたけってなぁに?」
「畑って言うのは、野菜とかを育ててる場所だよ」
「おじさんがそだててたの?」
「そうだよ」
 三人目の霊夢種と魔理沙種が交互に答える、どうやらこの群れのリーダー格はこの二人なのだろう。
「おいもおいしかったよ、またつくってね!!!」
「まりさも、またいっぱいたべてあげるよ!!!」
 また食べ始めるゆっくり達、いまいち理解できていないらしい。
「あのね、畑って言うのは……」
「ここはまだ、おいもあるから、おじさんもゆっくりしていいよ」
「いや、畑の野菜は売るために作ってるんだよ。ただじゃないんだよ」
「おいしいおいしい! おじさんもっとつくってね」
「うめ、これめっちゃうめぇ! おじさん、はやくつくっておうちにもってきてね」
「これを売ってお金にしないと、おじさんもゆっくりできないんだよ」
「おかねっなに、ゆっくりできるの?」
「食べ物とかを手に入れたりするのに、必要なものなんだよ」
「じゃあいらないよ。もうゆっくりできてるもん。ねー♪」
「ねー♪」
 その二匹の言葉でタガが外れた彼は、リーダー格の霊夢種を杭で打ちつけた。
「ゆ゛ーー」
 突如、ガクガクと痙攣して絶叫をあげる。
 まわりのゆっくり達も、やっと何が起こったのか理解したようだ。
「おじざん。ゆるじでー」
「おながずいだんですー」
「れいむをだずけであげてー」
 必死で懇願するゆっくりと、必死に杭を抜こうとする、れみりゃ種。
 それを見捨てて、逃げるゆっくり魔理沙の姿が目に入った。
「ゆっくりしんでね」
 それだけ言い残して、農道を勢いよく去って行く。
 彼もすぐに、残っているゆっくりに、ここにいろとだけ言い残し、急いで追いかける。
「ゆっくりしてってね!!!」
 時折振り返ってはそういって挑発する。
 たしかに、普通のゆっくりよりも大分はやく動けるようだ。
 だが、彼は慌てずに誘導するように追いかけていく。
「ゆっくりしで……!?」
 多少ずるがしこいが、やはりゆっくりだ。
 これだけあからさまに、誘導しても気付かずに勝手に罠にかかってくれた。
 獲物が通ると、即座に縄で縛って吊し上げるモノだ。
「ゆゆ!」
 意地悪狸でも捕まえたかのように、彼は腰にさしてあった鎌を持ち近づく。
 魔理沙も、これから自分がどうなるか想像がつくらしい。
「れっ、れいむがここをおうちにしようっていったんだよ! わるいのはれいむだよ!」
 嘘を並べて何とか逃げようとする魔理沙、しかし既に鎌は振り下ろされた後だった。
「ゆー! ……ゆ?」
 おかしい、何時まで経っても痛みは来ない。
 不思議になった魔理沙が目を開けると、切られた縄と、それを掴んでいる男が目に映った。
「森で大変だったんだろ。お手伝いをしてくれるんだったら、家においてもいいよ」
 優しく語り掛ける、先ほどの殺気が嘘のようだ。
「わっ、わかったよ。おてつだいするよ」
 そういう魔理沙を連れて畑に戻ると、杭を抜いてもらった霊夢が看病されていた。
「れいむ、ぶじだったの?」
「うん。ゆっくりしてればなおるよ」 
「よかったね」
 きちんと急所は外せたらしい、穴が開いているようだが、じきに塞がるだろう。
 どうやら、ショックで魔理沙が逃げ出したことも覚えていないようだ。
「じゃあ君達、ここはおじさんの畑だから、勝手に住んじゃいけないよ。でも、きちんとお手伝いするって約束し
てくれたら、家に住まわせてあげるよ」
「するする、やくそくするよ」
「もうかってにたべないから、ゆるしてね」
 素直に頷いたゆっくり達を、家に連れて帰った。
 とりあえず、庭の木の下を自由に使わせてやることにして、今日は休ませた。
 明日からお手伝いしてもらうよとだけ告げて、彼も中に入っていく。
 翌日から、ゆっくりたちは一生懸命お手伝いをした。
 ちょうど、秋の収穫時だった為、ゆっくり達に収穫させて、彼が運ぶと言う構図が出来上がっていた。
 もっとも、あの霊夢と魔理沙は時々盗んで食べていたようだが。
 今まで一人でやっていた作業を分担してやることが出来た為、収穫も早々に終えることが出来た。 
 しかし、辺りが雪に覆われ始めた時、未だ庭で生活している事に、あの二匹が文句を言ってきた。
「おじさんだけあったかいへやのなかでずるいよ。まりさたちもはいるよ♪」
「れいむたちがてつだったから、おかねいっぱいになってゆっくりできるんだよ♪」
 図々しく上がりこんでくる、連れられて入ってきたほかの種類は端の方で寄り添って暖を取っているというのに、
二匹は堂々と火鉢にあたってきた。
「あったかいね」
「ひがでてるもんね」
「あのまきをくべるともっとあったかくなるかな」
「もっとゆっくりできるね!」
「おいおい、蒔きも高いんだから無駄には使えないんだよ。ダメダメ」
「だってさ」
「おおこわいこわい。まりさたちがてつだわなかったら、こんなにかえなかったのにね」
「「ねー」」
 いっそ、ここで加工場に売り飛ばしてもよかったが、彼は他の利用法があったので、渋を薪をくべた。
「あったかいね」
「こんどから、もっともっとまきをいれてね」

それから暫く経ったある日、珍しく彼は朝早くから台所に立っていた。
「おじさん、おへやあったかくするね♪」
「まきはいれられるから、おじさんはそこで、ごはんつくってってね」
 そんな図々しい言葉を聞いても彼はそうかい、とだけいって流した。
 余程、今作っているものが大切なのだろう。
「さぁ、できたよ。かぼちゃを大量ににたんだ」
 大きな鍋に大量に入ったかぼちゃ、綺麗に一口大になっているそれは、ゆっくり達にはご馳走に見えた。
「おいしそー」
「うめっ!めっちゃうめー」
「うめー! おじさん、これうまいから、まいにちつくってね!!!」
「おかねいっぱいあるから、まいにちつくれるね!!!」
 彼は、何も言わずに終始ニコニコとそれを見ていたが、粗方食べ終わった頃に、ようやく一言だけ喋った。
「この頃、あまり跳ね回っていなかっただろ、実は昨日、運動する装置を買ってきたんだ」
「やるやる」
「れいむもやるー」
「よしよし、じゃあちょっと体を縛るよ」
 ゆっくりをしたから四方に縛っていく、縛り終えると、ちょうどスイカを縛っているような状態になった。
 その調子で次々と全員を縛っていく。
 縛り終えたところで、今度は魔理沙を、取っての着いた四角い箱に入れていく。
「さいしょは魔理沙からだね」
「はやくうごかしてね」
「言われなくても」
 言うが早いか彼はものすごい勢いで取っ手を回し始める。
 連動するように、魔理沙がはいった箱もすごい勢いで回る。
「ゆゆ!」
 中身がかき回される感覚、そんな奇妙な感覚に魔理沙は何も言えない。
「よし、次」
 たっぷり十分は回しただろうか、箱から出された魔理沙は口から戻さないように、直ぐに口を塞がれていた。
 その後も、れみりゃをのぞく全員が同じように回された。
 彼はその様子を満足そうに見ると、一人で食事を済ませ眠ってしまった。
 翌日、彼はそのゆっくり達を荷車に載せ、街までやってきた。
 まず、ゆっくりれみりゃをセリにかけて大金を手に入れ、次にこれまた高値でゆっくり達を売りさばいた。
 何がなんだか分からないままに、売られていくゆっくり達。
 離れるのがいやで必死に近づこうとするが、縛られてしまっている状態ではまったくの無力だった。
 あえなく散り散りになるゆっくり達。
 魔理沙を買い取ったのは、永遠亭のイナバだった。
「はやくこの縄を解いてね。はやくといてね」
「……気持ち悪い」
「おおこわいこわい」
 へらへらと喋りかけるゆっくりを見て呟くイナバ、その後、彼女は永遠亭に着くまで一言も口を開かなかった
「ただいま帰りました。師匠、言われたものを買ってきましたよ」
「ありがとうウドンゲ。じゃあ、先に姫様のお部屋に運んでおいて頂戴」
「はい」
 だれもいない部屋に放置された魔理沙、しかし今までも家とは比べ物にならない位暖かいこの部屋は、魔理沙にとって居心地がよかった。
 魔理沙は勝手にここを自分の部屋にした。
「あら、今年はなかなか大きいわね」
「そうですねー。それじゃあ頂きましょうか」
 突然入ってきた二人の女性に縄を解かれる。
「ここは、まりさのへやだよ!かってにはいっちゃだめだよ!!」
「あらあら、うふふ」
「ことしは、特にふてぶてしいですね。」
 言いながら帽子を取り払う。
「おおこわいこわい。ゆっくりかえしてね」
「……面白くなりそうね永淋」
「はやくでていってね、それとゆっくりできないから、ごはんももってきてね」
「えい♪」
「ゆ?」
 突然、体に包丁を入れられる魔理沙。
 余りにも突然だったので、一瞬呆気にとられた、が。
「い゛い゛い゛いだいー」
 直ぐに、激烈な痛みが襲い出した。
 それを意にかけずに、更に包丁を進める輝夜。
 右の頬にグルッと円を描いたそれは、反対側にも同じように円を描いた。
「いだいよ。おばさんなにするの!」
 この期に及んで神経を逆撫で摺る様な事を言う魔理沙、今までの癖なのだろうが自分の首を絞めることになった。
「へぇー、本当に今年のは面白いわねぇ」
 スプーンに持ち替えて頬から中身を掻き出していく、反対側も同様だ。
「!!!!い゛い゛い゛い゛だ゛だ゛だ゛だ゛だ゛い゛い゛い゛い゛い゛」
 もはや余裕も何もない、気を失うまで、想像を絶する痛みにただ耐えるだけだ。
 しかもそれも簡単には叶わない。
 既に、魔理沙種の体の構造を調べ終えている永淋の指示で、生命に関係の無い箇所から掻き出されているのだから。
「ゆ゛ゆ゛ぐり゛じだだい゛よ゛ーー!」
「おお怖い怖い。永淋見てよこの顔」
「確かに見るだけで不快感が増しますねー」
 二人はこれから数十分間この作業を続けた。
 今年は、研究の成果か出し終える直前までゆっくりの意識があったようだ。
「うどんげー終わったわー。夕食のテーブルに運んで頂戴」
「はい師匠。うわぁ、今年は特に美味しそうですね」

 通常、食事の用意はイナバ達がやるのだが、この作業は別であった。
 わざわざ回りくどい方法で、絶叫と共に餡子をとりだすこの方法は、永遠を生きる蓬莱人のみが理解できる方法なのだろう。
 或いは、これで一年を知っているのかもしれない。

 今日は冬至の日、そして彼が売っていたゆっくりはこう書かれていたのだから。
~今年も販売!! 冬至かぼちゃ。 冬まで保存したかぼちゃと、同じく腐らずに保存されている
          ゆっくりの生餡で作った特製です。冬を乗り切る栄養がたっぷり付きますよ~






 以上です、そういって彼は発表をやめた。
「ありがとうございました。さて、今の意見ですが、時期は限られていますがこの時期には殆どの人が作るので需要は大量に見込むことが出来ます。
それでは、第一回ゆっくり畑荒らし対策会議を終わります。今回の議題の解答は次回までに考えておいて下さい」


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最終更新:2024年03月26日 15:41