森でまもなく子供が生まれるゆっくりれいむとそれを見守るゆっくりまりさをみつけた。
「どうしたんだい?」
「ゆっ!?まりさ、にんげんだよ!」
「おにーさんどうしたの!ゆっくりしていってね!」
俺の声かけに気づいたゆっくりまりさがれいむを守るように俺の前に立ちはだかる。
すこし膨れているのでだいぶ警戒しているのだろう。
れいむはまりさに隠れながら自分の頭の上の実を気にしている。
その後ろは土が崩れている用に見える。
「もしかしてここに巣があったのかな?」
「ゆぅ・・・おにーさんにはかんけいないよ!はやくかえってね!」
「そうだよ!れいむはふたりでゆっくりしたいよ!」
「まぁまぁ。この様子だと巣を掘りなおすにはしばらく掛かるんだろう?」
「ゆぅ・・・」
「その間うちに来ないかい?」
俺の質問にまりさとれいむは俺を気にしながら相談を始める。
ゆっくりにとって人間は捕食者の一つである。
昔は人間を気にせず人の畑や家に入り込んで食料を漁っていたが、人間によってゆっくりが殺されだすとゆっくりは森の奥に逃げ出した。
森の中で人間にあってもすぐに逃げるようになったので一部を除く人間は無視するようになった。
これにより人間とゆっくりは上手く生活できるようになった。
しかし、一部の人間がゆっくりを捕まえに森に入っていたので、このように人間を警戒するのである。
「おにーさんのていあんはうれしいけどまりさたちはもりでくらすよ!」
「でも近くに身を隠せる場所は無さそうだけど。」
「でもにんげんはしんようできないよ!」
「子供達がどうなってもいいのかい?」
「ゆゆゆゆ・・・」
人間は怖い。しかし、このまま森でいるとやがて夜になり、捕食者が目を光らす時間になる。
まりさは何とかなるかもしれないが、実を生やしたれいむは明日にはいなくなるだろう。
まりさは決断を迫られた。
「ゆっ!おにーさんすこしゆっくりさせてね!」
「まりさ!?」
「だいじょうぶだよれいむはまりさがまもるよ!」
「じゃあ俺の後についてきてね。」
まりさは子供とれいむを見捨てれなかった。心配するれいむをなだめるまりさの目にはれいむを護るという決意の火が見えた。
もうすぐ日が暮れる。このままでは俺も危ないので崩した巣穴を離れた。
俺は後ろからついてくるまりさとれいむを気にしながらゆっくりと家に帰った。
帰る間俺は一度もれいむに近づけなかった。
近づこうとするたびにまりさが間に入るのだ。これなら夜も過ごせたかもしれない。
家につくと庭の一角にある小さな小屋に連れて行く。
「ゆゆっ!これはほかのゆっくりのすだよ!」
「そうだよ!かえってきたらゆっくりできないよ!」
「あぁ前にも使ってたゆっくりがいるだけだよ。」
「ゆぅ?」
「ここは巣をなくしたゆっくりに使わせるために作ったんだ。
今までに何匹ものゆっくりがここで巣が見つかるまで暮らしてたんだよ。」
「じゃあいまはいないの?」
「そうだよ。今は誰も使ってないからそこでゆっくりしていってね。」
「ゆっくりしていくね!」
「おにーさんありがとう!」
ちゃんと俺にお礼を言うゆっくり。
家に来るまではだいぶ警戒していたが、先ほどの話とこの巣に残っていたのだろうゆっくりの気配から俺を少しは信用したようだ。
しかしまだ完全に信じきってはいないようで巣箱の入り口は俺の手が入らないように枝や木の葉で隠せるようにしていた。
「ずいぶん厳重だね。」
「しらないばしょだからね!なにがくるかわからないもん!」
「まりさ!ごはんはどうしよう?」
「ゆぅ・・・」
「こんな時間だしね。何か食べれるものを持ってこよう。」
「ゆ!おにいさんいわるいよ!」
「まりさ!ここはおにーさんにたすけてもらおうよ!れいむはおなかがぺこぺこだよ!」
「ゆゆゆゆ・・・」
「料理に使わなかった野菜屑だから平気だよ。俺は捨てるものがなくなってうれしい。君達は食べれるものがもらえてうれしい。」
「ゆっ、じゃあへいきだね!おにーさんごはんください!」
「じゃあこっちにきて一緒に食べようか。」
そういってまりさとれいむを家の中に招待する。
れいむは縁側を登るのに苦労しそうだったので俺が持ち上げることにした。
まりさはいやがってたがお腹がすいたれいむはすぐに持ち上げてと言って来た。
まりさも言葉では嫌がっているがよだれがすこし見える。
朝早くに巣を壊したのでほとんど一日何も食べてないのだからしょうがないのかも知れない。
「うっめぇ、これめっちゃうめぇ!」
「むーしゃむーしゃしあわせー!」
野菜屑を一心不乱に食べるゆっくり達。それを見て俺も夕食を食べだした。
夕食を食べ終わるとこれからのことを話し合う。
「ゆっ!あさになったらでていくよ!」
「おにーさんありがと!」
「でも巣の当てはあるのかい?」
「ゆっ・・・でもなんとかするよ!」
「まぁまぁもうすぐ雨が良く降るのは知ってるだろう?」
「うん!もうすぐゆっくりできなくなるよ!」
「巣ができる前に雨が降っちゃうと溶けちゃうよ?それでもいいのかい?」
「ゆぅぅぅぅぅ・・・」
「だからさ、巣が出来るまであそこを使ってほしいんだ。餌は俺がやっても良いし自分でとってきてもいい。」
「おにーさんいいの?」
「ああ、もちろんその代わり話し相手になってくれないかな?ひとりだと退屈でね。」
「いいよ!ゆっくりしていってね!」
餌は雨の日以外は自分でとって来るそうだ。俺としては毎日上げてもよかったがまりさが嫌がった。
「かりのしかたわすれちゃうとだめだからね!」
「まりさはとってもじょうずだもんね!」
「れいむもすごいじょうずなんだよ!」
「はいはい。」
次の日からまりさとれいむの新しい生活が始まった。
朝のうちからまりさは巣のあった場所に出かけて穴を掘りに、れいむは新しい巣で子供達が落ちないようにじっとしている。
俺はまりさについていき一緒に森で食べ物を集めた。
森のことはゆっくりの方が詳しいのだ。まりさに連れられてかごをいっぱいにして家に帰る。
まりさは帰るとすぐに巣にいきれいむにご飯をあげる。そして次の日までれいむやおれとゆっくりして過ごす。
物覚えもよく、人の畑の餌をとらないなど俺が教えたことはすぐに覚えた。
どうやらゆっくりしているときに教えてもらったことはちゃんと覚えるらしい。
昔はゆっくりに厳しく教えていたそうだから逆効果だったのだ。
そんな生活も1週間続くと終わりが見える。
れいむの実がだいぶ育ち、赤ちゃんゆっくりの形が分かるようになった。
ゆっくりれいむが6匹、ゆっくりまりさが同じく6匹。
まりさの巣ももうすぐ完成だという。
「おにーさんいままでありがとう!」
「れいむたちはあしたにはでていくよ!」
「急だね。赤ちゃんが生まれてからでもいいんじゃないか?」
「にんげんになれちゃうよだめだからね!」
赤ちゃんが俺になれてしまうと、親ゆっくりがいない間に人里に近づくことを心配しているのだ。
「うーん、明日は止めた方がいいかな。」
「ゆ?」
「明日の天気予報は雨なんだ。」
「だいじょうぶだよ!あさはふらないよ!」
「しかし、もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむが昼までに巣までいけるのかな?」
「ゆぐぅ・・・」
俺はまりさたちがここに一日留まるように雨のことをはなす。
実際に雨が降るのでまりさも困っているのだろう。
「まりさ!まりさ!」
「れいむどうしたの!」
「あかちゃんみてみて!もううごいてるでしょ!」
「ほんとだもうすぐゆっくりだね!」
「うん!あしたにはうまれるよ!」
「ゆゆっ!?じゃああしたはここでゆっくりしようね!」
「うん!あそこならゆっくりうめるよ!」
実を宿したれいむが言うのだから本当なのだろう。明日には赤ん坊が生まれるのだ。
「じゃああとすこしだけここにいさせてね!」
「分かったよ。そのかわり後で赤ちゃんを見に行っていいかな?」
「ゆっ!うまれたあとならいいよ!」
「あといえにはあげれないよ!」
「うん。本当はおいしいものをあげたいんだけどそれもだめだよね?」
「だめだよ!もりでくらせなくなるよ!」
「じゃあ明日はすこし多く野菜屑をあげよう。れいむはゆっくりがんばってね。」
「ゆっくりがんばるよ!」
胸?をはるゆっくりれいむ。赤ちゃんが生まれる姿を見れないのは残念だがしょうがない。
俺はゆっくりをおいて部屋の奥で作業を始めた。
その夜、ゆっくり達が寝静まったのを確認してゆっくりの巣箱に向かう。
餌に睡眠薬を入れていたので朝までぐっすりだろう。始めのうちは警戒していたが今は無警戒だったので楽だった。
巣箱につくと屋根の上の鍵を外して屋根を持ち上げる。
巣の入り口は枝や石で入れないようになっていたが、そんなものは意味がない。
屋根を外すとゆっくり寝ているまりさとれいむが見えた。
朝まで時間がない。急ごう。
俺はれいむを持ち上げ外にだす。
次に実の大きさを測り、2番目に大きいれいむを手に取る。
そして用意していたライターで赤ちゃんゆっくりの底部を焼く。
焼きすぎると動けなくなるので、跳ねれない程度にライターであぶる。
これまで何度もやってきたので感覚でライターをうごかす。
一番大きいれいむ以外を焼くと、まりさのほうも同じように焼く。
これで、一番大きい赤ちゃんまりさとれいむ以外は生まれて来ても跳ねることができないだろう。
焼けた後が見えないように小麦粉で隠し、れいむを元の場所にもどして屋根を置く。
明日が楽しみだ。
赤ちゃんが生まれる日。妙にげんきなまりさとれいむに赤ちゃんが生まれたら教えてほしいと言い、家の中で待つ。
しばらくすると、巣が騒がしい。どうやら全部生まれたようだ。
まりさはまだやってきてないが俺は巣箱に近づく。
巣箱の前まで行くと外にまりさとれいむのこれが漏れていた。
「ゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」
親ゆっくりの声に元気に答える赤ちゃん達。
俺はまりさに呼びかける。
「あかちゃん、生まれたみたいだね。出て来て見せてほしいな。」
「ゆっ!!ちょっとまってね!」
「ん?どうしたんだい?」
「なんでもないよ!ゆっくりまっててね!」
どうやら子供達のことで焦っているようだ。
俺はゆっくり出てこいとまりさを説得する。やがてあきらめたのか、れいむとまりさが出てきた。
「みんなでてきてね!」
「ゆっ!ゆっ!」
れいむのこえに赤ちゃんまりさが一匹と赤ちゃんれいむが一匹巣から出てきた。
元気に親まりさのまわりを跳ねる。
しかし、親まりさとれいむはうかない顔だ。
その原因が巣から出てきた。
「ゆっ!ゆっ!」
小さいまりさと小さいれいむが五匹ずつ、巣から這いずって出てきた。
「おかーしゃんまっちぇ~!」
「ゆっ!ゆっくりはねてね!」
「ゆうううう!できないいいいい!」
5匹は上手く焼けたのかずるずるすべるしかできないようだった。
親まりさとれいむは必死に飛び跳ねさせようと口に咥えて目の位置ぐらいから落とす。
元気な赤ちゃんれいむとまりさはぽよんと地面で跳ね返った。
しかし残りの十匹はべちょっと地面に引っ付く。
「どうしてええええええ!」
「これはいったい!?」
「まりさにもわからないよおおおおおお!」
我慢していたのだろう。泣き出すまりさとれいむ。
この赤ちゃん達は外敵から逃げることも餌を取ることも出来ない。
親ゆっくりもそんな赤ちゃんを養い続けれないので赤ちゃんゆっくりはやがて餓死する。
そんな未来を思い描いてないているのだろう。
「ゆぅ・・・おにーさんありがと。まりさたちはここをでていくね・・・」
「子供達はどうするんだい?」
「がんばってそだてるよ!できるだけがんばるよ・・・」
最後まで元気が続かないれいむ。まりさも子供達を捨てることを考えているのがうかない顔だ。
そこで俺が提案する。
「もしよければ、その10匹預からせてくれないかな?」
「ゆ!でもこの子達は・・・」
「俺なら十分な量の食事を与えれるから。だめかな?」
「ゆぅぅぅぅ・・・」
捨てることを考えてた親ゆっくりにとっては願ってもないことだろう。
ゆっくり理解するのを待ってると
「まりさ、おにーさんにおねがいしようよ!」
「ゆっ!そうだね!おにーさんならだいじょうぶだね!」
信用してくれて何より。
ところで今までの話を子ゆっくりも聞いていたんだけど大丈夫なのだろうか。
「「「おかーちゃんおなかしゅいた~」」」
・・・どうやら自分のことを話していたとは考えてないようだった。
元気な子ゆっくりはともかく、飛べないゆっくりはもう少し危機感を持つべきだろうに。
まぁその方が話が楽だ。飛べないゆっくりを手にとって手元に集める。
「じゃあ確かに預かったよ。」
「おにーさんまりさとれいむのあかちゃんをおねがいします!」
「あぁ、ちゃんと育てるよ!」
親ゆっくりは安心したのか子供達に餌をやり始める。元気なゆっくりにはもちろん、飛べないゆっくりにも餌を渡そうとする。
「おにーちゃんはやさしいからね!げんきにそだってね!」
「とべるようになったらもどってきてね!」
親ゆっくりはまだ子供達が跳ねれるようになると思ってるのだろう。
もう無理なんだけどね。
まぁ最後になるだろう子ゆっくりとの時間を潰すのはかわいそうなのでそのままにしてあげることにした。
次の日の朝親ゆっくりと元気な子ゆっくりは親ゆっくりの作った巣へと旅立っていった。
俺は残った赤ちゃんゆっくりを用意してあった箱に落とす。
「ゆべっ!」
「ゆぐっ!」
べちゃべちゃと床に引っ付く赤ちゃんゆっくり。
始めはこちらに文句を言ってきたが、しばらく無視しているとこちらを気にせず集まってゆっくりをしだす。
全部がゆっくりしだしたところで話を切り出した。
「それじゃこれから君達を鍛えるよ。最後までついてきたら親ゆっくりの元に帰れるかもね。」
「ゆっ!ゆっくちがんばりゅよ!」
元気よく返事した赤ちゃんゆっくりを確認すると赤ちゃんゆっくりから離れた場所に旗を立てた。
「じゃあ今からこの砂時計が終わるまでにあそこについてね。たどりつけたらおいしいご飯をあげるよ。」
「ごはんごはん!」
「おなかしゅいたー!」
「ご飯はたどり着いてからだよ。それじゃスタート。」
スタートと同時に砂時計をひっくり返す。赤ちゃんゆっくりも同時に旗を目指して動き出した。
跳ねると楽に間に合う距離だったが跳ねれない赤ちゃんゆっくりには遠い距離だ。
必死に這っていく赤ちゃんゆっくり。俺はそれを横から眺める。
「ゆ~!砂しゃんゆっくちちてね!」
「ゆっくちちていっちぇね!」
「ゆっくち!ゆっくち!」
砂にお願いするもの、無言で這う物、声をあげながらがんばってるもの。
赤ちゃんゆっくりはそれぞれ思いつく方法で旗を目指す。
やがて一匹、二匹と旗にたどり着く。差が出るのは途中で休む休まないの違いだ。
今回は最後まで見るためにかなり距離を短くしていたので全匹たどり着くことが出来た。
それでも予想していた時間よりはだいぶ掛かっていたが。
「つかれちゃ~」
「ゆっくちきゅうけいだよ!」
「ゆっくちちていっちぇね!」
さて約束どおりおいしいものを上げよう。
「よくがんばったね!じゃあおいしいものをあげよう。」
「やっちゃね!」
「これれゆっくちできるよ!」
「はやくちてね!」
うれしそうな赤ちゃんゆっくりの下にお菓子を置いていく。
「さぁお食べ。」
「むーしゃ!むーしゃ!・・・しあわちぇええええええ!」
「うっめ!これめっちゃうめ!」
「ゆっくちたべるよ!」
さっきまでの疲れはどこへやら、夢中にお菓子を食べるゆっくり。
やがて食べ終わった赤ちゃんゆっくりは思い思いにゆっくりしだす。
と、言っても跳ねれないので壁に寄り添ってたり、赤ちゃん同士で話すぐらいなのだが。
ゆっくりしだしたのでもう一つルールを教えることにする。
「さてじゃあ次からは食事にも砂時計を使うよ。」
「ゆゆ?」
「この砂時計の砂が落ちる間だけご飯の時間だからね。」
「それじゃゆっくちできないよおおおおー!」
「ご飯を取り上げるだけだからゆっくりはできるよ。それに砂時計ゆっくりしてたでしょ?」
「ゆっくちちてたよ!ごはんだけならゆっくちできるね!」
「でも次の旗も同時に置くからね余りゆっくりしてるとたどり着けなくなるから気をつけてね。」
「わかっちゃよ!」
「じゃあ次を始めるよ!」
そういって今度は先ほどよりすこし遠い距離になるよう旗を置く。
今回は最初と違って赤ちゃんゆっくりは二つに別れた。
旗に向かうものとゆっくりしてるものだ。
先ほどは旗についてからもだいぶ時間があったからゆっくりしてるのだろう。
しかし砂時計はそんな赤ちゃんゆっくりを待たずに砂を落とす。
やがて全部の赤ちゃんゆっくりが旗を目指すが、砂が全部落ちたとき辿りつけていたのは半分だった。
たどりつけてなのはまりさ種の方が多い。這うだけでも身体能力の高さが出るようだ。
それに加えて最初にゆっくりしてたのはれいむ種が多かったのもあるだろう。
「今回は半分になったね。じゃあご飯の時間だよ。」
そういってたどり着いた方には前と同じようにお菓子を、たどり着けなかったほうには野菜屑や近くで取った虫を与える。
「「「むーしゃ!むーしゃ!しあわせ~!」」」
おいしそうにお菓子を貪る赤ちゃんゆっくり。対照的に、
「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」
「ゆゆっ!むししゃんうごかないでね!」
「れいみゅもおかしがいいよ!」
こちらは野菜屑や虫の赤ちゃんゆっくり。
親ゆっくりが取ったのを食べたことがあるので食べないことはないが、食べやすいように口渡しだったので動く虫は食べずらそうだ。野菜屑も食べやすい大きさに切ってないのでうまく食べれない。
お菓子を食べてるゆっくりの方に向かおうとしたが透明な壁によって旨そうに食べる赤ちゃんゆっくりを見て涎をたらすしか出来なかった。
そうして食べている頃に砂時計の砂が落ちる。
「はい、時間切れー。次の旗はあそこだよ。」
「ゆ~!まだたべおわっちぇないよ!」
「もっとゆっくちちゃちぇてね!」
「だめだめ。砂はもう全部落ちたよ十分ゆっくりできたよ。」
「おにーしゃん!れいむちゃちにもおかしちょうだい!」
「旗まで辿りつけたらね。辿り着けなかったらさっきみたいな野菜屑と虫だよ!」
「「「ゆ゙ゔううううううううううう!!!」」」
砂時計は砂の量を少なくしていたので短いと感じるのは当然だったが、赤ちゃんゆっくりには砂の量の違いは分からない。
野菜屑はもう嫌なのか先ほど辿り着けなかったゆっくりは我先にと旗へと向かう。
お菓子だった赤ちゃんゆっくりも野菜屑を食べないように旗に向かうが野菜屑だったゆっくりよりはゆっくりしていた。
「ゆっくち!ゆっくち!」
今回の旗はさっきよりはかなり遠くにおいているからしばらく掛かるだろう。
砂の量は増やしたので全匹辿り着けないことはないはず。砂が落ちる頃に見にこよう。
赤ちゃんゆっくりの必死な声を聞きながら俺は部屋を後にした。
「じゃあご飯の時間だよ!」
「むしゃむしゃむしゃ・・・」
旗に向かうってご飯と言うことを3日間繰り返した赤ちゃんゆっくりはもはや喋ることもせずに黙々とご飯を食べる。
一口でも口に含もうと必死なのだ。それは野菜屑と虫の方も変わらない。
この三日間で野菜屑にならなかった赤ちゃんゆっくりはいなくなった。
まだ野菜屑と虫を食べにくそうにしている赤ちゃんゆっくりもいるが、慣れて普通に食べる赤ちゃんゆっくりも出始める。
「はい時間切れ~。次はあそこだよ。」
「ゆ・・・ゆっくちがんばりゅよ・・・」
次の場所を教えると赤ちゃんゆっくりはゆっくりせずに旗に向かう。
お菓子のほうはだいぶ食べられているが野菜屑はまだ残っている。
タイムアップと同時にご飯の時間が始まり、食べる場所は旗の近くなので遅れたゆっくりは食べ始める時間もそれだけ短いのだ。
この3日間で距離と時間はだいぶ延びた。
今では俺と同じ時間に食事をするように砂時計と距離を合わせている。
赤ちゃんゆっくりは朝昼夜と制限時間内に旗に辿り着けるように一度もゆっくりせずに旗を目指し。
夜と朝の長い時間の間にだけ眠ることが出来た。
それもゆっくりしすぎると旗までたどりつけないのでゆっくり眠れない。
野菜屑をあげるのは朝の時間が多く、昼夜は余り野菜屑が必要なくなっていたが、野菜屑なんてそんなに多くでないので好都合だった。
お菓子を食べてる間は幸せそうに思えるだろうが、忙しなく食べていてはおいしさも分からないだろう。
現に今は小麦粉をこねてお菓子に見せたものなのだ。
遅れてご飯を食べれずに衰弱していく赤ちゃんゆっくりも出始めるが、寝ている間に果実の汁をかけてやれば元気になる。
死んでゆっくりさせないようにゆっくりの体調管理には気をつけねば。
赤ちゃんゆっくりを鍛えるようになって1週間、うれしい誤算があった。
赤ちゃんゆっくりが心配になった親ゆっくりが現れて、旗に向かって懸命に這う赤ちゃんゆっくりをみてマツタケを置いていったのだ。
どうやら、ちゃんと育ててくれていると勘違いしたようだ。
もっとも勘違いするように音は届かないようにしているし、近づくと気が散るからと言って遠くから見せたから当然だが。
赤ちゃんゆっくりも必死なので周りに目がいかず、親ゆっくりが来ても気づかなかった。
「どうだい。がんばってるだろう?」
「ゆっ!あかちゃんたちがんばってるよ!」
「そうだろう。みんな君たちに会うためにがんばってるんだ。」
「あかちゃんたちにももってきたものたべさせたいよ!」
「あとで俺がちゃんと食べさせるよ。」
「ゆ~、まりさがちょくせつわたしたいよ!」
「それはだめだね。今は君達に会うためにがんばってるから今あっちゃうと今までの苦労が無駄になっちゃうんだ。」
「ゆゆゆ・・・」
「まだ野生に耐えれないから我慢してね。」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「よし、じゃあこの野菜屑をやろう。こんなものしかないがよければもっていってくれ。」
「おにーさんありがとう!」
それからも親ゆっくりは俺にいろいろなものを持ってきた。
どれも山で取れる珍しいもので、赤ちゃんゆっくりのためにがんばって取ってきたのだろう。
ありがたく全部いただくとする。
赤ちゃんゆっくりは一度もゆっくりさせずに這い回っている。
今は平地だけじゃなく、砂利道や坂など様々な障害を加えている。
今は綱渡りだ。
旗は立方体の箱の上にある。跳ねれればいいのだが跳ねれないゆっくりは崖で止まってしまう。
そこで坂がついた箱を用意し、そこから旗の箱まで綱を引いてやるのだ。
旗に辿り着くには綱を渡らなければならず、綱から落ちたら最初からだ。
これだと辿り着けない赤ちゃんゆっくりは一度も食事を出来ずに衰弱してしまい、果実汁に頼りっぱなしになるが、
親ゆっくりが持ってきているものの中に果物が含まれているので余り負担は増えなかった。
それに赤ちゃんはまったく育ってない。
実は親ゆっくりに遠くから見せていたのは育っていない赤ちゃんを気づかせないためでもあった。
こいつらはゆっくり出来ないと成長も出来ないらしい。
おかげで餌代も増えず、場所もずっと同じでいいので楽だ。ご都合設定バンザイ。
「もっとゆっくちちたいよおおおお!」
「ゆぅ、れいみゅがんばっちぇね!」
「ゆっくちがんばりゅよ!まりしゃもがんびゃろうね!」
相変わらず食事中は声もなく急いで食べるが、ほとんど旗に辿り着けるようになって赤ちゃん達はお互いに助け合うようになった。
協力しないと辿り着けないようなギミックを増やしたせいもあるだろう。
これはどんどん無口になっていく赤ちゃんゆっくり対策だ。
綱を渡るゆっくりをもう渡りきったゆっくりが応援する様子を見ながら、
まだまだ退屈させない赤ちゃんゆっくりのために次はどんなギミックにしようか考えるのはもう日課になっていた。
「おにーさんまりさたちはしばらくこれないよ!」
「ん、そうかもう冬篭りか。」
「そうだよ!あしたにはあなをふさぐんだよ!だからはるまであえないけどあかちゃんをよろしくね!」
「それなら餌が必要だろう。よければもってけ。」
「ゆゆっ!おにーさんありがとう!」
そうかもう冬篭りか、ゆっくりが言うのだからそろそろ雪が降るだろう。
ゆっくりは天候に敏感だ。身の危険と直結してるから当然だろう。
そろそろ虐待の手段に欠いてきたのでここらで赤ちゃんゆっくりをかえしてやるか。
最後の旗とりをさせた次の日、俺は赤ちゃんゆっくりを外に出してやる。
「ゆー!おしょとだー!」
「しゃ、しゃぶいよおおおお!」
「ゆっくちできないいいいいい!」
「あぁ悪い悪い、これを着ればゆっくりできるよ。」
そういってゆっくりを綿で包んで外れないように止めてやる。
「どうだ?まだ寒いか?」
「ゆゆ~!あっちゃかぃ~」
「これなりゃゆっくちできるよ!」
「よし、じゃあゆっくり親の元へお帰り。これまでがんばってきたから野生でもゆっくりできるよ。」
「おにーしゃんありがちょー!」
「巣の場所は教えたとおりだからね。がんばって帰るんだよ。春にはまたおいで。」
「おにーしゃんまちゃね~!」
そういって綿に包まれた赤ちゃんゆっくりは森に入っていった。
今日巣を閉じると言っていたから間に合うだろう。
今までの訓練から野生でゆっくりと生きる赤ちゃんゆっくりを想像しながら俺は雪の降る道を帰っていった。
「おかしいな。あいつらがゆっくりしてる姿が想像できないぜ。」
最終更新:2022年05月03日 19:17