その騒音が始まったのは先週からだったろうか。 
集会所で行われた宴会から帰ってきた俺は家に着くなりさっさと布団を敷いて寝ようとしていた。 
だが、寝る前に妙な音がしたのだ。高さや強弱を変えて延々と続いたその音は、まるで人の声のようにも聞こえた。 
結局声が気になってなかなか眠れず、気が付いたら明るくなっていた。 
それからというもの毎晩音は聞こえてきた。時には甲高く時には唸るように低く、一晩中響き渡った。 
祟りか妖怪かと思った私は博霊神社の巫女様に相談したが、私からそうした気配は感じないとの事であった。 
それでも念の為にとわざわざ護符を授けて下さった。帰り際に素敵なお賽銭箱はあっちよ、と言われ慌ててお参りをした。 
自分の問題の解決ばかり求めて周りを省みていなかった事に気付き、少し恥ずかしかった。 
妖怪や祟りが原因でないとすればそこまで大きな危険も無いだろう。 
そう判断した私は原因を突き止めるべく、今夜は外で見張ることにした。 
張り込みを始めてから四半刻ほどだろうか、何かが私の家の屋根に飛んで来た。 
大きさはおおよそ二尺程だろうか。妖精ではなさそうだが、何分暗くてよく見えない。 
と、その謎の影は大きな音を立て始めた。やはりあれが騒音の正体だったようだ。 
耳を澄ましてみる。家の中では明確に聞き取れなかったが、やはり人の言葉のようだ。 
「ごーかんだっ♪ふとーんなかでっ♪ごーたすごっ♪かーんたんだ♪」 
歌……?歌を歌っているのか、あれは。 
しかし酷い音痴だ。ここまで耳障りな歌は初めて聞いた。剛田さんの所の武君だってここまで酷くはない。 
とりあえず石を投げつけてみる。すると歌が中断され、どこかへ飛び去っていった。 
去り際に、「ちんちーん!」と聞こえたような気がした。 
あれは一体何だったのかと考えながら家の中に入る。今夜はぐっすり眠れそうだ。
翌日の夕方 
私は屋根にトリモチの罠を仕掛けていた。 
昨夜のあいつは結局すぐに戻ってきて私の安眠を妨害しまくってくれたのだ。 
屋根に止まり空を飛ぶあいつを捕らえる手段はこれ位しか無い。 
罠を仕掛けて早めの夕食を終えると、昨日と同じく外で待機した。 
あいつはまた来た。きっちり同じ時間なあたり、几帳面な奴なのかもしれない。几帳面な騒音公害というのも考え物だが。 
騒音の主は屋根に留まると歌い出す事無く、「ちんちん!ちんちん!」等と叫びもがいていた。 
どうやら無事罠にかかったようだ。何だかおかしな表現だが気にする事無く梯子で屋根に上る。 
犯人を間近に見て驚いた。あの騒音の主はなんとゆっくりだったのだ。 
鳥の羽のようなものを生やしたそいつは、恐らくあの夜雀の妖怪を模したものだろう。 
元となった夜雀とは違って、歌を聞いても正気を保つし、こちらを食べようとする訳でもなかったが。 
「うわあ……これはゆっくりですね。ゆっくりが歌ったりするなんて、何なんだこれはたまげたなぁ」 
とりあえず独白してみる。意味は無い。 
「ち、ちんちん……?」 
ゆっくりはこちらを見て怯えたように鳴いた。どうやら他の種類程おめでたい頭ではないようだ。 
それともこいつは私が昨日石を投げた人間だと気付いているのだろうか。 
どちらにせよ、私を苦しめた犯人が目の前に居てしかもゆっくりだというのならやる事は一つしかない。 
とりあえず罠から開放してやる事にする。が、その前に逃げられないよう羽をもぎ取ろう。 
「よっこらせっくす」 
「はあ゛ね゛がほぢいどはい゛わ゛な゛い゛っさあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 
欲しくねえのかよ。明らかにチョイスがおかしいだろ。というかこんな時でも歌うのかよこいつは。 
妙な所に感心しつつ、トリモチから引っぺがしてやる。 
「うんとこどっこいしょっと」 
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!がわ゛がはがれ゛だよ゛お゛お゛お゛お゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」 
お前は川を纏ってんのかよ! 
はっいかんいかん。いつの間にかツッコミキャラになってしまいつつある。 
しかしこいつは中々面白いな。痛めつける度にボケてくるとは新しいキャラだな。 
まだ呻いて(歌って)いるゆっくりを抱えて屋根から下り、家の中に入る。 
ちょっと面白いので色々と弄ってみようと思う。まず落ち着かせてから話しかける。 
「お前は一体誰なんだい?何処から来たんだ?」 
「ち、ちんちぃん……?」 
駄目だ分かってない。質問を変えるか。 
「お前もゆっくりしに来たのかい?」 
「ち、ちがうんちん……うたいたいだけだよちん……」 
ゆっくりという言葉には反応するのか、質問にまともに答えた。 
しかし何だその語尾はアホか。今時語尾キャラなんて流行らないぞ。しかも卑猥だし。 
「歌いたい?歌うのが好きなのかお前?」 
「ちん!ちん!」 
勢い良く頷いて答える。他のゆっくりよりは多少コミュニケーションが取り易いな。多少、だが。 
その後も辛抱強く質問して分かった。 
こいつはたまたま夜の散歩中に私の家の上を通りがかった。 
ステージとして丁度良さそうに見えたので屋根に降りて歌うと凄くゆっくり歌えた。以来毎晩ここで歌っていると。 
なんとまあゆっくりらしい答えだ。何というか欲望に忠実で分かり易い。 
形はどうあれ、こいつも結局ゆっくりしたかっただけなのだ。 
とはいえそれで私への罪が消える訳ではない。どうせゆっくりだ。言葉で説得しても無駄だろう。 
ならばせいぜいその歌声で私を楽しませてもらうとしよう。 
「話は良く分かった。だがな、お前の歌で困っている人もいるんだよ」 
「ちぃん?」 
「分からんか?分からないなら別にいいよ。分かろうと分かるまいと、そんな事はどちらでも同じなのだからな!」 
そう言うと、屋根から下ろしたトリモチをぶっかけて固定する。白くて濃い粘液が顔にもかかってとろりと垂れる。 
「ね、ねばねばねばねばねばねばねーばーえーん!!」 
「そうかねばねばか。ぴったりに聞こえるが違うからな」 
「ち、ちんちんん……」 
顔に粘液を滴らせながら、目に入ったのだろう目元を赤くしてこちらを見上げて呟く。 
むぅ。どうもいかん。調子が狂ってしまいそうだ。ひょっとして俺ヘンタイ? 
最初はガンガンいたぶる予定だったのだが気勢を削がれてしまう。ある意味恐ろしい奴だ。 
案外これがこいつらの生存スキルなのかもしれない。ならばそのスキルに引っかかってやるとしよう。 
そして俺は立ち上がり下穿きを脱ぎ、ヘンタイの仲間入りする事を決意した。 
お父様お母様、この様な息子で申し訳ありません。さようならノーマル世界。こんにちは新しい世界。 
「ちんちん!ちんちん!」 
「そうかそうか嬉しいか。お前もヘンタイなんだなゆっくりの分際で」 
楽しそうにはしゃぐゆっくり。初めて見るこいつが珍しいのだろうか?ゆっくりが見る機会なんて無さそうだもんなあ。 
まずはゆっくりの口の中を確認する。うむ、歯は生えてない。これなら安全だな。 
そして口元に持っていき、手で強引に口を開かせてGo to mouth! 
「ばははばははばはは~♪ばはは~お~はへーうほー♪」 
「それは魚だ!…うわあ、ゆっくりの中温かいナリぃ……」 
意外にもそこはしっとりしていて暖かかった。しかも歯が無い口で歌うのがまた。 
「ひゃーふーへー♪ほーほふほー♪へーいーほーふはえひはうー♪」 
「俺が性器だ!…………そろそろいいか」 
ちゅぽんっ。 
間抜けな擬音と共に引っ張り出す。そして、後ろに回りこんで指で後頭部に穴を空ける。 
「じあ゛わ゛ぜはい゛づだあ゛っでうじな゛っではじめ゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!」 
「穴掘り繋がりかそれ?失うのはこれからだ!ってのも違うか……」 
もうツッコミキャラでいいよチクショウ。ぼやきながら餡の中へ侵入する。 
「おほっ何とまあ」 
「があ゛わ゛い゛っだあ゛!がぜを゛はあ゛ら゛ま゛っぜえ゛!!」 
「アンつっても餡じゃねえぞ?ゆっくりの体高は156センチ。くっ……××(だ)すよみすちー!!」 
思わず変な事を口走る俺。だって温かい餡の中って意外といいんだもの。 
あまりの良さについ力んでしまい、ゆっくりを押さえていた手に力が入りすぎて指が刺さってしまった。 
「よ゛る゛を゛ごお゛お゛お゛お゛え゛でえ゛え゛え゛え゛え゛!!」 
「それはそういう意味じゃない!そしてお前に夜を越えさせるつもりは初めから無い!……っふぅ」 
終えると同時に一気に引き抜く。餡とかで汚れて非常にグロい。後で風呂入らんと。 
ゆっくりはピクピク痙攣している。もう死にそうだな。ここで殺すと掃除が大変なので庭へ運ぶ。 
「何か言い残す事は?」 
「ぢ、ぢん゛ぢ……」 
「そうかい」 
鍬を振り下ろす。 
「ペニス!!!」 
とんでもねえ断末魔と共に息絶えるゆっくり。さようならゆっくりミスティア。 
お前の中、甘くてとろけるようだったぜ。よし、美味い事言った。
SEXUAL SONG FINE
最終更新:2022年11月18日 13:16