『通りすがりの人間だ』
※どうしようも無いネタ系エピソードです。
※パロディ要素を多分に含みます。
「う~♪ あまあま☆でりしゃすぅー♪」
「おいしぃーね☆おねぇーさま♪」
立ち入り禁止の立て札虚しく、
公園の芝生の上で、よたよただばだばステップを踏む2匹のゆっくりがいた。
ふとましい体にとびきりの下膨れスマイル、ピンク色のおべべを纏ったゆっくりれみりゃと、
そのれみりゃの妹で、宝石のような羽とルビー色の瞳を持った、ゆっくりフランだ。
2匹は、愉快にダンスを踊りながら、文字通り"ゆっくり"を踊り食いしていた。
その周囲では、彼女達の"でぃなー"として捕らえられたゆっくり達が、懸命に叫んでいる。
「ゆっくり! ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしようよー! ゆっくりぃー!」
れみりゃとフランに掴まれながらジタバタ抵抗する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。
しかし、抵抗は実らず、間もなく「ゆっくりした結果がこれだよ!」というハミングだけが公園に残った。
「きちゃない☆リボンはぽいするのぉー♪ ぽぉーっい♪」
「おぼうしびりびりにするの~☆びりびり~♪」
食べ残しのリボンや帽子で遊びながら、
れみりゃとフランは次なる獲物に手を伸ばす。
次にれみりゃが手にしたゆっくりれいむは、既に正気を失っていた。
「ぱ、ぱぴぷぺっ、ぱぴぷぺぽぉ!」
「う~♪ こいつこわれちゃったんだどぉ~♪ おもしろいんだどぉ~♪」
食べるのを止め、れみりゃはれいむで鞠つきを始める。
フランもそれを真似して、ゆっくりをボールにして遊びだした。
「おねぇーさま☆げげるしよー♪ げげるー♪」
「うっうー♪ ゆっくり"ぼぞぎでじゃす"するんだどぉー♪」
れみりゃとフランは、この近隣で最強のゆっくりだった。
その力は強く、ゆっくりも妖精も人間も、彼女らには逆らえないでいた。
彼女らにとって他のゆっくりや人間など、
ゲームの対象であり、エサであり、支配するものだった。
……そう、少なくともこの日までは。
「うぁ?」
「ぷぅー?」
ゆっくりで遊ぶのを止め、れみりゃとフランは首を傾げた。
見ると、いつの間にかすぐそばに長身の男が立っていた。
「「うー? おにぃーさん、だぇーれぇー?」」
声を揃えて口にする、れみりゃとフラン。
長身の男はカメラを構え、そんな2匹へ向かってシャッターを切って呟いた。
「……どうやら、ここも俺の世界じゃないらしい」
溜息をつき、れみりゃ達への興味を失う男。
一方、れみりゃはワケのわからぬ男に対し、徐々に不機嫌になっていく。
「う~♪ ここはおぜうさまのこーまかんだどぉー♪
にんげんさんはかってにはいってきちゃ、だめ☆だめ☆なんだどぉ~♪」
よったよったのったのった。
れみりゃは男の下まで歩いて行き、両手を大の字に広げた。
「ぎゃおー♪ ぷっでぃ~ん☆みつがないと、たーべちゃうぞぉー♪」
れみりゃは、男がひれ伏すことを確信していた。
なんと言っても、自分は最強のかりすま☆おぜうさまなのだから、と。
だから、次の瞬間大きな下膨れ顔に男の拳がめり込んだことも、
その勢いのままふっとばされたことも、すぐには理解できなかった。
「だっどぉーー!?」
吹っ飛ばされたれみりゃはムクリと起きあがり、そのままぼぉーと男を眺める。
そして、徐々に顔に走る痛みに気づいて、泣き散らしながら何が起こったかを理解した。
「うぁぁぁー! おぜうさまのえれがんとなおかおがぁぁぁーー!!」
うっびぃ~!と叫びを上げながら、顔を押さえて芝生の上をゴロゴロ転がる、れみりゃ。
一方、フランもまた、姉が攻撃されたのを理解して、男への攻撃を開始した。
「うー! こいつぶれぇーもの! おねぇーさまのかたきとる!」
んがんぐと、口の中から黒い金属の棒を取り出し、フランはそれで男に殴りかかろうとする。
フラン自慢の必殺武器・れーばてぃんだ。
「うー! くりゃえー!」
ぶんぶんと棒を振り回しながら、男へ接近するフラン。
「ふん、蝙蝠には蝙蝠だな」
男は慌てず騒がず、1本のスティック状のものを取り出し、
それでフランのれーばてぃんを受け止める。
「うー!?」
今まで誰にも破られたことのない必殺の一撃を軽々と受け止められ、フランは目を見開く。
その隙を逃さず、男は棒状のものでフランを払いのけた。
思わぬ反撃に受け身もとれず、フランは芝生の上に尻餅をつく。
と、同時に、男の持っていた棒状のものもボキリと折れてしまう。
……男が持っていたもの、それはどこにでもある蝙蝠傘だった。
「ま、安物にしてはじゅうぶんだな。化けて出るなよ」
ぽいっと折れた蝙蝠傘を投げ捨てて、男は未だ悶絶中のれみりゃへ近づいていく。
「うー! ゆっくりしね! おねぇーさまからはなれろ!」
フランは立ち上がり、男を呼び止める。
すると、見る間にフランの体が4つに分身していった。
フランの奥の手トリックベント……ではなく、フォーオブアカインドだ。
「しね! ゆっくりしね!」
フランは息巻いて、男へ迫っていく。
しかし、男は慌てない。
至って冷静なまま、フランをからかうようにチッチと指先を動かした。
「そういうの、こっちにもあるぜ」
「……うー?」
男はそう言うや否や、泣きべそをかくれみりゃの両脇をつかんで立ち上がらせる。
「うー♪ つかまっちゃったどぉー♪ いっやぁ~ん☆おぜうさまはずかしぃ~☆だっどぉ~♪」
れみりゃは、何を勘違いしたか、顔を赤らめてふとましい体をモジモジさせる。
そんなれみりゃの言動を無視して、男はれみりゃを前のめりに押し倒した。
「ちょっとくすぐったいぞ」
「やめるんだどぉ~♪ う~、えっっちぃ~なおにぃさんだどぉ~♪」
ブチブチ!
れみりゃの背中から渇いた音が鳴る。
男がれみりゃの背中についた小さな黒い羽を引き抜いたのだ。
「う、うぁぁーー! れみりゃのパタパタがぁぁーー!?」
痛みで泣き叫び、四つんばいの姿勢のまま、男から逃げようとするれみりゃ。
しかし、男はれみりゃを逃がさないよう押さえつけ、その上に馬乗りになった。
『ファイナルフォームライドゥ! れれれれ、れみりゃーー!!』
「う、うぁ!?」
男の声とは違う声を、れみりゃは確かに耳にした。
そして、その次の瞬間。
れみりゃの体は羽を失ったにも関わらず、フワリを浮き上がり、
男を背中に乗せたまま、フランへ向かって突進を開始するのだった。
「う、うぁぁーー! れみりゃのおからだがかってにぃぃー!?」
「う、うー! おねぇーさま、ゆっくりとまれー!」
* * *
「うっぐ、ひっぐ……しゃくやぁー……」
「う、うー……めぇーりぃーん……」
芝生の上で大の字になって、2匹のゆっくりがのびていた。
黒い羽を失い、ボロボロになったピンク色のおべべを纏ったゆっくりれみりゃと、
ぽっきり折れたれーばてぃんを後生大事に抱えるフランだ。
泣きながら、自分達を庇護してくれる存在の名を呼ぶ、れみりゃとフラン。
完全に戦意を失った2匹を見下ろしてから、男はゆっくりと踵を返した。
「お、おにぃーさんは、いったいだれなんだどぉー……
なんでおぜうさまにこんなひどいことするんだどぉー……」
搾り出された、れみりゃの問いに、
男はふと足を止め、口を開いた……。
「俺は通りすがりの……」
おしまい。
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これは、ひどい……。
我ながらひどすぎる……。
最終更新:2022年05月04日 00:01