登場する人物は愛で系です
本編ぬる虐めすら怪しいです。
暗い雰囲気…?
冗長です
古本屋のSSです
初期の面影がありません(笑)
【まりさとわたし スミカ】
「ち ひ゛ちゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁん…」
「だぜぇぇぇぇぇ!!だすんだぜぇ!!」
ゆっくりたちの要求に冷酷さすら感じさせない機械的な声が
三十八回目の同じ返答を、天から降とすように告げる。
「拒否する。」
「う゛う゛う゛う゛ぅちびぢゃん…ちびちゃん……」
「ここからだぜぇ!ばりさざまをだぜぇ!!」
「拒否する。」
三十九回目の要求の却下
ちょっとした家具でも運搬するような背の高い段ボール箱に閉じ込められた
まりさ種とれいむ種の成体ゆっくりが
れいむは一粒種の赤れいむを案じて力無く泣き震え
まりさは我が身の不自由に怒り狂っている。
見下ろす青年の掌に乗った赤れいむの様子は二匹からは見えないが
青年の家に侵入した一家が捕まって30と5分
ダンボール箱に閉じ込める時にさえ
青年はゆっくり達を手荒には扱わず
二匹が見上げる切り取られて窓になった側面とは反対側の
中の二匹がいる側の側面には、土の冷たさが伝わらないように座布団まで敷かれている。
青年の無機質な瞳が、掌の赤れいむに向けられ2~3度小さく頷く
声も出せないほど赤れいむを案じる母れいむは気が気では無いらしく
その様子に苛立ちを募らせるまりさは大きく舌打ちする。
「もぅ…おうちかえる…」
「ゆ゛ぅ゛?!なにいってるんだぜふざけるんじゃないぜ!!
このおおきなおうちはまりさのだぜ!!まりさざまがかえるおうちは…」
「かんけいないよ!!れいむはちびちゃんがいちばんだいじだよ!ばかなの?!しぬの!?」
「れいむ!?」
まりさに逆らう事など古今一度も無かった母れいむが
耐え切れなくなったように血の出るような叫びを挙げる。
「にんげんざん、おねがいします!ちびちゃんをかえしてくだざい!!
れいむはつぶされてもかまいません!どんなひどいおしおきもうけますから゛!!
だからちびちゃんをっ、ちびちゃんだけでもおうちにかえしてあげてくださ゛いぃぃぃ!!」
「この、れいむっ!なにばかなこといってるんだぜ?!…ゆ!?」
窓のように開けられた、二匹から見て天井側の側面から
先程まで赤れいむを乗せていた右腕が
二匹めがけて伸びてくる…そして
バンッ!バン!!
「っひぃ!?」
「やべろぉ!!」
内側から何度も何度も、壁の一箇所を叩き続ける。
ダンボールの中にいる二匹には、その音が凄まじい轟音に
その震動を大地震の様な衝撃として感じる。
バンッべりィ!
「ひっ、…ゆぅ?」
「なんなんだぜ!?」
何かが勢い良く破れるような音を立てて
青年の拳が叩きつけられた壁面が観音開きに開放され
母れいむはそのままに、暴れていたまりさは
「ゆびっ、べ!?」
転がり出て顔面を地面で打ちつけ、小さくバウンドする。
母れいむはその後を、おそるおそる這い出してくる
「おかーさんっ!」
「ゆゆっ!ちびちゃん!!」
涙を流して頬を摺り寄せ、再会を喜ぶ母子に視線を合わせるように
といっても長身の男性が膝を折っても、必然的に見下ろす構図に成るのだが
母れいむの排気ガスやその他の汚れにギトつく黒髪に
丁寧に指を通して、何度か撫でてから
先程とは違う、確かに感情のこもった声で尋ねる。
「さっきの言葉は本当か?」
「!っ、…ぅ…ぁ… ゆ…」
青年の言葉に、自分の発言を思い出したのか
一瞬青ざめて動転する母れいむ
その眼が、頬を寄せている赤れいむに救いを求めるように向けられる。
赤れいむは、何も言わずに母れいむを見つめ返す。
「本当か?」
「そんなわけないんだぜぇ!!」
母子に集中しているのを隙ありと見て取ったのか
いつの間にか復活していたまりさが
勢いをつけてその背中に体当たりを仕掛ける。
「ッ…少し待て」
「しね!しねっ…ゆ、あ、やべろお゛!!はなぜ!!」
「静かにしていろ…」
「むぐぅ!」
最初に捕獲した時とは違い、乱暴に布製ガムテープをまりさの口に貼り付け
ダンボールの中に放り込むと出てこないようにもう一度テープで封印する。
ガタガタと体を揺らして暴れているが、自力での脱出は絶対不可能だ。
「どうなんだ?」
まりさの凶行にすら気づかないほど一心に赤れいむを見つめていた母れいむに
促すようにもう一度、静かな声音で青年が尋ねる。
「れいむは…、ゆっくりできないことはぜんぶれいむにしてください。
このこだけは、ゆっくりさせてあげてください。にんげんさん…」
恐怖に濁った瞳ではなく、それこそ慈母のような微笑で
一部の人間の持つゆっくりのイメージを根底から覆すような言葉を迷い無く言い切り
この世の最後の未練とばかりに赤れいむを見つめている。
「おちびちゃん、ゆっくりさせてあげられないだめなおかあさんでごめんね…
ちびちゃんだけはゆっくりしてね……」
「おかあ、さん」
少し驚いたような顔をして、それでも堪え切れないような目尻の涙を
擦り寄った母の、薄汚れた身体に摺り寄せる。
この母れいむは、これから先どんな恐ろしい目にあうのかを特有の能天気さから想像していないのでは無い
もう全く恐れていないだけだ。
青年が一度も『子供を助けてやる』と言っていないのに
全ての罰が自分に架せられて
それで全てが終ると
信じている。
「 。」
男が冷然と、機械の様な声を降らせる。
まるで予測していなかった答えに、れいむの思考は完全に停止した。
「………ゆ?」
自分たちを見下ろす瞳に、先程までの暖かな感情は宿っていない。
ただ、その肩が、瘧の様に震えて
唇が、裂ける様に
吊り上がって。
いるだけ
唐突に、母れいむの脳裏に
ある一連の映像が浮かぶ
生まれた時から野良ゆっくり
産まれた時には両親は黒く朽ちて
保護してくれる誰かなど、一度だっていなかった。
たくさんの酷い物を見続けて、生きてきた。
市街に生きるゆっくりたちに、鬱憤をぶつけられるように
四方八方から踏みつけられて朽ち果てるめーりん
餌場にしているゴミ捨て場で、両の目玉をえぐられて
懸命に逃げようと這いずりながら
全身を啄ばまれて息絶えたありす。
なかまたちをいとも容易く踏み潰す、黒く巨大な人間さんの影。
ほかにもたくさん、たくさん。
「にんげん、さん?いま…なん、て?」
それでも、こんな
「 。」
こんな、こんなにも
「う、ぁ…、あ」
こんなにも〝おぞましいもの"を、みたことがない。
「拒 否 す る 。」
その微笑みは、まさに
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
地獄の
「も゛っと゛ゆ゛っく゛ち゛し゛た゛か゛った゛あ゛あああぁぁぁぁ!!」
悪鬼のソレだった。
* * *
肩に赤れいむを乗せた青年が
先程とは違う子供用の棺桶のようなダンボールを引きずって
時折何度か小さく頷きながら川沿いの道を歩いていた。
ずぅり、ずうり――
底の部分に錘でも入っているのか
引きずられるダンボールは砂袋を引くような音を立てている。
チョロチョロチョロ…
不意に引きずられる箱から川の物ではない水音が上がり
青年が歩みを止めて箱を振り返る。
「………?」
引かれる箱の底の部分から、僅かに鼻を突くような甘いにおいが立ち上る。
徐々に箱から漏れ出す液体に思い当たる事があるのか
顔をしかめて、青年は構わず
先程より心なしか乱暴に箱を引きずって
再び川沿いの道を進む。
やがて、電車の線路を通す鉄橋を目前に
青年が足を止めた。
「ついたな」
「……」
無言の赤れいむに、青年は僅かに眉をひそめて
川の石垣へと柵を乗り越える。
鉄橋の下にはそこそこ広いスペースがあり
空き缶や襤褸切れのようなタオル
その他のガラクタが雑多に転がっている。
少し荒れているが見る人が見れば
つい最近までゆっくりの巣があった場所だと見て取るだろう
青年はそこに、ダンボール箱を叩きつける
測ったようにピッタリと橋下のスペースに収まる段ボール箱を
何度か蹴りつけて観音開きの部分が下になるように回転させる。
箱の中でまりさがバウンドしているのだろうガタガタと音を立てて端の部分が跳ねる
ジーンズのポケットへ手をやって
鞘に収まっていた何かを引き抜く。
それは、奇妙なデザインの道具だった。
くの字に曲がった赤いグリップに
鋸のようにギザギザと波打つ光を反射しない黒く短い刀身
青年が刀身に息を吹きかけると
以前の使用でこびり付いていた細かい汚れが
風に乗って宙を舞った。
コンコン
ノックするようにダンボールの右端を叩くと
反対側の端が僅かに持ち上がった。
まりさがいるのは、左端…
青年が箱に刃を入れる
まりさがどれほど暴れても、青年がどれほど乱暴に扱っても
壊れもへこみもしなかった、ゆっくりではどうしようもない強度の箱が
文字通り紙でも切るようにザクザクと音を立てて
男の肩で赤れいむだけがその様子を歯を食いしばって凝視している。
箱は真ん中で断ち切られ、まりさが粗相をした半分を
青年が足で菱形に潰し、平らになった上に腰を下ろす。
切断された部分から、中で震えるまりさの姿が見える。
切断面を、刃でガリガリと削る。
ガリガリ
ガリガリ
ガリガリ
入念に、何度も何度も
一周、二週、三週
その様子を最早垂れ流す水分も残っていないまりさが
ガタガタと震えながら血走った目で見ている。
まりさの脳裏にこびり付いている
閉じ込められたすぐ後に聞こえたれいむの魂切るような絶叫
あれ程の悲鳴を、まりさは聞いたことが無い
どんなゆっくりも、あんな絶望しか篭っていない声をあげる前に死んでしまう。
「(ぱ、ぱぴっ、ぱぴっ!?)」
四週、五週と入念に、何度も何度も
箱が青年の手で削られる音が
自分の体から上がる状況を、想像する事ができない
「(ぱ、ぴぷぺぽッ、ぱぴぷぺぽ、ぱぴぷペポオッッッ!!!???!!?!!)」
許容できる恐怖の限界を超えたのか
心の中で意味の無い絶叫をあげて
まりさの眼が「ぐるん」と裏返り、白目を剥いて気を喪う。
「…」
獲物を鞘に仕舞い、男がまりさに手を伸ばす。
カンカンカンという踏み切りの音がして、電車が近づいてくる
電車の明りで手元を照らされた青年が、過たず目的の物を掴み引きちぎる。
ビリビリッ
「ぶぎびぇ!あ゛にするんだぜっ…ゅヒぃっ」
ガムテープを一気にはがされた傷みで意識を取り戻したまりさが
橋の上を通る電車の光に照らされて、何の感情も宿さないその瞳だけを
走馬灯のように断続的に照らし出す。
「お え 、 は 生きら ない…。」
全身が聴覚の役割を果たすゆっくりは、驚くほどあらゆる音を聞くことが出来る
電車が通り過ぎる轟音の中で、銀色の何かをまりさに近づけながら
青年はなんと言っただろう?
ゆっくりできない、ゆっくりできるわけがない
銀色の何かが、内側からキチキチと音を立てて開いて行く
「あ、あぁ…やべろっ、やべでっ!?やべでぐだざいぃぃぃ!!!!!??!?!
れいむ、赤ちゃん!!れいむぅ!!まりさをたすけっ…」
その様子を見続けていた赤れいむが、まりさから目をそらす
此処にいたって、まりさの縋る全ての希望は断ち切られ。
銀の袋ら何かが這い出し
瘧(おこり)のように震える青年の
くちびるが、赤く裂けた。
………
……
…。
* * *
「おかーさんとれいむのおうち、どうしてあのまりさに?」
「あの場所に…ゆっくりハウスは、もともと作るつもりだったからね」
「ゆぅ…でも」
それ以上の「ゆっくりできない発言」を遮るように
青年は静かに首を振る
「あのまりさは、元飼いゆっくりの子供だろう。あの子が歪んでしまったのは人間のせいだよ」
「でもぉ…」
頷きながら、ボードに挟まれた地図上の橋に赤い点をつける
地図には赤、青、黄の点がポツポツと、しかし無数に置かれている。
ゆっくりの習性、行動様式、嗜好性、餌場となるゴミ捨て場等を
一定の法則に当てはめてリストアップするだけで数百箇所
その近辺を歩くだけで多ければ数十の野良ゆっくりを見ることが出来る
そしてその内の九割が人間の都合で持ち込まれたゆっくりか、その子孫だ。
青年はリストアップした『ゆっくりが好む場所』に
人間の目つかない場所を選んで耐水性ダンボールの住処を設置して回っている。
それは、善意からの行動ではない。
「偽善、だな」
青年の作る快適な住居は野良ゆっくりが夢に見るほど欲する
風雨を凌ぎ、烏などの外敵から身を守れる≪理想のおうち≫だ。
必然ソレを見つけたゆっくりは、棲家を手に入れようと欲して
親子、姉妹、親友であっても骨肉相食む決死の奪い合いを演じる。
今、正確な数字ではないが六万のゆっくりが都内に棲息していると言われている
青年は、その予測は希望的観測だと確信している。
青年が日常的に行っているロードワークでは最低でも八万匹
加えて潜在的には相当数の【野良予備軍】とも言うべきゆっくりが都内には生きている。
予備軍、今はあくまで予備軍である。
快適な空間で飼い主に愛され
生まれつき持っているものではなく、買い与えられた装飾品で身を飾り
誇らしげにその証であるバッジを与えられた――飼いゆっくり。
人の側に寄り添う生き物には
自然とは切り離された自浄作用が働く
大量発生し【人間の基準で】不要だと判断されれば
瞬く間にその存在は【悪】と談じられ、断じられ、弾じられる。
それは逃げ場の無い虐殺であり、期間は人々が飽きるまで
【ゆっくり】という種を忘れるまで、意識の中から消し去るまで無期限に続く。
それが始まった時、ゆっくりを飼う事に経済的な負担を意識の片隅にでも感じていた人間はどうするか?
今なら処分代が浮くとばかりに、愛して慈しんだハズの言葉持つ存在を
僅かな罪悪感と共に、あるいはゴミを捨てるほどの感慨も持たずに捨てる。
多くの場合に、与えたものを剥ぎ取って。
それは保身のためである、飼いゆっくりの装飾品やバッジには
飼い主の情報が記録されている。
装飾品を喪ったゆっくりがどうなるかを、知っている飼い主は意外と少ない。
目にする機会が無いからだ
野良の中にあっては生きている事をゆるされないからだ。
「……。」
青年がゆっくりハウスを配置するようになって
野良ゆっくりの数は、目に見えて激減した。
人目につくゴミ捨て場や自動販売機、ATMなどのまわりのゆっくりは
設置しなくても定期的に【居なくなる】…魅力的な棲家だからだ。
青年のしたことは
【魅力的な棲家】で起こっていることが
街中の人目につかないところで起きるようにする細工
種全体に対して【人間の自浄意識】を向けさせないように
彼等同士で数を減らしてもらっているだけ
本来彼等が住まうべき、深い山林の中で行われる営みの誘発…否、強制だ
青年は唇は引き結び、激しく身体を震わせる
瞳には激しい嫌悪の色が浮かんでいる。
青い点は低競争率
黄色い点は中競争率
赤い点は高競争率、好条件の棲家だ。
番も居ないあのまりさは、恐らく2日としない内に住処を奪われ
全てを喪って他のゆっくりの餌と化すだろう
一時も娘とはなれず、狩りにまで連れ立って見守り
『おうち』よりも子供を選んだ母れいむと違って。
「偽善だっ…僕のやっていることは…」
『おまえは、人(ぼくら)とは生きられない。』
無力感に涙を流す、彼等を連れてきたのは人間(ぼくら)なのにと
「すまない、すまない…」
悪鬼の形相でもって人間(みずから)をにらみつけて
唸るようにただ体を振るわせ続けた。
まだ納得がいかないのか、浮かない顔の赤れいむに
身体を震わせて答える。
「君達がよければ、僕の庭に居を構えるといい…おうちの件はソレで勘弁して欲しい」
「ほんちょ…ほんとにっ?!」
「本当だ。」
傷を負ったゆっくりを匿うのは青年の自認する悪癖の一つだ
庭の入り口は保護する個体が居ない時は開けているが
そのために設えたドアは野良の侵入を完璧に防ぐ。
その上で過剰な餌は与えない、野良より多少マシなだけの生活を
自分達が出て行くというまで提供するだけ。
この赤れいむは、異常に賢い。
青年の見立てでは生後3日と言う所だが、既に母親よりも思考は論理的だ
自分が保護しても成長して野生に戻った時
人間を見下したり、短絡的な行動はとらないだろう。
何ならまとめて自分が飼っても良い…とまで考えて
「偽善、だな」
一人悲しく身体を震わせた。
* * *
【クリニック】二階の研究施設の一室に
カントリー調のネームがウッドプレートが吊るされている。
『Y&Mのしりょうかいはつぶ』
コンコンと、軽いノックが転がる。
「はーいっ!」
「…ゆみくん」
青年がぬっと顔を出す。
部屋の主を怖がらせないように、その顔は精一杯の微笑を讃えている。
「うぉうッ?!朝からカッシー先輩!?」
「じゃおじゃおー!」
「…おはよう。」
白衣の下にゴシック調のドレスを着込んだ小柄な少女が
青年の来訪によろこぶめーりんを取り落とし腕の中から取り落とし
へたりこんでいたクッションから、バネ仕掛けのように跳ね上がる。
少女の反応に落胆しているのか、何処か気落ちしたように
「………毎度、驚かせてすまない。」
「いっう、お、あん♪」
『いえいえそんなことありませんよ』と口にしようとして舌が回らず
引きつった顔でクルクルと意味も無くその場で回る。
青年はますます気落ちする。
「じゃふぉっ!」
「めーりん、いつもすまない。」
慌てふためく飼い主に代わって
一辺30cm程の大振りな銀色のパウチを5つ銜えて青年に駆け寄る。
膝を折りめーりんから空気穴の開いたパウチ受け取って一応銘柄を改める。
『身の毛もよだつ生の味、生きてるばったさん!(カッシー先輩用)』
めーりんの頭を撫ぜながら、身体を震わせて唇を吊り上げる。
「保護するゆっくりができてね、もう一袋もらえるかい?」
「うヒィっ?!」
「………すまない。」
物怖じしないめーりんと違い、飼い主の少女は怖いものが大の苦手だ。
驚かせるのは本意では無いので追加の一袋を受け取って
退室を告げようとして…
機械の様な瞳が見開かれ、入り口脇に置かれた帽子掛けの一点に注がれる。
「ゆみ、くん…コレは?」
「うえ!?、それはアレですよ、原作読み返してノリで作ったはいいケド使い道が無くって…」
雷を受けた様な衝撃を感じながら
伸ばしかねた指を僅かに震わせて、鉢巻の様なソレを指した
「不要なら…譲ってもらえないだろうか?」
「え、あぁ…どうぞどうぞ!」
「感謝する」と言って、ビシィっと音がなるほどの勢いでソレ――
血のような真紅の生地に
曲がった長い鼻と
三日月の形に歪んだ目をあしらった仮面を装着する。
顔半分だけ振り返って、尋ねる
「どうだろう、おかしい所は無いだろうか?」
「…………カンペキデス、ハイ」
「じゃおじゃおじゃおーーーん!」
『かっこいい!』と、はしゃぎ回るめーりんと白衣の少女の温度差に
心なしか声の弾んだ青年は気づかない。
今までに無く青年の体が激しく震え
赤い肉の裂け目の様な三日月に青年の唇が笑みを形作る
「ありがとう、またくるよ…」
パタン、とは
音を立てないようにゆっくりと閉じられた扉ではなく
青年の退室と同時に膝から崩れ落ちた少女――ゆみの体が立てた音である。
「あ、あれじゃぁホントに悪魔(デモン)ですよぉ…だまってれば…笑わなければ…」
「じゃおおん…」
飼い主の発言に納得いかないのか、じゃおじゃおと文句を言いながら
めーりんは『ばったのおにいさん』を見送った。
※カッシーこと柏木研究員(21)は大学生である。
彼のいる【クリニック】は悪の秘密結社ではない。
彼の恩師である教授とともに、カッシーはゆっくりと人類の共存の為に働くのだ!
【つづく?】
ぬるいじめ?三作目…都会の自然淘汰を書きたかった、今は反省している。
思わせぶりで冗長な文章にイラっとした人ごめんなさい。
え、『まりさとわたしシリーズ』じゃない…?
と読み返して思った。
最終更新:2022年05月06日 23:18