『ゆっくり釣らないでね!!!』
「ゆっくりしていってね!!!」
美しい森の中、ゆっくり達の声が響き渡る。
人里から遠く離れてはいるこの森は外敵が少なくて食料が豊富なゆっくりプレイスだった。
そんな安らげる場所で育ったゆっくり達もまた、非常にゆっくりとしていた。
そんなゆっくりの群れの中にいる子供のれいむもまた日々を平和に過ごしていた。
子れいむの家族はお母さんれいむと姉のまりさとれいむ、後は二匹の妹れいむの六匹家族。
とてもゆっくりしている仲良し家族だ。
「おかーさん! きょうはどこにいくのぉ?」
「ゆゆ、みんなのところにいこうね」
「ゆっっくりいこうね!!」
「みんなとあそびにいこうね!!」
「ゆっくちー!」
子れいむ達はいつも群れの皆が集まる広場へと遊びに向かった。
途中で同じ場所に向かう他の家族と合流しつつ広場に着くとすでにこの群れの大半のゆっくりがそこでゆっくりしていた。
友達とカケッコするもの、草を使って綱引きするもの、身を寄せ合ってうとうとするもの、合唱するもの。
どのゆっくりも自分がしたいように、自由にゆっくりとしていた。
「ゅー! れいみゅこっちであしょぼうよ!!」
「ゅーん! いまいきゅよ!!」
「ゆっくちあしょぼーね!!」
妹れいむ達は他の家族の赤ちゃんに誘われて遊びに行ったようだ。
お母さんれいむもそれに付いていった。
「まりさはあっちにいくね!!」
「れいむはともだちにあってくるね!!」
姉まりさは恋人のれいむに会いに行った。近いうちに一緒に住むらしい。
姉れいむも姉れいむで友達のグループに向かったようだ。
残った子れいむは今日は何してゆっくりしようかな、と考える。
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!!」
考えてた子れいむに話しかけたのはよく一緒に遊ぶ友達の子ゆっくり達だった。
今日は友達とゆっくり遊ぼうと決めた子れいむは友達の輪に混じり、きゃいきゃいと遊び始めた。
とてもゆっくりとした時間。
どのゆっくりも幸せそうな笑顔を見せている。
子れいむもまた、そんなゆっくり達に囲まれて幸せを感じていた。
そして、世界はゆっくり出来る事で溢れていると信じていた。
そんな時に子れいむは人間と出会った。
「おぉー、結構いますね」
「ああ、こんな奥地まで来た甲斐があるってもんだ」
「どれも元気なゆっくりだな」
「それだけここが平和な場所なんでしょ。ゆっくりにとって」
「………」
みんなの広場に5人の人間が姿を現した。
どの人間も大小の籠をいくつも持っている。
「にんげんさんだー! ゆっくりしていってね!!!」
「ゆゆっ? にんげんさん?」
「ゆーん! はじめてみたよ!! ゆっくりしていってね!!!」
こんな森の奥では人間に会うことなどまず無い。
しかし代々受け継いだ知識ゆえにこの動物が人間だとゆっくり達には理解出来ていた。
それでも初めて見る人間達に興味津々のゆっくり達は人間の周りに集まっていく。
子れいむも同じで人間の足元でピョンピョンと跳ね回る。
「にんげんさん! ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!!」
「ここはゆっくりできるばしょだよ!! いっしょにゆっくりしようね!!」
「おいしいおはなさんもあるよ! いっしょうにたべようよ!!」
「随分と人懐っこいな…」
「しかし里近くのゆっくりとはやっぱ違うねぇ」
そう言って男は近くにいた子れいむの頭を撫でる。
大きくて暖かい手に撫でられるのはとっても気持ちよくて思わず、
「ゆゆーん……!」
なんてちょっと恥ずかしい声を出してしまった。
それを見た他のゆっくり達は羨ましがる。
「れいむいいなぁ…」
「まりさもにんげんさんとゆっくりしたいよー!」
「れいみゅもなでなでされたいよ!」
そんなゆっくり達に人間は優しく話しかける。
「それじゃあこっちにおいで。遊んであげるよ」
その言葉にゆっくり達はパーッと顔を輝かせた。
そして人間さんとゆっくりしようと人間の下に駆け寄る。
「一匹ずつ遊んでやるからな」
「ゆっくりあそんでいってね!!!」
人間たちは一匹ずつゆっくりを掴むと撫でるわけでもなく、籠へと投げ入れていった。
大きい成体ゆっくり、それより少し小さい子供ゆっくり、後は赤ちゃんゆっくりの3つに分けて別の籠に入れていく。
最初は「ゆーっ」などと喜んだゆっくりだったが、次々と仲間が籠に入ってきて窮屈になるとさすがに不満を挙げ始めた。
「にんげんさん、ここじゃゆっくりできないよ!!」
「そとでゆっくりあそびたいよ!!」
子れいむも籠に入れられ、子れいむの下には友達のまりさが苦しそうにしている。
上からは友達のれいむが圧し掛かってきて苦しい。
背中からは友達が押してくるので身動きが取れなかった。
目の前にある籠の僅かな隙間から外の様子を見ることが出来る。
仲間が、友達が、お母さんもみんな捕まっていく。
(にんげんさんはへんなあそびをするんだね。でも…)
「にんげんさん、くるしいよぉ…」
仲間が捕まっていくのは人間のそういう遊びだと思っている子れいむにとっては窮屈で苦しいことだけが問題だった。
しかし顔が籠の内壁に押し付けられてるのでくぐもった声で人間に呼びかけるが人間にその声は届かない。
人間はさっきまでの笑顔はどこへやら、無表情にゆっくりを籠へと放っていた。
でも逃げようとするゆっくりはいない。
なぜならゆっくり達はこれを遊びだと信じ、
さらには籠に入った仲間の苦しそうな声など聞こえていないのだから。
そうしてゆっくりの詰められた籠には蓋代わりに布を被され、紐で縛って固定された。
それからどこかで待機していたまた別の人間が現れて籠を運んでいく。
人間がこの広場に現れてから一時間。
たったそれだけの時間でこのゆっくりプレイスに住むゆっくりの群れはいなくなってしまった。
子れいむの入った籠も運ばれていく。
目の前の僅かな隙間から外の見れるれいむには分かってしまった。
自分達がおうちから、そして生活圏から離れてしまっていることに気が付いたのだ。
「ゅ、にんげんさん どこへいくの?? おうちからはなれてるよ??」
その子れいむの言葉に周りのゆっくり達は驚いた。
外の様子が見れないゆっくりは籠の揺れを「ゆれてるね~」程度にしか考えてなかった。
むしろゆっくり揺られるのが楽しくなってきた者すらいた。
だがおうちから離れていくと知れば楽しんでる場合ではない。
「にんげんさんどこいくの!? ゆっくりおしえてね!」
しかし人間は答えない。
「おねがい、へんじしてよぉ」
「いっしょにゆっくりしたいよ!」
「にんげんさんといっしょにゆっくりさせてよー」
純粋に人間さんとゆっくりしたいだけなのにどうして返事してくれないんだろう。
ゆっくり達は寂しくて、悲しかった。
そして何よりもおうちから離れていくことに不安を感じていた。
しばらくするとゆっくりの入った籠が森の外で待機していた馬車の荷台に積まれた。
籠の中のゆっくり達は人間と遊ぶことは諦め、それよりも窮屈な籠から出ておうちに帰りたがっていた。
「ゆー、にんげんさーん。もうおうちにかえるー」
「このなかはせまくてゆっくりできないよ! おそとにだしてね!!」
「おかーしゃんにあいちゃいよ! ゆっくちしちゃいよー!!」
だがその言葉は聞き届けられることはなく、ゆっくり達の旅は続いた。
草原を越え、
大きな河を越え、
山を越えた。
山を越えたところで日は沈んで辺りは闇に包まれた。
籠の中でのオシクラ饅頭にも慣れ、周りの仲間とボソボソと話していたゆっくりも、
何も見えない夜になると一匹、また一匹と眠りについた。
明日は人間さんにおうちへ帰してもらってゆっくりしよう。
一生あのゆっくりプレイスには戻れないことを知らない子れいむはすやすやと眠りはじめた。
子れいむが目を覚ますとそこは見知らぬ場所で、一見洞窟のようだった。
実際は洞窟ではなく建物の一室なのだが、野生を生きるゆっくりに知る由もなかった。
子れいむが籠の隙間から外を覗くと、他の籠に詰められたゆっくり達が一匹ずつ外に出してもらっていた。
窮屈な籠から解放されたゆっくり達は背伸びしたり跳ね回ったりして開放感を味わっていた。
子れいむも程なくして外に出された。
「だしてくれてありがとう!! ゆっくりしていってね!!!」
もちろん出してくれた人間さんにお礼を言うのを忘れない。
床に降ろされた子れいむはまずお母さんを探す。
少し見回せばすぐにお母さんは見つかり、まだ赤ちゃんの妹たちが甘えてくるのに身を任せていた。
ちなみに姉の二匹はほぼ大人なので恋人や友達と一緒にゆっくりしていた。
「ゆっ、おかーさんゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
たった一晩でもお母さんと離れ離れだったのが寂しかった子れいむはいつもより長めに頬を擦り合わせた。
「ゆーん…おかーさんゆっくりー」
「おもうぞんぶんゆっくりしてね!」
「おねーちゃんれいみゅともゆっくちー!!」
「いっしょにゆっくちしようね!!」
甘えさせてくれるお母さんと甘えてくる妹たちの温かみはとても心地よかった。
ずっとこうしていたいぐらいだった。
しかしそんな安らげる時間も人間の声に妨げられた。
「はーい、ちゅうもーく!!」
パンパンと手を叩きながら現れたその人間に部屋の中のゆっくり達は注目する。
その人間は部屋をぐるりと見回してゆっくり達が話を聞こうとするのを確認すると話し始めた。
「今日からみんなはここで住むことになりまーす」
「ゆ"っ!?」
「ど、どういうことなの!?」
「ゆっくりせつめいしてね!!」
どのゆっくりも驚きを隠せない。
いくら暢気で素直なゆっくりだとしても突然知らない土地に住むように言われて、
「うん、ゆっくりくらすね」だなんて一つ返事で了承するほど馬鹿じゃない。
「どういうことも何も君たちはここで住むのは決定済みなんだよね。
まー、ゆっくりしていきなよ」
全く理解できなかった。
子れいむは人間の言っていることの意味が分からないのでお母さんに聞いたが、お母さんも良く分からなかった。
ざわめくゆっくり達だったが、やがて一匹のまりさが人間に質問する。
「ここはゆっくりできるの??」
本当にここに住むとした時、ゆっくり達にとって最も重要な条件。ゆっくりがその有無を聞くのは当然である。
その質問に人間はにっこりと笑顔を作って答えた。
「ゆっくり出来ないよ」
部屋の中の時間が数秒止まった
「なんでゆっくりできないの!?」
「ゆっくりできないならおうちかえるぅー!!」
「れいむたちはゆっくりしたいよ! にんげんさんゆっくりさせてよぉ!!」
「ゆっくりもとのおうちにかえしてね!!」
ようやく人間の言葉を理解したゆっくり達は一斉に騒ぎ始めた。
しかし人間はそんなゆっくり達を無視して次の言葉をつむぐ。
「まあ待て。
そんな君達にここでもゆっくり出来る方法を教えてあげよう」
「ゆ? ゆっくりできるの!?」
「ゆっくりしたいよ!! にんげんさん、ゆっくりおしえてね!!」
ゆっくり出来る、と聞いた途端にゆっくり達は目の色を変えた。
そして騒ぎ立てずに人間の次の言葉を待つ。
「これを見ろ」
人間は壁に立てかけてあった棒を持ち出した。
その棒には細い糸と、その糸の先に針が付いている。
「これは釣竿といってな。
まあ細かい説明はいいとしてこうやって使うものなんだ。ほれっ」
「ゆっ? ゆぎぃぃぃぃぃっ!??」
人間の持つ棒、釣竿の先から垂れる糸のさらに先にある針が近くに居たまりさの頬に刺さった。
そして人間が棒を持ち上げると、まりさも一緒に上がって宙ぶらりになる。
「いだひ、いだひよぉ!!」
「ゆっくりやめてあげてね! まりさいたがってるよ!!」
「もしかしてゆっくりできないにんげんさんなの!?」
「ゆっくりできないのはやだよ! いっしょにゆっくりしようよー!!」
仲間の痛がる様子を見て人間にやめてあげてと抗議する。
人間は釣り上げたまりさを胸元まで寄せると釣り針を抜き取り、床に戻してやった。
「ゆぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆっくりだいじょうぶだった??」
「いたいのゆっくりとんでいってね!!」
床に降ろされたまりさは泣きながら家族のところまで逃げていった。
「なんでこんなことするの!?」
「ゆっくりしようよ!!」
まりさを庇うように人間の前に立ったゆっくりは頬を膨らませて威嚇する。
「見てのとおりこの釣竿、というかこの釣り針に触るとゆっくり出来なくなるんだ。
この先の生活ではこういった釣り針なんかに気をつけなきゃいけない。
それを教えたかっただけだよ。分かったか?」
「ゆ、ゆう…でもまりさはいたがってたよ。ゆっくりあやまってあげてね!」
「ああ、悪かった。
だけど危ないものは覚えないとゆっくり出来なくなるからな?」
「ゆぅ、わかったよ。でもつぎはいたいのやめてね!」
「出来るだけ、な」
それから子れいむ達はゆっくりするために気を付けることをその人間から学んだ。
釣り針は危険ということ。
糸の付いた食べ物や仲間に似せた人形も危ないこと。
そしてそれらは自分達を追ってきて、捕まったらゆっくり出来なくなること。
色んな危ないものを実演込みで一通り教えてもらったところでゆっくり達は場所を移された。
移された場所は高い崖に囲まれたような場所で、崖の上には何人かの人間が釣竿を持って座っていた。
さっきまでアレの危険について教えられた子れいむは思わず身を強張らせた。
「ほら、まだ大丈夫だから入った入った!」
それでも人間が急かすので子れいむはその壁に囲まれた中をお母さんに身を寄せながら進んでいく。
「よし全員入ったな。それじゃあゆっくりしていってね」
人間は唯一の出入り口を閉めた。
この中に残されたのはゆっくり達だけになった。
そして同時にこの釣堀での釣りが解禁された。
四方から飛んでくる釣り針やルアー。
それはどれもゆっくり達を狙って飛んできていた。
「ゆべっ!?」
「い"、い"だぁい"い"ぃ"ぃ"ぃ"!!!」
「いや"あ"あ"あ"あ"!!!」
群れの仲間同士で集まっていたので狙われたゆっくりは動くことも出来ずに釣られてしまった。
そしてその中には子れいむの姉のれいむの姿もあった。
「れいむおねーちゃん!!!」
「ゆっくりのぼっていかないでね! そっちはゆっくりできないよぉぉ!!!」
釣られたらゆっくり出来ないこと、食べられてしまうことは教えられたので知っている。
なので子れいむは泣きながら釣り上げられていく姉れいむを追いかけた。
もちろん追いつけない。
「おかーさん!! まりさぁ!! れいむっ…!! おちびー!!!」
姉れいむは釣り上げられる中、家族のことをただ呼び続けた。
他の言葉なんて出てこなかった。愛する家族と離れたくない一心で家族のことを叫び続けたのだ。
だが…
「おお、天然物はやっぱ美味そうだな」
「おがーざー…っ! あぎゅびぇっ……」
釣り上げられた姉れいむは釣った人間によって釣り針から外され、即座に噛み付かれて顔の右半分を失った。
「ゆびっ、びゅぼっ、ぎょっ」
姉れいむの残った左半身は聞くに堪えない奇声を発するだけ。左目は白目を剥いてしまっている。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"……」
子れいむはそれ以上左だけになった姉を見てられずに目を逸らした。
しかしすぐに姉の残りもその人間に食われて姿を消した。
子れいむは姉れいむの元気だった姿を思い出して泣いていた。
だがそんな泣いてる暇すらこの場所では与えられなかった。
「れいむあぶないよ!! こっちににげようね!!」
「ゆ、ゆゆー…」
お母さんの声に子れいむはついていく。
子れいむが跳ねて移動したと同時にその背中を釣り針が通過した。
動くのが少しでも遅れれば自分も姉と同じ運命を辿ったことだろう。
子れいむは生きた心地がしなかった。
「ゆぇーん! きょわいよぉぉ!!」
「ゆっくちしちゃいよぉぉ!!!」
お母さんの頭に乗った妹れいむ達は泣き喚いていたが、今はあやす暇も気力もなかった。
釣堀の中でゆっくりの群れはバラバラに逃げ回る。
しかしいくつもの釣り針が右へ左へ揺れて次々と仲間を引っかける。
子れいむの友達も、その友達のお母さんもどんどん釣り上げられていく。
辺りは悲鳴で溢れていた。
昨日までのようなゆっくりとした楽しげな声は聞こえない。
自分を庇ったお母さんを目の前で食べられる子ゆっくり。
赤ちゃんの口から上を釣り針に攫われた母ゆっくり。
恋人を釣り上げられ、ゆっくりと食される様を見せ付けられたゆっくり。
そんな絶望と悲愴に満ちた声が子れいむの耳を犯す。
「いやだよやだよやだよやだよおぉぉぉぉ!!!」
子れいむはもう何も見たくないし何も聞きたくなかった。
しかし死にたくないという欲求は強く、子れいむの体を動かし続けた。
泣きながら走る子れいむの前にはまだ頼れるお母さんがいる。
お母さんの大きな背中が子れいむの心の支えになり、子れいむを幾分落ち着かせた。
それに妹だって姉である自分が守らないといけない。
守らないといけなかった。
「お、おかーさん…れいむは? おちびちゃんは…?」
「…ゆ?? あ、あたまのうえにいるでしょ? いるよね??」
妹れいむ達がいた筈のお母さんの頭の上には何もいなかった。
頭の軽さに気付いたお母さんはゆっくりとこちらに振り向いた。
そして何かを見つけたらしいお母さんは体を小刻みに震わせ、歯をガチガチと鳴らし、涙を流した。
子れいむは嫌な予感がしながらも振り向く。
振り向いた先には逃げ惑うゆっくり達。
そして妹のリボンが乗っかった餡子の飛沫が二つあった。
「れいむ! れいむー!!!」
「あ、ああ"、あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
お母さんは妹達の名を叫んで駆け寄っていく。
子れいむは呆然とするだけだった。
いつの間にお母さんの頭から落ちていたのか。
お母さんの後ろにいた自分がすぐに気づかなきゃいけなかったのに…!
それはほんの一分ほど前のことだった。
母れいむの頭の上で髪の毛を咥えていた妹れいむ達は周りの恐ろしい光景に悲鳴をあげ、その拍子に母から転げ落ちた。
その時子れいむは気が動転した状態だったので気付かなかったのだ。
そして転げ落ちた妹れいむ達は母のことを必死に叫んだ。
しかし悲鳴で満たされたこの釣堀の中で赤ちゃんの小さな声は誰にも届かず、間もなくして他のゆっくりによって潰されてしまった。
残されたのは潰れた妹の体とリボン。
もう舌足らずだけど元気な声で話しかけてくることも、甘えてくることもない。
「ごふぇ、ごめんなざいぃ!!」
「ごめんね! ごめんねぇぇぇ!!!」
子れいむもお母さんも妹れいむが死んだのは自分のせいだと思い、妹れいむの死骸に泣きながら謝った。
悠長に謝ってる状況でもないのだが、家族を立て続けに失った悲しみは二匹の正常な判断を失わせていた。
「おかーさん! れいむ! にげないとゆっくりできないよ!!」
そんな二匹を我に返らせたのが子れいむの姉であるまりさだった。
今まで恋人のれいむと共に行動していたまりさだったが、呆然としている二匹を見て近づいて来たのだった。
「ま、まりさ! ぶじだったんだね!!」
「まりさおねーちゃん! ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりしていってね!! とまってたらあぶないからにげようね!!」
「ゆっくりわかったよ!!」
まりさの言葉に元気を取り戻した子れいむ達はまりさと一緒に駆けていく。
まりさの恋人れいむもすぐに合流して四匹一緒に逃げ回る。
だが他のゆっくり達がバラバラに逃げ回る中、固まって逃げる子れいむ達はどうしても人間の目を引いてしまう。
「ゆっ? ゆっくりねらわれてるよ!!」
最初に気付いたのは恋人れいむだった。
子れいむ達もそこで飛んでくる釣り針やルアーが増えていることに気が付いた。
普段使わない五感をフルに使って避け続けるゆっくり達。実際はただ走っているだけで人間が勝手に外しているだけだったりする。
しかしそれでもこのままではいずれ誰かが犠牲になるだろう。
それを感じ取ったまりさは恋人のれいむに自然と話しかけていた。
「れ、れいむ…」
「どうしたのまりさ?」
「おうちにかえったら、ゆっくりできるようになったら…いっしょにくらそうね!!」
「ゆ、ゆん! やくそくだよまりさ!!」
危機的状況だからこそ幸せな未来を思い浮かべ、一組のカップルは将来を約束した。
しかし、その約束は一瞬でかき消された。
「ゆ、ゆうううぅぅぅ!!!」
「まり…さ…?」
「おねーちゃん!!」
恋人れいむの返事で気を抜いたまりさの右頬にありす型ルアーの針が容赦なく突き刺さり、まりさを連れ去っていく。
「まりさぁー!!! ゆっくりまってよ! ゆっくりまっていってよー!!」
愛するまりさ、将来を約束したまりさを追いかける恋人れいむ。
「ゆっく"りどまっでね! れいぶぎぢゃだめ"ぇ!!」
「い"、いだいぃぃぃ!?」
恋人れいむはまりさを追うことだけを考え、目の前の釣り針が見えていなかった。
そしてまりさの忠告が届く前に恋人れいむの左目は長く太い針に貫かれていた。
二匹はもう決して言葉を交わすことも体を合わせることもない。
それでも二匹はお互いに離れていく恋人の姿をずっと見つめ合っていた。
それは最後の最後まで。
恋人が食べられて崩れていくのを自分も食べられながら見つめていた。
そして夕方。
ゆっくり達には分からないことだが、閉店時間になったおかげで人間の姿はいなくなっていた。
あれからも逃げ続けた子れいむ達は疲れ果てて床にへたり込んでいた。
「なんでゆっくりできないの…!」
「ゆっくりじだいよ! もうおうぢがえる…!!」
子れいむの家族で生き残ったのはお母さんと子れいむの二匹だけ。
周りのゆっくり達も同じように家族を奪われ、恋人を奪われ、親友を奪われていた。
最初は逃げ回るのには窮屈だったこの釣り堀の中も今は随分と広く感じられた。
「おー、二十匹ってとこか。思ったより残ったな」
人間が食べ物をばら撒くために釣り堀の上に姿を見せた。
その人間に対してゆっくり達は懇願する。
「にんげんさぁん! もうれいむたちをおうちにかえして!!」
「ここじゃゆっくりできないよ!!」
「だしてよー! ここからゆっくりだしてよー!」
「ほぉ。まだ元気に叫ぶ力があるのか。
ま、明日もがんばれよ」
ゆっくり達がどんなにお願いしてもその人間は聞いてくれなかった。
あくまで仕事として食べ物を撒いてくれるだけだった。
「むーしゃ、むーしゃ。ゆっくりおいしいね」
「うん、ゆっくりできるね」
人間のくれた食べ物はとても美味しかった。
でもどんなに美味しい食べ物もゆっくり達の悲しみを癒すことなんて出来ない。
なので「しあわせー!」なんて叫ぶゆっくりはこの中にいなかった。
やがて日が暮れて真っ暗になるとゆっくり達は就寝する。
少なくなった群れの仲間たちは一か所に集まって身を寄せ合うようにして眠りにつく。
寝る前に仲間たちと、
「おきたらおうちにもどってるかな」
「だったらゆっくりできるね!」
「きょうのはぜんぶゆめだったんだよ!!」
「それはゆっくりできるね!!!」
なんてゆっくり出来る妄想を語り合った。
しかしゆっくり達の妄想は妄想でしかなく、
翌日もその次の日も高い壁に囲まれた中で釣り針から逃げ回る日々を過ごすことになった。
日ごとに避ける技術や体力の温存方法を学んだ子れいむ達は五日経ってもまだ釣られずに済んでいた。
「きょうこそゆっくりしようね!!」
「ゆっくりしようね!!」
いつかはゆっくり出来る日が来ると、子れいむ達はまだ希望を捨てずにいた。
最近は壁の上の釣竿を持った人間が少なくなり、最初に比べてかなりゆっくり出来るようになった。
さらに母と並んで壁を背にする陣形。これが子れいむ達を生き長らえさせた。
壁を背にすれば気を付けるのはほとんど見える範囲だけで済む。
それでも足りない部分はお母さんと二匹でカバーしあえば問題は無かった。
子れいむが壁の上の人間達の様子を見ていると、一人の男が現れた。
釣竿の準備を始めたその男が最初に誰を狙うのか注視する。
準備の終わったらしい男はこちらを真っ直ぐに見て釣竿を構えていた。
狙っているのは間違いなく子れいむ、自分自身だ。
子れいむはすぐに動けるよう身構え、男の僅かな動きをも見逃さぬように男を凝視する。
そして男の腕が動く。
「ゆっ!? れいむあぶないよ!!」
「ゆっくりよけるよ!!」
お母さんも自分の娘が狙われていることに気付いていた。
男が釣竿を持つ手を動かすと同時に子れいむに危機を知らせた。
子れいむも警告を聞くまでも無く、すでに動き始めていた。
子れいむは一跳びで回避して振り返ると、赤ちゃんれいむが通り過ぎた。
いや、あれはルアーだ。赤ちゃんれいむに似せた命ない人形。
さすがのゆっくりでも一目で偽者と分かる。
そりゃそうだ。あんな大きな釣り針を二つも付けた赤ちゃんなんているわけが無いのだから。
そんなふざけたルアーだが、地面すれすれを低空飛行して子れいむに向かってきた。
「ゆっくりしてね! おいかけないでね!!」
子れいむは捕まらぬように右、左、右、左とジグザグに跳ねる。
こうすればたいていの人間は諦める。
だがあの男は諦めなかった。
10分経っても、20分経っても子れいむを追い続けた。
30分も追われながら動き続けた子れいむは疲れ、動きが鈍くなっていた。
「ゆ、ゆぅ…っ、ゆぅ…! どうじで、れいむばっかりねらうのぉ!?」
「にんげんさん! れいむをねらうなられいむをねらってね!!」
お母さんは子れいむを狙う人間に自分を狙えと頼むが、それでも子れいむを執拗に追い続ける。
そしてとうとう子れいむは床にへたり込んでしまった。
恐らくあの男は体力が尽きて動けなくなるこの時を待っていたのだろう。
『すりすりちようね!』
偽赤ちゃんれいむの体内からそんな声が聞こえた。
大きな釣り針が子れいむの目の前まで迫る。
子れいむはギュッと瞼を閉じる。
「ゆっくりごめんね!!」
「ゆ"っ!?」
だが、次の瞬間子れいむは吹き飛ばされた。
目を見開くとそこには子れいむを庇い、代わりに釣り上げられるお母さんの姿があった。
「ゆぅ"ぅ"ーん"っ!! おがーざん!!!」
子れいむは連れ去られるお母さんを追いかけたい。
追いかけたいのに疲れ果てた体は動いてくれなかった。
「れいむっ…れいむ…っ!! ゆっくりしてね!! ゆっくりしていってね!!!」
お母さんは釣り上げられながら子れいむのゆっくりを願ってそう叫び続けた。
子れいむは涙を流しながらお母さんの最後になるであろう言葉に耳を傾けていた。
それが動けない子れいむがしてあげられる唯一最後の親孝行だった。
「おがぁざん、ゆっぐい"じでい"っでね"ぇ"…ゆっぐりぃぃ……」
お母さんの姿が見えなくなると子れいむは途端に寂しくなって大泣きし始めた。
もう家族はいない。頼れる存在もいない。
そして群れの仲間たちは逃げるのに必死で、泣き喚く子れいむに構おうとするものはいなかった。
しかしそんな中、子れいむに声をかけるものがいた。
『すりすりちようね!!』
どこかで聞いた声だった。
赤ちゃんのような舌足らずな発音でどこか無機質に感じられる声。
子れいむが振り向いた先には、大きな針をぶら下げた作り物が笑顔を浮かべて甘えてきていた。
「ゆ"う"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"っ!?」
頬に大きな針が深く突き刺さる。
赤ちゃんゆっくり型ルアーの言うところのスリスリとはこういうことだ。
かえしの付いた釣り針は一度刺さると中々抜けるものではなく、いくら子れいむが力んでも悲鳴を上げても針は外れない。
どんどんと体は地面から離れ、恐ろしい人間の下へと引っ張られていく。
「やだよ! ゆっぐりでぎないよ"!! ゆっぐりざぜでぇ"っ!!」
子れいむは姉や仲間たちの無惨な死に様を思い出し、必死に人間の手から逃げようともがく。
だが手も足も無い生物がどう足掻いたところで体をくねらす程度にしかならなかった。
大した抵抗も出来ないまま子れいむは大きいバスケットに押し込まれて閉じ込められた。
「ゆぅーん"っ!! だじでー!! ゆっぐりじだいよ"ぉ"!!」
「れ、れいむ…?」
「……ゆ?」
バスケットにはもう一匹ゆっくりがいた。
産まれた時から何度も聞いたその声は間違えるはずも無い。
お母さんだった。
「お"、お"が…おがぁざん………!!」
「れいむ…っ!!」
死んだと思っていたお母さんとの再会に、子れいむは涙をボロボロ流しながら母に体を押し付けた。
二度と感じられないと思っていた母の温もりが子れいむの傷ついた心を癒した。
お母さんも子れいむと同じように泣きじゃくっていた。
「よし、そろそろ行くかぁ」
バスケットの外から人間の声が聞こえる。どこかに行くらしい。
子れいむはまた怖いところに行くのかと不安に思い、母に「どうしよう」と問いかけた。
すると母れいむはゆっくりとした笑顔でこう答えた。
「このにんげんさんはとってもゆっくりできるよ!
これからにんげんさんのおうちにしょうたいしてもらえるんだよ!!」
「ゆゅっ! そうなの!?」
「ゆ、そうだよ! これからはゆっくりできるんだよ!!」
「ゆゅーっ!!」
子れいむは素直に喜んだ。
他の家族や群れの仲間をほとんど失ったが、その分もゆっくりしよう。
彼女の頭はゆっくり出来る方向に関しては切替が早かった。
「しんじゃったみんなのぶんもゆっくりしようね!!」
「うん! にんげんさんとさんにんでゆっくりしようね!!」
人間が運ぶバスケットの中、子れいむとその母は釣堀という地獄から開放された幸せに浸っていた。
幸せすぎて何度もヘブン状態と叫んでしまったほどだ。
「着いたぞ。今日からここがお前たちのゆっくりプレイスだ」
バスケットの中で揺られること約一時間。
心地よい揺れにウトウト眠りかけていたところでバスケットから出された。
横には壁、上は天井、下は絨毯。そして子れいむの興味をそそる多くの見たことが無い物が揃っている。
ここは人間のおうちの部屋だった。
そして部屋の中心には初めて見るゆっくりがいた。
水色の髪、淡い桃色の帽子、そして羽を生やしたゆっくりだった。
ニコニコと嬉しそうな笑顔を振りまくそのゆっくりは羽を使って宙を浮いていた。
「うー! うー!」
「ゆっくりしていってね!!!」
「れいむとれいむはおやこだよ! ゆっくりしようね!!」
本当は親愛を示すために頬を擦り合わせたかったが、
そのゆっくりはれいむ達の上を飛んで旋回していたので届かなかった。
「ゆっ! おなまえはなんていうの?」
「ゆっくりおしえてね!!」
「れみりゃ、うー!!」
そのゆっくりはれみりゃと言うらしい。
子れいむはこの空を飛べるれみりゃが羨ましく、同時にお友達になりたいと思った。
お母さんもきっと同じ気持ちだろう。
「それじゃ、れみりゃの遊び相手になってくれ」
「ゆっくりわかったよ!!」
「ゆっ、でもおにーさんはどこにいくの? いっしょにゆっくりしたいよ!!」
「いっしょにゆっくりあそぼうよ!!」
「ま、食事の時にまた来るよ」
そう言うと人間は部屋を出て扉を閉めていった。
部屋に残されたのはれみりゃとれいむ親子の三匹だけになった。
子れいむはれみりゃと遊びたかったのですぐに声をかける。
「れみりゃ! いっしょにゆっくりしようよ!!」
「うー!!」
子れいむの言葉にれみりゃは嬉しそうに近づいてくる。
そんなれみりゃに親愛のスリスリをしようとする子れいむ。
だがスリスリしようとした子れいむの頬。
プニプニした頬にれみりゃの牙が突き立てられた。
「ゆぎぃっ!! い"だっ! い"だい"よ"…!!
ゆっくりやめてね!! い"だい"い"ぃ"ぃ"ぃ"ぃ"!!!!」
「うー! うー!!」
外的の少ないゆっくりプレイスで生まれ育ったれいむ親子はれみりゃを知らなかった。
れみりゃはれいむ種やまりさ種を大好物とする捕食者。
そのれみりゃの中でも最も素早い体無しが目の前にいるのだ。
知識のあるゆっくりであればこの部屋に連れて来られた時点で間違えなく怯えて部屋の隅に逃げる。
れみりゃを知らない子れいむはそんな相手と友達になろうとしたのだ。
そしてその結果が今である。
「ゆ"う"ぅ"ぅ"!! ぐりゅじぃよ"!! がらだがおがじい"よ"……!!」
子れいむはれみりゃによって体の中身を吸い上げられていた。
言わば内蔵と脳の合わさったものを無理矢理引きずり出されるような感覚。
嘔吐しそうな苦しみと全身に響く痛み。
そして圧倒的な喪失感が子れいむを襲う。
お母さんは突然のことにしばらく固まっていた。
無害そうなあのれみりゃが娘を攻撃するだなんて夢にも思ってなかったのだ。
だからこそ目の前の光景が信じられなかった。
しかし娘の悲鳴が目の前の光景が真実だと教えてくれた。
娘がれみりゃに食べられようとしている…!
「やめてね! れいむからはなれてね!!」
お母さんはれみりゃに体当たりしようと身構えた。
が、それより前にれみりゃは子れいむから口を放していた。
「ゆ"、ゆ"、ゆ"ぐ…ゆ"ぐ、り"」
子れいむは死ぬほどではないが餡子を抜き取られた痛みに痙攣していた。
お母さんはすぐに娘の下へ駆け寄ろうとする。
「うー!」
「あ"あ"あ"あ"あ"!! やめでね! ゆっぐりじでね!!」
れみりゃはそんなお母さんれいむに噛み付いた。
そして子れいむと同じように中身を吸い上げていった。
母れいむはその苦しみに娘と同じように悶絶し、悲痛な叫びを上げた。
それからしばらくして、母れいむはれみりゃから解放された。
今は娘と仲良く並んで痙攣していた。
釣り針から逃げる生活から解放されたと思えば、今度は捕食者から逃げる生活だった。
前と違うのは捕まっても死ぬことはない、いや殺されないところだった。
れみりゃはれいむ達をあくまで玩具として扱っていた。
だから死ぬまでは中身を吸わない。
時には噛み付かずにれいむ達を追いかけて、必死に逃げて怯える姿を見て楽しんでいた。
釣り堀から助けてくれた人間はここでは常にれみりゃの味方だった。
れいむ達がれみりゃの玩具だから傷を治してくれるし食べ物もくれる。ただそれだけ。
子れいむは何で自分達がこうなったのか分からなかった。
平和な森の中で家族と、群れの仲間と仲良く暮らしていただけなのに。
あの森は悪意のない世界だった。
世界のすべては善意、つまりゆっくりで出来ているはずだった。
人間がそれを壊し、子れいむ達を悪意の世界へと連れ出した。
釣られた仲間は食べられ、目の前のれみりゃは自分たちを食べる。
子れいむが分かったのは自分たちが食べられる存在であるということだけ。
何故ゆっくり出来ないのか。
誰かのせいにすることなんて思い付かない子れいむのゆっくりした頭ではその理由が思い当たるわけもなかった。
そして今日もれみりゃの遊び相手にされる。
一緒にゆっくりすることはない。一方的に相手が子れいむとお母さんを傷つける。
この部屋でゆっくり出来るのはれみりゃだけ。
「いっじょに、ゆっぐりじようよ"…」
「うー!!」
返事は牙で返された。
子れいむは餡子を吸われながらお母さんを見る。
お母さんはここ数日は子れいむの言葉にもほとんど反応しなくなっていた。
たまに独り言をブツブツ言っている。起きながら夢をみているようでもあった。
もうお母さんは、そして自分も二度とゆっくり出来ないのかも知れない。
子れいむは餡子を吸われ、朦朧とする意識の中で漠然とそう感じ取っていた。
終
by 赤福(ゆっくりしたい人)
最終更新:2022年05月18日 21:21