※俺設定注意
「くっ・・・・・・うぐっ・・・・・・」
暗い地下室、そこに苦しげな呻き声が響く。
今ここに居るのは、私と・・・・・・磔にされた、胴付きのゆうかりん。
私が彼女を拉致し、ここまで連れて来たのだ。
「ねぇ、どう?痛い?痛いなら痛いって、正直に言ったら?」
「・・・・・・・・・こんなの、いたくもかゆくもないわ・・・・・・」
殺意さえ孕んだ鋭い視線を私に突きつけるゆうかりん。
心地良い。その瞳が、その感情が、私を否応なく昂ぶらせる。
「本当に?ねぇ本当に痛くないの?ねぇ?」
「・・・・・・ッ!!ぐぅッ・・・・・・」
ぐりぐりと、ゆうかりんの右手を貫く杭を押し込む。
彼女は必死に声を殺し、それでも口から漏れ出る吐息。
色気さえ含んでいる様に感じられるのは私だけだろうか。
「・・・・・・本当に気丈ね、ゆうかりん。でも、私は貴方のそんなところが好きよ」
「わたしはあなたのことが、だいっきらいよ。さっさとこれを、はずしなさい・・・・・・!」
分かっている。貴方が私の事を憎んでいるなど。
いきなりこんなことをされて好きになってくれる者など居ない。
でも、私がそれを望んでいるのだとしたら?
「外さないわ。だってその杭を外したら貴方、逃げちゃうでしょ?襲い掛かってくるならともかく、逃げ出されるのは良くないわ。
それに、まるでどこかの聖人みたいで素敵よ、ゆうかりん」
クスクスと、鈴を鳴らすように笑う私。
本当は聖人なんかよりもよっぽど神秘的に感じられて素敵なのだけれど。
「・・・・・・くるってるわよ、あなた。あたまおかしいんじゃないの!?」
何かが気に障ったのだろうか。
先程よりも激しい口調で私を罵ってくるゆうかりん。
頭がおかしいか。ふふ、そうかもね。
「貴方の言うとおり、私は狂ってるわ」
笑顔でそう言い放ち、懐から得物を取り出す。
それは、沢山の種類の花と、大量の太い針。
「だって、貴方の事が好きで好きでたまらないのに、こんなことをしようとしているんだもの。正常な方がどうかしてる」
先ず取り出したのは赤い薔薇。
それを針に飾るように取り付けていく。
「・・・・・・な、なにをするきよ」
「それに、狂っていたとしたら、何かいけない?」
そうして針をゆうかりんの右腕に近づけていく。
少しだけゆうかりんの瞳の中に怯えが見て取れた。
両手を杭で貫かれてるのに今更ね。少し可笑しくなる。
「私はゆうかりんの事が好き。これでいいじゃない」
「やっ・・・・・・やめなさい!!」
ずぶり。
ゆうかりんの右腕に、少しずつ針が埋まっていく。
やはり痛むのだろうか。ゆうかりんは歯を食いしばっている。
「・・・・・・・・・ッ!!」
「赤い薔薇の花言葉は『愛情』・・・・・・だったわよね?ゆうかりん。素敵よ」
ゆうかりんの右腕に、赤い大輪の薔薇が咲いた。
思わず見とれてしまう。
「綺麗ね、ゆうかりん・・・・・・赤いチェックの服と少し被ったことが残念かしら」
「・・・・・・な、に・・・・・・やってるの、あなた・・・・・・!!」
ゆうかりんが怒りを込めた口調で聞いてくる。
何やっているのって?簡単よ。
「ゆうかりん、私ね。貴方のために少し花の勉強してきたの」
「・・・・・・!?なに、いって・・・・・・!?」
「花言葉に華道のお作法、私には難しかったけど頑張ったわ」
そう言ってまた針に花を飾りつける。
今度はコスモス。
先程の薔薇と同じく花言葉は『愛情』。他にも『乙女の真心』とか。まるでゆうかりんのよう。
今度は左腕。
針がゆうかりんの左腕に埋没していく。
「・・・・・・うッ・・・・・・ぐゥ・・・・・・!」
必死に悲鳴をかみ殺すゆうかりん。
痛みに歪む顔も、本当に綺麗。
「ねぇ、ゆうかりん・・・・・・痛い?」
当然の事を私は尋ねる。
痛くないはずが無い。そんなのは分かりきっている。
それでも、ゆうかりんから聞きたいのだ。
「・・・・・・いたいわけ、ないでしょ・・・・・・さっさと、これをはずしなさい・・・・・・」
痛みに打ち震えながらも、気丈に杭を外すよう言ってくるゆうかりん。
本当は痛いはずなのに。私でさえ、泣き喚くような激痛のはずなのに。
素敵。やっぱりゆうかりんはこうでなきゃ。
「あら、痛くないの?それじゃあもっとやってあげる。貴方の好きなお花を、もっとね」
次々に花を針に飾りつけ、そして突き刺していく。
左足にはマーガレット。
右足にはブーゲンビリア。
胴体には、鈴蘭とアマリリス、桔梗の三本を突き刺した。
あっという間に、ゆうかりんの身体は花で覆われる。
まるでそこに収まるのが当然だとも言うべきように、花たちはゆうかりんと馴染んでいた。
「花が大好きな貴方が、花瓶になった気分はどう?嬉しいんじゃない?」
「・・・・・・ばっか、じゃない、の・・・・・・」
つれない返事を返すゆうかりん。
少しは喜んでもらえると思ってたので、ちょっとがっかり。
「さっさと・・・・・・このはなを、ぬきなさい・・・・・・!」
それどころか、花を抜けとまで言われてしまった。
内心ショックを受ける。
「・・・・・・わかったわ、ゆうかりん。貴方が気に入らないんじゃ、仕方ないわね」
少々落ち込みながら桔梗の根元、針を掴んで、引く。
ゆっくり、ゆっくりと引き抜かれていく針。
少しずつ針が抜けるたびに、ゆうかりんの身体は痛みに震えている。
「・・・・・・ねぇゆうかりん。本当に、この花気に入らない?」
ピタリと、針を抜く手を止める。
中途半端に抜かれたままになる針。
ゆうかりんは辛そうだ。
「・・・・・・きにいるとかいらないとかじゃなく、さっさと、はりを、ぬきな・・・・・・」
「あっ、やっぱりこの花は気に入ってるのね♪」
再び針を押し込む。
完全に奥まで戻り、それどころかより深く刺された針。
「ッッッ!!!!」
びくん、とゆうかりんの身体が一際大きく跳ねる。
不意を突かれた痛みに、身体は正直に反応したのだ。
それでも声を抑えるあたり、流石と言わざるを得ない。
「他の花はどうかしら~?気に入らないのがあったら遠慮なく言ってねー♪」
「やっ、やめなさ・・・・・・あぐッ!!」
他の花も抜いては押し込み、抜いては押し込みを繰り返す。
押し込まれる際に手元が狂い、ゆうかりんの傷を押し広げることもある。
その度に小さく跳ねるゆうかりんの身体。
暫く経って、ようやく私は花を弄るのを止めた。
素早く全ての針を引き抜いていく。
針が刺さっていた場所、そこは少し抉れて小さな穴を作ってしまっている。
穴から滲むのは甘い香りの花の蜜。
私の元にもその香りが漂ってくる。
「これがゆうかりんの中身・・・・・・素敵ね、いい匂い」
思わず身体をかき抱く。
私にとってこの香りは、媚薬のそれだ。
身体の一部分が熱を帯びる。
「・・・・・・このっ、へんたい・・・・・・!」
「あら?変態とは酷い言い草ね」
憎憎しげに言い放つゆうかりんに、私はそう返す。
「ゆうかりんの匂いなのよ?そんなの嗅いだら、発情しちゃうじゃない」
「・・・・・・・・・っ」
少し頬を上気させた私に、ゆうかりんは嫌悪の視線を投げつける。
もっともそれは、私を悦ばせる結果にしかならない。
その視線が、その表情が、その存在が。私を昂ぶらせている。
「・・・・・・・・・ねぇ、ゆうかりん。ここから逃げ出したくない?」
「っ!?」
唐突な私の申し出に、目を見開くゆうかりん。
今まで何度言っても聞き届けられなかったその願い。
「・・・・・・なにをかんがえているの?」
やはりゆうかりんは私の事を疑っている。
何故急にこんなことを言い出したのか。私の本意をはかりかねているのだろう。
「簡単よ、交換条件。貴方が私の言うことにしたがってくれたら、さっさと逃がしてあげる」
生憎だけど、私はそんなに難しいことを考えてはいない。
だから私の心なんて探ろうとしても無駄よ、ゆうかりん。
「そのじょうけんって・・・・・・?」
「ああ、別にたいしたことじゃないわ。貴方にとってそんなに難しいことでもないだろうし」
慎重に私の出方を窺ってくる。
私が出す条件は、本当に簡単なものなのに。
「条件を言うわ。これから貴方は泣いて叫んで、無様に命乞いをして頂戴。
そうすれば私は貴方を逃がす。ね、簡単でしょう?」
ほら、本当に簡単。
たかが泣いたり叫んだりして、私に醜態を見せてくれるだけで良い。
本当にそれだけの、簡単な条件。
「例えば私の足を舐めて、『お願いです、ここから出してください』って泣きながら懇願するだけでいいの。
他にも惨めにガタガタ震えたり、這い蹲りながら神様に祈ったり。たったそれだけ」
微笑みながら、ゆうかりんにそう告げる。
貴方はなんて返事を返すかしら?
まぁ、結果は分かりきっているんだけどね。
「さぁ、逃げ出したかったら無様を晒して。生きる為なら下らないプライドなんか要らないわよね、ゆうかりん?」
「・・・・・・・・・・・・いやよ」
ほら、やっぱり。
貴方はそう言うと思っていた。
「ぜったいに、わたしはあなたなんかにいのちごいしたりなんかしない」
「本当に?泣いたり叫んだりするだけで逃げられるのに?」
「あなたのためになきさけぶなんて、ぜったいにしない!!」
分かってる、だから私は貴方を捕まえてきたの。
その折れることの無い心、愚直なまでに誇り高い精神。
全てが嗜虐心をそそる。
「・・・・・・貴方、莫迦ね。もう貴方を殺すことに決めたわ。いえ、その前にもっと苦しめてあげる」
「すきになさい。せいぜいひとりでがんばることね」
私に対して「一人で頑張れ」とまで言ってのけるその根性。
心が挫けなければ、何をしてもただの一人遊びか。
そこら辺良く分かってるじゃない、ゆうかりん。
「本当に何をしても叫んだりしないかどうか、確かめてあげるわ」
焼き鏝を用意する。
とはいってもこれを押し付けたりするようなことはしない。
そんなのは無粋だ。あくまで前準備。
ゆうかりんの右肩、腕の付け根のあたりを両手で掴む。
何をされるのか分かったのか、ゆうかりんの表情がほんの少し歪む。
それでも変わる事の無い眼光。
「貴方の腕を引き千切る」
短く、そう告げる。
元から動揺を誘えるなど思っていない。ただ確認のため。
やはりゆうかりんは動揺していない。いや、あるいは恐怖で感情が麻痺しているのか。
「止めて欲しかったら泣き叫びながら『止めてくださいお願いします』って言うのよ」
「・・・だれがいうものですか」
短い応酬の後、私は両手に力を込める。
ぎちぎちと鳴り始めるゆうかりんの右腕。
ゆうかりんの顔が、苦痛に歪む。
「ほら、早くしないと、腕がちぎれちゃうわよ」
「・・・・・・ッ!!!・・・・・・ぐ、うッ」
流石はゆうかりん。かなりの耐久性だ。未だに腕は千切れない。
だが所詮ゆっくりはゆっくり。
私が更に力を込めると、びしりと言う嫌な音がした。
「・・・・・・あ、くぅッ」
服越しからでは分からないが、ゆうかりんの腕の付け根には無数の裂け目が入っているはずだ。
先程の嫌な音。それはゆうかりんの腕の断末魔。
あと少しでも私が力を入れれば、ゆうかりんの右腕は胴体から離れていくだろう。
「ねぇ、今なら間に合うわよ。さっさと私に・・・・・・」
「・・・・・・やりたい、んなら、やりな、さい、っよ!」
「そう」
ブチン。
何かが千切れた音。言うまでもなく、ゆうかりんの腕だ。
服も一緒に持っていく。袖ごと引き裂かれ、胴体に永遠の別れを告げる右腕。
部屋中に濃厚な花の蜜の香りが漂う。
すかさず、焼き鏝を押し当てる。
傷口を焼き止餡(?)するのだ。
ジュウジュウと音を立て、ゆうかりんの肩を焼いていく。
「・・・・・・ッ!!・・・・・・ッッ!!!」
目を見開き、暴れだすゆうかりん。
私はそれを押さえ込み、焼き鏝を傷口に押し当てていく。
この状況でも、ゆうかりんは悲鳴を上げなかった。素晴らしい精神力。
「・・・・・・・・・はぁッ!!!ぁッ!!・・・・・・ぐぅッ!!!」
止餡を終了し、ゆうかりんを開放する。
途端に、ぐったりと力が抜けるゆうかりん。
そして、私が持っている、ゆうかりんの右腕。
こちらには止餡をしていない。
傷口からぽたぽたとゆうかりんの中身が滴っている。
撒き散らされる甘い蜜の香り。
ゆうかりんに見せ付けるように、傷口から一気に食いつく。
傍から見ればまさに喉から手が出ているに違いない。
少し青褪めたゆうかりんの視線を受けつつ、彼女の腕を貪っていく。
美味しい。美味しい。美味しい。
ひたすらに甘い。それなのにどんどん食欲が沸いてくる。
夢中になるほどの美味。気付けば濡れていた。
あっという間にゆうかりんの腕を完食する。
お腹をさする。今ここで、ゆうかりんが私の血肉となっていくのだ。
湧き上がる劣情に、身体が疼いて止まらない。
「・・・・・・どう?ゆうかりん、逃げたくなった?それならなんて言えばいいか、知ってるわよね?」
優しく、ゆうかりんに語り掛ける。
笑顔でゆうかりんに這い蹲るように強要する。
俯いたままの彼女。これで貴方はなんて言うかしら。
「・・・・・・・・・ぜったいに、あなた、なんかに、まけたり・・・・・・しない!!」
それでもゆうかりんは折れない。
貴方は莫迦ね。最高の大莫迦者だわ。
それでこそ、壊しがいがある。
それから、ゆうかりんの残りの手足を引き千切っていった。
一本ごと引き千切り、焼き鏝を当て、そして貪り喰らう。
けれど決してゆうかりんは叫びひとつ上げることは無かった。
彼女の身体の一部を食すごとに、私は絶倒へと近付いていく。
ゆうかりんは四肢を失った。
所謂ダルマだ。
無様に床に這い蹲りながら、それでも私の事を睨み上げてくる。
「無様ね、貴方」
「・・・・・・・・・ッ!!・・・・・・ッ!!」
まるで芋虫のように、身体をのたくらせながら床を這っている。
彼女の向かう先は、私。
手足の無い状態では遠すぎる距離だ。
「こんな事になるならさっさと土下座でもなんでもすればよかったのに。無駄なプライドのせいで、貴方は死ぬのよ」
「・・・・・・ッ!・・・・・・ッ!」
私の言葉が聞こえないかとでも言うように、一心不乱に前へと進もうとするゆうかりん。
その瞳は私だけを映している。
「ねぇ、聞いてる?それとも激痛のせいでおかしくなった?」
ゆうかりんに歩み寄り、ひょいと抱き上げる。軽い。
手足の無い彼女は、まるで人形のよう。
ただその目だけは人形とは違う生命力を感じさせる。
「・・・・・・。・・・・・・」
ぼそぼそと。
私にも聞き取れないほどの小さな声で、ゆうかりんは何かを呟く。
「え、何?」
思わずゆうかりんを近づけ、口許に耳を近づける。
瞬間、ゆうかりんは動いた。
「あ」
「~~~ッッ!!~~~~ゥゥッ!!!」
噛み付いた。
私の首元に。
そうか。これを狙っていたのか。
ギリギリと、ゆっくりの範疇を超えた力で歯を食いしばるゆうかりん。
このままでは私の首は噛み千切られるだろう。
それにしても、気持ちいい。
ゆうかりんから与えられる激痛。それがこんなに良いものだったなんて。嬉しい誤算だ。
また一つ、絶頂へと近付く私。
おっといけない。イった先があの世など、笑い話にもならない。
とりあえず何とかしよう。
ゆうかりんの右眼窩に、そっと人差し指を突っ込む。
深く深く沈んでいく私の指。
続いて中指、最後は親指。
完全にゆうかりんの右眼球を掴む形となった。
そっと力を込め、手をひねる。
プチプチと何かが千切れる音。
ゆうかりんの右目に繋がる視神経、それを私の指が断ち切ったのだ。
「ッッ!!」
ここに来て、ゆうかりんが口を離す。恐らくは痛みと、右視界の完全な消失のため。
あーあ、惜しい。
離さなければ私を殺れたかもしれないのに。
即座にゆうかりんを押しのけながら右眼球を引き抜く。
隻眼となった彼女は、残った瞳で私を睨みつける。
私の手の中には、もう一方の彼女の眼球が。
指で転がしながら、まじまじとそれを見つめる。
紅い瞳が、光を反射してキラキラと輝いている。
綺麗。まるで宝石、いや、私にとってはそれ以上の価値がある。
反射的に眼球を口に入れた。
ころころと舌の上で転がし、付着した視神経や花の蜜を舐め取る。
そうして口から出したときには、余分な汚れは無くなっていた。
「綺麗ねぇ、これ」
「・・・・・・・・・」
保存液が満たされた容器にゆうかりんの眼球を入れた。
これで彼女の眼球は長い間保存しておくことが出来る。
空いた手で首元に手をやる。うっすらとだが、血が滲んでいた。
「やるわね、貴方。最後の最後にこんな事をしてくるだなんて」
「・・・・・・・・・」
ゆうかりんは喋らない。
ただひたすら私を残った眼で睨みつけている。
最早万策尽きたというのに、その瞳は恐れを知らないかのようだ。
「もうちょっと遊んでいたかったけど、ご褒美として楽に殺してあげる」
「・・・・・・・・・」
鉈を手に取る。
もうこれ以上ゆうかりんを苦しませても意味は無いだろう。彼女は折れない。
楽に逝かせてあげるのが、私のせめてもの礼儀。
「楽しい時間は過ぎるのが早いわ。残念。本当に、残念」
「・・・・・・・・・」
虚ろになったゆうかりんの右眼窩を見つめる。
それさえ除けば、彼女の顔は傷一つ無い。依然として、彼女は綺麗だった。
胴体に拷問を集中させたのは全てこの瞬間のため。美しいものを一撃でぶち壊すことに勝る快感を、私は知らない。
鉈を振りかぶる。
一撃で、痛みは無く。彼女の顔は、一体どんな風に砕け散るのだろう。
想像しただけでイってしまいそう。下着の中は大洪水だ。
「ねぇゆうかりん。最後に、何か言うことはない?」
「・・・・・・・・・」
そう、最後に。
最後に何かゆうかりんの言葉を聞きたい。
彼女は最期の時に、一体何を言ってくれるのだろうか。
助けてください?今更それは無い。そんな事を言われたら興醒めもいいところだ。
殺してやる?それも良いかも知れない。最期まで私を殺そうとしてくれるだなんて。感動だ。
それともだんまり?私に言うことなど何もない?それは悲しい。涙が出る。
ああ、考えるだけでゾクゾクする。
不意に、ゆうかりんの顔が、優しくなった。
怒りも無く、憎しみも無く。全ての感情が取り払われたかのような、優しい表情。
まるで悟りを開いたかのように、私を見つめてくる。
それでもその瞳の中には、ありとあらゆる感情が渦巻いていて―――――
「ゆっくり、死ね」
「ええ、いつかそうするわ。私が行くまで、待っててね、ゆうかりん」
私は鉈を振り下ろした。
今までの中で最も甘い香りが部屋の中に充満する。同時に絶頂する私。
結局最期まで屈服することは無く、ゆうかりんは、死んだ。
私はゆうかりんを残さず食べた。
髪の一本、服まで全て。床に落ちた花の蜜すら、一滴も残さずに舐めとった。
私と彼女は、完全に一体化したのだ。
いや、ひとつだけ残したものがある。
それはゆうかりんの左目。
右目と同じく保存器の中に入れる。
ガラスの容器越しに、ゆうかりんの両目を見つめる。
とても紅く、綺麗な瞳。
それが変わらずに、永遠に私だけを見ていてくれるような気がした。
下着を取り替え、私は散歩に出かけた。
今日はひどく機嫌がいい。なんてったってあんな素敵な出来事があったのだから。
私にとっての『宝物』が増えた日だ。
「ゆっ!ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
上機嫌に歩く私の前に、2個の饅頭が飛び出してきた。
黒帽子の金髪に、赤リボンの黒髪。
名前は確か・・・・・・まりす種と、れ・・・なんたら種だったはずだ。
「おねーさん、ゆっくrぶべぇっ!!?」
「までぃざぁっ!?」
目の前にいて邪魔だったので、黒饅頭の顔面に蹴りを見舞った。
偶然突き刺さった爪先が眼球を抉り出し、あっけなく吹き飛ぶ黒饅頭。
赤饅頭は眼を見開いてなにやら叫んでいる。
「ゆぎゃああああああああっっ!!!までぃざのっ、までぃざのおめめがあああぁぁぁっっ!!!」
「おね゛ーざん、どぼじでごんなごどずるのおおおおぉぉぉっ!!!?」
みっともなく叫び、そこらを転がりまわる黒饅頭。
私に向かって何か喚き散らす赤饅頭。
本当にどうでもいい。
ゆっくり。
いつの間にかこの世に現れた不思議な生き物。
人々はゆっくりと接するに当たって、愛でたり、食料にしたり、そして時には虐待したりした。
叩けばよく泣き、踏めばよく怯え、切り裂けばよく命乞いをする。
そして生命の尊厳など皆無な、ただのナマモノ。人々はそんなところに惹かれたのだろう。虐待にはうってつけだ。
確かにその気持ちは分からないでもない。
でも、私はどうしてもそれを面白いとは感じられなかった。
確かによく泣く。怯えもするし、命乞いだってうまいものだ。
でも、たかがそれだけ。それだけでは私の心には響かない。
『壊しがい』が必要なのだ。私にとっては。
理不尽な暴力に屈しないだけの、高潔な精神。それでこそ手折りがいがある。
あるいは愚直なまでのプライドか。
そして私はゆうかりんと出会った。
焼こうが裂こうが挫けないその心。無様な命乞いよりも死を選ぶそのプライド。最期の時に見せるあの表情。
全てが私好み。
私にとって『ゆっくり』とは、ゆうかりんだけなのだ。
ゆうかりんの苦痛だけが私を満たす。ゆうかりんの憎しみだけが私を昂ぶらせる。
他は取るに足らない饅頭以下の何か。虐待する価値も無い、ただのゴミ。
「ゆべぇっ」
「ゆびゅっ」
ゴミ2個を踏み潰す。
何の面白みもなく、あっけなく饅頭どもは潰れた。
何事も無かったかのように私は歩き出す。
こんな奴らに興味は無い。
私が虐め、壊し、屈服させたいのはゆうかりんだけだ。
毎日の散歩はゆうかりんを探すため。
この世にはまだまだゆうかりんが沢山居る。
その全てが、今日のゆうかりんのように私に快感を与えてくれるのではないだろうか。
だから私は歩き続ける。
私以外の誰かがゆうかりんを殺すなんて許せない。
彼女たちの喜びも、悲しみも、怒りも憎しみも苦痛も・・・・・・希望も絶望も、私だけのものだ。
他の人になんか渡したくない。
歪んだ独占欲、嫉妬心。
まだ見ぬ私だけの花を探すために、今日も私は生き続ける。
その花たちを手折ることこそが私の最大の喜び。
あるいはそれは、愛情と言うべきなのかもしれない。
だって私の心は、こんなにも貴方達に釘付けなのだから。
おわり
―――――
書き溜めです。
ゆうかが好きすぎてこんな事になった。反省はしていない。後悔している。
究極の愛の形の一つが虐待だと思うんだ。
最終更新:2022年05月19日 12:42