※俺設定注意










「ゆっくりしようね、れいむ!!!」
「ゆっくりしようね、まりさ!!!」

今、僕の家の中で嬉しそうに頬を摺り寄せるのは2匹のゆっくり。
れいむとまりさだ。
彼女たちは、「お菓子をあげる」という僕の誘いに乗ってここまでやって来た。

基本的に僕はゆっくりが好きだ。
人間の生首をデフォルメしたような容姿、なんとも言いがたい微妙な表情。それらが僕の関心を惹いて離さない。
一般的には愛でお兄さんと言われる部類の人間ではないだろうか。

でも、そんな僕が最近気にかかっている事がある。
ゆっくり全体、その繁栄の基盤を揺るがすような重大な事だ。
恐らくだが、このまま誰もが放っておいたらゆっくりは遠からず未来で絶滅してしまうだろう。
それは嫌だ。「僕の好きなゆっくり」には、この先もずっと生き残って欲しい。

だから僕はこの二匹を家へと呼んだ。
この部屋はこれと言った家具が無い。もし彼女たちが暴れても、何一つこちらも、あちらも損害を被る事は無い。
それに今からやる事は彼女たちにとっても良い事のはずだ。最初は悲しみこそすれど、後に僕に感謝するようになるだろう。
少なくともその事だけは確信している。

さぁれいむ、まりさ。
今から僕が、君たちの決定的な矛盾点を取り除いてあげよう。そうすれば君たちは生物としてより強くなれるはずだ。
そうすれば絶滅なんかしない。ずっと僕の好きなゆっくりで居られ続ける。
始めようじゃないか。










        あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ!










「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪」
「ゆっゆ~♪」

ふにふにと、頬を摺り合いながられいむとまりさは間抜けな歌声を晒している。
この二匹は、今現在「とてもゆっくりしている」状態にあった。

事の起こりは数十分ほど前。
いつもの様に日向ぼっこをしていた二匹の前に、男が現れてこう言ったのだ。
「美味しいお菓子をあげるから、うちに来ないかい?」と。
深く物事を考え(られ)ないゆっくり二匹。二秒と考えずに、男の誘いを快諾した。

彼に連れて来られたのは、ゆっくりの常識に当てはめるなら途轍もなく広いおうちだった。
そこの一室に通される二匹。勿論そこも、ゆっくりからして見れば異様なほど大きいおうちだ。
そしてそこに降って湧いた沢山のお菓子と男の「ここをれいむ達のお家にしていいよ」という言葉。
労せずしてれいむとまりさは誰もが羨むおうちを手に入れたという訳だ。

菓子を平らげ、そのままそこでゆっくりしだす二匹。
ゆーゆー歌を歌ったり、昼寝をしていたりするがゆっくりは基本娯楽に乏しい生活を送っている。
しかもつい先程巨大な住処を手に入れた二匹の取る行動と言えば、最終的にはたった一つ。

「ゆほおおおおお!!!れっ、れいむううううぅぅぅぅ!!!」
「まりさあああああああぁぁぁ!!!ゆうううぅぅぅん!!!」

交尾だ。
食・住が満たされれば即交尾に繋がる。他にやることが無いから。これは田舎の人間とかにも当てはまることだ。
今かなり(人間に対して)失礼な説明をしたが、とにかくこの二匹は生殖を選択した。

「ゆううううぅぅぅぅ・・・・・・すっきりー!!」
「んほおおおおおおおおお!すっきりー!!」

ほぼ同時に達する二匹。それに伴い、母親役のれいむからにょきにょきと生えてくる茎。
年中発情期のゆっくりは、交尾すればすぐさま子供が生まれる。
一部では例外があるものの、このれいむ達はその中には含まれなかったようだ。

異常ともいえるスピードで成長する茎。
まるで実が成るが如く、赤ん坊のゆっくりが茎の先に実っていく。
中々にこの全世界の生物にとって反常識的・冒涜的・嘲笑的な産まれ方だと言えよう。

「ゆううぅぅぅ~!!!あかちゃんがうまれるよおおおぉぉ~!!!」
「ゆっ!!」
「ゆっくち!!」
「ゆんっ!!」
「まりさのあかちゃん、とってもゆっくりしてるよぉ~!!!」

茎の先に実ってから生まれ落ちるまでたったの五分。
そのサイズに比べて余りにも早いスピードで赤ゆっくり達は生を受けた。
感動の涙を流す親ゆっくり。
命の尊厳を感じさせるには少々軽すぎる雰囲気だ。

「ああ、おめでとう。可愛い赤ちゃんだね」
「「ゆゆっ!!」」

赤ん坊に囲まれ、幸せの絶頂にいる二匹に声がかけられる。
この部屋をれいむ達に与えた男。れいむ達にとっては、優しいお兄さんだ。

「ゆっ!!おにいさんがれいむたちにりっぱなおうちをくれたから、かわいいあかちゃんがうめたよ!!」
「ありがとう、おにいさん!!あかちゃんたち、こっちにでてきてね!!」
「「「ゆぅ~?」」」

赤ゆっくり達を呼び寄せるまりさ。
男に赤ちゃん達を見せて、ゆっくりして貰おうというのだ。
可愛らしい赤ん坊達を、前に並ばせる。

「あかちゃんたち、かわいいでしょ!!ゆっくりしていってね!!!」
「おにいさんにはとくべつに、かわいいかわいいあかちゃんみせてあげるね!!!」
「「「ゆっ!!きゃわいくてごめんしゃい!!!」」」

こんなに赤ちゃんは可愛いんだから、きっとお兄さんもゆっくりできる。
そんな考えの下、れいむとまりさは誇らしげに胸を張った。
各々の赤ゆっくりも、それぞれ最も自分が可愛く見えるポーズをとっている。

「ああ、可愛いね。とってもゆっくり出来るよ」

笑顔を浮かべながら赤ゆっくりの前にしゃがみ込む男。
その笑顔を見て、お兄さんがゆっくりしていると思って嬉しくなるゆっくり一同。
とてもゆっくり出来る笑顔を浮かべたまま、男は右手を赤ゆっくり達の方に差し出して―――

―――そして、そのまま押し潰してしまった。

れいむとまりさの、動きが止まる。
にっこりと笑顔を貼り付けたまま、石膏の象のように動かなくなる。
二匹の視線は、億劫そうに手を振り、餡子をはらうお兄さんへ。

「「・・・・・・な゛に゛じでる゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!?」」

クワッと眼を見開き、ぶるぶると震えながら叫ぶ二匹。
今しがたのお兄さんの行動が理解出来ない。いや、そんなことよりも。
赤ちゃんが。とってもゆっくりした赤ちゃんが。赤ちゃんが死んでしまった。

「・・・え?何って赤ゆを潰したんだけど?」

さも当然、蚊が居たから叩き潰しました、とでも言うように答えるお兄さん。
何の感慨も無い。後悔の欠片すら見受けられない。
二匹はついさっきまで信頼に値していた筈の人間に対して、疑問をぶつける。

「どぼじであがぢゃんをごろじぢゃっだのおおおぉぉぉ!!!」
「あがぢゃんはどっでもゆっぐりでぎるのにいいいぃぃぃ!!!」

涙を流し、身を振りかぶりながら悲しみをアピールする二匹。
どうしてこんなに可愛い赤ちゃんを。赤ちゃん達ももっとゆっくりしたかった筈なのに。
悲しみに胸(無いけど)が引き裂かれそうだ。何故、何故こんなことを。

「ああ、それそれ。それだよ、それ」

そんな二匹の態度こそ、彼が懸念しているものだった。
ピタリと動きを止める二匹。一体何の事だろう。もしかして、なにかお兄さんがゆっくりできない事だったのかも―――
―――いや、そんな事はもうどうでもいい。どうしてこんな事したの。今はただ、赤ちゃんのために謝って欲しい―――
二匹の願いをよそに、彼は素気無く言い放つ。

「君達さぁ、野生動物でしょ?もうちょっとそれらしく生きたら?」





「君達ゆっくりは弱い。そりゃもう弱い。人に負け、犬に負け、鼠に負け、下手したら蟻にも負ける。
 いや別にそれが悪いって事は無いよ。君達は『そういう風に』出来てると考えたら何もおかしい事は無い。
 とてつもなく弱くて、ちょっとしたことですぐに死ぬ。だから沢山子を産まなきゃならない」

れいむとまりさは呆然としている。
お兄さんは、一体何を言っている?理解できない。いや、したくない。

「で、君達は所謂多産多死の生物なわけじゃないか。それは、問題ないんだ。
 でもさぁ、そこからがおかしいんだよ。多産多死型の生物ってのは、基本的に親の助けを借りずに成長するんだよ。
 マンボウとかさ、三億個も卵産むらしいけど親は一切面倒を見ないわけ。そんで自生して、成長するんだ。
 他にも身近な所だと蟷螂とか、鮭とか・・・哺乳類は多分鼠辺りが該当するんじゃないかな?まぁ君達は哺乳類じゃないからどうでもいいけど」

まんぼうさん、かまきりさん、さけさん。ねずみさん。
それがどうした?それがれいむ達と、何の関係がある・・・・・・?

「いいかい、君達は、沢山産んで、沢山死ぬ。
 なんで他の動物を見習わないんだい?子供なんかいくらでも産めるだろう?
 一昔前は『あかちゃんしんじゃったから、またたくさんつくろうね!!!』とか言ってたじゃないか。
 それが今では、人間並みに母性だの、愛情だの、そんな所だけ発達して・・・誰かが言ってたけど、それ、歪んでるとしか言いようが無いよ」

知らない。知らない。知らない。
昔なんて知らない。昔のゆっくりがそんな事を言ってたとしても、れいむ達には何の関係も無い。
歪んでる・・・誰がそんな事を決めた?れいむ達が、赤ちゃんを愛することがそんなに悪いのか?

「ぶっちゃけさ、君達にとって赤ちゃんなんてデコイ兼餌扱いくらいでいいと思うんだよ。
 普段は産み捨てて、手元に置くなら外敵に対して囮にするか非常食として食べる。それくらいでいい。
 レイパー・・・だっけ?そっちの方がまだ自然だとすら思うね、僕は」

赤ちゃんをそんな風に扱うなんて信じられない。
このお兄さんは、赤ちゃんの事を一体何だと思っているのか。
それに、レイパーだと。あんなゆっくりできないレイパーが・・・自然?

「このままだと、遠からぬ未来に君達は絶滅しちゃうと思うんだ、僕は。
 そんなの嫌だ。僕はゆっくりが大好きでね。君たちの居ないこの世の中なんて、想像出来ない。
 昔のようになれば、きっと君達は生き延びられる。だから僕は身近な所から手を打つことにしたんだ。
 安心して、れいむ、まりさ。僕が君たちを、きっと立派に世界に『適応』させてみせる。矯正だよ」

そう言って、彼はにこりと微笑んだ。
れいむとまりさは何も言えない。言う気にすらならない。端的に言えば、絶望していた。
これから何が待ち受けているのかが凡その所、理解してしまった。『野生動物』に相応しい振る舞いをする矯正・・・それがどういうものなのか。
彼の指導の下、『矯正』日々が今、始まる。





大体は二匹の予想の通りだった。
毎日毎日子供を強制的に産まされ、そして色々なシチュエーションの下、殺していく。
ただ産み捨てる場合、雨の日の場合、寒い日の場合、虫や獣、人間に襲われた場合―――。
赤ちゃんたちの悲鳴が、れいむの心を壊していく。赤ちゃんたちの助けを呼ぶ声が、まりさの精神を磨り減らしていく。
徐々に、徐々に二匹の価値観は壊され、そして新しい価値観を刷り込まれていった。





そして、現在。

「おかーしゃん・・・・・・どうちて・・・・・・」
「ふん、うるさいよ!!!れいむはすっきりー♪できればいいんだよ!!!あかちゃんはひとりでかってにいきてね!!!」
「あんまりやかましくするなら、まりささまがたべちゃうのぜ!!!おまえらちびどもは、とってもおいしいのぜ!!!」

一匹で力無く震える赤ゆに、容赦ない罵倒を浴びせる親ゆ二匹。
言うまでもなく、かつてのれいむとまりさだ。
その表情は醜く歪み、赤子を赤子とも思っていないと言わんばかり。

赤ゆ・・・赤れいむは、多数の姉妹と一緒に産み捨てられた(お兄さんの家の庭に)。
親に会いたい一心でなんとかお兄さんの家に姉妹達と一緒に潜り込んだが、そこで待っていたのが親であるはずの二匹からのこの待遇。
既に半分以上の赤ゆ達は叩き出され、残りは食われた。今両親の前に立つのは、この赤れいむただ一匹のみ。

「おかーしゃん・・・おとーしゃん・・・すりすりしてね・・・」
「んほおおおおおおお!!!まりっざあああああああああ!!!」
「れいぶうううううう!!!れいぶのもぢはだはあいがわらずざいごうなんだぜええええええ!!!!」

泣きかける我が子を全く意に介さず、ネチョネチョと粘液を飛ばしながら交尾に耽る二匹。
今となっては二匹にとってこれが当然の事となっていた。
赤ちゃんは産み捨てる。運がよければ勝手に育つ。だから自分たちはひたすら子を作る。
産んだ後の事などは関知する必要などないのだ。だから目の前のガキもどうでもいい。

「すっきりー!!!・・・・・・ふぅ、おなかすいたね」
「それならあかちゃんをたべればいいのぜ!!ぶちっ!!むーしゃむーしゃ!!」
「お、おとーしゃんなにやっちぇるのおおぉぉぉ!!!?」

れいむの頭に生えた妹達を引き千切り、咀嚼する両親に対して赤れいむは恐怖さえ覚えた。
こんなに赤ちゃん作っているんだから、たまにはこうやって茎の状態からでも食べてもいい。自然界ではよくある事。
もはや二匹の価値観は完全に通常とは逸脱していた。いや、これこそが正しい姿なのか。

「まりさ、いまのあかちゃんたちだけじゃすくないよ!!!このあかちゃんもたべようよ!!!」
「ゆっ!!!いいかんがえなのぜ、れいむ!!!」
「ゆっ・・・ゆあああぁぁぁ!!!おとーしゃんおかーしゃんやべちぇええぇぇl!!!」

言うや否や赤れいむに襲い掛かるれいむとまりさ。
抵抗も出来ずに、噛まれ、潰され、絶命する赤れいむ。
二匹は幸せ。だってこんなに美味しい餌が食べられたんだから。たとえそれが、我が子の餡子だったとしても。

「んほおおおおおおおおおう!!!まりざあああああああああ!!!!」
「れいぶっれいぶうううううううううううううう!!!ゆっほおおおおおおおおおおお!!!」

一息つく間もなく、またネチョネチョと交尾を始める二匹。
惨殺した子供のことなど頭の片隅にも留めてはいない。
だってそれが自然なのだから。お兄さんが言ってた、本来のゆっくりなのだから。

最早理性と呼べるものがあるのかどうかも疑わしい饅頭二匹。
部屋の隅に佇んでいた彼はそんな二匹をじっと見つめている。
そして、ポツリと一言、こう呟いた。





「・・・うーん。これってゲスゆっくりだよなぁ。いかん、矯正しなきゃ」










        おわり










―――――
書き溜めです。
要約するとゆっくりにリアリティを持たせたらゲスゆっくりになりました、とこんな感じ。
お兄さんはゲスも嫌いなら不自然すぎるゆっくりも嫌いな頭の可哀想な人です。
ゆっくりが絶滅だって。ゆぷぷ。ゆっくりは勝手に生えてくるのにね!!げらげら!!!

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最終更新:2022年05月19日 12:43